コラム
  • 対象: 人事・教育担当者
  • テーマ: 組織風土・文化
  • 更新日:

健康経営の取り組み成功事例!実践までのステップと成功させるポイントを解説

健康経営の取り組み成功事例!実践までのステップと成功させるポイントを解説

健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法です。大手企業を中心に健康経営に取り組む企業が増えていますが、どのように実践すれば良いのかわからない人事担当者も多いのではないでしょうか。

今回は、健康経営と認定される企業の評価基準や取り組み事例、実践の流れについて詳しく解説します。

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健康経営と認定される企業の評価基準

健康経営を実践していると認められた企業は、健康経営優良法人と認定されます。ただし、健康経営優良法人と認められるためには、一定の基準を満たさなければなりません。

評価基準は、法人の規模によって異なります。ここからは、大規模法人・中小規模法人それぞれの評価基準を紹介します。

大規模法人における基準

大規模法人とは、従業員の数が下記のような企業です。

業種 従業員数
卸売業、サービス業 101人以上
小売業 51人以上
製造業、その他 301人以上

大規模法人の場合は、下記の5つの項目を満たした企業のみが健康経営優良法人と認定されます。

  • 1.経営理念:健康経営の理念(方針)を社内外に発信している
  • 2.組織体制:従業員の健康維持について、経営層が前向きに取り組んでいる
  • 3.制度・施策実行:健康経営の実現に向けた制度や施策を実行している
  • 4.評価・改善:実施した制度や施策の効果が適切に評価され、改善している
  • 5.法令遵守・リスクマネジメント:労働に関する法令(労働基準法や労働安全衛生法など)を遵守している

制度、施策実行は、さらに3つの中項目に分けられます。

  • 従業員の健康課題の把握や必要な対策の検討
  • 健康経営の実践に向けた土台作り
  • 業員の心と体の健康作りに関する具体的対策

すべての項目において評価項目が定められ、要件を満たす必要があります。

中小規模法人における基準

従業員数と資本金・出資金額のいずれかに該当する場合は、中小規模法人に該当します。

業種 従業員数 資本金・出資金額
卸売業 1人〜100人 1億円以下
小売業 1人〜50人 5,000万円以下
サービス業 1人〜100人 5,000万円以下
製造業、その他 1人〜300人 3億円以下

中小規模法人が健康経営優良法人と認定されるためには、大規模法人と同様に5つの項目を満たさなければいけません。

健康経営優良法人2,022(中小規模法人部門)認定要件
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/chusho2022_ninteiyoken.pdf

なお、健康経営のさまざまな取り組みは、健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営」で情報を得ることができます。

株式会社 日本経済新聞社「ACTION!健康経営」
https://kenko-keiei.jp/

健康経営の取り組み事例

健康経営に取り組もうと思っても、どのように課題を見つけて施策を実行すれば良いのかわからない方もいるでしょう。

「2023 健康経営 先進企業事例集」(健康長寿産業連合会)の中から、具体的な取り組みをいくつか紹介しますので参考にしてみてください。

※出典)健康長寿産業連合会「健康経営先進企業事例集2023」
https://www.well-being100.jp/policy/20230316482/

味の素株式会社

最初に紹介するのは、大手食品会社である味の素株式会社の事例です。健康経営によって「従業員のパフォーマンス向上」の実現を目指し、施策を実行しました。

そのうち、メンタルヘルスに関する施策を紹介します。

従業員の重点課題

重点課題:メンタルヘルス不調等のストレス関連疾患の発生予防・早期発見・対応に関する課題

コロナ禍の長期化やテレワーク中心の業務によるストレスが健康リスクを高めるおそれがあるとし、セルフ・ケアを維持向上させ、必要な健康行動レベルが保持できるようにすることを重点課題として定めました。

目標数値は下記の通りです。

《メンタル休業後の3年就業継続率》
数値 年度
目標値 前年度より改善させる 前年度より改善させる

具体的な施策

実施した施策は下記の通りです。

メンタルヘルス回復及び再就業支援プログラムの導入 休業者がストレスと上手く付き合い、いきいきと働ける状態を目指す支援プログラムを導入した。
適正糖質セミナーの開催 血糖値スパイクのリスクや血糖値のコントロール方法を紹介するセミナーを開始した。
カロママプラスを導入 健康アドバイスアプリを導入。
MyHealthランチを開始 標準的な栄養バランスを満たし、減塩も取り入れられるランチを社員食堂で提供した。

