ビジネススキル

環境変化の激しい昨今において、企業が持続的な成長を遂げるためには、一人ひとりが、ビジネススキルを向上させ、成長し続けることが不可欠です。企業の人事・教育担当者には、社員が自発的にスキル向上ができる環境整備が求められています。そもそも、社会人に必要なビジネススキルにはどのようなものがあるのでしょうか。そのポイントをご紹介します。

いま、こんな課題はありませんか?

  • 組織で働く一人ひとりの課題や状態に合わせたビジネススキル教育をしたい
  • 組織として体系的にビジネススキルを向上させる機会を提供したい
  • 自発的に学ぶ意欲を持ってもらうために、多様なテーマの教育機会を提供したい

取り巻く環境・変化 多様化する教育ニーズ

人生100年時代と言われる中、どう生きるのか、いかにキャリアを築いていくのか、一人ひとりが問われています。不確実性と変化に対応するためには、自らの課題に応じたビジネススキルの向上を続けていくことが、これまで以上に重要になるでしょう。
一方、一人ひとりの抱える課題は、階層・職種・経験などが複雑に関連し合い、ますます多様化しています。これまでのような画一的な階層別教育では、現場の多様な教育ニーズに対応できなくなっているのが現状です。企業の人事・教育担当者は、組織として体系的にビジネススキルを向上させられるような環境を整備することが求められています。

ポイント解説 社会人に求められるビジネススキルの体系

では、ビジネススキルには具体的にどのようなスキルが含まれるのでしょうか。参考になるのが、ハーバード大学教授のロバート・カッツが提唱した「カッツモデル」です。マネジメントに必要なスキルとして、以下の3つを挙げました。トレンドに左右されず、マネージャー層以外にも通用する考え方ですので、ビジネススキルを体系化する際によく活用されています。

  • コンセプチュアルスキル

    概念化スキルや課題解決スキルと呼ばれるもので、複雑な事象を概念化することで物事の本質を見極めるスキルです。具体的には、「問題発見・解決力」や「ロジカルシンキング」、「企画力」などが該当します。 コンセプチュアルスキルは、階層が上位になるほど必要性が高まると考えられています。

  • ヒューマンスキル

    対人関係スキルと訳され、良好な人間関係を築いて目標を達成するためのスキルです。「リーダーシップ」や「コミュニケーション」、「ファシリテーション」や「コーチング」などが代表例です。 ヒューマンスキルは、階層に関わらず一定量必要なスキルだと言われています。

  • テクニカルスキル

    専門・技術スキルと訳され、ある特定の職務を遂行するのに必要とされるスキルです。財務会計やAIなど、職務によって必要とされるテクニカルスキルの内容は異なります。 階層の上位になるほど、テクニカルスキルの占める割合は低くなると言われています。

ビジネススキルカッツモデル

成長支援の方向性 ビジネススキル向上のアプローチ

上記のカッツモデルで挙げられた3つのスキルのうち、主にコンセプチュアルスキルとヒューマンスキルがビジネススキル向上の肝になります。コンセプチュアルスキルとヒューマンスキルには様々な要素が含まれるので、まずは今抱えている課題を把握し、どのビジネススキルを向上させればよいかを定めることから始めましょう。個別多様化する課題の把握には、日常業務での定期的な振り返りや上司との面談、1on1などの機会が活用できます。
そのうえで、課題に応じたビジネススキルを選択し、研修などを通して体系的にビジネススキルを向上させていくことが効果的です。コンセプチュアルスキルの研修テーマとしては、「問題発見・解決力開発」や「企画力強化」、「アイデア発想法」などが挙げられます。ヒューマンスキルに関しても、「ファシリテーションスキル習得」や「『伝える力』スキルアップ」など様々な研修テーマが考えられます。ビジネススキルは実務に直結するので、研修で学んだことを現場ですぐに実践し、振り返りを行うことで向上のスピードも速まります。一人ひとりの課題と組織の求める方向性をすり合わせたうえで、体系的にビジネススキルを向上させていくことは、組織の成果にもつながります。

ビジネススキルの向上の鍵となるマインド

このように、ビジネススキルの向上は企業にとって喫緊の課題です。しかし、ビジネススキルが向上さえすれば課題が解決するわけではないことにも注意が必要です。下の図のように、スキルとはあくまで「知識を応用して実際に仕事を遂行し,達成していく能力」を指し、行動として顕在化する一歩手前の能力だからです。

能力構造

つまり、社員一人ひとりが学ぶ意欲を持って自発的にビジネススキルを向上させ、身につけたスキルを行動につなげることではじめて成果につながるのです。ビジネススキル向上の鍵になるのは、社員一人ひとりのマインドです。どのようなマインドが望ましいかについては、スタンフォード大学教授のキャロル・ドゥエックが提唱した「グロースマインドセット」の考え方が参考になるでしょう。グロースマインドセットとは、「才能や能力は、経験や努力によって変えられる」という考え方であり、成長し続ける人に共通して見られます。グロースマインドセットを持つことによって、ビジネススキル向上への学習意欲が高まるとともに、学んだスキルを活かして困難な課題に挑戦することができるようになるでしょう。グロースマインドセットは意識して高めることができるものです。組織においても、このようなマインドを文化として根付かせる取り組みを行ってみるのもいいかもしれません。

まとめ ビジネススキル向上のためにできるサポートとは

社員のビジネススキル向上は、個別多様化する課題を解決し、変化の激しい時代に企業が持続的な成長を遂げるために非常に重要です。企業の人事・教育担当者は、eラーニングや通信教育、集合研修などを効果的に組み合わせて、社員が自律的にビジネススキルを向上させられるような教育プログラムを提供するといいでしょう。多様なテーマのビジネススキルを一覧にして、必要なときに、必要な人が体系的にビジネススキルを学べるようにするのも効果的です。同時に、ビジネススキルを行動として顕在化できるように、成長し続けるマインドの醸成も重要です。変化の時代だからこそ、企業は長期的な視点を持ち、ビジネススキル向上のための教育機会や成長実感が得られるような環境を整えたいものです。