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  • 対象: 新人/若手
  • テーマ: 研修/教育
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OJTの目的とメリットとは?成功させるポイントを徹底解説!

OJTの目的とメリットとは?成功させるポイントを徹底解説!

新年度になると新人が職場に配属される前に、新入社員研修が行われます。しかし、そこで学んだ内容を必ずしも実務で活かせるとは限りません。学んだ知識を実務で活かし、新入社員が現場で活躍するために必要な教育手法が「OJT」です。OJTの教育効果を高めるためのポイントは複数あり、特にトレーナーの役割は重要です。この記事では、OJTの意味や組織でのよりよい活用法を解説します。

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OJTとは?概念やOFF-JTとの違い

OJTとは「On the Job Training」の略語です。

実際の業務において、実務経験豊かな上司や先輩が、若手や後輩に知識やスキルを計画的に教えます。マニュアルや机上の研修だけではなかなか身につかない知識やスキルを、実践を通して補うトレーニング方法です。

OJTは、第一次大戦時代のアメリカで始まり、戦後の高度経済成長期に日本へ入ってきました。OJTは時流に沿った変遷を経て、現在でも多くの企業で活用されています。

OJTとOFF-JTの違い

「OFF-JT」とは、「OFF the Job Training」の略語です。OFF-JTもOJTも人材育成手法を指します。

OJTは社内の実務を通してスキルや知識を学ぶのに対し、OFF-JTは研修により、職務への見識を深める点が特徴的です。新入社員が入社した際の新人研修も、この「OFF-JT」に当たります。また、OJTのトレーナー(OJT担当者)は上司や先輩社員が担うのに対し、OFF-JTでは多くの場合、外部講師がトレーナーの役割を請け負います。

OJTを職場教育で活用する3つの目的

OJTは職場において、具体的にどのような目的で活用されるのでしょうか。代表的な3つの目的を解説します。

目的1:業務効率の向上

OJTは実際の業務を通した教育手法であるため、経験にもとづいたノウハウや知識を効率よく学べます。また、OJTでは、原則として1人の新人に1人のトレーナー(OJT担当者)がつくため、担当となる上司や先輩社員にとっても「その業務をする目的」や「部署間の流れ」などを、あらためて学ぶ機会となります。

指導する側として、業務や組織運営に関する見識を深められると、時間管理や効率化、人材育成方法やマネジメントなど、組織全体としての生産性の向上にもつながります。

目的2:不安の解消

OJTは社員間のコミュニケーションを活性化させるため、新しい職場環境での不安解消にも役立ちます。新人や業務未経験者にとって新しい職場は、慣れない仕事内容だけではなく人間関係や組織風土の理解など、さまざまな不安要素があります。

OJTは上司や先輩社員が部下と一緒に実務を学ぶ段階からスタートするため、仕事で生じた些細な不安や疑問を解消できる絶好の機会です。OJTを起点としたトレーナー(OJT担当者)とのやりとりが社員間の交流に役立ちます。

目的3:職場への定着率アップ

OJTは新人に即戦力をつけさせることで活躍のチャンスが広げるため、新人のモチベーション維持に寄与し、結果的に職場への定着率アップにつながります。また、上司や先輩社員が1人と向き合い指導できるため、個人の強みや弱みを把握できる点が特徴です。

社員同士のコミュニケーションがとりやすい関係性を構築できるので、丁寧なサポートや配慮をしながら仕事を進められ、新入社員の燃え尽きやエンゲージメントの低下も未然に回避できます。

OJTを実施する4つのメリット

OJTを実施すると得られる代表的なメリットについて、企業の人材育成の観点から4つ解説します。

メリット1:研修との相乗効果

OJTは座学による研修では伝えきれない学びを、実際の業務に即した方法で学ぶことが可能です。そのため、研修などのOJT以外の教育とOJTを掛け合わせ補完しあうことで、教育の相乗効果が期待できます。

