採用
企業を取り巻く環境は、AI(人工知能)やデジタル技術の革新、あるいはパンデミックなどで大きく変化し、採用面接もオンライン化が一気に広がりました。採用のミスマッチを防ぎ、自社が期待する人材へと成長していくために、これからの採用戦略で押さえたいポイントを紹介します。
いま、こんな課題はありませんか?
- 面接だけでは把握しにくい、基礎的な資質を把握したい
- ポテンシャルがある人を採用したい
- 自社でパフォーマンスを発揮する人を採用したい
- 採用のミスマッチはなるべく避けたい
- 採用時のデータを入社後も育成に使いたい
取り巻く環境・変化 大卒新卒採用の歴史とこれから大切なこと
■大卒新卒採用の開始
大卒新卒採用の歴史(※)を紐解くと、日本に大学という教育機関が誕生したのは1870年代。日本で初めて求人広告が掲載されたのは1872年の7月14日とされており、1879年には三菱などの実業界が学卒の新入社員を定期的に採用し始めたといわれています。旧財閥系企業を中心に学生の採用が始まり、新卒一括採用方式が本格的に広まったのは、第一次大戦後の1920年頃。国家主導の新卒採用の中、各企業での高給引き抜きなどが進み始めたこともあり、政府は、1940年に初任給の一律化を断行。それまでは卒業大学によって大きく異なっていた初任給格差もこの時に一律化されました。
■自由応募の急拡大
戦後の混乱が一段落し、自由応募が急拡大するのは1960年代後半のことです。理系のみならず文系学生の多くも、大学からの推薦によって就職を果たしていたが、1968年に本格化した大学紛争のあおりで、大学当局は就職指導などに対応できなくなり、学生は自力で就職先を探さなくてはならなくなりました。いわゆる会社訪問の始まりです。その後、オイルショックによる不景気でいったん採用活動は停滞するものの、1986年施行の男女雇用機会均等法により、大卒女子の活躍範囲が大きく広がりました。そして、バブル景気に突入してからは主要企業の採用数は激増していきます。大卒採用市場は超売り手市場となり、上位校の大学生には、多くの会社から引き合いがかかる状況となりました。
■就職氷河期への突入と採用ミスマッチ防止
しかし、バブル崩壊とともに一気に就職氷河期を迎えることになります。企業は採用数を大幅に抑制し、質にもこだわり始めました。優秀な人材が採用できなければ採用予定数を満たさなくても致し方なし、という厳選採用時代が始まりました。この頃から採用選考手法としてエントリーシートが誕生し、面接が重視されるようになりました。自己PRと志望動機を明確にし、伝えることのできた学生だけが狭き門をくぐれるようになり、自己分析の必要性が叫ばれるようになりました。また、同時期に「就職支援サイト」が登場したことで、就職活動はクローズドなものから、誰でも好きな会社に応募できるオープンなものに変わっていきました。また、2000年頃にはインターンシップが広がり始め、近年ではリファラル採用、逆求人型サイト、新卒紹介など学生と企業が様々な手段でつながる機会が増え、お互いの入社後のミスマッチが起こらないように工夫が凝らされています。
■「就活ルール廃止」とオンライン採用の普及
その一方で、1997年に経団連が倫理憲章を制定以降、定期的に指針やルールが見直されることもあり、採用戦線は混乱を極めた状態となっています。2018年10月に経団連が「就活ルール廃止」を発表、以降は政府主導の新ルールに基づき進めることが決定しています。
採用活動解禁などのスケジュールに関しては、2021年度卒の新卒入社学生は大学3年生の3月に企業説明会、4年生の6月に採用面接、10月に内定がそれぞれ解禁される現行日程を維持することが正式決定となっています。
しかし、新型コロナウイルスの影響により、新卒採用数の減少やオンライン面接含むデジタル技術の革新が加速することが予測されます。従来とは異なる採用活動が学生側、企業側双方に求められていく中で、企業の採用・育成担当者としては今まで以上に自社が求める人材像を明確にし、それを軸にした採用計画を立てる必要性に迫られているといえます。
※リクルートワークス研究所『「新卒」採用の潮流と課題(2010)』を参考に作成
ポイント解説 適性検査の種類と人材の特徴変化
適性検査など人材の特性をとらえる客観的な検査を組み合わせ実施することにより、情報量を増やし、面接の質を高めることが採用でのミスマッチを減らしていくためのポイントといえます。以下では採用試験で使われる適性検査の種類や学生の特徴変化などを紹介します。
(1)採用試験で使われる主な適性検査の種類
新卒や中途の採用試験でよく使われる手法の特徴をまとめたものが下記です。
オンライン面接等を補完するために確認したい側面と、その検査手法の特徴も視野にいれて検討することが大切です。
(2)人材の特徴変化
