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  • 対象: 管理職
  • テーマ: マネジメント
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マネジャーとリーダーの違いとは?優秀な人材を育てる方法

マネジャーとリーダーの違いとは?優秀な人材を育てる方法

企業の成長において、チームを統率するマネジャーやリーダーの役割は重要です。チームとして目標を完遂し成果を出せる即戦力が求められる一方で、次世代のリーダーを育成する時間やリソースが限られているのが現状です。加えて、社員のモチベーションを維持し、成長を促す環境づくりにも悩んでいる人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、マネジャーとリーダーの違いを明確にし、どのようにして優秀な人材を育成すれば良いかを解説します。

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マネジャーとは

まずは、マネジャーの定義や必要なスキルについて解説します。

ドラッカーによるマネジャーの定義

有名な経営学者であるピーター・ドラッカーによると、マネジメントは「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」であり、マネジメントを遂行する人を「マネジャー」と呼びます。さらに、マネジャーは「命令する権限をもつのではなく、貢献する責任をもつ立場」と定義されています。

マネジャーに必要なスキル

ドラッカーの示すマネジャーの定義を踏まえて、必要なスキルを解説します。

①目標設定能力

マネジャーは企業やチームの具体的な目標を設定し、各メンバーがその目標に向かって行動できるよう導く必要があります。

適切な目標が設定されることで、メンバーは「自分の役割」や「どのような成果が期待されているか」を明確に理解できます。また、メンバー全員が一丸となって目標達成を目指す意識も醸成されるでしょう。

目標設定にはいくつかポイントがあります。例えば、「実現可能な目標の高さ」「達成までの期限」「数値は具体的に示す」などです。これらのポイントを押さえて適切な目標を設定することが求められます。

②組織化能力

組織化能力とは、組織の資源や人員を効率的に配置し、最大限の成果を生み出すための能力です。

適材適所の判断と、チームが効果的に機能するための環境づくりが求められます。具体的には、各メンバーの役割を明確にし、業務フローを整備することが組織化の重要なステップです。

③コミュニケーション能力

マネジャーは、チームメンバーがそれぞれ能力を発揮できるように、効果的なコミュニケーションを取る必要があります。効果的なコミュニケーションとは、情報を一方的に伝えるのではなく、相手の意見やフィードバックを受け入れる双方向の対話のことをいいます。

対話を通してチームのモチベーションを高め、目標達成に向けた協力関係を築くことが重要です。

④評価測定の能力

マネジャーはチームや個々に対して、目標達成に向けた進捗や成果を定期的に評価し、定期的にフィードバックを行う必要があります。マネジャーが設定した目標に対して、達成できているのか、達成できていない場合には何が問題なのかなどを客観的に判断し、改善策を共有することが重要です。

また、昇給や昇進、インセンティブなどは、チームのモチベーションを維持し、メンバーの能力を最大限に引き出す役割を果たします。

⑤人材育成の能力

チームメンバーのスキルや知識の向上をサポートし、自律的に行動できるように促すこともマネジャーの役割のひとつです。組織目標や組織状況を踏まえながら、一人ひとりの成長を促すように働きかけます。具体的には、メンバーそれぞれの強みや弱みを把握し、適切なサポートを提供することや、スキルアップの機会を与えることが重要です。

さらに、エンパワーメント(部下への意思決定や権限の委譲)を実施することも、組織の主体性を引き出すために欠かせない要素です。ただし、育成の視点を欠いて単なる丸投げになってしまうと、エンパワメントは効果を発揮しません。

そのため、マネジャーは定期的に進捗を確認し、部下のタイプに応じた適切な管理方法を見極める必要があります。こうした取り組みによって、メンバーの自律性を促進し、組織全体の成長を支援することが可能になります。

リーダーとは

次に、リーダーの定義と必要なスキルについて解説します。

ドラッカーによるリーダーの定義

ドラッカーは「リーダーには信頼してつき従う者の存在が欠かせない」と述べており、リーダーは強制や権威によってではなく、メンバーが信頼して従う存在でなければならないと強調しています。

また、リーダーシップは「素質」ではなく「仕事」であるとも述べています。組織の目標や優先順位、基準を定めることを仕事として発揮することが、リーダーシップであるという考え方です。

ほかにも、リーダーシップの要件に「責任を負えること」をあげています。つまり、地位や特権ではなく、チーム全体の責任を負い、他責にしないことがリーダーシップにつながります。

リーダーに必要なスキル

リーダーに必要なスキルは主に4つあります。

①俯瞰力

リーダーには組織全体や市場、競合などを広い視野で見渡す俯瞰力が必要です。俯瞰力を身に付けることで、現在の状況だけでなく、将来の変化やリスクを見据えた適切な判断を行えるようになります。

