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  • 対象: 全社向け
  • テーマ: 人事制度・評価
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タレントマネジメントとは?意義・導入メリットをわかりやすく解説!

タレントマネジメントとは?意義・導入メリットをわかりやすく解説!

タレントマネジメントは、人手不足が続く日本で、従業員の能力・資質を最大限活用する手法として注目を集めています。しかし、取り組み方がわからない方もいらっしゃるでしょう。本記事では、タレントマネジメントの意義・導入メリットを詳しく解説します。

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人材ポートフォリオとスキルマップ作成のポイント

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経営戦略に基づく必要人材の分析、適切な人材配置の検討時に活用できる

タレントマネジメントとは

「タレントマネジメント」とは、自社の従業員一人ひとりが持つ資質や能力を適切に把握して最大限に活用することで、企業の継続的な成長を目指す人材マネジメントの手法です。

ここで、「タレント」は従業員の持つ資質や能力を意味するとともに、資質や能力を持つ人材自身を指す言葉としても使用されます。目に見える顕在化したものだけでなく、従業員が潜在的に持っているものも含みます。

タレントマネジメントは、「タレント」を「全従業員」と考えるか、「将来の幹部候補」と考えるかにより2つに分けられます。

タレントマネジメントの対象を「全従業員」と考える場合には、従業員一人ひとりの個性・能力を考慮した人員配置を行うことで、全社的なパフォーマンスの向上が期待できます。

一方、「将来の幹部候補」を対象と考える場合には、専門知識やスキル、豊富な経験を持つ人材を、効率よく将来のマネジメント人材として育成することが可能です。

企業を取り巻く環境が急速に変化するなかで、より上位の概念である「経営戦略」を実現するために、「人事戦略」の一環としてタレントマネジメントが注目されています。

タレントマネジメントが注目を集める背景

ここでは、なぜタレントマネジメントが注目を集めているのか、その主な背景について4つご紹介します。

労働人口減少による人手不足

わが国では、少子高齢化による労働人口の減少により、慢性的な人手不足が発生しております。これまでのようにリーダー等の一部の優秀な人材が牽引するだけでは企業は対応しきれなくなりました。企業間での人材の獲得競争が激化し、豊富な労働力が期待できないなかで、安定的な企業経営を行い、継続的に成長を続けていくためには、従業員ごとの資質や能力を把握し、全従業員に適切な場所で最大限のパフォーマンスを発揮してもらうことが重要になっています。

働き方改革による新しい働き方の推進

近年、国を挙げて働き方改革が推進されており、時間と場所にとらわれない新しい働き方を導入する企業が増えてきました。これを受けて労働者の働き方も多様化し、ワークライフバランスが重視されるようになっているため、時間外労働の解消をはじめとした労働環境の改善が企業の課題となっています。タレントマネジメントにより、従業員個々のパフォーマンスを最大化することで、労働生産性が向上し、業務の効率化につながると期待されています。

IT環境の発展

これまで従業員の資質や能力を数値化して客観的に評価するのは容易ではありませんでした。

しかし、AI、ロボット、クラウドなどの技術革新が進み、「HRテクノロジー」と呼ばれる人事労務分野での技術が急速に進化したことで、タレントマネジメントを行える環境が整備されてきたといえます。

IT環境の発展により、従業員の資質や能力に合った人材育成や人材配置を戦略的に行えるようになっています。

国際的な競争力の強化

市場のグローバル化により、国際的な競争力の強化が求められていますが、公益財団法人 日本生産性本部の調査によれば、2021年のわが国の労働生産性は諸外国と比較しても低い水準にとどまっており、OECD加盟38カ国中29位です。今後も世界市場において、価格面・品質面での激しい競争に勝ち残っていくためには、従業員の持つ能力を最大限に活用し、労働生産性を向上させることが不可欠となっています。

OECD加盟諸国の1人当たりGDP

【引用】公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022 p5 OECD加盟諸国の労働生産性(2021年・就業者1人当たり/38カ国比較)」
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/report_2022.pdf

タレントマネジメントを導入する目的

経営目標を実現するために経営戦略がありますが、タレントマネジメントは人事面から経営戦略を支える人事戦略の手法のひとつです。ここでは、タレントマネジメントを導入する目的を4つご紹介します。

