- 対象: 管理職
- テーマ: マネジメント
- 更新日:
77%が「管理職になりたくない」【調査レポート】ポジティブな管理職を育てるために人事が押さえたいポイントとは?
「管理職になりたくない」という潮流が若手社員のなかで高まっているといいますが、果たして本当なのでしょうか。そこで、日本能率協会マネジメントセンターは、2023年4月インターネットによる管理職のアンケート調査を実施しました。「管理職」という仕事への認識や実態、管理職になって感じたこと、そして、ポジティブな管理職を育てるために必要な支援について、調査結果を一部抜粋しご紹介します。
■調査概要
管理職の実態に関するアンケート調査
調査方法:インターネット調査
調査対象:企業規模300名以上の管理職(課長・部長・本部長層)/一般社員
有効回答:管理職1,072名/一般社員1,116名
調査時期:2023年4月
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管理職の実態に関するアンケート調査資料
目次
- 管理職の実態に関するアンケート調査を実施!
- アンケート【1】「管理職になりたいですか?」
《人事が押さえるべきポイント》ネガティブ部下の仕事に対する価値観 - アンケート【2】「管理職になりたくない理由は何ですか?」
《人事が押さえるべきポイント》管理職には動機づけや自信を与える支援が必要
《人事が押さえるべきポイント》ポジティブな管理職が組織のパフォーマンスを高める - アンケート【3】「管理職の仕事、続けたいですか?」
《人事が押さえるべきポイント》ポジティブな管理職が組織のパフォーマンスを高める - アンケート【4】「管理職の役割についてどう考えていますか?」
《人事が押さえるべきポイント》負担が大きい管理職はネガティブに - アンケート【5】「マネジメント行動で意識してることは何ですか?」
《人事が押さえるべきポイント》管理職に求められるマネジメント行動とは - アンケート【6】「管理職になる前、成長につながった経験は?」
《人事が押さえるべきポイント》ポジティブな管理職を育てるには昇進前のマネジメント経験が重要! - アンケート【7】「管理職になる前に受けたかった支援や教育は?」
- 【補足】管理職に求められる役割・スキルは?
- まとめ
管理職の実態に関するアンケート調査を実施!
JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)は、2023年4月にインターネットによる管理職の実態に関するアンケート調査を実施しました。
今回は、調査結果の内容と、人事が押さえておくべきポイントについて解説します。
アンケート【1】「管理職になりたいですか?」
一般社員の7割以上が「管理職になりたくない」
一般社員に対して、「今の仕事が面白い/面白くない」「管理職になりたい/なりたくない」を軸に四象限に分類したところ、約77.3%が「管理職になりたくない」と回答。
2018年にJMAMが行った調査「JMAM管理職実態調査2018」(n=566)で同様の分類を行ったところ、「管理職になりたくない」と回答した部下は72.8%だったことから、近年取り沙汰されている通り、多くの一般社員に「管理職になりたくない」という傾向があることが予想されます。
【ポジティブ部下・ネガティブ部下の割合】
《人事が押さえるべきポイント》ネガティブ部下の仕事に対する価値観
「管理職になりたくない」という出世に対してネガティブな部下について深く理解するには、若者の考え方や価値観について知ることが大切です。
いまの若者(20代)とは、主に「Z世代」を指します。「〇〇世代」の系譜は以下の通りです。
- バブル期世代:1969年以前ごろの生まれ
- 就職氷河期世代:1969年~80年ごろの生まれ
- ミレニアル世代:1981年~90年代中ごろの生まれ
- Z世代:1990年代終盤~2012年ごろの生まれ
世代によって仕事への向き合い方は大きく異なる場合があります。例えば、Z世代には「無理のない成長と働く場所の自由度を求める」といった傾向が見られます。スキルアップや成長意識はあるものの、無理なく業務をこなしたいと考える人が多いようです。