マネジャーが特定のプロジェクトやチームの運営に集中し、日々の業務の細部を管理するのに対して、リーダーは組織の大局的な進路を導く役割を担います。

②ビジョン構築力

ビジョン構築力とは、組織が目指すべき未来のビジョンを描き、それをチーム全員に示す力です。優れたビジョンは組織が進むべき方向や価値観を示し、メンバーの情熱と意欲を高めます。

マネジャーが目標達成を見据えて業務の管理に注力するのに対し、リーダーは「どこに向かうべきか」を示す存在です。

③コーチング力

コーチング力は、個々のメンバーの潜在能力を引き出し、成長を促進するスキルを指します。知識や答えを一方的に教えるのではなく、適切なフィードバックやアドバイスを通じて相手に気づきを与える能力が求められます。

コーチングを通して、メンバーが自ら考え、行動する力を高めることができ、組織全体の成長を促すことが可能です。

マネジャーが業務遂行のための監督や管理を行うのに対して、リーダーはメンバーのポテンシャルを引き出し、長期的な成長を支援する役割を持ちます。

④決断力

リーダーは不確実な状況下でも迅速かつ果断に決断を下さなければならないため、決断力が不可欠です。

特に組織全体に影響を与える重要な決断が必要な場面では、リーダーの決断が成功と失敗を分けることがあります。そのため、リスクを恐れずに行動できる勇気も重要です。

マネジャーがプロセスの最適化や日常業務の遂行に注力する一方で、リーダーは戦略的かつ迅速な意思決定を行うことが求められます。

マネジメントとリーダーシップの違い

マネジャーとリーダーに関連して、マネジメントとリーダーシップの違いについても説明します。

マネジメントは主に管理職や上位層に必要とされ、業務の効率化や目標達成に向けた具体的なタスクの管理を行うスキルです。一方、リーダーシップは役職や立場に関係なく、働くすべての人に必要な能力を指します。現場のプレーヤーや新入社員でも、状況に応じてリーダーシップを発揮することが求められます。

そのため人材育成においては、管理職のマネジメント力を高め、組織全体の目標達成を促すと同時に、すべての従業員にリーダーシップを身に付けてもらうことが大切です。

特に、現代のビジネス環境では、技術革新や市場の急速な変化が日々起こります。このような状況下で組織全体が柔軟かつ迅速に対応するには、リーダーシップを発揮できる従業員の存在が必要です。具体的には、プロジェクトにおける自主的な判断や問題解決能力が、リーダーシップの一環として発揮されます。

全員が自らをリーダーとして捉え、変化に対して積極的に対応する姿勢が、組織の競争力を高め、イノベーションを推進するための原動力となります。

優秀なマネジャー・リーダーを育てる方法

マネジャーとリーダーを育成するためには、いくつかポイントがあります。下記で、マネジャーとリーダーを育成する具体的な方法とポイントを説明します。

適切なトレーニングプログラムを設計する

優秀なマネジャーやリーダーを育成するためには、役割に応じたスキルを提供するトレーニングプログラムの設計が必要です。下記で、マネジャーとリーダーの育成プログラムを設計するポイントを紹介します。

マネジャー向けの育成プログラムを設計するポイント

マネジャーは、組織運営を効果的に実行するためのスキルが求められます。研修では、次のような内容をプログラムに含めましょう。

【理想のマネジャー像の明確化】
マネジャーが組織において果たす役割や、マネジメントのスタイルを学ぶことで、自分に合ったマネジメントの方法を明確化できます。

なお、マネジメントスタイルは「トップダウン型」と「ボトムアップ型」に大きく分けられ、それぞれさらに3つに分類されます。自分に合った方法を見つけ、効果的なマネジメントを目指すことが大切です。

●トップダウン型

「ビジョン型」(目標を示す)
「ペースセッター型」(率先垂範)
「強制型」(ルール重視)

●ボトムアップ型

「コーチ型」(成長支援)
「関係重視型」(信頼構築)
「民主型」(意見尊重)

【チームビルディングのスキル】
メンバーのスキルや経験、強みを最大限発揮できるチーム構築について学びます。チームビルディングを成功させるには、リチャード・ベックハード氏が提唱した「GRIPモデル」を理解することが重要です。このモデルでは、目標を達成する理想的なチームの条件として、以下の4つがあげられています。

  • Goal(共有された目標)
  • Roles(役割の明確化)
  • Interpersonal Relationship(良好な人間関係)
  • Process(計画や進め方の明確化)