健康経営の成果

さまざまな施策の実施により、それぞれ下記のような成果が得られました。

メンタルヘルス回復及び再就業支援プログラムの導入 メンタル休業後3年を経過している就業継続率が80.0%になった。J-ECOHスタディ3年就業継続率が61.6%になった。
適正糖質セミナーの開催 8割以上の参加者が、セミナーから3ヶ月後も行動変容が継続している。25%以上の参加者が、今後のデータ改善につながる効果を実感。
カロママプラスを導入 健康アドバイスがセルフ・ケアの維持向上に貢献。
MyHealthランチを開始 今年度は塩分量を3.0g以下に設定し、自然に健康になるように進めている。

さらに毎年実施するエンゲージメントサーベイの「健康/Wellbeing」の好意的回答スコアが2020年の82から2021年度は84と改善(※)しており、従業員のパフォーマンス向上にも貢献できているとのことです。

※満点100

株式会社イトーキ

次に紹介するのは、事務用品やオフィス設備を取り扱う株式会社イトーキです。経営課題となる「従業員のパフォーマンス向上」を解決するため、施策を実行しました。

そのうち、従業員の健康に関する施策を紹介します。

従業員の重点課題

重点課題:生活習慣改善(運動・睡眠・食生活等)に関する従業員の課題

イトーキ社の独自調査の結果、全従業員のロコモ(運動器・感覚器障害)のスコアが全国平均を下回ることが判明したそうです。その要因として、仕事中の休憩と生活における余暇・睡眠が影響しているものと考え、重点課題としました。

目標数値は下記の通りです。

《独自調査「PerformanceTrail」におけるロコモ(運動器・感覚器障害)のスコア》
数値 年度
目標値 全国平均62.1点 2023年12月

具体的な施策

具体的な施策は下記の通りです。

職場環境の整備 主要拠点におけるコミュニケーションを促進するため、中階段を設置。またスタンディングワークや立ち会議の推進による健康増進を目指すため、上下昇降デスク・テーブルを各所に設置。そのほか、ABWの働き方を導入。
シフトランチ制度の導入 生産ラインに関わる職場以外では、昼休憩の時間を定めないようにする。
睡眠セミナーの開催 睡眠が十分に取れていない拠点を対象に睡眠に関するセミナーを開催。

健康経営の成果

施策の結果、ロコモスコアがやや改善しています。

2021年11月 2022年8月
57.0点 57.8点

株式会社ルネサンス

次に紹介するのは、東京都を中心にスポーツクラブを運営する株式会社ルネサンスの事例です。経営上の課題として、「企業理念の『生きがい創造企業』を実現」をあげています。

そのうち、重症化予防に関する施策を紹介します。

従業員の重点課題

重点課題:従業員のヘルスリテラシー向上

企業理念である「生きがい創造企業」を実現するには、まず従業員が心身ともに健康のプロフェッショナルでなければならないとの考えから、ヘルスリテラシーの向上を重点課題としてあげました。

具体的な施策

具体的な施策は下記の通りです。

カロママプラスの利用 健康アドバイスアプリの利用。
管理職ヘルスマネジメント研修 管理職向けの研修プログラムを実施し、健康診断の結果や面談記録などの社員情報も一元管理した。
ヘルスリテラシー向上セミナー 従業員のヘルスリテラシーを高めるためのテーマ別セミナーを開催。(任意参加のオンラインセミナー)

健康経営の成果

施策の結果、下記の成果が得られました。

健康管理アプリの利用奨励 ・従業員のアプリダウンロード率100%達成
・栄養バランスを考えている従業員が2018年の41%から2021年に55%まで上昇
・個人の生活習慣の改善やスコアをめぐって従業員間でコミュニケーションが発生
管理職ヘルスマネジメント研修 ・受講対象者に対する参加率が98.3%
・受講後のアンケートで理解できた人が100%、活用のイメージができた人が94.6%
ヘルスリテラシー向上セミナー 2023年2月10日時点で多くの従業員が参加した

そのほか、健康経営課題の解決のための新規事業・サービス開発を模索したり、健康経営推進委員会と連携したりなど、社内における健康経営の浸透を促進しています。

株式会社ローソン

最後に紹介するのは、国内外に多くのコンビニエンスストアを展開する株式会社ローソンの事例です。経営上の課題として、「従業員のパフォーマンス向上」をあげています。

施策のうち、メンタルヘルスに関する取組を紹介します。

自社従業員の重点課題

重点課題:メンタルヘルス不調等のストレス関連疾患の発生予防・早期発見・対応に関する課題

ストレスチェックの結果、高ストレスを示す比率において、個人比率は改善傾向にあるが、部署比率は改悪していました。

コロナ禍の働き方の変化により、従来とは異なる負荷が発生し、部署・業務別により格差が広がっていると考え、「ストレスに関連する疾患の発生予防と早期発見、対応に関する課題」を重点課題として設定しました。