たとえば、職場で実施するOJTと外部講師を招いてのOFF-JTを組み合わせると、実務経験を積みながら、社内にはない発想や情報などの入手が可能です。外部研修のみでは、実務に則した知識やスキルの網羅が困難なうえに、外部講師の雇用や会場準備などのコストもかかります。

一方で、OJTのトレーナー(OJT担当者)は基本的に上司や先輩であるため、コスト面の負担をかけることなく、社員同士による1対1の熱量の高い教育体制が実現します。

メリット2:即戦力の育成

OJTは上司や先輩社員からの指導を受けながら、新人自身が試行錯誤し、実地にもとづいた教育ができるため、効率的な即戦力の育成が可能です。

座学からスタートする研修は体系的な知識の習得には役立ちますが、実際に活用できるレベルに定着させるためには、実務経験が不可欠です。OJTは明確な目的のあるステップを踏んでトレーニングをするため、知識習得を目的とした研修と比較すると、経験やスキルの定着力が強く、学びを着実に蓄積しながら成長できます。

メリット3:教育のカスタマイズ

OJTはトレーナー(OJT担当者)と1対1で指導が受けられるため、新人の個性や強みを把握しやすい関係の構築が可能です。

それぞれの「できること」「できないこと」をベースに、目標設定やオリジナルの育成計画を立案しながら、新人のレベルに合ったはたらきかけが実現します。他の新人のレベルについていけない社員がでても、その新人社員のペースに合わせた教育のカスタマイズが可能です。

また、新入社員にはさまざまなタイプがいるので、タイプに合わせて指導を行うことも効果的です。

相手のタイプに合わせた効果的な関わり方

メリット4:副次的な効果

OJTを会社全体の重要事項とすれば、個人だけでなく組織への副次的な効果が得られます。たとえば、OJTによって新人教育の基盤が醸成されれば、その取り組みを自社の新卒採用サイトでアピールすることも可能です。そして「育ててほしい」という気持ちが強い若者に響き、結果的に募集が増える二次的なメリットも享受できます。

OJTの基本的な4ステップ

効率的なOJTには、段階ごとの明確な意図が重要です。OJTを成功に導くための4つのステップを解説します。

ステップ1:やってみせる

仕事の全体的なイメージができるように、トレーナー(OJT担当者)自身がまずその仕事をやってみせましょう。トレーナー(OJT担当者)になっている上司や先輩社員の方法を手本として、新人は具体的な業務の流れやポイントの把握ができます。

また、新人一人ひとりに教育する時間や手間がかけられない場合、トレーニング内容を動画にしてまとめておけば、映像学習として活用できます。あとから新人がいつでもどこでもトレーニング内容を復習できるため効率的です。

ステップ2:説明・解説する

やってみせるだけでは、細かい部分の理解が疎かになる可能性があります。よって次のステップでは、仕事内容の具体的な説明や解説をしましょう。その際には、「何を」「どうやって」という表面的な事柄だけでなく、「なぜ」「どういう背景で」という深い部分まで理解できるかが重要です。新人の疑問に耳を傾けながら、説明してみてください。

ステップ3:やらせてみる

先輩の姿を見て説明を受けても、実際に新人が1人で業務をするとうまくいかないケースは多いものです。まずは一度、学んだ内容をふまえて新人1人で実務をやらせてみましょう。最初はトレーナー(OJT担当者)が横について見守ったり、失敗を責めない姿勢をみせたりすると、安心して実務に取り組むことができます。

トレーナー(OJT担当者)とトレーングを受ける側の心理的な安全性が高まると、失敗してもモチベーションを維持し、次の目標へとつなげることが可能です。

ステップ4:評価・指導をする

最後に、実務で「できていなかった点」と「できていた点」を具体的にフィードバックします。フィードバックではネガティブな側面だけを指摘しがちですが、よかった点についても必ず言及してください。褒められることで、新人はポジティブな気持ちで次回以降も臨むことができます。また、「なぜ失敗したか」と同時に「なぜ成功したか」を把握することも重要です。これにより、失敗の再現性を下げ、成功の再現性を上げることができます。

また、フィードバックでこれまでの成長を一緒に振り替えることで、経験での学びを実務に活かせるようになっていきます。トレーナー(OJT担当者)は、新人の理解度をふまえて計画の進行度合いをチェックし、必要に応じて再設計しましょう。

OJTが失敗しやすい原因は?