人材採用

タレントマネジメントにより、企業の経営目標の実現に必要な人材を採用・発掘します。

新卒採用や中途採用といった企業外部からの新規採用だけでなく、自社に勤務している従業員の中から能力を見極め適切な人材を発掘するのも含みます。

特に人材の発掘では、「顕在化している」資質や能力の方が把握が容易で優先される傾向にありますが、従業員が「潜在的に持っている」資質や能力まで把握することで、さらなる人材の有効活用が期待できます。

人材育成

経営目標の実現に必要な人材の備えるべき資質や能力を明らかにしたうえで、自社従業員とのギャップを把握し、ギャップを解消するための人材育成を行います。

具体的には、業務遂行に必要な知識・資格を取得するために、社内外の研修への参加、通信教育・eラーニングの受講などにより、従業員の成長を促すことが考えられます。

適切な人員配置

従業員の資質や能力や経験を可視化することで、適切な人員配置が可能です。

限られた人員で会社全体のパフォーマンスを最大化するためには、各従業員を最も能力が発揮できるポジションに配置するのが重要です。

従業員自身が描くキャリアプランや意向に十分配慮したうえで、客観的な評価基準を整備すれば、従業員のモチベーションも高まり、労働生産性の向上にもつながるでしょう。

人材の確保

採用・発掘した人材を育成し、適切に人員配置を行うことで企業の労働生産性の向上が期待できます。一方、労働者にとってはスキル向上を通して自己の成長を実現できるとともに、労働環境が改善され、これまで以上に魅力的な職場と感じられるでしょう。

人手不足が深刻な状況において、タレントマネジメントは公正な評価基準のもとで従業員のモチベーションやエンゲージメントを高めることで、定着率の向上にも役立ち人材を定着させるための有効な手段といえます。

また、人材の育成に力を入れている企業という評判が高まれば、求職者も魅力を感じられるため、新卒採用や中途採用といった人材採用も有利に進めることが期待できます。

タレントマネジメントを導入するメリット

ここからは、タレントマネジメントを導入した場合にどのようなメリットが得られるか、企業側・従業員側それぞれについて解説していきます。

企業側のメリット

はじめに、企業側のメリットを4つご紹介します。

長期的な視点で人材育成ができる

タレントマネジメントでは、経営目標を実現するために必要な人材を具体的にイメージして、自社従業員の現状とのギャップを解消できるように長期的な視点で人材育成を行います。一般的には、育成のためのコストを先に支出され、従業員のスキルアップによる会社業績への効果は遅れて発生すると考えられるため、目先の利益を優先した短期的な視点では、人材への投資を見送るという選択がなされる可能性があります。長期計画にもとづく従業員の育成費用が将来の会社の利益獲得、そして経営目標の実現につながることを理解するのが重要です。

適切で柔軟な人員配置ができる

タレントマネジメントにより、各従業員の資質、能力、これまでの経験、保有資格、希望するキャリアプランなどの情報を視覚化してデータとして管理できます。蓄積した従業員データを活用すれば、例えば急な退職者が出た場合でも、欠員ポジションにふさわしい人材が社内にいるかをスムーズに確認でき、もしいないときは迅速に採用活動を進めることが可能です。

また、新規事業の立ち上げで新たなポジションに人材が必要となる場合にも、タレントマネジメントで蓄積されたデータの利用により、社内に求める能力を有する人材がいるか把握できるため、適切で柔軟な人員配置が可能です。

優秀な人材の確保につながる

タレントマネジメントでは、従業員ごとの適性を見極め、本人の将来目標を考慮しながら長期的な視点で従業員の育成・人員配置を行います。また、管理する情報から従業員の能力を客観的な数値で把握するため、公正な評価が可能です。従業員にとっては、納得できる評価基準のもとで、自己の成長を目指すことができ、会社に対するエンゲージメントの向上により定着率の向上が期待できるでしょう。さらに、従業員の育成に力を入れ、正当な評価がなされる企業としてのイメージが高まることで、自社で仕事したいと考える求職者が増えるため採用活動にも好影響を与え、その結果、優秀な人材の確保につながります。

リスクマネジメントにつながる

企業は継続的な事業活動を前提としており、病気での長期休職・退職などにより急な欠員が発生した場合でも影響を受けない組織づくりが求められています。タレントマネジメントでは、長期的な視点から人材の育成・人員配置を行い、自社の人材(タレント)の資質や能力を把握できるため、退職・異動・組織変更などにも迅速な対応が可能となり、人事面からリスクマネジメントに役立っているといえます。

