内定者

内定辞退や早期離職防止、そして入社後の教育や成長をスムーズにおこなうためにも内定者教育も含めた内定者フォローは重要な施策となります。内定者フォローが与える影響や効果はどのようなものか。内定者同士のコミュニケーション機会を増やすこと留まらず、採用・育成担当者として押さえたい成長支援のポイントについて紹介します。

いま、こんな課題はありませんか?

  • 辞退者を出さず、全員に入社してもらうために内定時期からしっかりとフォローをしていきたい
  • 次年度の採用活動と平行しながらの活動となるため、効果・効率的に内定者フォローができる状態にしたい
  • モチベーション低下や早期離職を防ぐために企業理解や内定者教育を充実させたい
  • 内定式や懇親会はおこなっているが、入社前研修として社内でできる何か面白い企画や教育をしたい
  • 新人研修の効果を高めるために、内定段階から最低限の教育を実施していきたい

取り巻く環境・変化 採用活動の歴史からみる内定者フォロー

従来の採用手法は、企業と大学との関係構築を前提に運営されていました。しかし、1995年頃に就職支援サイトが登場したことで、就職活動はクローズドなものから、誰でも好きな会社に応募できるオープンなものに変わっていきました。また、2000年頃にはインターンシップが広がり始め、近年ではリファラル採用、逆求人型サイト、新卒紹介など学生と企業が様々な手段でつながる機会が増え、お互いの入社後のミスマッチが起こらないように工夫が凝らされています。その一方で、1997年に経団連が倫理憲章を制定以降、定期的に指針やルールが見直されることもあり、採用戦線は混乱を極めた状態となっています。

●入社後のミスマッチを引き起こしやすくなった理由
採用活動の歴史は前述のとおり、1995年頃を境に大きく2つの時代に分けられます。就職支援サイトを通じた活動が本格化する前は選考活動の期間はせいぜい1~ 2カ月程度で、企業側の学生へのアプローチはリクルーター活動である程度母集団を絞った活動が中心でした。その後インターネット経由での募集が主流になると、就職人気企業を中心に学生のエントリーが集中し、各社は母集団形成に苦慮することになります。一方で、学生たちも気軽に応募先企業へエントリーができるようになったため、応募企業の関心度、理解度は必ずしも高くなく、結果的に入社後のミスマッチを引き起こす原因にもなりました。企業側も時代に合わせて受入れ体制を柔軟に変更したりしていますが、採用・内定・導入研修は密接に関連してくる施策のため、各社ごとで進め方に課題が生じているのが実態です。

●内定に対する考え方とフォローの重要性
内定に対する考え方も変化しています。バブル期頃の採用活動と比較して、現在の就職活動は複数の内定を保険に継続して活動をすることが前提となっているといえます。バブル期は、企業への内定辞退をするということに対して、大学の学生課から「後輩のために辞退は避けて欲しい」という無言のプレッシャーがあり内定辞退は神経を使う行動でした。一方で、現在はエントリーできる企業は格段に増えたものの、採用活動自体が短期決戦のため、採用活動スケジュールが重なりやすく、志望企業をいくつも掛け持ちできない状況となっています。そのため、学生としても内定を貰いながら、就職活動を続けることが前提の意識になっているといえます。
こうした背景もあり、各社は内定辞退や入社後のミスマッチができるだけ生じないように、内々定の段階から定期的に懇親会などを通じて入社予定者との接点を持つことや必要最低限の教育実施をおこなうなど、手厚い内定者フォローがおこなわれるようになってきているといえます。

受入れ体制の変化
現在の採用活動は、複数の内定を保険に、継続活動することが前提

ポイント解説 内定者フォローが与える影響

内定者フォローとは、内定から入社日までの期間に学生とコンタクトを取り、学生と企業のつながりをつくるための支援活動です。就活ルールは2020年卒までは経団連が定めていましたが、2021年卒から政府が主導することになりました。このルールは企業への強制力がある訳ではないため、再び企業の面接開始も内定開始も大幅に早まってきている状況です。このような状況から、内定から入社までの間、学生と何の接点も持たずにいると内定辞退につながりかねないこと、またこの期間を教育のために有効利用したいと考える企業が増えたため、内定者フォロー(内定者教育)が強化されてきています。
今日では従来から行われていた懇談会の他、eラーニングや通信教育、インターンシップなどで社会常識や業務の基礎を身につけてもらうことが増えています。実際に、弊社でおこなった「イマドキ若手社員の仕事に対する意識調査2020」においても、2020年入社者の8割近くが、内定者期間に会社から内定者教育として、個人学習(通信教育・eラーニングなど)や集合研修の提供があったと回答しています。また、この調査結果で注目する点は内定期間中の教育が手厚いほど、「会社から受けた教育や支援によって、入社後の不安が解消されたり、期待が高まった」「会社から与えられた課題以外に自主的な学びをおこなった」という回答割合が高くなっていることです。その意味では手厚い内定者フォローは、入社予定者の不安解消・期待向上や自主的に学ぶ意欲に好影響であり実施効果が高いといえます。ただし、大学の中には学業に支障ない範囲・方法での展開を希望する声もあるため、進め方には工夫が必要です。

内定者フォローが与える影響

成長支援の方向性 内定者フォローで押さえたいポイント

内定・入社導入時期の「意識」や「行動」は社会人としての1歩を踏み出すためにとても重要になります。まずは、会社理解を深めるための「企業理念や職場雰囲気の共有」や、期待される「仕事の基本要素」を体系的に理解することがポイントです。また、導入研修後の配属を見据え、現場側にも継続的にその仕事の基本要素などを磨ける仕組みをつくっていくことが望ましいといえます。具体的には、以下のようなポイントや達成状態にしていくことが重要です。

<押えたいポイント>
(1)期待する人材像(若手社員としてのゴール)を明示する。
(2)社会人として必要な「仕事の基本要素」を体系的に身につけるための機会を提供する。
(3)新入社員が、自分自身の課題に気づき、配属後も自発的に経験を通じて成長していく意識を持てる状態まで引き上げる。
(4)仕事の基本要素を年間通じて繰り返し確認できる教材(通信教育やeラーニングなど)を提供するなど、本人が自発的に学習できる最低限の環境を整える。

<達成状態>
(1)社会人としての自覚を持てている。
(2)仕事の基本要素を体系的に理解している。
(3)配属後に、自分自身が克服していくべき課題が見えている。

まとめ

新型コロナウイルス感染拡大防止策に伴い、2020年入社の新入社員研修以降、2021年新卒採用計画の大幅見直しや、選考や研修のオンライン化など、内定者・新入社員に関する各種活動は大きな見直しを迫られました。特に2021年入社者に関しては採用活動、内定者フォロー、そして新入社員研修まですべてオンライン対応の企業もあり、対面接触がほとんどない状態で学生から社会人へと移行するケースも出始めています。
前述のとおり、内定者フォロー(内定者教育)は接点頻度や教育の手厚さにより内定辞退防止はもちろんのこと、本人の自主的な学ぶ意欲の向上や入社後の育成をスムーズにおこなうことができるなどの好影響をもたらします。
新卒採用において内定を出して終わりにするのではなく、内定期間から長期的な成長支援モデルを描き、入社後を見据えた教育設計をしていくことが求められます。