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  • 対象: 管理職
  • テーマ: 研修/教育
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メンタルヘルス研修のメリットは?成功ポイントから注意点まで解説

メンタルヘルス研修のメリットは?成功ポイントから注意点まで解説

メンタルヘルス研修では、管理者と従業員の双方がメンタルヘルスを正しく理解することで、心身ともに健康的な職場環境を作ることができます。心の健康が維持できれば、企業の生産性が向上し、離職率が低下するなど大きなメリットが生まれます。

本記事では、社内でメンタルヘルス研修を導入したいと考えている企業の皆様へ、よく扱われる人気のテーマ7選や、研修を成功させるためのポイント、注意点についてご紹介します。

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メンタルヘルス研修とは

まずはじめに、メンタルヘルス研修の基礎知識について分かりやすく解説します。

メンタルヘルスの意味・定義

「メンタルヘルス」は、我々の心の健康を示す概念です。厚生労働省では、心の健康を「精神面における健康のこと」と定義しています。これは我々が日々の生活を楽しみ、充実させるための重要な要素となります。

※参考:e-ヘルスネット
(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-086.html?_fsi=Zm2hcxqZ&_fsi=mN25GbWg)

しかし、近年はこのメンタルヘルスの不調によって、多くの人々が健康を害し仕事を休んだり、あるいは退職を余儀なくされています。これは深刻な社会問題となりつつあり、我々一人ひとりにとって無視できない現実となっています。

メンタルヘルス不調は、うつ病や双極性障害、統合失調症、パニック障害など、多くの精神的疾患のリスクをはらんでいます。これらの疾患は我々の心身の健康を大きく脅かし、社会生活へ多大な影響を与えます。

企業の視点から見ても、メンタルヘルスの問題は避けて通れない課題です。社員のメンタルヘルス不調は、その人の働く能力を低下させ、生産性を阻害します。このため、企業の生産性向上の観点からも、メンタルヘルス不調の防止と改善は急務となっています。

メンタルヘルスは、私たち一人ひとりの心の健康、そして企業の生産性にとって大切な要素です。私たちは、メンタルヘルスを守ることで、より良い生活と社会を築くことができるのです。

メンタルヘルス研修の目的

メンタルヘルス研修の目的は、社員に心の健康についての正しい知識を提供し、メンタルヘルスを維持する職場環境を作り出すことです。この研修には、メンタルヘルス不調の早期発見、予防、そして適切な対応の方法が含まれます。

企業全体がメンタルヘルスについて共通の認識を持つことで、前向きに仕事に取り組むための良好な環境が形成されます。心の健康は生産性を左右する重要な要素であるため、それを維持する事により企業の成長と成功へつながるはずです。

しかし、全社員への研修実施は日程調整や予算面での課題もあります。そのような場合には、eラーニングが有効です。自宅や職場で手軽に学習できるため、学習者の負担を軽減し学ぶことができます。

メンタルヘルス研修のメリット

メンタルヘルス研修の具体的なメリットについて解説します。

メンタル不調者の早期発見

メンタルヘルスについて正しい知識を身につけると、自分だけでなく周囲の人々のメンタルヘルス不調にも早い段階で気づきやすくなります。メンタルヘルス不調は、身体的な病気と比べて気づきにくいものです。

しかし、研修を受けることで、異変や不調のサインに気づくことができるようになります。早期発見により、適切なサポートや治療を受けることができ、個人や組織の生産性にも繋がるでしょう。

生産性・モチベーションの向上

従業員の心の健康を保つことは、組織全体の生産性やモチベーションの向上に繋がります。心身ともに健康であると、仕事のパフォーマンスが向上し、結果として生産性の高い組織になります。

離職率が低下する

離職率の改善も期待できます。働きやすさは精神的な充実感に大きく影響するため、メンタルヘルス不調者の増加は、離職率の悪化につながる可能性が高いのです。残業の多さや複雑な人間関係などもメンタルヘルス不調の原因につながります。