従業員側のメリット

次に、従業員側のメリットを2つご紹介します。

キャリアアップの機会が得られる

タレントマネジメントでは、従業員が業務を行ううえで必要となる知識・将来備えてほしい資格や能力を身に付けられるように、会社が積極的に従業員の成長機会をサポートします。具体的には、社内外で開催される研修への参加費用補助、資格取得のための通信教育やeラーニングの受講料補助などが挙げられます。

会社のサポートを受けながら、自身のキャリアアップにもつながるため、タレントマネジメントの導入は従業員にとってもメリットが大きいといえます。

業務へのモチベーションにつながる

タレントマネジメントにより、適切な人員配置が行われると、従業員は担当するポジションで最大限に能力を発揮でき、仕事のやりがいを感じられるでしょう。さらに公正な評価基準のもとで適正な報酬が得られることで、会社に対するエンゲージメントも高まり、業務に対するモチベーションの向上も期待できます。

タレントマネジメントの導入手順

ここからは、タレントマネジメントの具体的な導入手順について解説していきます。

目的の設定

現状の自社の組織・従業員が抱える課題を把握・分析したうえで、タレントマネジメントを導入することで、どのように課題を解決していくか、具体的な目的を設定しましょう。

例えば、これまで中途採用メインで人材を調達してきた企業では、会社の将来を担う若手の従業員が不足しているため、新規採用を行う体制づくりが目的となるでしょう。

また、残業時間の多い企業で、時間外労働の原因が従業員の知識・能力の不足によるものと考えられる場合には、人材育成の仕組みを取り入れ労働生産性の向上を目的として設定します。

経営戦略にもとづく経営目標を達成し、継続して成長を続けていくためには、今後どのような人材をどの部門でいつ、何人、採用もしくは育成する必要があるかを人事戦略として具体的に目標設定することが重要です。

人材情報の収集・整理

タレントマネジメントの導入目的が明確になったところで、自社の保有する人材情報を収集・整理して、データとして可視化します。

データベース化して管理する項目には、具体的に次のようなものが挙げられます。

  • 基本情報:氏名、年齢、性別、所属、家族構成など
  • 技術や能力:保有する資格、技術、能力・スキルなど
  • 経歴、実績:これまでのキャリア、業務実績・表彰実績など
  • 勤怠情報:勤務態度、残業や休日出勤の状況、休暇の取得状況など
  • 価値観、考え方:従業員が持つ価値観、志向、考え方など

なお、アルバイト・正社員といった雇用形態を問わず、また役員も含めた個人情報を取り扱うため、個人情報を管理する部門や担当者に対する個人情報保護に関する教育も重要です。

人材(タレント)の把握

人材情報の可視化により、自社にどのような人材(タレント)がいるかを把握します。人材データが蓄積されるのにともなって、活躍する従業員の特徴や退職する従業員の特徴が明らかになれば、今後の採用活動にも有効に活かせるでしょう。

なお、自社の従業員が現状持っている能力を把握することで、会社が経営目標を実現するために必要とする人材とのギャップの把握・分析が可能です。

人材(タレント)の育成計画と採用計画の作成

企業内のポジションで新たに人員が必要になった場合、新規採用は時間とコストがかかるとともに、定着してもらえるかは予想できないため、社内の人材で対応するのが企業にとって理想といえます。

したがって、現状の自社の人材(タレント)と求める人材とのギャップがある場合には、ギャップを解消するために、必要となる人材の育成計画を作成します。その際、特定の資格保有が必須となる業務については、資格取得のための方法やそれにかかる費用を具体的に計画に織り込む必要があるでしょう。

なお、育成には現行のポジションのまま従業員の成長を促す場合と、異動により新しいポジションで従業員を育成する場合の2つのケースが考えられますが、いずれも新規で採用するよりもコストを抑えられる点がメリットといえます。

社内の人材で不足するときは時間とコストはかかりますが、新卒採用もしくは中途採用で社外から新たに人材を調達する必要があります。時期・予算・人数・人物像を明確にしたうえで、採用計画を作成します。

育成計画・採用計画ともに、完全に当初予定どおりに進めるのは難しいため、状況を見て迅速に柔軟に変更する必要があります。

人材(タレント)の新規採用、人材開発

自社の人材(タレント)を把握した結果、会社が求める人材との間にギャップが発生している場合には、採用計画にもとづく新規採用、もしくは育成計画にもとづく社内の人材開発によりギャップを解消する必要があります。

ギャップが小さく人員に余裕がある場合には、異動または社内の人材を育成することでギャップの解消が可能ですが、ギャップが大きく人員も不足している場合には、新卒採用・中途採用により外部から人材の調達が必要になるでしょう。

