- 対象: 人事・教育担当者
- テーマ: 人事制度・評価
- 更新日:
目標管理とは?OKR・KPIとの違いや導入方法、注意点なども解説
目標管理を適切に行うために、目標管理制度(MBO)の概要、企業に導入するための手順などを、詳しく解説します。業務の効率を上げ、業績向上、従業員のモチベーションアップにつなげるために、適切に目標管理制度(MBO)を導入・運用しましょう。
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目標管理制度(MBO)と人事評価制度、OKR、KPIとの違い
目標管理制度(MBO=Management by Objectivesの略)には、人事評価制度、OKR、KPIなど、類似した考え方があります。正しく理解するために、それぞれの違いを解説します。
人事評価制度との違い
日本では、「MBO=人事評価制度」という誤った認識が定着しています。これは、目標管理が導入されたタイミングと同時期に成果主義が取り入れられたことに起因しています。
目標管理制度(MBO)は、個人が自ら目標と成果を設定し、その達成に向けて自己管理を行うことを指すもので、人事評価制度ではなくマネジメント手法です。
一方、一般的な人事評価では、マネージャーや上司が社員の成果や行動、立ち振る舞いなどを評価し、報酬や昇進などの判断基準に役立てます。
OKRとの違い
OKR(Objectives and Key Results)と目標管理制度(MBO)はどちらもマネジメントの手法ですが、さまざまな違いがあります。
下記の表にそれぞれの特徴を示します。
目標管理制度(MBO) | OKR | |
---|---|---|
提唱者 | ピーター・ドラッカー | ジョン・ドーア |
提唱時期 | 1954年 | 1970年代 |
見直しの頻度 | 年に1度 | 通常は四半期に一度(多い企業では毎月) |
測定方法 | 目標の達成度やプロセスの評価 | 目標の達成度の評価 |
共有範囲 | 個人の目標 | チームや組織の目標 |
目的 | 個人のモチベーション維持や組織の利益 | マネジメントやチーム力、生産性の向上 |
達成度の目安 | 年度末 | 四半期ごとまたは毎月 |
KPIとの違い
KPI(Key Performance Indicators)は、目標設定のために使用される指標であり、目標管理制度やOKRのようなマネジメント手法ではありません。
KPIは、特定の目標や目的の達成度を測定するための指標です。例えば、売上目標を掲げる際は、売上額や顧客獲得数などにKPIを設定します。
KPIを設定する目的は「目標達成に必要なプロセスが辿れているかどうかを確認するため」です。目標達成の進捗状況を定量的に把握し、課題や改善点を特定するのに役立ちます。
目標管理制度(MBO)は目的によって2つに分けられる
目標管理制度は目的によって2種類に分類されます。それぞれ詳しくみていきましょう。
組織活性型
組織活性型とは、日本における典型的なMBOの種類です。社員が自らの目標を設定し、その達成に向けて自己管理を行います。
Y理論(人は条件次第で責任を負い、自分が設定した目標に対し積極的に行動するという考え方)に基づいており、個々の社員の自主性を尊重し、組織全体の活性化を図ります。
利点は、社員の自主性と意欲を高められることです。社員が自分で目標を設定し、その達成に向けて取り組むことで、自己成長や組織全体のパフォーマンス向上が期待できます。ただし、目標設定や実行計画が不明瞭である場合には、効果が十分に発揮されないことがあります。
課題達成型
課題達成型は、企業の大きな目標達成を中心に据えた手法です。組織の目標がトップダウンで設定され、それに基づいて個々の社員の目標が定められます。
企業が設定した年間売上や利益などの目標を部門やチームの目標に分解し、さらに個々の社員に目標が割り当てられます。これにより、個々の成果が組織全体の目標達成に直結し、企業の目標が達成される仕組みです。
目的は、企業の大きな目標の達成や課題解決に向けて、個々の社員の目標設定を通じて成果を最大化することにあります。
目標管理制度(MBO)のメリット
企業が目標管理制度(MBO)を導入すると、下記のようなメリットを得られます。
自律的にマネジメントができる
目標管理制度(MBO)は、アメリカの経済学者であるドラッカーによって提唱されたマネジメントの概念です。「目標管理の最大の利点は、支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメントに換えることを可能にするところ」と述べています。