しかし、メンタルヘルス研修を通じてメンタルヘルス問題を理解し、予防や対策に取り組むことができれば、離職率を改善できるはずです。

メンタルヘルス研修でよくあるテーマ7選

メンタルヘルス研修でよく扱われるテーマについて解説します。

1.メンタルヘルスの基本知識

まず、基礎として「ストレスとは何か」、「人はどのようなときにストレスを感じるのか」という点を学びます。また、ストレスにはどのようなリスクがあるのかも理解します。

これらの基本知識を学ぶことで、ストレスによるリスクや管理方法を習得し、ストレスの正体やメカニズムを理解することで、適切な対処策や予防方法を身につけることができます。

また、管理職の方々は特に「ラインケア」と呼ばれる部下のメンタル不調に気づいてサポートする方法を学ぶことが重要です。上司として部下の健康をサポートすることで、組織全体のメンタルヘルスを向上させることができます。

2.メンタルヘルスの必要性

管理職がメンタルヘルスを扱う際には、その必要性を理解することが重要です。メンタルヘルスに必要性を感じないと、自分ごととして捉えることができず、積極的な姿勢で学ぼうと思えません。

管理職がメンタルヘルスの必要性を学ぶ際には、少なくとも以下の3つの要素を含めるのが重要です。

まず、「企業の役割」としてメンタルヘルスが重要であることを認識する必要があります。組織の健全な発展と従業員の働きやすさに直結するため、メンタルヘルスは欠かせません。

また、メンタルヘルスに関連する法律(労働安全衛生法、労働基準法、労災保険、過労死等防止対策推進法など)についても学ぶ必要があります。これらの法律はメンタルヘルスへの取り組みを促進し、従業員の健康と安全を守るためにあります。

さらに、メンタルヘルスの問題は従業員に影響を与えるだけでなく、部署全体にも悪影響を及ぼす可能性があることを理解します。メンタルヘルスの向上によって生産性やチームのパフォーマンス向上へとつながります。

3.メンタル不調の発見方法

自身の不調だけでなく、周囲の不調に気づく方法を学びましょう。具体的には、いつもと異なる行動や変化に注目することが重要です。

たとえば、部下がいつもは遅刻しないのに繰り返し遅刻するようになった場合など、今までとは違う行動の異変に注意深く目を向けることが重要です。ほかにも、元気がなくなった様子やコミュニケーションの変化、業務への集中力の低下なども異変のサインとなります。

異変に気づくことで早期のサポートや適切な対応を行うことができ、個人のメンタルヘルスの改善に繋がるだけでなく、組織全体の健康な成長にも寄与します。

4.メンタル不調の防止方法

メンタルヘルス不調を防止するためには、ストレスマネジメントの重要性を認識することが大切です。座学だけでなく、ワークショップやグループワークを取り入れることで、役職や部署、立場などによって異なるストレスに対する理解を深めることができます。

ワークショップでは、意見交換や上司と部下の立場を体験するロールプレイなどを行います。これにより、メンバー同士のコミュニケーションや相互理解が促進され、ストレスに対する共感や支援の意識が高まります。

5.メンタル不調者へのアプローチ方法

メンタル不調者へのアプローチ方法は、管理者向けの研修テーマになります。まずはメンタルヘルス対策の基礎知識を学び、部下への声のかけ方や話の聞き方、専門家へのつなぎ方も学びます。個別に対応が必要だと感じた部下へは自ら声をかけ、傾聴・情報提供・医療機関の受診を促します。

これにより、メンタル不調者への適切なサポートができるようになります。上司としてのコミュニケーションスキルを高め、従業員のメンタルヘルスをサポートすることが重要です。

6.メンタルタフネス度の向上

メンタルタフネスの高い人々の特徴や行動を学び、自身のメンタルタフネスを向上させる方法を探求します。メンタルタフネスとは、困難に直面してもマイナスの感情に振り回されず、前向きに対処できる能力のことを指します。