これまでわが国では、人材開発にあたっては異動先で上司や先輩従業員から直接指導を受け、実際に業務を経験しながら必要な知識や能力を身に付けるOJT(On-the-Job Training)が広く利用されてきましたが、近年では社外研修、通信教育、eラーニングなどのOff-JT(Off-Job Training)も積極的に活用されています。特にコロナ禍で非接触が推奨されるなかで、eラーニングのサービスが充実したことで、利用する企業が急速に増加しています。

人材の配置

管理している人材情報、育成計画をもとに、社内の各ポジションに最適な人員を配置します。人材開発の場合、業務に求められる能力と現状の従業員の能力とでギャップが発生しているため、あらかじめ配属先の責任者とギャップの存在を共有することが重要です。ギャップを理解したうえで責任者が指導にあたれば、従業員の成長を促進しギャップの解消が期待できるでしょう。

なお、人材配置の際には、従業員の能力・経験を判断し会社が一方的に決定するのではなく、本人が描くキャリアパスや志向に十分配慮することで、モチベーションの維持・向上につながります。

検証・評価

人材の配置後は定期的にパフォーマンスを検証し、必要な場合には育成計画の変更を行います。例えば、当初予定していたOJTだけでは十分でないと判断した場合には、社外研修への参加、通信教育やeラーニングの受講により従業員の成長を促すのも有効でしょう。

ただし、求められる能力と従業員の能力とのギャップの解消が見込めない場合には、上司・人事との面談で本人の意向を慎重にヒアリングしたうえで、再度異動を検討する必要があります。適性のないポジションへの配置は従業員にとって負担が大きく、フォローが十分でないと離職につながるリスクがあるため注意が必要です。

パフォーマンスを検証した後は、配属先の責任者もしくは上司が公正な評価基準をもとに従業員を評価し、本人へのフィードバックを行います。評価結果とともに、フィードバック時に得た従業員の業務に対する考え方や志向を人事部門に伝えることで、人材情報が最新の状態に維持されます。このため、タレントマネジメントでは配属部門と人事部門の連携も重要といえます。

タレントマネジメントを導入する際の注意点

ここでは、タレントマネジメントを導入する際に注意すべき事項について、5つ解説していきます。

管理項目を厳選する

タレントマネジメントで従業員ごとに人材情報を収集・管理するにあたっては、管理する項目は厳選する必要があります。情報量が増加すれば活用の幅が広がりますが、管理項目が多くなるほど担当者・情報提供者の業務負荷が増え、正しい情報が維持できないということにもなりかねません。

制度運用後に必要となった項目は追加を検討するとともに、活用予定のない項目については収集・管理を中止し、制度導入時に設定した管理項目のままとならないように定期的な見直しが必要です。

管理情報を最新のものとする

タレントマネジメントでは、必要となった人材情報をデータベースから素早く把握できますが、管理情報は一度取得したら終わりではなく、常に最新情報となるようにメンテナンスが必要です。

例えば、従業員が新規資格を取得した場合、部門の異動があった場合、昇給昇格があった場合など、人事情報が適切に更新されていないと誤った情報をもとに経営判断がなされてしまうリスクがあります。

情報の更新作業の抜けを防ぐためには、どのような場合に人事部門に連絡が必要かを全従業員に周知するとともに、必要な場合には業務フロー・各種社内申請書類の見直しを行いましょう。

管理職(上司)の教育を行う

人材の育成にあたっては、対象となる従業員自身が意欲を持ってスキルアップに取り組むのはもちろんですが、成長には管理職(上司)のサポートが大きく影響を及ぼします。そのため、管理職(上司)が部下の成長を後押しできるように、管理職研修も有効な手段といえます。

全社の管理職(上司)が一定水準以上のマネジメント能力を備えることで、配属部門にかかわらず一定の人材育成の効果を期待できるでしょう。

株式会社日本能率協会マネジメントセンターでは、管理職の育成を計画的に進めていくために、成長段階に応じたプログラム設計で、役割認識・知識・スキルなどのテーマをもとに、管理職の成長を支援しています。管理職の育成をご検討中の方はぜひ下記のeラーニングをご覧ください。