これらの要素をもとに、チームの目標設定や具体的な実践方法を学ぶことで、効果的にスキルを習得することが可能です。

【部下の育成に関するスキル】
部下の強みや弱点を理解し、それに基づいて成長をサポートするための知識やスキルを学びます。

具体的には、下記のような知識・スキルの習得を目指します。

  • 部下と円滑に意思疎通を図るためのコミュニケーションスキル
  • 一人ひとりに最適な目標を設定するスキル
  • 適切なフィードバックを行うスキル
  • 部下の成長を支援するスキル
  • モチベーション向上の働きかけを行うスキル

【業務管理に関するスキル】
プロジェクトの進行管理、リソース配分、問題解決、タスクの優先順位付けなど、業務を円滑に進めるためのスキルを習得します。

リーダー向けの育成プログラムを設計するポイント

リーダーシップを発揮するには、組織における個々の役割を自覚させ、役割意識を高める機会をつくることが重要です。研修や面談の機会で、期待する役割を明確に伝えましょう。

また、優れたリーダーには、現状に満足せず、常に新しい挑戦や工夫を試みる姿勢があります。そのため、人材育成を通じて継続的な工夫・改善・挑戦を促し、成長実感を喚起しましょう。

リーダー向けの研修で意識したい要素は次の通りです。

【自己理解】
自分の強みや弱みを把握し、トラブル発生時の対応方法や他者との協力関係を築くためのスキルを習得します。自己理解を深める有効な施策としては、適性検査や360度多面評価などがあります。

【リーダーシップに必要なスキル】
チームリーダーとして求められる行動や、チームメンバーのモチベーションを高めるスキル、迅速な意思決定をするスキルを体系的に学びます。

【経営の基本的な知識】
チームの生産性や業務効率を高めるヒントとなる、経営の知識を学びます。その施策のひとつとして、経営陣と対話する機会を設けることも効果的です。経営陣の考えや、それにともなう企業の動きなどを深く理解することにつながります。

個人学習の環境を整える

従業員が自ら学習できる環境を整えることも重要です。そのひとつに、インターネットを活用した学習方法であるeラーニングがあります。eラーニングは学習場所や時間に制限がないため、自己学習を促進する有効な手段といえるでしょう。特に管理職は講義・セミナー型の対面研修だとスケジュール調整が難しいケースも多いため、都合の良いタイミングで受講できる点が大きなメリットです。

ほかにも、通信教育や書籍などの提供、資格取得支援制度なども効果的です。

現場で実践を積み重ねる

マネジメントやリーダーシップを身に付けるには、知識をインプットするだけでなく、現場での実践を継続的に行うことが重要です。理論だけではなく、実践を通じて自分自身のスキルとして身に付けることができるため、知識の「理解」にとどまらず、知識を「いかす」ことが可能になります。

実践の場では、先輩社員や上司が適宜フィードバックすることも大切です。客観的な視点から評価し、どこが良かったのか、どこに改善の余地があるのかを明確に伝えましょう。具体的なアドバイスをもとに修正を加えることで、短期間でのスキル向上が期待できます。成長を実感することができれば、さらなる挑戦や努力を続けるモチベーションも高まるでしょう。

まとめ

マネジャーやリーダーに求められる役割として、かつては組織やチームを導くリーダーシップが重視されていました。しかし現在では、メンバーのモチベーションを高め、キャリア形成を支援し、心理的安全性を向上させることで、組織全体の活性化を図ることが求められるようになっています。

これらの役割に正解があるわけではなく、組織の置かれた状況や事業の運営方針、メンバー構成によって適したアプローチは異なります。いずれの場合でも、従来の「俺の背中を見て育て」という一方的なスタイルではなく、丁寧な対話を重ねる姿勢が、マネジャーやリーダーに共通して求められる重要な要素なのです。

優秀なマネジャー・リーダーを育成するには、このようなポイントを理解した上で、適切な育成プログラムを組むことが重要です。個人学習の環境を整えたり、実践の場を設けたりすることで、より着実なキャリア開発ができるでしょう。

優秀なリーダーを育成し、組織力を向上させたい方は、下記の資料も参考にしてみてください。

リーダー・マネジメント層のスキル可視化のための評価方法とは

組織の要である「管理職」のスキルレベルを把握する

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  • スキル可視化が必要とされる背景
  • マネジメント層のリーダーシップ評価方法
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リーダー・マネジメント層のスキル可視化のための評価方法とは
JMAM HRM事業 編集部

文責:JMAM HRM事業 編集部
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