具体的なアプローチとして、たとえば、ストレスへの対処法やリラックス法、自己肯定感の養成などが挙げられます。また、メンタルタフネスの高い人々の特徴や行動には、積極的なマインドセット、柔軟性、自己管理能力、ストレングスの活用などがあります。これらのポジティブな要素を身につけることで、困難な状況にも対処し、より良い結果を出すことが可能です。

7.マインドフルネスの基礎と習得方法

マインドフルネスの基礎と習得方法について学びます。マインドフルネスとは、「現在の自分に意識をおき、今この瞬間に集中する」ことです。過去や未来への思考を向けず、余計な雑念を払拭し、自分の気持ちや今やるべきことに集中することが特徴です。

マインドフルネスの習得には、たとえば、深呼吸や瞑想、五感に意識を向けること、感謝の気持ちを持つことなどが実践方法として挙げられます。メンタルヘルス研修では、マインドフルネスの重要性を理解し、その基礎を学ぶことで、メンタルヘルスを良好な状態で保つ方法を習得することができます。

以上がメンタルヘルス研修でよく扱われるテーマ7選です。これまでご紹介してきたように、メンタルヘルス研修で扱うテーマは多岐にわたります。従業員全員に等しくメンタルヘルスについて学んでもらうためには、eラーニングでの学習も合わせて行うことが効果的です。

eラーニングであれば、受講者は自身の好きな時間に知識をインプットすることができます。さらに、管理職と一般社員で必要な知識や対処法が異なる場合でも、推奨コースを指定して受講を促すことで、対象者別に必要な知識を効果的に習得してもらうことが可能です。

メンタルヘルス研修の成功ポイント

メンタルヘルス研修を成功させるためのポイントについて解説します。

メンタルヘルス研修の方針を明確にする

メンタルヘルス研修の成功には、企業が従業員に対して明確な方針を示すことが不可欠です。単なる形式的な研修や浅い理解だけでは、本来の効果を得ることが難しいでしょう。

具体的なアプローチとしては、中長期計画などの企業全体の計画にメンタルヘルス研修の方針を明示することが重要です。明確な方針の下で研修が実施されれば、効率的かつ効果的なメンタルヘルス研修が実現できるでしょう。

メンタルヘルス研修の内容を定期的に見直す

メンタルヘルス研修は、一度組んだ内容をそのまま使い回すのではなく、定期的に研修内容を見直し、現時点で最適な内容にアップデートすることが重要です。

なぜなら、新入社員と入社数年が経った社員では、メンタルヘルス研修に対する受け取り方や必要な知識・スキルのレベルが異なるからです。受講者の変化やニーズを把握し、適切なプログラムを提供することが研修の効果を高めるためには必要です。

また、研修後にはアンケートなどのフィードバックを実施し、受講者からの意見や感想を収集することも重要です。これにより研修内容をブラッシュアップし、より効果的な研修プログラムを構築することができます。

メンタルヘルス研修を外部に委託する

メンタルヘルス研修は、すべてを自社内で行う必要はありません。自社内の情報やリソースだけを活用して研修を行うと、情報の偏りや網羅性の欠如につながる可能性があります。

さらに、メンタルヘルス研修はセンシティブな領域の内容を含んでいます。そのため、研修を担当する側の人が誤った知識や不適切な発言をすると、従業員を精神的に追い込んでしまう可能性もあります。

解決策として、外部の専門家や研修機関に委託することで、より専門的な知識や経験を持つ人々による研修を受けることができます。彼らは最新の情報や効果的な教育手法を持っており、研修の質と効果向上が期待できます。

また、外部委託による客観的な視点や独立性が保たれます。従業員は外部の人物による研修によって、よりオープンな環境でメンタルヘルスについて話すことができるでしょう。メンタルヘルス研修の成功には、適切な外部委託先の選択が重要です。信頼性や実績、専門性などを考慮し、自社のニーズに合った研修機関を選びましょう。

関係者への協力体制の呼びかけ

メンタルヘルス研修は、一度実施しただけでは終わりではありません。研修で得た知識や経験を、その後の現場で実践することが重要です。

研修後のサポートや協力体制の構築が不十分であると、研修内容を生かしきれず、成果を上げることができません。関係者全員が研修の意義を理解し、積極的に協力することが求められます。