制度導入の目的を全社に周知・共有する

タレントマネジメントの導入にあたっては、制度導入の目的を全社に周知し、理解してもらうことが重要です。タレントマネジメントに限らず、新しい仕組み・システムを導入する場合には、担当部門・担当者に大きな業務負荷がかかるのに加え、業務フローの変更にともない、全従業員に影響が及びます。従来のやり方を変更することに抵抗がある従業員がいるなかで、管理する人材情報を常に最新の状態に保つためには、従業員の協力が不可欠です。そのため、タレントマネジメント導入に関する全社説明会の開催や制度運用後のきめ細かなフォローが必要になるといえるでしょう。

管理者・従業員の意識改革を行う

タレントマネジメントの仕組みを有効に機能させるためには、管理者・従業員双方の意識改革が重要です。

わが国では高度成長期以降、「終身雇用」を前提とした雇用体系が多くの企業で導入されてきました。「年功序列」により年齢・勤続年数の増加にともなって賃金給与が右肩上がりに上昇していく仕組みが採用されるとともに、昇進昇格も年齢・勤続年数に大きく依存してきたといえます。

しかし、少子高齢化で労働人口が減少を続けるなか、各企業は労働生産性をいかにして向上させるかを重視するようになっており、年齢や勤続年数ではなく仕事の成果に応じて報酬を決定する企業も増加しています。

タレントマネジメントでは、従業員の顕在化している能力に加え、潜在的に保有している資質や能力も含めて人材(タレント)として把握し、長期的な視点から人材の育成を行うため、若手でも能力があれば積極的に重要なポジションに配置されます。従業員本人の能力・成長意欲次第で高い評価が得られる一方で、「年功序列」の意識が抜けない管理者・従業員では最大限のパフォーマンスを期待できないでしょう。

教育・研修の機会を設けるなどして、管理者・従業員ともに意識を改革する必要があります。

タレントマネジメントの導入事例

ここまで、タレントマネジメントの概要をお伝えしてきましたので、わが国の企業では実際にどのように導入・活用されているか、サントリー、伊藤忠商事の2つの事例をご紹介します。

サントリー

サントリーでは、「サントリーは人が命。」の考え方にもとづいて、全従業員を対象としたタレントマネジメントが採用されています。

具体的には、従業員が上司や人事と自らのキャリアを考える「キャリアビジョン」により、将来「なりたい姿」の実現に向けてプランを策定しています。また、全社・部門横断的な「ジョブローテーション」を積極的に行うことで多様なキャリアデザインを支援しています。ほかにも、管理職・一般職それぞれの成長を促す取り組みや、グローバル人材の育成も重視し、タレントマネジメントの仕組みが活用されています。

このように、サントリーでは従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮し活躍することで、会社の成長につながると期待されており、きめ細かい人材育成施策が長期的な視点で展開・運用されています。

【参考】サントリー公式ホームページ 全社員型タレントマネジメント
https://www.suntory.co.jp/recruit/fresh/career/system/

伊藤忠商事

伊藤忠商事では、グループ全体としてグローバルベースでの人材戦略が推進されており、全世界で活躍できる優秀な人材の採用・育成・活用・登用を行う仕組みとして「タレントマネジメント」が採用されています。

具体的には、グローバルなリーダーとして備えるべき行動要件を設定し、採用基準や評価基準に活用するとともに、選択型のオンライン研修プログラムの提供により多様な価値観に応じたキャリア形成を支援しています。また、海外ブロックの従業員が本社業務を通じて知識・経験を積めるように、国籍を問わず本社への駐在も積極的に行われています。

伊藤忠商事は、従業員の育成に関する費用を持続的な企業価値向上のための「人的資本投資」と考えており、全社でレビューすることで人材の育成に繋げています。

【参考】伊藤忠商事公式ホームページ 人材育成
https://www.itochu.co.jp/ja/csr/society/development/index.html

まとめ

本記事では、タレントマネジメントの意義、導入メリット、導入手順、導入時の注意点などについて解説しました。

企業を取り巻く環境が急速に変化するなかで、これまでのようにリーダー等の一部の優秀な人材が牽引するだけでは企業は対応しきれなくなっており、全従業員に適切な場所で最大限のパフォーマンスを発揮してもらう必要があります。

このため、タレントマネジメントを通して必要な人材要件を明らかにしたうえで、現在の従業員の能力を把握・育成し、個々の能力を適材適所で活かすために包括的な人材戦略を行うことが重要になっているといえるでしょう。

また、タレントマネジメントは企業が最も重視したい「経営人材候補(後継者)の育成」を早期から計画的に行い、経営目線を持つ人材を育てることにも役立ちます。

企業の持続的成長や人的資本経営を実現する第一歩として、まずは「人材の可視化」から進めてみてください。

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