コラム
  • 対象: 管理職
  • テーマ: マネジメント
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ピープルマネジメントの実践手順と成功させる3つのポイント

ピープルマネジメントの実践手順と成功させる3つのポイント

自社の人材育成に課題を抱えていませんか。急速な環境変化のなかで、従来型のマネジメント手法だけでは、組織の成長に限界が見えてきています。

そこで注目されているのが、従業員一人ひとりにフォーカスした「ピープルマネジメント」という手法です。個々の可能性を最大限に引き出し、主体的な成長を促すこのアプローチは、多くの企業で成果を上げています。

今回は、ピープルマネジメントの基本的な考え方から、具体的な実践方法、そして成功のポイントまでを詳しく解説します。

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ピープルマネジメントとは

ピープルマネジメントとは、従業員それぞれに応じた接し方や目標設定を通じて個々の可能性を引き出し、チームのパフォーマンスを向上させるマネジメント手法です。

次に、ピープルマネジメントの考え方や従来のマネジメント手法との違いについて解説します。

ピープルマネジメントの考え方

ピープルマネジメントを理解する上で参考になるのが、クルト・レヴィンの法則です。

ドイツの心理学者であるクルト・レヴィンは「社会心理学の父」とも呼ばれ、人間の社会的行動や思考、感情を研究する中で、現代心理学にもつながるさまざまなテーマに取り組んだ人物です。

彼は「環境が変われば、従業員の行動も変化する」という考えを提言しており、この法則を数式B=f(P・E)で表しました。

人間の行動(B)は人間性や価値観などの個人的要素(P)と、環境や人間関係などの外部要因(E)の掛け算によって決まることを示しています。

ここでいう「環境」には、物理的な環境はもちろん、上司や同僚との人間関係も含まれます。

このような視点をもとに、ピープルマネジメントでは下記のような考え方が重視されます。

  • 個人を理解して個性を活かす
  • 目標設定とフォローアップを行う
  • モチベーションの維持と向上を図る
  • コミュニケーションを促進する
  • リーダーシップと権限委譲を行う など

これらをマネジメントに活かすための具体的な施策としては、定期的な1on1の実施やサーベイの実施、ITツールの活用、テレワークやフレックスタイム制の導入などがあげられます。

従来のマネジメントとの違い

下記の表で、ピープルマネジメントと従来のマネジメントの違いをまとめました。

従来のマネジメント ピープルマネジメント
特徴 従業員を管理・評価することで成果を向上させる 従業員個人に向き合うことで成果を向上させる
重視する点 配置換えや育成による従業員のパフォーマンスの向上 従業員のエンゲージメントやモチベーションの向上
目標達成に対する考え方 経営資源の管理により成果の最大化を目指す 個々の可能性や自主性を高めることで成果の最大化を目指す
目標達成・評価の頻度 半年~年1回が目安 隔週~月1回が目安

従来型のマネジメントは、パフォーマンスの最大化を最優先し、成果を追求するアプローチです。管理職は部下の業務を監督・評価し、目標達成に向けて効率的な方法を模索します。

このアプローチでは、従業員一人ひとりのスキルや経験を活かすために配置や育成を戦略的に実行する「タレントマネジメント」が重視されます。タレントマネジメントは、従業員の能力や適性に基づき、最適な役割に配置することで、組織のパフォーマンスを向上させる手法です。

タレントマネジメントについて詳しくは、下記の記事をご覧ください。

一方、ピープルマネジメントは、単なる成果追求だけでなく従業員一人ひとりの成長とエンゲージメント、モチベーションの向上を重視します。マネジャーやリーダーは、従業員の持つ潜在能力を引き出し、伴走者としてサポートを行います。

単に業務を監督するだけの役割ではなく、成長のサポートを通じて、組織全体の成果を向上させるマネジメント手法です。

ピープルマネジメントの重要性・メリット

ピープルマネジメントの導入が企業にもたらす主なメリットを紹介します。

従業員の自律性向上

ピープルマネジメントでは、チームリーダーやマネジャーが従業員一人ひとりに寄り添い、個別の目標達成をサポートします。

単に目標を設定するだけでなく、その達成に向けて従業員が自ら考え、行動するための環境を整えます。このプロセスを通じて、従業員は自分の強みや課題を自覚し、自分で解決策を見つけ出す自律性を養うことができます。

