部下指導・OJT
働く価値観の多様化・複雑化、そしてテレワークなどの急速な普及により、働く場所や時間までもが大きく変化しています。この変化により企業における部下指導・OJTの在り方も変わりつつあります。では、育成担当者や上司は、どのようなポイントを意識して部下指導・OJTをおこなえばいいのでしょうか。そのポイントを紹介します。
いま、こんな課題はありませんか?
- 効果的なOJTの仕組みづくりを実現するためにポイントを整理したい
- テレワークが普及し、部下や後輩に対面での指導が難しくなり、効果的な方法を模索している
- 多様な価値観を持つ部下や後輩に対する指導法を知りたい
取り巻く環境・変化 時代とともに変わりゆく指導スタイル
今の時代に最適な部下指導・OJTの在り方を考える前に、時代背景を踏まえて部下指導・OJTの変遷を振り返ってみましょう。
1990年代、日本企業で急速に普及したのが成果主義です。成果主義人事制度のもとで、組織はフラット化し、マネジメント不在の状況が生まれました。短期的な成果が求められ、部下指導やOJTが手薄になった時期と言えるでしょう。2000年代になると、一転してこれまでのような成果主義が見直されるようになります。それに伴って部下指導やOJTに関しても、部下の力を引き出すコーチングなどのスキルに注目が集まるようになりました。コーチング研修が活発になったのもこの時期です。さらに2010年代には、OJTに代わる概念として、コーチングや上司・部下間での経験学習支援など、本人の気づきや自主性、主体性を重視する教育が主流になります。「教える教育」から、「気づき、導く教育」への転換と言えるでしょう。そして、2010年代後半から現在にかけて、ICTやテクノロジーを駆使して、ビジネスモデルやビジネスプロセスを変革し、優位性を確立するDX(デジタルトランスフォーメーション)の時代に突入します。チャットやメールなどの非対面コミュニケーションツールが主流となり、複雑な感情処理や感情移入の機会が減少しました。昨今のテレワークの普及で、この傾向はますます高まっていると考えられます。また、業務も高度化・複雑化し、リスクが大きくなったため、特に若手社員や新入社員は失敗することが許されない環境に置かれています。さらに、働き方改革をきっかけとした業務効率化や価値観の多様化、プレイングマネジャーの増加などによる指導育成時間の減少も見られます。今の若手社員や新入社員は、このような変化の大きい環境下にいるということを認識したうえで、最適な部下指導・OJTの在り方を考え、指導スタイルを工夫していく必要があります。
ポイント解説 部下指導・OJTのポイント
では、どのようなポイントを意識して部下指導・OJTをおこなっていけばいいのでしょうか。3つご紹介します。
(1)信頼関係を構築する
まずは、部下や後輩、新入社員と信頼関係を構築することが重要です。対話を通じて「心理的安全性」を高め、相互理解を深めることで、自ら学ぼうとする意欲や仕事に対する主体性が引き出されます。
(2)目標設定、目指す方向性を共有する
目標を明確に示し、組織の向かう方向性をすりあわせることが必要です。そのうえで、ゴールに至る過程を自律して考えられるように、成長段階に応じて関わり方を工夫するといいでしょう。
(3)一人ひとりの環境や特性に合った指導をおこなう
価値観や働くスタイルが多様化している中、画一的な指導はあまり効果がありません。「こうすれば成功する」といったセオリーも通用しなくなっています。一人ひとりの置かれている環境や特性について理解を深め、それに合った指導をしていくことが求められています。
成長支援の方向性 部下指導・OJTの進め方
以上のことを踏まえたうえで、部下指導・OJTの具体的な進め方を見ていきましょう。
成長段階に応じたアプローチをする
小刻みにゴール設定しながら、段階的に成長させることが効果的です。指導する側と指導される側でゴールのギャップが大きすぎると、指導される側が限界を感じてしまいかねません。成長段階を見極めながら、自ら挑戦したくなるような魅力的なゴール設定をしたいものです。3段階くらいにゴールを分けるのも望ましいでしょう。
まとめ 部下指導・OJTが効果的に機能する環境を整える
これまで見てきたように、部下指導・OJTを効果的に機能させるためには、押さえておきたいポイントがいくつかあります。ただし、指導担当者がポイントを意識して、指導力を上げるだけでは不十分です、部下指導・OJTの成果を上げるためには、直接指導する担当者だけではなく、管理者や職場のメンバー、人事・教育担当者など様々な関係者が連携することが不可欠です。特に企業の人事・教育担当者には、経験から学ぶサイクルが機能するような仕組みや教育機会を、現場と一緒になって作り上げることが求められています。多様化・複雑化する時代だからこそ、企業は長期的な視点を持ち、人が育つ環境を整備していきたいものです。
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