リーダーシップ
「リーダーシップ」という言葉を聞いて、真っ先に思い浮かぶ人物は誰でしょうか。アメリカ公民権運動の指導者であるキング牧師、非暴力でインド独立を導いたマハトマ・ガンジー、アマゾン・ドット・コムを率いるジェフ・ベゾス…など、人それぞれに思い浮かぶ人物は様々でしょう。 時代によりリーダーの代名詞は変わりますが、洋の東西を問わず、人々を率いるリーダーのあり方は関心を持たれ続けてきました。JMAMの近刊『これからのリーダーシップ』(堀尾志保・舘野泰一著)では,「最も研究されているけれども、最も解明が進んでいない領域」(Bennis & Nanus, 1985)ともいわれるリーダーシップ論に関し、これまでの研究の転換点、最新の研究潮流と合わせて、リーダーシップの発揮・教育に向けた具体的な実践方法を紹介しています。
いま、こんな課題はありませんか?
- 今の時代にフィットしたリーダーシップ像や、最新の理論を知りたい
- リーダー人材を育成したい
- リーダーシップの高め方を知りたい
- 役職の有無を問わず、社員一人ひとりにリーダーシップを発揮してもらいたい
- 先進の企業や大学で、どのようなリーダーシップ教育が行われているかを知りたい
環境変化とリーダーシップ研究の変遷
リーダーシップとはいかにあるべきでしょうか。その考え方は、これまで時代や経営環境の影響を多分に受け、変遷してきました。リーダーシップ研究の転換点を概観することは、リーダーシップの本質や新たな時代に求められるリーダーのあり方を考えるうえでたくさんの示唆を与えてくれます。
リーダーシップ研究の変遷は、大きくは、5つの流れで区分することができます。
(1)特性理論
最初のリーダーシップ研究は、紀元前にまでさかのぼります。国を率いている政治家や軍人など、いわゆる偉人といわれる人材に共通する「特性」について,思想家や哲学者が、自身の見解を述べたところからリーダーシップ研究ははじまりました。このようにリーダーの「特性」に着目した理論は「特性理論」と分類されています。
(2)行動理論
次に,研究者たちが着目したのはリーダーの「行動」でした。第二次世界大戦後は、軍や国家のためだけではなく、産業面の活性化のためにも多くのリーダーが必要とされていました。こうした背景もあり、企業でリーダー役を担うことになった人材に望ましいリーダー像を示すことが求められていました。優れたリーダーの行動面に着目した理論は「行動理論」と呼ばれています。
(3)状況適合理論(コンティンジェンシー理論)
1960年代から1970年代にかけては、「状況」の違いに着目した研究が増えていきました。なぜなら、リーダーが必要とされる「行動」を実践できていても、うまく機能するケースとそうでないケースが見られるようになったからです。こうした「状況」の違いに着目した理論を「状況適合理論」と呼びます。コンティンジェンシー理論、条件適合理論と呼ばれることもあります。
(4)交換理論
1970年代に入ると、リーダーシップはリーダー個人のものではなく、リーダーとメンバーの間に交換されるものがあるからこそ生じるものだ、という発想がなされるようになりました。リーダーとメンバーの交換関係に着目したこうした理論は、「交換理論」または「交流型リーダーシップ理論」と呼ばれています。
(5)変革型リーダーシップ理論
1980年代に入ると、経営環境が激変し、多くの企業が、従来のように決められたことを決められたやり方で行うだけでは持続的な成長を見込めなくなりました。そこで、注目を集めたのが組織変革を推進できる経営トップの強力なリーダーシップでした。「変革を成し遂げるリーダーの特徴」を明らかにすることを試みたこうした理論を「変革型リーダーシップ理論」と呼びます。
リーダーシップ研究の新潮流
1980年代前半までのリーダーシップ研究では、いずれの理論においても、リーダー個人の「あるべき像」がもっぱら追求されてきました。それに対して、1980年代以降は新たな視点でのリーダーシップ研究が進みます。
『これからのリーダーシップ』、第1部 理論編の第2章では、「リーダーシップの新潮流」を詳細に解説しています。第2章は次のような章立てになっています。
●第2章
1.優れたリーダーへと育つプロセスに着目したリーダーシップ開発論