しかし、管理職自身のマネジメントスキルや、従業員への関心度合いが、その効果に影響を与える可能性があります。管理職が十分にコミュニケーションを取らず、各従業員に応じたサポートを行わなければ、期待するほどの効果は得られません。

そのため、効果的に導入するためには、管理職に対する適切なトレーニングも重要です。

従業員のエンゲージメントの向上

ピープルマネジメントがもたらす大きな効果のひとつは、従業員のエンゲージメントを高めることです。

ビジネスにおけるエンゲージメントとは、従業員が所属する組織や会社に対して抱く意識や愛着、そしてコミットメントのことを指します。

ピープルマネジメントでは、管理職が従業員一人ひとりに寄り添い、個々の強みや価値を認め、目標達成に向けてサポートを行います。こうしたアプローチが従業員にとって「自分の成長や成果が組織に貢献している」と実感させ、従業員の組織への愛着や誇りが育まれます。

しかし、ピープルマネジメントを導入することで、管理職の負担が増加する可能性がある点は押さえておきましょう。従業員一人ひとりに寄り添い、個別の支援やフォローを行うことは、管理職にとって時間的にも精神的にも大きな負担となることがあります。

そのため、管理職が効率的にマネジメントを行うためのサポートやトレーニングも必要です。

人的資本経営の実現にもつながる

ピープルマネジメントは、人的資本経営を実現するための重要な手段となります。

人的資本経営とは、企業の競争力を高めるために、従業員のスキルや知識、経験などの「人的資本」を最大限に活用し、企業の価値を向上させる経営のアプローチです。

企業が人的資本経営を実現するためには、従業員の個々のスキルや能力を最大限に引き出し、効果的に活用することが不可欠です。そのためには、従業員一人ひとりに対する深い理解と適切なサポートが求められます。

ピープルマネジメントで管理職が従業員の成長を支援し、適切なフィードバックを提供することによって、従業員のスキル向上やモチベーション向上を促すことにつながります。

従業員のパフォーマンス向上や組織の成長を支援する人的資本経営について、より詳しく知りたい方は、下記から詳しい資料をご覧ください。人的資本経営に関する基礎知識や調査資料をまとめています。

ピープルマネジメントを実践する方法

ピープルマネジメントを効果的に実践するためには、管理職が従業員と積極的に関わり、そのマネジメントの量と質の両方を高めることが重要です。

下記では、具体的な実践方法について詳しく説明します。

マネジメントの「量」を増やす

ピープルマネジメントは、従来のマネジメント方法に比べて、より密接なコミュニケーションと頻繁な対話が求められます。

そのため、コミュニケーションの量を増やし、管理職とメンバーの信頼関係を構築するための機会をつくることが、ピープルマネジメント成功のカギとなります。

最も有効な方法のひとつは、1on1ミーティングの定期的な実施です。隔週~月1回を目安に、上司と部下で対話する機会を設けることをおすすめします。

加えて、管理職の負担を軽減するために、適切なサポート体制を整えることも検討しましょう。例えば、他のピープルマネジャー(例えば、シニアメンバーやプロジェクトリーダー)をアサインして、1on1ミーティングを行う方法があります。

なお、1on1ミーティングの実施方法や効果を高めるポイントについては、下記の記事で詳しく解説しています。

マネジメントの「質」を高める

ピープルマネジメントの成功には、マネジメントの質を向上させることも不可欠です。質の高いマネジメントは、従業員のモチベーションを維持し、効果的な成長を促すための重要な要素です。

下記に、質を高めるための具体的なポイントを紹介します。

目標設定の質を高める

質の高いマネジメントを実現するためには、目標設定の質を高めることが不可欠です。

特に、目標設定にはSMART、OKR、HARDゴールといった有効なフレームワークを活用すると効果的です。

■SMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)
明確で測定可能な目標設定をするためのフレームワーク
■OKR(Objectives and Key Results)
大きな目標に対して、達成すべき成果を明確に定義するためのフレームワーク
■HARDゴール
高い挑戦を意識した目標設定をするためのフレームワーク

