業務改善・働き方改革

働き方改革とは「働きやすさ」と「働きがい」の両立をめざす活動です。そのためには、従業員一人ひとりの意識と行動を変えていくことが必要となります。在宅勤務などのテレワークが進む中で、改めてこの改革を再考するためにはどのような観点が必要なのでしょうか。働き方改革の概要説明はもちろんのこと、社員の成長支援の側面からポイントをご紹介します。

いま、こんな課題はありませんか?

  • 働き方改革のめざす姿と施策を浸透させ、一人ひとりが前向きに実践できる風土や環境をつくりたい
  • 働き方改革を推進する部署や担当者が存在せず、業務改善が各職場まかせになっている現状を変え、全社的な取り組みにしたい
  • 業務改善を通して、現場の困りごとや無駄な業務を減らし、生産性を高めたい
  • 制度新設やITツール導入での業務改善にとどまらず、組織風土や個人の意識、仕事の進め方の変化へと発展させたい

取り巻く環境・変化 なぜ、働き方改革が求められるのか

働き方改革は、日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「働くニーズの多様化」などの課題に対応したもので、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できることをめざした改革です。
2017年3月、政府は「働き方改革実行計画」をまとめ、「長時間労働」「正規、非正規の不合理な処遇の差」「単線型の日本のキャリアパス」の3点を主要な課題ととらえ、具体策を講じることになりました。続いて、2019年4月には、働き方改革関連法案が施行され、「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」を軸に、主に下表の改正が実施されました。働き方改革は、日本経済の再生のカギを握り、働き方の根幹に関わる改革のため、政労使が一体となって取り組むことが求められます。

働き方改革関連法の概要

ポイント解説 働き方改革を前進させる3つのポイント

働き方改革を前進させるためにはハード・ソフトの両面から取り組みをおこなう必要があります。ここでは、大乗的な施策含め3のポイントを紹介します。

(1)業務改善

働き方改革が、企業の成長戦略としても、従業員の人材育成としても要となる今、具体的な業務改善に向け、どのような施策を打てば効果的なのでしょうか。ポイントは、自社の課題を洗い出し、働き方改革・業務改善の目的を明確に定めることです。働き方改革の領域は、長時間労働の是正ばかりでなく、「生産性向上」「ワークライフバランス」「多様な人材活用」など、多岐にわたります。そのため、目的を定めずに手当たり次第に施策を打っても的外れに終わり、自社の課題解決にはつながりません。下表を例に、自社で優先する目的を整理し、それぞれに対する施策をたて、具体的なKPI(数値)を設定してみましょう。

働き方改革・業務改善の目的と施策の例

働き方改革は、目的を定め、制度を整えただけでは推進されません。働き方改革の主役は、従業員一人ひとりなので、それぞれが高いモチベーションを保ち、自主的の取り組む必要があるからです。
従業員のモチベーションを高めるカギになるのがトップメッセージです。働き方改革は、残業制限、短時間勤務、テレワークなど、これまでの働き方そのものを見直す施策が含まれます。ときには、今までの仕事に対する考え方を改め、価値観を転換することが求められます。社員一人ひとりの意識改革が必要になるため、トップリーダーが方向性を打ち出し、進むべき道筋を明確に示さなければ、社員は不安な状態に陥り、モチベーションも上がっていきません。
ただし、働き方改革・業務改善を持続的に進展させるためには、トップメッセージだけでは不十分です。働き方改革・業務改善は長いスパンにわたって改善していく施策が多いため、社内の風土として根付かせなければ、一つひとつの取り組みが中途半端に終わりかねません。そのため、制度を見直すごとに全社員に対して周知徹底をはかり、定期的に情報発信することが重要です。

働き方改革の実現

(2)デジタルトランスフォーメーション(DX)

2020年4月7日、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、政府は「緊急事態宣言」を発出。3密(密集、密室、密接)を防ぐために在宅勤務が推奨されたことで、業務のデジタル化、テレワーク化が急速に進みました。それに伴い、通勤を前提とした働くスタイルは一変し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を取り入れなければ、働き方改革は進められなくなりました。企業が率先してITテクノロジーを活用することで、「残業ゼロ」「通勤しない」「仕事と家庭の両立」「副業や兼業」など、これまで手が付けづらかった働き方改革の施策が進むようになったのです。デジタルトランスフォーメーションは、今まで当たり前とされていた働き方を変えるムーブメントとなりつつあるのです。

(3)健康経営

もう1つのキーワードは「健康経営」です。働き方改革は、業務の効率化や生産性向上などに目が向きがちですが、それらを支えているのは「人」です。従業員の体調に配慮した「健康経営」を重視した働き方改革でなければ、社員は心身ともに健康を害し、ひいては生産性に影響を及ぼします。働き方改革と健康経営をセットで進めることで、企業の社会的評価も高まっていきます。

成長支援の方向性 働き方改革を教育の観点から考える

働き方改革を新たなフェーズへと導くカギになるのが教育です。平均寿命が延び「人生100年時代」といわれるなかでは、定年という概念も見直されてきています。労働市場に現役でいる時間が長くなると、知識やスキルは常にアップデートが必要になるため学びの重要度は増します。また、ITリテラシーが低い従業員は、テレワークを前提とした働き方についてこられないことも考えられます。これからはますます、従業員一人ひとりの学びをサポートするための組織的なフォローが欠かせなくなります。企業が従業員の教育体制の整備を従前にも増して推進することで、働き方改革はさらなるステージへと導かれるのです。

働き方改革のための教育

まとめ

新型コロナウイルスの感染防止策として働く環境の多様化が急速に進みました。同時に、多くの企業が働き方改革の重要性を再認識するきっかけにもなりました。社会全体で働き方を見直す取り組みが進む中、従業員の健康確保を前提に、労働生産性やエンゲージメントを高め、期待するパフォーマンスを最大化するための取り組み策が推進部署や人材育成・教育部門に期待されているといえます。