新人・若手クラス

効果的な新入社員研修にするためには、新人や若手社員の価値観を知り、「対面」「オンライン」に関わらず、その特徴にあわせた教育設計をすることが重要です。社会人へと意識や行動を切り替え、自ら考え、行動しながら、職場適応力を高められる有効な研修内容とはどのようなものか。調査データを踏まえながら、ニューノーマル時代の新入社員研修を紹介します。

いま、こんな課題はありませんか?

  • 自ら考え、行動できる自律的な新人・若手社員を育成したい
  • 教育企画をするにあたって、イマドキの新人・若手社員の働く価値観や志向性をきちんと把握したい
  • 職場ぐるみで新人を育成し、配属先による指導レベルのバラつきを抑えたい
  • ニューノーマル時代にあわせた新入社員研修やフォロー研修へと再設計したい
  • 教育のオンライン化が進む中、研修やeラーニングなどを効果的に組み合わせて新人の成長支援をしたい

取り巻く環境・変化 新人・若手社員が育ってきた時代背景と特徴

「第4次産業革命」「人生100年時代」「グローバル化」が進む中、学校教育や社会人基礎力の見直しが国を挙げて進められています。加えて、新型コロナウイルスの感染症拡大に伴い、働く場所や時間の自由度が増したことにより、「働き方」や「学び方」にも大きな変化が生じることが予測されます。人生100年時代を生き抜く20代の若手社員にとって、社会に出ることは、未だ人生のスタート地点であると言っても過言ではありません。
一方で、経済環境の変化は新人・若手社員の労働価値観にも大きな影響を与えます。「今どきの若者は……」という話は1000年以上前から語られているという説もあります。ただし、時代背景にともなった特徴があるので、この中身を掘り下げて紹介します。

「社会環境」「家族」「組織と個人」の変化・変遷

社会環境が変われば家族構成も変わり、そして入社後は組織と個人の関係も変わってきます。その変遷についてご紹介したいと思います。まず、この40年のくらいの専業主婦世帯と共働き世帯を俯瞰してみると、1980年代は結婚した女性の3分の2は専業主婦になり、残りの3分の1は共働きという状況でした。これが2000年くらいになると半々くらいになり、現在は共働き世帯が3分の2以上、専業主婦は3分の1以下になっており、単純に数字だけを見ると逆転しています。
2020年前後に新入社員を現役四大卒と仮定すると、彼らは専業主婦と共働きがちょうど半々くらいになる少し前の時期に生まれています。つまり、家族の関係が変化し始めた時代に幼少期を過ごしているといえます。
また、博報堂「こそだて家族研究所」の調査(※)によると、社会変化を「安定成長期」「混乱期」「定常期」と捉え、各時期の家族像を「背伸び家族」「身の丈家族」「身の幸家族」としています。今の新入社員は、「身の丈家族」から「身の幸家族」に移り変わる頃に幼少期を過ごしています。環境が変わる中で自分たちなりの幸せをつくり出す、そんな価値観の人たちが社会で活躍される方々の中心になっているのです。

※博報堂 こそだて家族研究所 『買物フォーキャスト2016秋』

専業主婦世帯と共働き世帯の割合

「組織」と「個人」の関係性も変化

「組織」と「個人」の関係性も、時代とともに変化しています。高度経済成長期は、いわゆる「就社」でした。会社に勤めていれば、その会社から雇用と賃金、教育が最低限保障され、そのなかでしっかりと働けばよかった。主従関係でいうと、組織の方が主です。一方で、2000年前後の就職氷河期時代は、自分らしさというよりも、自分自身がどう生きるのかをしっかり考えて就職活動をした世代です。転職を重ねながら成長しようという考え方はまだあまりなく、仮に入社した会社が傾いても自分自身は困らないようにスキルアップして次なる仕事を選択していこうという価値観です。そして現代の新人・若手社員に関しては、考え方自体はその頃とそう大きく変わりませんが、より自分らしさや、個性を重視するようになってきています。また、副業・複業も認めるといったように、組織との関係も少しずつ軸がずれてきています。ずっと同じ会社で働き続ける必要はなく、いろいろな仕事を通じて成長していくという考え方の台頭です。働く環境も働き方も多様化し、会社に勤めていても人生の許容範囲は広がっているのです。これは、人事や経営の立場からすると、離職増加につながる課題になっているため、リテンションやエンゲージメントという言葉が注目されているのです。