これらのメソッドを使って、従業員が自分自身で達成感を感じられるような目標設定を支援しましょう。

従業員に主体的に目標を設定してもらうことで、自己実現感が生まれ、やる気を引き出すことができます。

フィードバックの質を高める

フィードバックは、従業員が成長するための重要な機会です。効果的なフィードバックは、成果に対する評価だけでなく、改善点や成長へのヒントも含まれています。

質の高いフィードバックを行うためのポイントは下記の通りです。

・タイムリーに行う
・具体的かつ建設的な改善方法を示す
・心理的安全を確保する

また、フィードマックのフレームワークのひとつである「SBI」も役立ちます。SBIは、下記の3つの観点で構成されています。

・S(Situation):客観的な状況(どのような状況で)
・B(Behaviour):客観的な行為(どのような行動があったのか)
・I(Impact):結果的な影響(その行動がどのような影響を与えたのか)

1on1の質を高める

1on1は、従業員のパフォーマンスを向上させるための重要な機会です。質の高い対話を行うことで、従業員の成長を促進し、組織全体のパフォーマンスを向上させます。

1on1の質を高めるためのポイントは下記の通りです。

・部下が話したいテーマを中心にする
・部下と一緒に解決策を考える姿勢を示す
・コーチング・ティーチング・フィードバックを組み合わせる

1on1の目的は従業員の成長をサポートすることです。上司は部下が話したい内容を尊重し、本人が抱える課題や悩みに耳を傾けることが大切です。

また、メンターとしてただ指示を与えるのではなく、部下と一緒に解決策を考える姿勢が求められます。必要に応じて適切なコーチングやティーチングを行い、フィードバックで成長を促すことで、従業員の自発的な行動を促すことにつながります。

なお、コーチングやティーチングの手法について詳しくは、下記の記事をご覧ください。

ピープルマネジメントを成功させるポイント

ピープルマネジメントを成功させるための3つのポイントを紹介します。

短期的な成果を求めない

ピープルマネジメントを実践してすぐに、効果が表れるわけではありません。むしろ、効果が現れるには時間を要し、従業員一人ひとりが自分の役割を理解し、主体的に行動できるようになるまでの期間が必要です。

そのため、ピープルマネジメントを実践する際に短期的な成果を求めることは避けましょう。

急速に成果を求め、無理に従業員に負担をかけるようなことは、むしろ逆効果になる可能性があります。管理職は、部下にこの手法の目的と価値をしっかり伝えた上で、時間をかけて組織全体に浸透させるよう努めることが重要です。

数字に表れない要素も評価対象とする

ピープルマネジメントは、エンゲージメントや組織文化など、目に見えにくい部分にも焦点を当てます。そのため、非数値的な要素も組織全体のパフォーマンスに大きな影響を与えることを理解しておくことが大切です。

一方で、優秀な従業員のモチベーションやエンゲージメントを維持・向上させるためには、適切な成果主義を運用することも大切です。

定性的な評価と定量的な評価をうまく組み合わせることで、従業員の成長を支援し、組織のパフォーマンスを最大化することが可能になります。

コミュニケーションの促進に役立つツールを活用する

ピープルマネジメントでは、単なる日常的なコミュニケーションだけでなく、より高いレベルでのコミュニケーションが必要です。

そのためには、コミュニケーションの促進に役立つツールを活用することも有効です。

JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)では、AIによる1on1ミーティングの実践支援サービス「KizunaNavi」を提供しています。KizunaNaviを活用すれば、AIを活用して1on1の対話内容を解析し、その質を数値化できるため、改善点を明確化するのに役立ちます。また、面談内容の自動記録機能を搭載しており、メンターが面談内容を簡単に保存し、後で振り返ることも可能です。

KizunaNaviの詳細は、下記からご覧ください。

まとめ

終身雇用が崩れつつあるなか、会社の都合や上長の一方的な指示では、従業員が前向きに働くことは難しくなっています。つまり、「会社に奉仕することが社会人として正しい姿である」はすでに幻想になっているのです。

こうした時代において、従業員が自ら働く動機を見出せるよう支援することは非常に重要です。

従業員一人ひとりの個性や可能性に焦点を当て、組織全体の成長を実現するピープルマネジメントは、そのような手段のひとつともいえます。

その成功には、定期的な1on1の実施や質の高いフィードバック、適切な目標設定など、地道な取り組みが不可欠です。具体的な施策を着実に実行しながら、組織全体でピープルマネジメントの文化を醸成していきましょう。

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KizunaNavi(キズナナビ)は、最先端のAI技術を活用し、1on1ミーティングの質を向上させる実践支援サービスです。対話の質を科学的に向上させるだけでなく、利用者の負担を最小限に抑え、効果的なフィードバックを可能にします。

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