コラム
  • 対象: 人事・教育担当者
  • テーマ: キャリア
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キャリア自律とは?企業が支援する際のポイントから企業事例までを詳しく解説

キャリア自律とは?企業が支援する際のポイントから企業事例までを詳しく解説

キャリア自律とは、「変化する環境において自らのキャリア構築と学習を主体的かつ継続的に取り組むこと」であると米国キャリア・アクション・センターに定義されています。終身雇用制度が揺らぐいま、従業員が自らのキャリアを主体的に考える「キャリア自律」の必要性が高まっており、企業は従業員にキャリア自律を促し、支援する必要があるといえるでしょう。
また、自らのキャリアを自律的に考える人材は、企業の成長にも必要不可欠です。当記事は経営者、人事・人材開発部門、マネジメント層の方に向けて、キャリア自律の詳細から支援するメリット、具体的な方法まで詳しく解説します。

キャリア自律とは?

キャリア自律とは、米国のキャリア・アクション・センター(Career Action Center:CAC)では「変化する環境において自らのキャリア構築と学習を主体的かつ継続的に取り組むこと」と定義されています。キャリア自律と従来のキャリア開発論との大きな違いは形成方法にあります。

従来のキャリア開発では所属企業の業務や研修などの経験を通じて形成されていくのに対し、キャリア自律は自らの意思による継続的な学習から形成されます。自律的なキャリアを築くためには、特定のスキルを高めるだけではなく、生涯、環境は変化していくという認識のもと、柔軟性をもち自分のキャリアを切り開いていくことが重要です。

自律と自立の違いとは?

「自律」と「自立」には、以下のような違いがあります。

自律:外部の力に指示されず、自分をコントロールして物事をおこなう
自立:自分以外の助けを借りず、自分の力だけで物事をおこなう

上記の意味合いを「個人」と結びつけた場合、以下のような違いが生じます。

自律の状態にある個人:自分の意思を持ちながらも自らをコントロールし、他者のニーズを把握・調整しながら自己実現を図れる状態
自立の状態にある個人:自分の意見や主張を持っていて、自ら行動できる状態

        

近い意味ではありますが、「自律」には、周囲の人や環境のなかで自らをコントロールしていくという、外部環境への視点が含まれます。自分のキャリアビジョンを持ちながら、積極的に学ぶ姿勢を持つことが大切といえます。

キャリア自律が注目される時代の変化・背景とは?

近年キャリア自律が注目されている理由には、以下のような時代の変化と背景があります。

  • 日本的雇用慣行の変化
  • 働き方の多様化と個の尊重
  • ジョブ型雇用の普及

それでは順番に解説していきます。

日本的雇用慣行の変化

これまでの日本では新卒一括採用や終身雇用などが一般的だったため、社員のキャリア形成は企業が主体となり取り組むべき課題となっていました。企業は社員の雇用を守る一方、社員は企業が提示したキャリアを受け入れることが一般的でした。企業主体の人員配置や異動に従いながら、終身雇用を前提とした年功序列的なキャリアを形成していったのです。

しかし1990年代から日本の経営破綻やリストラが続き、終身雇用制度が崩壊したことから成果主義を導入する企業が増えていきました。そのため勤続年数が長ければ、必ずしも安定したポストを得られるわけではありません。そこで、社員は自らのキャリアを自律的に考える重要性が増し、企業もまた、社員のキャリア自律を支援する必要に迫られています。

働き方の多様化と個の尊重

現在では、業務委託や派遣といった雇用契約、社員の副業など、様々な働き方を導入する企業が増えています。

特に社員の副業推奨は、外部の知見を取り入れ、新たなスキルアップができると、結果的に本業に生かすこともできます。本業に支障が出ないようルールの取り決めは必要ですが、企業と社員どちらにも有益です。

ほかにも育児や介護などの事情がある社員を支援する企業も増えています。キャリアの主体となる存在が企業から個人に変化している点も、キャリア自律が注目される理由の1つです。

ジョブ型雇用の普及

ジョブ型雇用とは、事業における必要な職務を定義し、その職務に適したスキルを持った人材を雇用する制度です。欧米諸国から多くの国に普及しており、日本でも導入する企業が増えています。1990年代以降から労働力人口減少やグローバル化やDX化の流れがあり、生産性や専門スキルを高める雇用方法へとシフトされつつあります。

役割が明確なジョブ型雇用は、近年普及しているテレワークや在宅勤務制度においても有効だといわれています。ジョブ型雇用においては、職務に就くために積極的な学習やスキルアップが必要なので、キャリア自律との親和性も高いといえるでしょう。

企業がキャリア自律を支援することのメリットとは?

企業が社員のキャリア自律を支援すれば、以下のようなメリットを得られます。

エンゲージメントの向上

キャリア自律を支援することによって、自分のスキルアップを支援してくれる企業に魅力を感じ、社員のエンゲージメントが高まり、リテンションにもつながります。また、こうした口コミが広まると、優秀な人材の採用においても有利になるでしょう。

社員の求めるポストを用意し、それに必要なスキル獲得などの成長支援を行えば、企業と社員にとって、お互いに利点のある関係性を築くこともできます。

生産性の向上

自律的な社員が増えることは、社員の積極的な学習や成長、それによる業務効率化といった結果への反映を期待できます。現在のビジネスを活性化させるためにはどうすべきかを考えるようになるので、生産性が向上する、新しいビジネスが生まれるといった風土改革も起きやすくなるでしょう。

企業がキャリア自律を支援する際の注意点とは?