ほかにも、仕事への意識においては、「うまくいかない経験から学びたいとは思っているが、失敗はしたくない」と考える人が多い傾向にあります。失敗への恐れから、挑戦をしなくなってしまい、成功体験が得られにくくなっているZ世代もいるようです。
下記の記事では、Z世代がどのような環境変化を経験していて、どのような働き方を求めているかを調査した「イマドキ新入社員意識調査」の結果をまとめています。Z世代について知るためにも、ぜひ参考にしてみてください。
アンケート【2】「管理職になりたくない理由は何ですか?」
なりたくない理由1位は「自分は向いていないから」
管理職になりたくなかった理由で、全体でもっとも多い項目は「自分は管理職に向いていないから」(全体46.6%)で、ネガティブ管理職の41.0%、ポジティブ管理職の25.6%が回答。
また、同様の質問を部下(一般社員)にも「管理職になりたくない理由」として聞いたところ、ネガティブ部下の53.0%が回答していました。
《人事が押さえるべきポイント》管理職には動機づけや自信を与える支援が必要
「管理職を続けたい/続けたくない」「管理職になりたかった/なりたくなかった」で分類したところ、もともと管理職になりたくないと感じていたネガティブな状態から、管理職を続けたいと感じているポジティブな状態に変化した管理職が16.7%いることがわかりました。
このことから、ネガティブな状態だとしてもその後、ポジティブ管理職に変わる余地があることがわかりました。
【管理職になる前となった後の意識の変化】
また、管理職になりたかった理由について、もっとも回答が多かったのは「報酬アップのため」。ポジティブ管理職がネガティブ管理職と比較して大きく上回っていたのは「自分の能力アップや成長のため」、ネガティブ管理職が上回っていたのは「会社や周囲から評価されたと思えるから」でした。
この結果から、ポジティブ管理職は能動的なモチベーションで管理職になることを志向していたのに対して、ネガティブ管理職は周囲からの見え方などを考えており、モチベーションの感じ方に違いがあることが推測されます。
【管理職になりたいと思っていた理由】
管理職・管理職の候補となる人材には、仕事に対する動機づけや自信を与えるなどの支援が必要といえるでしょう。上司は、部下のポテンシャルを信じて、ときには一定の権限を与え、主体性をもって業務に取り組めるような環境を構築することが重要です。
アンケート【3】「管理職の仕事、続けたいですか?」
5割以上の管理職が、「今の仕事が面白く、管理職を続けたい」と感じている
「今の仕事が面白い/面白くない」「管理職を続けたい/続けたくない」という設問の回答に応じ、回答者を四象限に分類した結果、管理職全体の56.4%は、「今の仕事が面白い」「管理職を続けたい」と感じている“ポジティブ管理職”であることがわかりました。
《人事が押さえるべきポイント》ポジティブな管理職が組織のパフォーマンスを高める
ポジティブな管理職を意味する「ポジティブ・エナジャイザー」という言葉があります。これはミシガン大学のキム・キャメロン博士が提唱した、職場にポジティブなエネルギーを与えるリーダーのことです。
職場にポジティブ・エナジャイザーがいると、個人の幸福感や仕事に対する満足感、組織の一体感、業務のパフォーマンスなどが高まるとされています。
つまり組織力をアップさせるには、ポジティブ・エナジャイザーを育成することが重要です。
ポジティブ・エナジャイザーとは、具体的にどのような人物なのか、以下にその特徴をまとめました。
- 他者の活躍を支援する
- 周囲から信頼されている、頼られている
- 言動に一貫性がある
- 語彙が豊か
- 周囲に気配りができ、何事にも積極的に関わる
- 正直でうそをつかない
- チャンスを見つける才能がある
- 問題解決能力が高い
- 笑顔が多い
- 何事にも感謝し、謙虚