「組織」と「個人」の関係性も変化

ポイント解説 調査結果から読み解く、イマドキの新入社員7つの傾向

JMAMが毎年実施している「イマドキ若手社員の仕事に対する調査」を読み解くと、新人・若手社員の傾向が浮かび上がってきます。

(1)上手くいかない経験から学びたいが、失敗はしたくない
新入社員の多くは「試行錯誤をしながら、上手くいかない経験を通じて学ばせてもらうほうが効果的」と思っているものの、実際は失敗への恐れが強く、挑戦や成功体験を積みづらい状態になっています。

(2)働く環境はとても大事
新入社員が「仕事に求めている条件」は、「1位 自分らしい生活を送る」「2位 仕事環境の心地よさ」「3位 お金を多く稼ぎよい生活を送る」でした。特に「仕事環境の心地良さ」は上司・先輩のランキング結果と比べて大きな違いがあり、新人がいかに仕事環境の心地よさを求めているかが分かります。

(3)プライベート重視で、無理なく仕事がしたい
世代別に見てもイマドキの新入社員は「仕事よりもプライベート重視」の傾向があります。その影響もあってか、自己成長に関しても挑戦よりも無理ない範囲で業務に取り組みたいと考える人が半数以上の結果となりました。

(4)チームワーク&対面を重視したい
ニューノーマル時代において働く場所は多様化していく中においても対面コミュニケーションのニーズが高いことがわかりました。また、「自分らしさ」は大切にしつつも、仕事においてはチームワークを重視する職場を好む傾向があります。

(5)デジタルとアナログは使い分ける
ソーシャルネイティブ世代とも言われるだけあり、情報収集はSNSを駆使しておこなっている結果となりました。一方で、自分の考えをまとめる際はどの世代よりも「手書き」の回答割合が多く、デジタルとアナログをうまく使い分けていることがわかりました。

(6)自分には優しく、指導者には厳しく
指導に関しては例年同様「できている点を褒めてもらいたい」の回答割合が多くなりました。また、人からどのように思われているかをとても気にする世代であることもうかがえます。その一方で、指導者側には「感情よりも論理的な指導」を期待していることがわかりました。

(7)自分に自信はないが、人生は充実している
世代別に見ても、新人の「自分の行動や言動に自信がない」という回答は圧倒的に高い結果となりました。一方で、人生の充実度はとても高く、自分のやりたいことを大切にして人生を楽しみたいという気持ちがうかがえます。

本調査を継続的におこなっている傾向からみる限り、新人の特徴はコロナ前後で大きな違いは無く、「自分のことを認めてくれる環境で、無理なく、無駄なく成長したい」という特徴があります。
しかし、社会全体がニューノーマル時代の働き方にシフトチェンジすることで、働く空間や時間に変化が生じ、従来のような現場指導を通じた成長支援(OJT)が成立しなくなる可能性があります。その意味でもイマドキの新人・若手社員に見られる特徴を理解し、成長支援の仕組みづくりを再定義することが必要といえます。

イマドキの新入社員7つの傾向

成長支援の方向性 環境適応力を高めるためのテーマを重視する

いままでの新人・若手社員への期待は、決められた仕事をきちんと遂行するために必要な「基本の型(ビジネスマナー・仕事の進め方など)」を習得することでした。もちろん、このテーマは今後も基礎教育として重視されるものです。一方で、これからは環境変化に柔軟に適応していくために「創造的な発想で、新たな解決策をもたらすための考え方やスキル」の体得が重要視されていくといえます。上記の考え方やスキルは一律的な短期集中型の新入社員研修カリキュラムでは体得が難しいため、「個別最適な成長支援」「小さな成功体験の積み上げ」「振り返る機会(場)の設定」などを通じたアウトプット重視の教育設計へアップデートしていくことが求められます。

環境適応力を高めるためのテーマ設定1

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴い、社会全体が空間も含めた働き方の変化が起こりました。また、その変化は時期が重なったこともあり、誰もが疑わず慣行的におこなわれてきた新卒採用や新入社員集合研修の「対面実施」にも大きな影響と変化をもたらしました。
ニューノーマル時代においては、ビジネスパーソン1人ひとりが期待される行動(アウトプット)を実現するために、日々のプロセスから学びを深め、自律的に成長していくことが求められます。そのような人材を多く輩出するためにも、教育設計は「もっと主体的・効果的に時間を有効活用すること」をめざしていく必要があります。具体的には、デジタルとアナログ、個人学習と集合学習の効果的な機能融合をおこない、ハイブリッド型の教育設計で学習効果を高めていくことが重要といえます。学生から社会人への移行(トランジション)をスムーズにおこなうためにも、新人・若手社員の成長支援は他階層よりも段階的・継続的な教育設計が必要になってくるといえます。