セルフマネジメント

「人生100年時代」においては、企業と従業員の双方でキャリアを考えていくことが大切だといえます。また、変化し続ける環境に柔軟に対応していくためにも1人ひとりの「セルフマネジメント力」も重要となります。どんな状況でも、動じることなく自分の力を発揮し成長していくために求められる要素とは何か。そのポイントをご紹介します。

いま、こんな課題はありませんか?

  • 人生100年時代にむけて自律的に将来のキャリア形成について考えてもらいたい
  • 自己研鑽を通じて「エンプロイアビリティ(雇用能力)」や「自分自身の市場価値」を高めて欲しい
  • 先の見えない状況下で発生するストレスに対処するためのセルフマネジメント力を高めてもらいたい
  • 健康寿命を延ばすうえで必要な自己管理能力を伸ばしてもらいたい
  • コロナ禍に伴うテレワークなど、環境変化に対して柔軟に対応してもらいたい

取り巻く環境・変化 不確実性の時代に欠かせないセルフマネジメント力

働き方の変化が止まらない時代の中で、追い打ちをかけるようにテールリスク(現在でいえば新型コロナ)が発生すれば、ビジネスパーソンにかかる負荷やストレスは相当なものとなります。ここで重要となるのがセルフマネジメント(自己管理能力)です。セルフマネジメント力を高め、メンタル(精神)とフィジカル(身体)をコントロールすることで、業務効率や成果の向上へと繋がります。
さらにセルフマネジメントには、自律的に自身のキャリアを形成する「キャリアデザイン」としての側面もあります。これまで日本を支えてきた終身雇用制度が立ち行かなくなれば、社内で昇進を重ね、定年退職を迎え、セカンドライフを謳歌するといった古き良き“青写真”を描くことは、最早かないません。
だからこそ、旧来型の雇用環境からの脱却を図り、会社に依存しない働き方も視野に入れたセルフマネジメントを行う必要があります。また、先行きの見えない状況を生き抜くためにも、リカレント教育などを活用した、継続的・持続的な知識のアップデートや、流動性の高い雇用市場でも需要のある人材となるための普遍的なスキルを獲得などが求められることとなります。

ポイント解説 セルフマネジメントを構成する要素

変化が大きく、先行きが見えない不透明な時代に突入しています。職場の人や環境の多様化も進み、不安やストレスを抱える局面も増えてくることが予測できます。そんな状況でも、動じることなく自分の力を発揮し、成長していくために、求められるものは何か。以下ではこれからの時代に高めたいセルフマネジメントの要素について紹介します。

セルフマネジメントを構成する要素

<自分自身の心身のバランスをコントロールするための要素>
●メンタルヘルスケア……①「セルフケア」②「ラインによるケア」③「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」④「事業場外資源によるケア」に分かれる。セルフマネジメントでは主に①が重要となる。

●レジリエンス……回復力、復元力、などを語源とする精神的回復力。ストレスにしなやかに適応し、すばやく立ち直る能力。

●アンガーマネジメント……1970年代にアメリカで誕生した、怒りに上手に向き合うための心理教育、心理トレーニングの1種。

●マインドフルネス……心を“現在起こっていること”に注意を向け、瞑想などによりストレスを軽減させる。

<自己理解や自身の人生をデザインする要素>
●キャリアデザイン……自分自身の“なりたい姿”や“ありたい自分”を実現するために、自己認識力を高めながら、自分自身で職業人生を主体的にデザイン・設計し、実現していくこと。

(例)
・ライフステージを意識したキャリア形成
・仕事だけではなく、「人生そのもの」をどうデザインしていくべきか
・100年あれば、失敗してもやり直すことも不可能ではない
・常に自分の意見を持ち、場数を踏み、変化を認める姿勢

成長支援の方向性 セルフマネジメントの高め方

自分の気の持ちようを自身でマネジメントし、ネガティブな感情を自らの成長につながるような感情へとコントロールしていく技術はこれからの時代を生き抜くための必須スキルといえるでしょう。例えばイラっとしても、感情的にならずに冷静に自分の要望を相手に伝えたり、心が折れてしまいそうな困難にもしなやかに対応したり、誘惑に負けず、自分の目標に向かって辛抱強く努力したりなど、このようなスキルを持ち合わせていれば、意欲的に仕事にチャレンジし、自分を高めていくことができるといえます。
ここではその必須スキルを磨いていくためのポイント(※)について紹介します。

(1)「逆境」に対応する(レジリエンス)

