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- テーマ: ビジネススキル
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ビジネスに必要なエンパシーとは?高めるための5つのポイントを解説

エンパシーは、相手の状況や感情を理解し、共感する能力を指します。多様な価値観をもつ他者と協働する際に求められ、良好な人間関係の構築や顧客満足度向上にも関わりが深いことから、ビジネス上の人材育成における重要性が高まっています。
今回は、エンパシーの概要やエンパシーの高い人と低い人の特徴、ビジネスにおける重要性・メリット、およびエンパシーを高めるための5つのポイントについて解説します。
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ビジネスにおける「エンパシー」とは?
エンパシーは、4つの種類に分類されるほど多義的な概念です。まずは、シンパシーとの違いを説明した上で、エンパシーの種類のそれぞれについて解説します。
エンパシーの定義
ビジネス上の人材育成の文脈において、エンパシーは、従業員や顧客など、自分とは異なる立場にある他者の感情や状況を理解し、共感する能力を指します。
「empathy(エンパシー)」の語源は、「心の状態」を意味するギリシャ語の「emphatheia(エンファテイア)」です。日本語では「共感」「感情移入」と訳されます。
なお、「sympathy(シンパシー)」はエンパシーと似た言葉ですが、異なる意味をもつ概念です。
エンパシーは、自分とは違った価値観や視点をもつ相手の考えや気持ちに理解と共感を示すことを意味します。相手の意見に対して、「お気持ちがわかります」と伝えるようなイメージです。
一方、シンパシーは、情緒的に相手へ共感し、同情を示すことを指します。例えば苦しみや不幸を感じる他者に対して、「気の毒だな」「哀れだな」と思うイメージです。
エンパシーの種類
エンパシーは下記の4つの種類に分類されます。
①エモーショナル(感情的)・エンパシー
他者の感情を直感的に感じ取り、自分事のように共感する能力です。
落ち込んでいるメンバーを適切な言葉がけで励ます、あるいは、悲しむ相手を見て自分も悲しくなるといった場面で発揮されます。
②コグニティブ(認知的)・エンパシー
他者の視点に立ち、考えや心情を理解しようとする能力です。
この能力が高まると、異なる価値観をもつ他者との関わりにおいても、相手の行動や思考プロセスなどへの理解が深まります。
③コンパッショネイト・エンパシー
困難な状況に置かれた他者に共感を寄せ、改善に向けて実際に具体的な行動を起こす能力です。
他者を助けるために、問題解決の方法や適切なサポートを積極的に提供しようと努めます。
④ソマティック・エンパシー
他者の感情を自分の身体的な感覚として感じ取る能力です。
例えば、緊張している他者を見て自分も緊張してしまう、具合が悪い相手と過ごすうちに体調を崩してしまうといった状況が考えられます。
ビジネスにおいてエンパシーが高い人・低い人の特徴
エンパシーの強さは、育った環境や経験などの影響を受けるといわれており、個人差があります。
ビジネスにおけるエンパシーの高い人と低い人には、それぞれ次のような性格的特徴や行動パターンがみられます。
エンパシーが高い人の性格的特徴
エンパシーが高い人には、下記のような特徴がみられます。
- 相手の表情や声、ボディーランゲージから敏感に気持ちを読み取る
- 話をよく聞き、心情や意図を適切にくみ取る傾聴力に優れる
- 周囲の人々への関心がある
- 集団行動が多い仕事で力を発揮できる
- 他者の感情をくみ取り過ぎるあまり、共感疲労に陥ることもある
エンパシーが低い人の性格的特徴
エンパシーが低いと思われる方の特徴は下記の通りです。
- 自分本位で相手の気持ちをあまり考えない
- 思いやりのない発言をする
- 自分の価値観に合わない意見は受け入れない
- 自分の感情に鈍感で、適切に感情表現ができない
従業員がエンパシーを身に付ける重要性・メリット
エンパシーの高い従業員が増えると、組織はどう変わるのでしょうか。
次に、ビジネスにおいてエンパシーが必要な理由や、エンパシーの重要性・メリットについて解説します。
メリット1|信頼関係の構築
エンパシーを発揮して、相手が何を考え、どう感じているかを理解しようとする姿勢は、「自分をわかってくれている」という信頼感や安心感を相手のなかに生み出します。
この感覚は、あらゆるビジネスシーンにおける他者との協調や円滑なコミュニケーションを促進します。
例えば、営業活動の成果を最大化する上で、顧客との良好な信頼関係は不可欠です。
日頃から顧客の話に耳を傾け、相手の立場や考え方への理解を深めることで、信頼を得やすくなるだけでなく、隠れたニーズの発見やより良い提案へ発展する可能性も高まります。
また、上司として部下をマネジメントする場面でも、エンパシーは有効です。
