人事制度構築

働き方改革の推進や雇用形態(副業・複業など)にあわせて人事制度の設計・構築や運用を見直したいニーズは高いものの、その着手は容易ではありません。制度構築が目的ではなく、形骸化せずに現場で運用されていくために、人事部門として押さえたい人事制度の歴史や見直しのポイントをご紹介します。

いま、こんな課題はありませんか?

  • ビジネスを取り巻く環境が激変し、経営価値の向上、戦略の実現と連動した人事戦略をたてたい
  • 人事制度をどのような観点から検討すればよいのか、ポイントを知りたい
  • ライン部門の成果創出や、従業員の個別多様なニーズに対応ができる制度を設計・運用したい
  • 雇用形態(副業・兼業など)が多様化する中で、どこまで人事制度を見直せばよいのかを知りたい
  • ニューノーマル時代の働き方にあった人事制度や評価制度に変更したい

取り巻く環境・変化 人事制度・施策の変遷

●戦後から高度経済成長期を経てバブル崩壊まで
戦後の復興期を経て1960年代の高度成長期、人事評価は年功序列で、継続して勤務することによってポストが与えられ昇進し、報酬も上がっていくというものでした。人事の仕事はというと、労務管理的な色彩が強く、従業員個人に対して「いち労働力」としての最大利用を求めるという考え方が主流でした。

●1990年代半ばから2000年頃まで
このような仕組みは、1991年頃にバブル経済が崩壊し低成長の時代が長続きするようになると、だんだんと変化していきます。大きく変わったのは能力主義から成果主義への移行です。職務による社員格付の資格制度の導入や、成果給・業績給といった成果反映型の賃金、年俸制を導入する企業も増えていきます。そして、成果主義を軌道に乗せるために、目標管理がひとつのマネジメント手法として導入されます。

●2000年代
2000年代に入り成果主義が定着すると、その反動で組織的な成長を妨げているという課題が浮かび上がってきます。その見直しとして、コンピテンシー(行動特性)評価や360度評価の実施、役割・職務資格制度などが導入され、組織目標のつくり方についての議論も行われるようになります。またこの間、拠点の海外進出や外国籍の人材の登用に関連して、グローバル人事やダイバーシティ&インクルージョンといった考え方も定着していきます。

●2010年代から今日まで
2010年以降の人事制度や施策は、働き方の多様化や子育て世代の支援、ワークライフバランスといった考え方から、より「個人」に配慮したものとなっていきます。また、コロナ禍に端を発したテレワークの急速な普及とニューノーマルに対応した人事制度や施策の整備も急がれるなど、以前にも増して急速な世の中の流れへの迅速な対応が求められるようになってきています。

ポイント解説 人事戦略と人事制度

●人事戦略を立てるステップ
人事戦略とは、人事部門が行う主要な活動について、日常的な活動を推進する際の指針のことです。今日では、人事戦略は会社の将来を左右する経営戦略と密接にかかわるものとして、以前にも増して重要視されるようになってきています。
人事戦略の策定にあたっては、①経営戦略と事業展開に見合った形で、②労働市場の変化やグローバルな事業展開、市場の変化、技術革新やDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応、ジョブ型雇用やメンバーシップ型雇用の検討といった、経営環境の変化に的確に対応することが求められます。さらに、③経営戦略に応じて、人にかかわる現状の問題点や課題を抽出し、それをどう変革していくかという視点も重要です。
人事戦略は、これらの3つのステップを踏まえつつ、その内容には、基本方針、要員計画、人事・賃金諸制度のあり方、労働条件決定基準、労働時間施策、人材開発施策、福利厚生施策、社内活性化施策、安全衛生施策、労使関係施策、就業管理施策などが盛り込まれます。

●人事評価制度の重要性
会社が従業員に対して適正な評価と処遇を行うことは、基本的かつ重要な意味を持ちます。もし不公平感や納得の得られない処遇が横行すれば、従業員のモチベーションや帰属意識は低下し、会社に不信感を抱くことになるでしょう。人事制度の設計は、公平性と合理性を担保すると同時に、運用にあたっては、適正で高い透明性が求められるのです。
人事制度の主なものとしては、まず、従業員を何らかの基準で序列付けをして基本的な処遇条件を決定するための格付制度があります。これに対応する形で管理職制度・専門職制度、コース別人事制度等がつくられますが、これらの制度の運用の基礎となるのが人事評価制度です。また、従業員のスキルや能力の向上に資する人材開発体系や、福利厚生制度も必要になります。

成長支援の方向性 自社の人材戦略を立てる際に押さえたいフレームワーク

激しいスピードで刻々と変化する今日の社会経済情勢に対応した人事制度や施策を構築・運用していくためには、しっかりとした人事戦略の策定が欠かせません。人事戦略の策定にあたっては、下表のフレームワークの各項目を自社に当てはめながら現状と課題を可視化することが大切です。

フレームワークの内容

まとめ 各種人事制度を運用・定着化させるために

人事部門は、経営活動にかかわるすべての「人」に関する問題を取り扱う重要な部門でありながらも、「人が人を評価する」というきわめて曖昧で難しい要素を含んでいることが特徴です。そのため、人事制度の設計・構築・運用は慎重に進めていく必要があります。人事制度の設計・運用にあたっては、人事サイドの観点だけではなく、ライン部門や従業員個々人が実際に活用しうるものかという目線で考え、これらの人々も参画しながら全体を作り上げるという視点をもつことも大切になるでしょう。また、人事評価や人材開発といった人的資源管理活動のプロセスにおいて、心理学的なアプローチを取り入れる場合もあります。これらを踏まえながら、自社における諸課題に対応した人事戦略の策定や人事制度の設計・構築・運用が求められているといえます。