効果的にOJTを機能させるには、うまくいかない原因を取り除くことが重要です。具体的にどのような原因があるのか解説します。

原因1:人事部・経営層の意図が現場に伝わっていないから

人事部や経営層が現場の社員にOJTの目的を共有しなかったり、実際に指導するトレーナーなどに相談せず計画を立ててしまったりすると、OJTは失敗しやすくなります。OJT教育を受ける新入社員だけでなく、トレーナーも最終的な目的がわからないため、指示されたとおりに進めるしかなくなるためです。

OJTの目的や計画が現場とうまく共有されないと、OJTの進め方も曖昧になってしまい、結果重視に偏る可能性もあるでしょう。トレーナーの指導もブレやすく、育成対象である新入社員の不満の原因にもなりかねません。

OJTの本来の目的を見失わないためには、事前に現場の社員を交えたうえで、人事部と経営層の意図するOJTの目的や計画を共有しておくことが肝要です。

原因2:教育にかける時間が不十分だから

トレーナー(OJT担当者)はOJTを自分の通常業務と並行しておこなう必要があるため、自分の仕事で手一杯だと、新人教育にかける時間が十分にとれません。よって、トレーナー(OJT担当者)の上司は、トレーナー(OJT担当者)がOJTに集中できるよう、適切な業務配分をし、教育の質の低下を避ける配慮が必要です。まずはトレーナー(OJT担当者)の業務範囲や目標を見直し、OJTに専念できる体制を整えてみましょう。

原因3:トレーナーが知識やスキルを習得していないから

第1にトレーナー(OJT担当者)自身が人材育成の知識やスキルを習得していないと、十分な教育ができません。また、業務内容やノウハウについて熟知しているトレーナー(OJT担当者)でも、「知識や経験を実践に落とし込みながら伝えること」は苦手な場合も考えられます。より良いOJTを実現するには、トレーナー(OJT担当者)への育成研修や、教育マニュアルの整備もあわせて進めることが重要です。

原因4:教育に対する優先度・重要度が低いから

新型コロナウイルスへの対応にともなう喫緊の建て直しが優先され、長期的な人材教育が後回しになってしまう傾向があります。テレワークによるコミュニケーションの希薄化もまた、新人教育への関心を遠ざけている一因になっているでしょう。
また、そもそもトレーナー(OJT担当者)自身の人材教育への意識が低いと、なかなか効果的な教育ができないものです。効果的なトレーニングを実現するためにも、人材育成の目標を明確化し、その重要性を周知していくことが必要となります。

原因5:形骸化しやすいから

トレーナーの役割は目の前の仕事を教えることというように認識していたり新入社員育成の文化が形成されていなかったりすると、OJTが形骸化しやすくなってしまいます。

新入社員の成長にもなりませんので、OJTが形骸化せず機能するように、トレーナーの役割をしっかり認識させ、トレーナーの評価とも結びつけることが必要です。

OJTを成功させるために必要な6つのポイント

OJTを成功させるにはポイントを押さえたトレーニングが必要です。代表的なポイントを6つ解説します。

ポイント1:計画的にトレーニングをする

その場しのぎのトレーニングはトレーニングの目的が曖昧になるため、効果的な学習効果が得られず非効率です。よって、熟考された計画にもとづいたトレーニングの実行がポイントとなります。たとえば、計画を立てるうえで、まずは個人の強みや弱みを明確化することや、目標から逆算した育成計画を検討してみましょう。