ポジティブ・エナジャイザーとは反対に、エネルギーを奪う人を「エナジー・ヴァンパイア」と名付けています。具体的には、「問題を引き起こす」「柔軟性がない」「批判的」といった特徴のある人を指しています。組織の足を引っ張るエナジー・ヴァンパイアを生み出さないようにしなければなりません。
アンケート【4】「管理職の役割についてどう考えていますか?」
管理職の役割について、ポジティブ管理職は「成長につながる」、ネガティブ管理職は「調整が多くて面倒」
実際に管理職になってみて、「管理職」という仕事にどのような印象を抱いたかを聞いたところ、ポジティブ管理職は「自分の成長につながった」(95.4%)が最多の回答、ネガティブ管理職は「調整が多くて面倒」(71.3%)が最多となりました。
ポジティブ管理職とネガティブ管理職の回答差がもっとも大きい項目は「チームマネジメントが面白い」(ポジティブ管理職86.8%、ネガティブ管理職20.8% 差:66.0%)。一方、回答率において両者の差が少なかったのは「プレーヤーとしての仕事の方が面白い」「調整が多くて面倒」「負荷に対し報酬が釣り合っていない」でした。
【管理職になってみたことで感じた「管理職」という仕事への印象】
《人事が押さえるべきポイント》負担が大きい管理職はネガティブに
管理職になって負担が大きいと感じる場合には、ネガティブな姿勢になっていくと考えられます。
企業としては、管理職のタスク量やスケジュールを把握したり、精神的・肉体的な負荷をどの程度感じているかなどを定期的にチェックしたりする仕組みが必要です。
アンケート【5】「マネジメント行動で意識していることは何ですか?」
9割以上のポジティブ管理職が、「相手を尊重し誠実に行動」「変革や革新を実行」することを意識
「意識しているマネジメント行動」を聞いたところ、ポジティブ管理職の最多回答は「顧客・メンバー・関係部門・協力者などから信頼を得られるように、相手を尊重し誠実に行動している」で、ネガティブ管理職の最多回答も共通していました。
一方でギャップが大きかった項目は「抵抗や障害を乗り越えて、機会を逸することなく、変革や革新を実行している」(ポジティブ管理職87.9%、ネガティブ管理職46.0% 差:41.9%)、「日ごろから上位者に進んで協力し、必要なときに味方になってくれる関係性を築いている」(ポジティブ管理職91.4%、ネガティブ管理職51.5% 差:39.9%)。
【意識しているマネジメント行動】
《人事が押さえるべきポイント》管理職に求められるマネジメント行動とは
管理職には、部下やチームメンバーのやる気を引き出し、目標達成を支援するためのマネジメント行動が求められます。
ただ数字を管理する、ただ仕事を割り振るだけでなく「いかに人を動かすか」を考えなくてはなりません。
そのためには、業務の遂行に必要なスキルだけでなく管理職に求められる網羅的なスキルの習得が必要です。
「マネジメント・ビュッフェ」では、管理職に特化した学びを提供しております。JMAMが40年以上管理職を育成して得たノウハウを活用したeラーニングで、学びをサポートする機能や受講者を一元管理する機能を搭載しています。
30日間無料でお試しもできるので、組織に良い影響をもたらすポジティブ管理職を育てたい企業様は、ぜひご検討ください。
アンケート【6】「管理職になる前、成長につながった経験は?」
1位は「社内外を巻き込んだプロジェクトリーダーとしての経験」
定性コメントで「管理職になる前に自分を一番成長させた経験」について聞いたところ、成長経験としてもっとも多く挙げられていた回答は「プロジェクトへの参画」でした。
特に、新規事業や、部署外・社外との連携が必要とされるプロジェクトのリーダーとなって成功した経験が成長につながったと感じているコメントが多く見られました。
アンケート【7】「管理職になる前に受けたかった支援や教育は?」
「マネジメント」に関する支援や教育が最多
管理職になる前に受けたかった支援や教育の内容について、全体でもっとも多い回答は「マネジメント」であり、具体的にはチームやプロジェクトの運営、部下育成、タイムマネジメントといったものが挙げられました。
《人事が押さえるべきポイント》ポジティブな管理職を育てるには昇進前のマネジメント経験が重要!