1−1.リーダーシップはいかに育まれるか
1−2.リーダーシップを育む「経験」
1−3.リーダーの「意識」の発達
2.グループ全体で発揮する集合的リーダーシップ
2−1.リーダーシップは公式のリーダーだけのものではない
2−2.シェアド・リーダーシップ
2−3.コレクティブ・ジーニアス
2−4.DACフレームワーク
2−5.集合的リーダーシップが機能する条件
3.変わりゆくリーダーとメンバーのあり方
3−1.公式なリーダーとメンバーに求められるあり方の変化
3−2.サーバント・リーダーシップ
3−3.オーセンティック・リーダーシップ
3−4.非役職者によるインフォーマル・リーダーシップ
3−5.リーダーシップ研究の新潮流のまとめ
リーダーシップ研究では新潮流による研究が次々と芽生えはじめています。では、新たなアプローチでのリーダーシップ教育は、どのように推進していったらいいでしょうか。『これからのリーダーシップ』では、第2部 実践編にて、先進した取組を行っている企業、大学の実際の教育事例と実践のためのポイントを解説しています。
●第3章
1.リーダーシップ教育が求められる背景
1−1.企業を取り巻く環境の変化
1−2.教育機関で行われるリーダーシップ教育
1−3.リーダーシップ教育の重要性
2.リーダーシップ教育の枠組み
2−1.リーダーシップ教育とは
2−2.リーダーシップ教育の教育目標とは
2−3.リーダーシップ行動とは
3.リーダーシップ教育の手法
3−1.リーダーシップ教育の体系
3−2.経験学習型リーダーシップ教育の設計
3−3.本節のまとめ
4.リーダーシップ教育の評価
4−1.評価に関する研究の現状
4−2.経験学習型リーダーシップ行動尺度
4−3.リーダーシップ教育の評価に関する実践
4−4.評価における今後の課題
5.本章のまとめ
●第4章 事例紹介
・CASE1 IBM
(企業でのリーダーシップ教育事例)
・CASE2 ジュピターショップチャンネル
(企業でのリーダーシップ教育事例)
・CASE3 立教大学経営学部BLP(Business Leadership Program)
(大学でのリーダーシップ教育事例)
・CASE4 クレディセゾン 志賀正樹さん
(個人のリーダーシップ発揮事例)
リーダーシップ研究の新たな理論
リーダーシップ研究においては、新たな理論が次々と生まれています。これらの潮流をまとめると次のように整理することができます。
まず組織がめざす方向性は、かつての1980年代の頃とは異なり、利潤の追求だけではなく、環境保全や貧困問題などの社会課題解決と事業性の両立へと大きくシフトしています。そして、そうした多様なゴールをイノベーティブな手法で実現していくために、リーダーシップのあり方は、役職者による個人の強力なリーダーシップだけではなく、役職についていない人も含めた、より多くの人材によるリーダーシップ発揮が期待されています。
その際、公式なリーダーは、自らが前面にたつリーダーシップだけではなく、メンバーがリーダーシップを発揮できるような「環境づくり」という面でのリーダーシップが求められ、メンバー側は、フォロワーシップの発揮だけではなく、「権限によらないリーダーシップ」の発揮が求められるようになってきています。そして、どのような立場にある人にとっても、リーダーシップを育んでいくためには、あるべき像をアタマで理解するだけではなく、経験を積み、カラダで体得していくアプローチの重要性が指摘されるようになっています。
権限によらず、
効果的にリーダーシップを発揮している人材の特徴
JMAMでは「インフォーマル・リーダーシップ」を発揮出来る人材、つまり、権限や役職の力に依存せず、人々の課題解決をもたらす新たな取組を多様な他者と連携しながら推進していける人材にはどのような特徴があるのかについても調査しています。調査を行った結果、インフォーマル・リーダーシップを発揮して活躍している人材には、「理想表現」「課題探究」「信頼構築」「連携開拓」という4つの特徴があることがわかりました。
JMAMではこれら調査をもとに、インフォーマル・リーダーシップを発揮して活躍できる人材育成のための教育活動にも取り組んでいます。
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