関心をもって部下の意見を傾聴し、効果的な声がけができると相互理解が深まり、率直な意見交換や必要な改善ができる風通しの良い組織づくりにも良い影響を与えます。
さらに、エンパシーを発揮できる従業員が増えていくと、コミュニケーションが活性化し、チームワークの強化やチーム全体のモチベーションアップも期待できます。
メリット2|顧客満足度の向上
エンパシーの高い人材は、対話を通じて顧客のニーズや不満を正確に把握して、適切に対応しようと努力します。
その積み重ねが、顧客満足度の向上や長期的な関係の基盤となります。
エンパシーが発揮される場面のひとつが、商品開発やマーケティングです。顧客の意見に耳を傾け、異なる視点も柔軟に取り入れようとする姿勢が、顧客満足度を高める新たなアイデアや解決策の創出に貢献します。
そして、接客においては、他者の感情にフォーカスするエンパシーが、顧客満足度を高めるための重要な要素です。
気持ちに寄り添う接客が顧客の心をつかみ、リピート率や顧客ロイヤリティの向上につながります。
従業員がエンパシーを発揮するための5つのポイント
続いて、効果的に従業員のエンパシーが発揮されるように、上司や人材育成担当者がサポートする際のポイントを解説します。
対話できる環境をつくる
エンパシーの育成には、自由に対話できる環境が欠かせません。お互いの考えや意見、気持ちを対等な立場で話し合える環境が、エンパシーを育む土壌となります。
具体的な方法として、1on1をはじめ、定期的なミーティングやフィードバックが効果的です。少なくとも、月1回以上その場を設けることをおすすめします。
また、対話をする際のポイントは、あらかじめ対話の目的を明確にしておくことです。目的がないと、何を話せば良いかわからないという状態に陥りやすくなるからです。参加者に戸惑いが生じるばかりか、モチベーションの維持にも悪影響を及ぼしかねません。
定期的な対話は、新しい洞察が得られるような話の聞き方や効果的な質問、多様な視点を受け入れる柔軟性などが身に付く機会にもなり得ます。
なお、JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)では、効果的な1on1を実施するための知識や実践方法を学べる研修を実施しています。詳しくは下記をご覧ください。
相手の話を傾聴する
日頃から他者とのコミュニケーションで傾聴を意識することも、エンパシーの向上に役立ちます。
傾聴とは、単に「相手の話を聞く」という表面的な行為ではありません。話の内容だけでなく、表情や声、身ぶりなどからも相手の感情や意図をくみ取り、ときには適切な質問で新たな視点やアイデアを引き出して、対話を発展させるものです。
まずは、上司が部下の話を傾聴することで手本を示し、様子をみて、部下にも傾聴を促してみると良いでしょう。
傾聴力の高め方や具体的な育成施策については、下記の記事で詳しく解説しています。
相手の立場を考える
立場の違う相手の考えや心情への理解力や共感力を育成するには、ロールプレイングが有効な手段です。想定される場面や状況に身を置くことで、他者の思いや行動の意図などへの理解が深まります。
例えば、応対品質を向上させたいケースでは、営業や接客を想定したロールプレイングでお客様役を務めるのもひとつの方法です。
また、実際に自社のサービスを利用したり、商品を使ったりすることで、お客様の心情への理解が深まります。
ロールプレイングでは、参加者同士のフィードバックを積極的に行うことで、新たな課題の発見やノウハウの共有につながります。
具体的なフィードバックをする
エンパシーが高い人は、相手の思考や気持ちにフォーカスし過ぎるあまり、自分の感情と混同してしまう傾向があり、その結果、思い込みや誤った判断が多くなることがあります。
その対策として、自分の感情、および共感したことや共感できなかったことなどを具体的な言葉にするトレーニングが効果的です。
慣れないうちは難しく感じられるはずですが、1on1やロールプレイングのフィードバックで実践するうちに、誤解や齟齬を生まない共感力が身に付くはずです。
時間をかけてトレーニングする
エンパシーは、短期間で高まるような能力ではありません。
特に、他者の感情を読み取ることが困難な方、相手の置かれた立場を想像することが苦手な方に対しては、エンパシーを育成する際に時間がかかる場合もあります。
まずは小さなステップから始め、徐々に感情を認識するトレーニングを積むことをおすすめします。また、過度なストレスがかかることがないよう、精神的なサポートも行いましょう。
まとめ
エンパシーは、多様な背景や価値観をもつ人々が協力して仕事を進める上で必要な能力です。信頼関係の構築や顧客満足度の向上といったエンパシーのメリットは、営業活動や接客など、幅広いビジネスシーンで成果を生み出すための原動力となります。
エンパシーを育成するには、1on1やロールプレイングなどが効果的です。また、日頃のコミュニケーションで傾聴や相手の視点を意識することでも、エンパシーの向上を促進できます。
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