具体的な施策

具体的な施策として、ストレスリスクが高い10部署を対象にメンタルヘルス研修(オンライン)を実施しました。

多様性を尊重したマネジメント手法のレクチャーやワークショップなどをおこない、実践的なスキルの習得を目指しました。

健康経営の成果

従業員の参加率が高まり、リテラシーの向上がみられたとのことです。社員意識調査では「この会社で働くことに総じて満足している」と回答した人が、2020年以降は74%以上を記録しています。

健康経営を実践するためのステップ

健康経営を実践するためのステップを解説します。

【1】自社が健康経営に取り組む目的を明確化する

まずは、自社が健康経営に取り組む目的を明確にしましょう。施策を策定しただけで満足してしまっては、健康経営は実現できません。

例えば下記のような項目について考えます。

  • 自社が健康経営に取り組む背景
  • 健康経営に取り組むに当たって何を目指すのか
  • 誰が中心となってプロジェクトチームを発足させるのか
  • 将来的な展開や推進の方法

【2】社内外に健康経営の目標を発信する

社内外に健康経営の目標を発信しましょう。組織全体だけでなく、ステークホルダーとも認識を一致させることでより目標達成の意識が高まります。また、社内外への発信は健康経営優良法人として認められるための要件のひとつでもあります。

全体会議および全体朝礼などで宣言をして、社長や経営幹部の本気度を全従業員に発信しましょう。

その上で、社内報や社内告知などで、従業員はもちろん、投資家など外部の人にも周知します。

【3】組織体制を整備する

続いて、健康経営を推進するための組織体制を整備します。

健康経営の取り組みを主導し全体の指揮をとる部署を決定しましょう。プロジェクトチームを発足させる場合は、社内のメンバーだけでなく「健康経営エキスパートアドバイザー」などの資格を持つ産業医や保健師など外部人材を登用した方が、取り組みの質が高まります。

社内から選定したメンバーについても「健康経営アドバイザー」の取得を推奨しましょう。

【4】自社が取り組むべき重点課題を明確化する

次に、自社が取り組むべき重点課題を明確にします。

現在従業員が抱えている課題について、健康診断やアンケート、ストレスチェックなどを実施して把握しましょう。

例えば、健康診断の受診率が低い場合は、社員の健康への関心を高める必要があります。また長時間労働が多い部署の場合、社員が健康に問題を抱えていたり離職者の数が増加していたりする可能性があります。

労働時間や残業時間、休職者数と離職者数の推移なども確認して分析しましょう。

【5】取り組み計画を立案・実行する

重点課題を決定したら取り組むべき施策を策定し、実行に移します。

最初は簡単に始められる施策から行いましょう。負担の大きい施策から実施すると、社員のモチベーション低下を招いて成果に結びつかないことがあります。

一般的に施策を行った効果が出るのは、半年から1年後です。すぐに結果が出ないことも多いため、長期的視点で取り組む必要がある点は理解しておきましょう。

【6】取り組みの評価・改善を行う

健康経営の施策を実行した後は、評価・改善を繰り返します。施策の実行により、従業員の健康増進にどれだけの影響が与えられたのかを評価しましょう。

効果が現れるまでには時間がかかることが多いため、定期的に振り返りをしながら進めていくことが大切です。

また、従業員の健康状態を正確に把握するために、健康保険組合などと連携して施策を実行するのもおすすめです。

医療費や健康診断結果のデータと照合することで、従業員一人ひとりの健康状態を把握しやすくなります。

健康経営を成功させるポイント

健康経営を成功させるには、単に実践するだけでは不十分です。職場全体を巻き込み切れずに失敗するケースはよくみられます。

下記に紹介するポイントを押さえて、健康経営の考え方や仕組みを定着させましょう。

  • 経営陣が主導して健康経営を推進する
  • 健康経営の重要性を従業員に伝え続ける
  • 従業員の具体的なアクションにつながる制度や施策を考える

「自社がなぜ健康経営に取り組むべきなのか」を全社的に理解することで、積極的に取り組む雰囲気づくりや継続的に進めるべきという空気感を醸成することができます。

まとめ

企業が健康投資を行う目的は、経営の観点から従業員が働きやすい職場環境を整えることで、組織の活性化や業績アップにつなげることです。

人事担当者として健康経営を進めていく際は、「なぜ健康経営が重要なのか」「何のために健康投資をするのか」を見失わないようにすることが大切です。

自社で健康経営を実践したいとお考えの企業様は、企業内教育の支援実績30年以上のJMAM(日本能率協会マネジメントセンター)へご相談ください。

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文責:JMAM HRM事業 編集部
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