以下のように、PDCAサイクルを回していくことが望ましいでしょう。

OJTのPDCAサイクルイメージ

ポイント2:反復的・段階的にトレーニングをする

トレーニングの効果が実務で発揮できるまでには、ある程度の時間を要します。よって単発のトレーニングではなく、反復的・段階的なトレーニングの実施が重要です。継続してトレーニングすると学びを反復して実践できるため、新人が試行錯誤をしながら着実に実力をつけていきます。

また、突発的なトラブルによって、取り組みがストップしたまま放置されるといったケースも多いため、継続してトレーニングできているか第三者によるチェックがあると万全です。

ポイント3:ポイント3:目的や目標を明確化する

トレーニングの目的や目標が明確でないと、着地点が曖昧になり効果的なトレーニングができません。たとえば、「今回のトレーニングは社員同士のコミュニケーションの円滑化が目的」と理解できていれば、お互いが同じ目的に意識をむけてトレーニングを実行できます。トレーナー(OJT担当者)と新人が、トレーニングの目的や目標を事前に共有できるようにしましょう。

ポイント4:適切な人選とトレーナーの育成をする

OJTにおいて、トレーナー向きの人とトレーナー向きでない人がいます。上司や先輩であればとりあえずトレーナーとするのではなく、トレーナー向きの社員を人選することがOJTを成功させるポイントのひとつです。

たとえば、トレーナーには、褒めたり叱ったりすることがうまく新入社員のやる気を引き出せる人、主体的に人材教育に取り組める人、より良い指導のために自省や努力をできる人が向いています。

また、日々の業務に追われていると新人教育がおろそかになる可能性があるため、日常業務と並行して新人教育に取り組めるようなバランスの取れた社員を選ぶことも重要です。

適切な人選を行ったら、OJTの方向性がブレないように企業は教育マニュアルを整備し、トレーナーに対するマインドセットや育成研修なども実施していきます。

JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)ではトレーナー向けに、OJTリーダーに必要な基本スキルを身につけられるオンラインセミナー「OJTリーダーコース」を提供していますので、ぜひご活用ください。

ポイント5:トレーナーも自身の指導を振り返る

OJTの期間が終わったら、トレーナーは必要なことは教え切ったと終わらせずに、自身の指導を振り返ることが重要です。

「どの能力をどのレベルまで引き上げることができたか?」「OJT計画や育成目標は的確であったか?」「指導内容や方

トレーナー自身が指導を振り返り、改善点を見いだすことによって、今後の指導をより良いものにしていけるでしょう。

ポイント6:Off-JTと組み合わせる

実務にもとづいたOJTは、早期に即戦力になる人材を育成するのに有効です。しかし、OJTだけでは、理論的または体系的な知識の提供が困難であったり、トレーナーのスキルによって進捗に差が生まれやすかったりするなどのデメリットもあります。

OJTをより効果的なものにするには、OJTのデメリットを補完できるOff-JT(研修やeラーニングなどの座学)と組み合わせて、複合的なトレーニングを実施していくと良いでしょう。

Off-JTでインプットした知識を、OJTでアウトプットできる仕組みを作ることでOJTの学習効果が高まります。人材育成の教育プログラムを構築する際はOJTとOff-JTが連動するように設計段階から取り組むことで、インプットからアウトプットまでスムーズに進行できるでしょう。

まとめ

OJTのトレーナー(OJT担当者)は上司や先輩社員が担うため、個人の裁量のよる部分が大きく、指導における一定の質の担保が難しい傾向にあります。よって、効果的な新人教育の実現には「トレーニングをする側の教育」も重要です。

株式会社日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)の人材育成支援サービスでは、新入社員から経営幹部まで、立場や役割に応じた育成プログラムを展開しています。

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JMAM HRM事業 編集部

文責:JMAM HRM事業 編集部
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