企業が社員のキャリア自律を支援するときは、以下のポイントに注意しましょう。

転職の抑止

自律的なキャリアを促すことで、社員が転職を考える可能性があります。スキルアップのための学びを行う過程で、外部の視点が増えるからです。 キャリアの自律度が高く、肯定的な自己評価を持っているほど、更に活躍できる転職先を求めるようになるでしょう。

しかし過去の研究では、企業がキャリア開発の支援をすることで仕事への満足度が高まり、転職よりも現職への残留意向が高まるといわれています。そのため、キャリア自律を促すと同時に、社員が積極的に仕事で活躍できるよう、挑戦できる場や経験を用意することが重要です。社内公募制度などを用いて、社員に機会提供を行うようにしましょう。

キャリア自律を望まない社員への対応

企業がキャリア自律を推進しているからといって、すべての社員が望んでいるとは限りません。企業の運営方針によっては、社員へのキャリア自律を意識させる動機が弱いこともあるでしょう。ですが、一部の社員だけがキャリア自律を形成しても、組織としての相乗効果は見込めません。そのため組織全体が個々の期待や役割を明確化し、課題に向き合ってキャリア自律を支援することが大切です。

従業員のキャリア自律を促すには?

従業員のキャリア自律を促すには、以下の3つのポイントを意識してください。

  • 社内のポスト・ポジションの透明性
  • 個人目標と組織目標との関連性
  • キャリア意思の表明機会

社内のポスト・ポジションの透明性

「社内のポスト・ポジションの透明性」とは、社内にどんな部署や仕事があるのかを社員に明示することです。日本では業務内容の把握を事業部に任せている場合が多く、業務が個人に紐づいていることも多いため、社内の全体像が見えないことに課題があります。社内全体の部署や仕事を見える化できれば、社員のキャリアの目安や目標につながり、キャリア自律を促すことにつながります。

個人目標と組織目標との関連性

「個人目標と組織目標との関連性」は、各社員の業務で目標にしていることと組織が目標にしていることが連動していることを指します。社員が何のためにその仕事をしているのか、目標を見失わないようにすることが必要です。そのためには正しい目標管理制度のもと、上司との対話の機会を日頃から設け、目標の確認ができる環境をつくりましょう。

キャリア意思の表明機会

最後に「キャリア意思の表明機会」は、自律したいと考えている社員の意思を確認する機会を作ることです。たとえば、キャリアカウンセリングや上司との対話などがあります。各社員の意思を聞くことで、自らのキャリアに意識を向けてもらい、自律を促すことが可能となります。

企業がキャリア自律を支援するための人事施策/取り組み

企業が社員のキャリア自律を支援するためには、以下のような人事施策と取り組みが必要です。

キャリアプログラムの提供

キャリア自律を支援するには、社員がそれぞれのキャリア形成を考えながら中長期スパンで成長できるプログラムを提供することが大切です。従来の企業主導のキャリア形成との主な違いは、社員の意思と選択の自由が尊重されている点にあります。自社内で自由なキャリア形成ができる環境を整えることが重要です。

プログラムにおいては、キャリアプランの策定を促すだけではなく、越境学習といった学習機会の提供や情報提供等を行うことも効果的です。

年代・属性に合わせたキャリア開発

キャリア開発は、年代や属性に合わせて最適な支援をすれば有効な効果を期待できます。 具体的な年齢の区切りとして、以下のような例があります。

●入社時
●一定年数経過時(3年、5年、10年など)
●一定年齢到達時(30歳、40歳、50歳など)

上記のような区切りに応じたキャリア研修を実施し、各年代がもつ課題内容をまとめていきます。
たとえば、経験豊富なベテランやシニア世代には、スキルや経験を生かせる環境作りが重要です。また属性別では、育児・介護をしている社員や昇格に悩んでいる社員のキャリア開発を支援していく必要があります。支援の終了後にはフォローの場を設けるようにしておきましょう。

昨今のキャリア潮流への対応

キャリア自律を支援するには、個人が責任を持って形成していくための「ニューキャリア理論」に対応する必要があります。ニューキャリア理論では、1つの企業や職務といった境界を超えて、組織を移動しながらキャリア形成をする考え方が一般的でした。

しかし、必ずしも組織を移動するのではなく、個人の仕事における心理的成功を目指すことが、現在のキャリア研究の主流となっています。これは「プロティアンキャリア(変幻自在なキャリア)」とよばれており、現代のキャリア開発には欠かせない考え方です。

豊富な人事制度による機会提供

社員のスキルアップをはかるには、新しい職務に挑戦する機会を与えることも大切です。機会提供は労働意欲の向上につながるので、社員のキャリア自律を促すことにもなります。企業では職務経験と教育訓練を組み合わせながら開発する「CDP(Career Development Program)」という制度があり、以下のような取り組みを指します。