具体的な協力体制としては、管理職や上司が従業員のメンタルヘルスをサポートし、問題や困難に対して適切な対応をすることが重要です。また、従業員同士が助け合い、コミュニケーションを通じて支え合う環境を作ることも大切です。

協力体制を構築するためには、関係者全員がメンタルヘルス研修の重要性を認識し、その意義を共有することが必要です。定期的な意識啓発や情報共有の場を設け関係者の理解と協力を促すことが大切です。

メンタルヘルス研修の注意点

メンタルヘルス研修を実施する際には注意しなければいけないこともあります。具体的には次にあげる2点です。

まず、個人情報の取り扱いは注意が必要です。従業員のメンタルヘルスに関する情報は個人のプライバシーに関わるため、慎重に取り扱う必要があります。情報の漏洩や不適切な使用を防ぐため、適切なセキュリティ対策や個人情報保護方針を確立しましょう。

また、研修受講者にメンタル不調者がいる可能性にも注意が必要です。研修はメンタルヘルスの向上を目的としていますが、すでにメンタル不調を抱えている人が参加している可能性もあります。適切なケアやサポート体制を整え、研修中の不調を見逃さず対応することが重要です。

メンタルヘルス研修の効果を最大限に引き出すためには、個人情報の適切な取り扱いとメンタル不調者への配慮が欠かせません。これらの注意点をしっかりと把握し、研修の実施や運営に取り組みましょう。

厚生労働省の教育マニュアル

メンタルヘルスに関する問題は、政府も積極的に対策を進めています。厚生労働省は「こころの耳」というWebサイトを運営しており、情報発信やコラムの掲載、eラーニングの配信などを行っています。このサイトでは、メンタルヘルスの基本知識に加えて、具体的な事例やシンポジウムの開催なども行われており、多くの情報を収集することができます。

※参考)こころの耳
(https://kokoro.mhlw.go.jp/training/)

また、厚生労働省では厚生労働科学研究費安全総合研究事業により、メンタルヘルスに関する2つのマニュアルを公開しています。それは、労働者個人向けストレス対策(セルフケア)のマニュアルと、管理監督者向けメンタルヘルス研修マニュアルです。これらのマニュアルを活用することで、効果的なメンタルヘルス対策を推進し、働きやすい環境の構築をすすめることができます。

※参考)労働者個人向けストレス対策(セルフケア)のマニュアル
(https://kokoro.mhlw.go.jp/wp-content/uploads/2017/12/tool-self01.pdf)
※参考)管理監督者向けメンタルヘルス研修マニュアル
(https://kokoro.mhlw.go.jp/wp-content/uploads/2017/12/tool-line01.pdf)

まとめ

メンタルヘルス研修には、従業員の心身の健康を保ち、働きやすい環境を整えるといったメリットがあります。メンタルヘルス研修を実施することで、従業員のストレスやメンタル不調への理解が深まり、適切な対処方法や予防策を学ぶことができます。これによりパフォーマンスや生産性が向上し、組織全体の成果につながります。

さらに、メンタルヘルス研修は従業員の意識向上やコミュニケーションの改善にも効果的です。チーム内での相互理解やサポートの意識が高まり、職場の雰囲気や人間関係の改善につながるでしょう。

これから実施したいと考えている企業様には、1979年から企業向けの研修を実施しており、幅広い人事・人材教育プログラムを提供している「株式会社日本能率協会マネジメントセンター」が提供するeラーニングがおすすめです。メンタルヘルス対策をはじめとする健康経営を実践するためのプログラムであり、大手企業様を中心に、累計10万人以上が受講しています。

ぜひ、日本能率協会マネジメントセンターのeラーニングサービスを活用して、社内のメンタルヘルスの改善、健康経営を実践してください。

JMAM HRM事業 編集部

文責:JMAM HRM事業 編集部
人事・人材教育に関する情報はもちろん、すべてのビジネスパーソンに向けたお役立ちコラムを発信しています。

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