目標が明確に設定されることで、自身の仕事を管理・コントロールする能力が向上します。何をすべきかが明確になるため、社員は自らの行動を効果的に調整し、目標達成に向けて努力することができます。
例えば、ある社員が自身の目標として「年間売上を10%増加させる」と設定した場合、その目標に向かって自ら計画を立て、行動を起こすことができるでしょう。
社員が自律的に計画、行動し、自己管理ができるようになります。
社員のモチベーション向上
評価の基準が明確化すれば、現在行っていることが評価につながると意識できます。そのため、努力しても評価されないという気持ちや、意味のないことをしているのではないかという疑念を持ちにくくなるでしょう。
心理的安全性の確保につながる
目標管理制度(MBO)における上司とのコミュニケーションや進捗管理によって、社員は目標に向かって進んでいることを実感しやすくなります。
また、組織目標の達成に貢献している実感を得ることで、存在価値を感じることができ、心理的安全性の確保につながります。
「心理的安全性の高い組織のメリットを解説!ぬるま湯組織にしないためには?」
透明な評価が可能となる
目標管理制度(MBO)を導入すると、社員がどのような目標を達成すべきか明確になります。そのため、目指すべきものが上司と部下で共有可能です。結果として、評価される側も納得できる透明な評価ができるようになるでしょう。評価のブラックボックス化を防げます。
上司にとって評価がしやすい
何か明確な指標がないと、部下をどのようにして評価すべきか判断が難しくなるでしょう。評価に時間や手間がかかると、精神的に負担も重くなります。目標管理により達成すべきものを明確にできれば、それに即した評価が可能です。
目標管理制度(MBO)のデメリット
目標管理制度(MBO)のデメリットについて解説します。
部署によっては目標を設定しにくい
目標設定では、定量的なわかりやすい目標を設定すると、進捗管理を行いやすいです。ですが部署によっては目標を明確化できないところもあります。目標が適切でない場合、目標管理制度(MBO)が形骸化してしまうケースもあるでしょう。
設定する目標によっては効果が得られない
目標を達成し評価を受けるために、誰でも簡単に達成できる目標を設定してしまう場合もあります。目標管理を目標にするのではなく、最終的に何を果たすべきかを意識しましょう。
目標管理制度(MBO)の導入手順
メリット、デメリットを踏まえ、効果的に目標管理制度(MBO)を導入するための手順を紹介します。
目標管理制度(MBO)についての理解を深める
経営層や管理職が目標管理制度(MBO)を単なる制度としてではなく、社員の自発性を引き出し、組織目標や戦略を達成するための手段として捉えることが重要です。
例えば、経営会議や部門会議などで目標管理制度(MBO)の意義や目的を定期的に説明し、社員がその重要性を理解できるようにします。
個人目標を設定する
個人の目標は、最終的に組織の目標達成に貢献できるように設定する必要があります。企業や部署、チームなど組織単位の目標を周知し、個人の目標がどのように貢献するかを明確にしましょう。
また、個人の目標は社員自身が決定するものの、上司が目標を企業の利益や部下の成長の観点から必要に応じて修正することが大切です。
その際は、組織の目標や利益につながっているか、部下の能力に対して適切な難易度かどうかを確認します。
達成までの計画を策定する
目標を達成するための具体的なアクションやスケジュール、担当者などを明確にします。
例えば、売上目標を達成するためには、新規顧客獲得のための営業活動を強化することや、既存顧客のフォローアップを徹底することなどが必要です。
また、目標達成までの道のりを明確にするためにKPIを設定することがおすすめです。目標達成状況を把握しつつ、必要に応じて軌道修正しながら目標達成に向けて進めるようになります。
定期的に達成度を確認する
目標を設定した後は、定期的に進捗を確認し、達成度を把握することが重要です。
日報や週報、1on1ミーティングなどで目標達成の状況や課題を把握するようにしましょう。
その際、単なる進捗報告だけでなく、良い点や悪い点、問題点、課題点などを振り返りながら確認することが重要です。業務の質や効率性を向上させるための改善点を見つけることができます。