JMAMで行っている適性検査(V-CAT)の集計結果によると、最近の傾向として、“まず、自分を認めてもらうと伸びる”人が増えています。以前は“自分なりの価値観がしっかりしていたため、まず自分の価値観を大切にしてもらうと伸びる”人が多くみられましたが、傾向が変わってきています。そのため、新人の早期育成に向けては、配属された後、OJTリーダーや上司は、一人ひとりの特徴を捕らえ、新人にあった育成の仕方をすることが大切になります。
(3)採用のミスマッチをなくすために
採用試験で合否を決めたり、配属を考える際には、まず下記のようなやり方で求める人材の特性を明らかにして、そのような特性の判断に役立つ適性検査を用いることが大切です。
①経営層や部門長から“求める人材像”をヒヤリングし、採用人材として望ましい特性を明らかにする
②自社で高いパフォーマンスを発揮している人材の特性から、採用で求める人材の特性を明らかにする
成長支援の方向性 押さえたい「設計」と「成長支援」のポイント
企業を取り巻く環境は、AI(人工知能)やデジタル技術の革新、あるいはパンデミックなどで大きく変化し、採用面接もオンライン化が一気に広がりました。
オンライン面接の利点として、企業にとって、海外や地方の優秀な人材と面接しやすい点や、従来よりも低コストで運営できる点が挙げられます。受験者にとっても移動の時間と費用がかからない等の利点があります。一方で、オンライン面接の場合、ネットワークの問題もありますが、対面の面接よりも情報量が落ちることなども考えられます。大切なのは「育成」を念頭においた採用活動をおこない、入社後のスムーズな成長につなげることです。そのために望ましい設計方法などについて紹介します。
選考設計
ミスマッチ採用を減らす選考設計として以下のような視点をとらえることが重要です。当然のことながら以下のステップに一貫性を持たせることが大切です。
(1)業務や企業文化
業務内容・企業文化・組織の状態はどうかなのかをきちんと整理することが大切です。これにより、企業や組織のありたい姿を明らかにし、長期的な視点で必要な人材の要件を具体的にすることにつながります。
(2)人材要件
企業や組織のありたい姿を整理した後は、その姿に近づくために必要な人材要件(スキルや特性など)は何かを具体的に落とし込む必要があります。これにより、自社において課題となっているスキル以外の項目も洗い出すことが可能となります。また、この段階で採用時に何を測るかを整理することも重要です。具体的には「保有」と「発揮」の観点から整理し、先天性が高く、習得に時間を要する保有能力などを、どう選考過程で把握していくかを考えることが大切です。
(3)期待行動
人材要件に加え、具体的には、どのような行動ができていればよいか(期待しているか)を明らかにすることが大切です。これにより、面接時に受験者が応えている経験(行動)が自社の期待する要件に類似しているかを確認することが可能となります。
(4)選考方法
人材要件や期待行動を可視化した後は、期待する人材要件を、どの段階で、どう見立てるかを考えていきます。前述の「適性検査の種類」などを踏まえ、自社にとって効果的な組み合わせをおこなうことで、客観的、具体的な人物像の把握につながるといえます。
成長支援
採用選考を終えた後は適性検査結果を上司やOJTリーダーへ共有し、対象者の成長支援を現場と連携して進めていくことが大切になります。
前述のとおり、まず自分を認めてもらうと伸びる方々が増えていることから、適性検査結果のなかで、人材育成に役立つような個人の特性部分は、上司やOJTリーダーへ共有していくことが、新人の成長を早めるといえます。また、その際に上司やOJTリーダーに、できれば同じ適性検査を受けてもらい、自分の特徴を理解した上で、新人に関わることができると、より効果的になります。
まとめ 科学的に測ることが成長支援の起点になる
経営環境の変化が激しい時代、採用手法は効果的、効率的に進められることが求められています。コロナ禍により採用活動にもWeb適性検査やオンライン面接などが急速に拡大してきました。しかし、採用人材を見極めるために、オンライン採用の良さは積極的に取りつつも、採用プロセスの過程でどこかでは、一度直接会う機会を設けるなどの工夫を考えている企業も多くみられます。その際に、客観的に測れる適性検査を用いると、採用人材を知るための情報が格段に増えますし、面接で一歩踏み込んだ質問をすることで人材の特性をより明らかに把握することもできます。
直接的なコミュニケーション機会が減っていくことが予想される中、採用活動はもとより入社後の成長支援の観点でも一人ひとりを科学的に測ることは、効果的な採用・育成活動をおこなっていくためにも重要な要素となっていくといえます。
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