「逆境」に対応する力(レジリエンス)を鍛えるためにまず必要なのは、「状況や物事の捉え方を変えること」と「気晴らしの習慣を身につけること」です。人は、物事に対して“思い込み”を持ってしまうと、不安や怒り、悲しみや罪悪感といったネガティブな感情から回復できない。したがって自分の「思い込みのクセ」を知り、そのうえで運動や音楽など、自分なりの気晴らしの方法を見つけることが有効です。
次に必要なのは、「心理的資源」を増やしていくことです。特に何かあった時にサポートをしてくれる「社会的支援」の形成が重要です。会社内であれば上司や同僚よりも、部署も世代も違う斜めの関係のサポーターをつくることが効果的です。このような関係の形成は、メンター制度や社内イベントの実施などにより、企業として手助けをすることも可能といえます。

(2)「怒り」と向き合う(アンガーマネジメント)

「アンガーマネジメント」とは、怒る必要があれば上手に怒り、そうでない場合は怒らずに済ませる技術です。怒りをコントロールするには「6秒待つ」「感情を記録する」などのコツがあります。
また、上手に”怒るコツは、相手に対するリクエストは何かを明確に伝えることといわれています。「ちゃんと」「しっかり」という曖昧な言葉を避け、具体的な言葉で要求を伝えることがポイントです。結果と行為、振る舞いについては怒ってもOKですが、性格、人格、能力について怒るのはNGということも意識したい点です。

(3)「意志」を貫く

苦しい場面や葛藤する場面に遭遇した際、それを乗り越える時に発揮される力が意志力です。具体的な意志力として、目の前の誘惑や衝動的な欲望を抑える「セルフコントロール」と粘り強く情熱を持って最後までやり抜く力、「GRIT」などが挙げられます。つまり、短期的、衝動的な欲望をその都度管理するのが「セルフコントロール」、長期的に目標管理をしていくのに必要なのは「GRIT」だといえます。
どちらも目標を設定し、研鑽し合う環境に身をおけば強化が望めるといわれています。具体的に意志力を鍛えるには、姿勢を正したり、スマートフォンを見ないなど、「衝動を抑制する行動を日々繰り返す」ことなどが有効です。

(4)キャリアをデザインする

「人生100年時代」において、自律的にキャリアをデザインするためには、まず「なりたい姿」や「ありたい自分」を見つけることが最初の第一歩となります。そのためには、①自分自身を客観視し、②内省を深め、③学びへとつなげなければなりません。企業の枠を超えた「越境学習」への参加などによって、自身の専門性、強みや弱みを見出す機会を創出していく必要があるでしょう。
また、100年生きるということは、これまで受けてきた教育や知識も、いずれは陳腐化していくということです。そのためにも、リカレント教育などによる学び直しを行い、知識のアップデートを図るとともに、情報リテラシー能力を高めていくことも必要でしょう。いずれにせよ、自身のライフステージにおけるキャリアデザインは、今後ますます求められることは必至であると考えられます。

※月刊 人材教育(JMAM) 2016年12月号「日本企業に今、必要な“我慢する技術”」をもとに解説

まとめ 従業員のセルフマネジメント力を高める支援を

「人生100年時代」においては、企業と従業員の双方でキャリアを考えていくことが大切だといえます。そこで人事部門としてできることは、節目となる35歳、45歳、役職定年時などでキャリアを考える機会を提供することが挙げられます。なお、キャリアへの意識づけは、中堅やベテランになってから始めるのではなく、若年層から始めていくことが望ましいです。また、従業員が必要とするときにセルフマネジメントを行うための知識・スキルを習得できる環境を整備することも重要です。
しかし残念ながら、こうした問題に「正解」はありません。最終的には企業がいかに社員に寄り添ったキャリア形成の施策や教育を実施・提供できるかにかかってきます。そのためにも、人事担当者自身が学び直しや知識のアップデートを行いながら、自身の経験を通した、社員にとって最適と思われる施策を生む出すことが求められているとも言えるでしょう。
また、怒りや逆境に立ち向かうような感情を抱いた時に重要なポイントのひとつは、“客観視”です。感情の渦に流される前に、自分の感情に冷静に向き合うことができます。セルフマネジメント力は、すべて高めることができるものです。ほんの少し意識したり、書き出したりといった小さな習慣を積み重ねていくことで、ネガティブな感情を自分でマネジメントできているという実感が得られ、大きな自信になります。そのような経験を重ねることで、あえて苦手だと感じるような人と付き合ったり、困難だと思える仕事にチャレンジしたりすることができるようになり、結果、自身の成長につながるといえます。