部下層に、管理職になってからもポジティブに働いてもらうための支援として、プロジェクトリーダーとして管理職に近い立場を任せることにより、権限を持って仕事を進めることや、人を巻き込むこと、巻き込んだ人をどう動機づけるかなどの疑似的な管理職経験を積んでもらうことが有効だと考えられます。
【補足】管理職に求められる役割・スキルは?
組織力を向上させるには、ポジティブな思考ができる管理職が欠かせません。しかし近年、管理職に対してネガティブなイメージをもつ若手社員が増えている傾向にあります。
企業は、管理職候補となる人材に動機づけや自律性を高めるためのサポートを積極的にしていくことが必要です。
また優秀な管理職を育てるには、求められる役割やスキルについて改めて理解しておくことが大切です。
最後に、管理職の定義と役割、求められるスキル・能力についておさらいしておきましょう。
管理職の定義
管理職とは、企業内で部や課を率いる役職のことです。一定の権限を持ち、部下やチームをまとめる役割を担います。
日本における管理職は、「係長」「課長」「次長」「部長」などと呼ばれるのが一般的です。
最近では、「マネージャー」「ディレクター」「チームリーダー」といったように、英語の役職名を採用する企業も増えています。
管理職の職務範囲は企業によってさまざまです。基本的には、チームやプロジェクトを統括して予算管理や人員管理、売上管理などのマネジメント業務を担当します。
管理職の役割
管理職の一般的な役割を下記にまとめました。
なお、部長やチームリーダーなど、職位によって責任範囲は異なります。
① 目標設定・進捗管理
どのような業種でも、売上やノルマなどの目標を掲げて仕事を遂行するのが一般的です。部門やチームのリーダーである管理職は、その目標設定と進捗管理を担います。
豊富な業務経験から現実的な目標を設定し、達成できるよう計画を立て、チームを指揮します。
② 労務管理
部下の働きやすい環境を整備するのも管理職の役割のひとつです。勤務時間や福利厚生、健康、安全、ハラスメント対策、業務内容が契約に違反していないかなど、多岐にわたる労務管理を担当します。
労務管理を徹底することで、チームや部門が健全に運営でき、離職率の低下や生産性アップにつながります。
③ 部下の管理(育成や仕事への動機付けなど)
組織としての生産性を高めるには、個人の仕事の質や効率をアップさせることが欠かせません。管理職は部下へ仕事の進め方やノウハウなどを指導し、人材育成の役割も担います。ときには、部下の相談に乗り、仕事やキャリアにおける悩みや不安を取り除きます。
④ チームビルディング
企業は、さまざまな部門やチームの集合体です。ひとつの部門やチームを率いる管理職は、チームビルディングによって組織力を向上させる役割を担います。
部下それぞれの長所や短所を把握して適材適所の仕事を振ることや、協力し合えるような環境を構築することが大切です。
⑤ 経営層との橋渡し
経営層の考えや企業理念、意思決定を部下に浸透させるのも管理職の役割です。経営会議で決まった事項を、自分の部門やチームに伝え、具体的な取り組みを指示します。
管理職に求められるスキル・能力
JMAMが考える管理職に求められるスキルは、下記の7つです。
- 目標指向力
- 業務運営能力
- 組織能力
- 動機づけ能力
- 育成能力
- 信頼される能力
- 自己革新力
各スキルの詳細は下記の記事で解説していますので、気になる方はご覧ください。
まとめ
管理職になりたくないと考える社員をサポートする手法として、成長している企業が重視しているのが「対話」です。部下やメンバーを一人の人間としてとらえ、言葉を交わすことで、心理的安全性の醸成につながり、モチベーションや帰属意識が高まっていきます。
対話の取り組みとしては、『1on1ミーティング』の導入が効果的です。以下から、1on1ミーティングのポイントや実践マップなどをまとめた資料を無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
「管理職の実態に関するアンケート調査」について
ポジティブ管理職・ネガティブ管理職が置かれている職場の環境や、調査の詳細を掲載した調書資料「管理職の実態に関するアンケート調査」はこちらよりダウンロードいただけます。
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