問題点や課題が浮かび上がった場合には、それらに対する解決策を考え、必要に応じてアドバイスを行います。
ただし、上司が一方的に方向性を定めるのではなく、社員が自ら考えて行動することが重要です。
個別のアドバイスが必要な場合には、1on1(上司と部下が1対1で行う、定期的な面談)を活用しましょう。
1on1について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
最終的なフィードバックを行う
自己評価と上司による評価により、目標の達成度合いを評価し、フィードバックを行います。この工程は目標管理を正しく行う上で非常に重要です。
期末や年度末などの期日ごとに達成度を評価し、目標達成の成果を客観的に確認しましょう。
上司は部下に対してアドバイスを行いますが、目標達成度合いという結果だけでなく、その結果に至った工程や行動にも目を向け、評価改善を行います。
努力度だけでなく、目標の達成度に対して客観的な評価を行うことが重要です。
目標管理制度(MBO)における目標設定の手法
目標管理制度(MBO)における目標設定の手法はいくつかあります。代表的なものを4つ紹介します。
ベーシック法
2×2の表を作成し、そこに書き込むかたちで目標設定を行います。それぞれのマスには、目標、達成基準、計画、期間を書き入れ、目標やどのように達成するのかを可視化しましょう。
マンダラチャート
マンダラチャートは、最終目標を行うためには何をすべきか、細かく細分化するためのチャートです。3×3の小マスを3×3に並べたものを用意します。マスの数は合計9×9=81個です。
マスの中央に最終的な目標を記載します。そして、その周囲8マスに最終目標を達成するための、細かい目標を8個記述しましょう。その細かい目標は中心の3×3マスの周囲にある8つの3×3マスの中心に転記します。
周囲の3×3マスは、中心に転記された細かな目標を達成するために、何をすべきか具体的に記述します。
SMARTの法則
SMARTの法則は、下記の単語の頭文字を略した法則です。
- Specific:具体的
- Measurable:計測可能
- Agreed upon:達成できる範囲内
- Realistic:現実的
- Timely:期限あり
目標管理のためには、上記のように実際に達成可能で、いつまでにどのくらい達成すべきか客観的に判断できる目標を設定すべき、という法則です。SMARTの法則で目標管理を行うと、メンバー同士で共有しやすくなるでしょう。
HARDゴール
HARDゴールは下記のような単語で構成されており、SMARTの法則よりも感情に即したものです。
- Heartfelt:どうしても達成したいもの
- Animated:目標達成後の活き活きとした状態が想像できる
- Required:何が必要とされているのか明確にする
- Difficult:困難でやりがいのあるもの
社員個人のやる気を引き出し、今後のキャリアの目標を設定するのに最適でしょう。
目標管理制度(MBO)を導入する際の注意点
目標管理を効果的に行うためには、下記のような注意点に留意してください。
上司や管理側の教育が必要となる
目標管理において、正しく目標を設定できているのか、達成できているのかは、客観的で適切なフィードバックが必要です。
そのため、上司など目標管理する側が、正しい知識を身につけなければなりません。社内研修やセミナー等で、上司や管理側の教育を行いましょう。
なお、JMAMでは管理職が「目標設定スキル」を習得するための研修を提供しています。組織全体の目標達成において、管理職のスキルアップは必要不可欠です。まずはお気軽にご相談ください。
人事評価のためだけに使用しない
目標管理を、人事評価に使用している企業も多くあるでしょう。ただ、目標管理の結果をすべて人事評価のためだけに使用すると、目標達成ではなく人事評価のために行動する社員が増えることが懸念されます。
あくまで評価の1つとして、目標管理の最終目標は企業全体の目標であることを忘れないようにしましょう。
まとめ
今回は目標管理制度(MBO)のメリット・デメリットや導入手順などについて解説しました。
目標管理は、企業全体の目標を達成するために必要なものです。社員それぞれが、自分が何をすべきかを把握し、自律的な行動を促すためにも導入してみてはどうでしょうか。
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