ジョブローテーション:人事計画に基づいた戦略的人事異動
自己申告制:目標や問題点などの自己評価から特技や希望職種を進行させる制度
社内公募制度:社内による人材募集のポジションを公表する制度
社内FA制度:キャリアやスキルを希望部署にアピールし、希望職種・職務を登録する制度

相談窓口の提供

キャリア相談用の窓口を提供することも有効な手段です。窓口があれば社員に対してキャリア自律を促す発信やアドバイスが可能です。面談をするタイミングは、キャリア研修と合わせて行うと良いでしょう。また社員の年齢や属性によって設定することが大切です。

上司が人事考課面談と一緒に実施するときは、キャリアのフィードバックと普段業務のフィードバックに分けるようにしましょう。

マネジメント層への浸透

マネジメントをする上司がキャリア自律に理解がないことから、部下がうまく行動できないという場合があります。たとえ会社全体の支援があっても、上司がキャリア形成における長期的な視点を持っていない場合、目の前の業務遂行に関することしか推奨されないといったことが起こります。もちろん業務の成果も重要ですが、業務だけではスキルアップやキャリア形成も望めません。

上司だけで部下のキャリア自律を支援することは難しいので、会社全体で情報共有することや、上司にもキャリ形成の視点を持ってもらうをこころがけましょう。

メンター制度の導入

メンター制度とは、(主に若手社員に対し)精神的な悩みや将来のキャリアについて相談できる先輩社員(メンター)をつける制度です。一般的にキャリア自律には実務経験が必要になるので、新人や若手のころから自分の適性を考える期間が必要となります。そのためにもメンターを通じて、自分にはどういった道が最適なのかを知ることが大切です。

外部(ボランティア、副業等)との交流

ボランティアや副業など、外部から刺激を受けられる機会を作ることもキャリア自律の支援につながります。労務行政研究所の発表では35.4%の企業が副業や兼業を認めており、新たなスキルアップができる環境づくりを推進しています。副業といった外部との交流は、ただ収入を得るだけではなく、新たな知識やスキル、人脈を広げることが可能です。

社会貢献のためにボランティアをすることも同様です。社内で社員の教育体制を整えることが難しいのであれば、外部から学びの機会を提供することを検討してみましょう。

学習機会の提供

社内で教育体制を整備できるなら、学習機会を提供することも大切です。各社員にどんなスキルや知識を学びたいのかをヒアリングし、企業側から学習環境を提供することが効果的です。もちろん自社に関わる内容であるほど有益なものとなりますが、間接的に関係する学習内容でも問題はありません。社員が学びたいことを提供することで学習意欲を促し、キャリア自律につなげていくことができます。

キャリア自律の支援に取り組んでいる企業事例

社員にキャリア自律を促したいのであれば、企業が指示するのではなく、各社員に合ったキャリアやスキルを引き出す制度や取り組みを行うことが大切です。キャリア自律の支援に取り組んでいる企業事例4社を紹介します。

日清食品ホールディングス

日清食品ホールディングスは、即席麺を生産する日清食品を中心とした企業です。2017年から公募ポストの年齢制限を撤廃し、個人の成長を促しています。

これまでは公募ポストへの挑戦資格を50歳までとしていましたが、シニア社員の活躍機会を増やし誰でもチャレンジできるようにルールを変更しました。

株式会社みずほフィナンシャルグループ

株式会社みずほフィナンシャルグループは、日本の大手銀行持株会社です。各社員のキャリア自律の考え方を理解、実践できるように面談や研修など支援を実施しています。支援においてはキャリアアドバイザーを複数名設置しており、キャリアの方向性やジョブ公募・職種転換、出産・結婚など幅広いキャリア形成に関する相談ができるようになっています。

富士通株式会社

富士通株式会社は、電子システム・機器の製造や販売、サービスの提供を行っている企業です。IT企業からDX企業への転換を経営戦略として掲げており、2020年4月よりジョブ型雇用の導入を実施しています。従来までの階層別教育を撤廃し、選択研修やLMS(ラーニングマネジメントシステム)といった学習環境を提供し、社員のスキル獲得やキャリア開発を促しています。

また社内ポスティングを大幅に拡大したことで、社員全員が応募とチャレンジができるような仕組みを作っています。

両備システムズ

両備システムズは、情報処理業を主業務とした両備グループの企業です。転機となる年齢に合わせたキャリアセミナーを実施しており、全社員が必ず受講すべき研修としています。新入社員であれば理想と現実のギャップ、40歳であれば先を考えた働き方の見直しなど、年齢に合わせた悩みを相談できる環境作りを徹底しています。

まとめ

終身雇用制度が崩壊しつつある現在、企業や組織は個人のキャリア自律を促すかたちへと変化しています。各社員が積極的に学習しスキルアップをはかることで、企業の成長も実現可能です。日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)では、1979年より企業向けの年代別キャリアプログラムを提供しています。

社員のキャリア自律を支援できる環境作りをはじめたいと考えているなら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

JMAM HRM事業 編集部

文責:JMAM HRM事業 編集部
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