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  • 対象: 全社向け
  • テーマ: キャリア
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キャリア形成とは?重要性や企業に求められる支援を具体的に解説

キャリア形成とは?重要性や企業に求められる支援を具体的に解説

変化の激しい今の時代、個々人のキャリア形成がより一層重要視されています。本記事では、不確実性が高まるなかでのキャリア形成の意義、成功へ導くステップ、そして企業ができる具体的な支援について詳しく解説します。

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キャリア形成とは

キャリア形成とは、個人が仕事を通じて経験やスキルを蓄積し、自己実現を追求するプロセスのことです。単に働くだけではなく、自身の「将来の姿」を明確にイメージし、その目標に向かって行動を重ねていくことを指しています。

キャリア形成は、ビジネスパーソンとしてのみならず、一人の人間としてどのように歩んでいくかという生き方そのものに関わる自己探求のプロセスでもあります。

国も力を入れているキャリア形成支援

近年、国もキャリア形成支援に積極的に力を入れ始めています。

文部科学省は2020年から「キャリア・パスポート」を導入し、小学校から高等学校までの成長に合わせたキャリア教育を推進しています。社会に出る前の段階からキャリアについて学び、自分の生き方や働き方を設計するための力をつけることが重要なのです。

また、働く人に対しては厚生労働省が以下のような支援を展開し、自身のキャリアを積極的に形成して豊かな未来を築いていくためのサポートを行っています。

  • キャリア形成・学び直し支援センター:ジョブカード制度を通じて無料のキャリアコンサルティング提供を行うサポート窓口
  • 教育訓練給付制度:雇用保険への加入歴がある個人に向けて、キャリアコンサルタントの教育支援(費用の補助)を行う制度
  • 人材開発支援助成金:企業に対して、技能や知識習得のための制度を導入する際の経費や賃金を一部助成する制度

【参考】
文部科学省|「キャリア・パスポート」例示資料等について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1419917.htm

厚生労働省|キャリア形成・学び直し支援センター
https://carigaku.mhlw.go.jp/

厚生労働省|キャリア形成支援
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/career_formation/index.html

キャリア形成が重要視されている背景・目的

キャリア形成が重要視されている背景と目的について解説します。

日本的雇用慣行の変化

これまでの日本では、新卒一括採用や終身雇用が当たり前でした。

企業から継続的な雇用を守られる一方で、従業員は企業の提示したキャリアを受け入れ、年功序列的なキャリアを形成していくのが普通だった時代です。

しかし、1990年代から企業の経営破綻やリストラが増え、日本の終身雇用制度は崩壊しました。勤続年数が長ければ必ずしも安定したポストを得られるというわけではなくなり、従業員は自らのスキルをどのように磨き、どう働いていくかを主体的に考える必要が出てきたのです。

企業もまた、従業員のキャリア形成を支援する必要に迫られているのが現状です。

ジョブ型雇用の普及

ジョブ型雇用とは、職務に必要なスキルを明確にしたうえで適したスキルを持った人材を雇用する制度のことです。欧米諸国で普及しており、日本でも導入する企業が増えています。

1990年代以降、労働力人口の減少やグローバル化、DXの流れが加速するなか、生産性や専門スキルを重視した雇用方法へとシフトしつつあるのです。

ジョブ型雇用においては、職務に就くために自ら学習やスキルアップをしていく必要があるため、キャリア形成との親和性も高いといえるでしょう。

働き方の多様化と個の尊重

近年、派遣や業務委託といった雇用契約、従業員の副業などさまざまな働き方を推進する企業が増えています。

特に副業は外部の知見を取り入れて新たにスキルアップを図れば、結果的に本業に生かすことも可能です。本業に支障が出ないようルールの取り決めなどは必要ですが、企業と従業員双方にとって有益な取り組みだといえるでしょう。

労働者が個人の価値観やライフスタイルに合わせた自由な働き方を模索するようになった昨今、企業には多様な働き方を尊重する姿勢が求められています。従業員が主体的にキャリアを選択していくためにも、企業がキャリア形成を支援していくことが重要なのです。

キャリア形成における主体の変化

時代の変化に伴い、キャリア形成の主体となる存在は「企業」から「個人」へと変化しつつあります。

これまでは企業が主導

終身雇用が当たり前だった時代は、長期雇用を前提としたキャリアを企業が示し、従業員はそれに従って働いていました。

社会人になるということは、「社会に出て何をしたいか」ではなく「どんな会社に入るか」だった時代で、エスカレーター式に企業が主導するキャリアを歩んでいくのが一般的だったのです。

従業員は、安定雇用を守られる代わりに転勤や希望しない部署への異動も受け入れ、納得して仕事をしていました。

これからは従業員が主体に

変化が激しく先行き不透明な時代となった昨今では長期雇用が難しくなる企業も増え、転職市場が活性化し、個人が社内外を見据えてキャリアを選択していくことが当たり前になりつつあります。

企業側も成果報酬型やジョブ型雇用などを求めるようになり、個人としてどのようなキャリアを形成するべきかを働く人が主体的に考えるべき時代となったのです。

キャリア形成の主体が従業員に移った今、企業には個人が主体的にキャリアを選択するための情報提供やサポートが求められているといえるでしょう。

キャリア形成のメリット

キャリア形成を行うことのメリットについて、従業員・企業それぞれの視点から解説します。

従業員にとってのメリット

従業員にとっては、以下3つのメリットがあります。

目指す未来と今やるべきことが明確になる

日々忙しく働いていると、自分が何を目指しているのか、どのような未来を望んでいるのかが不明確になりがちです。

意識的にキャリア形成に取り組むと、目指すべき未来や現在とるべき行動がクリアになります。自身の行動に自信を持ち、数ある選択肢の中から適切な道を選ぶためにも、定期的なキャリアの見直しを行い、目標を明確にすることが重要なのです。

自分の強みや求められている役割を認識できる

毎日目の前のタスクをこなさなければならない職場では、なかなか自分を客観的に見つめる機会がないかもしれません。自身の弱みはミスに直結するためわかりやすいものですが、自分の強みを認識するのは難しい場合が多いでしょう。

しかし、キャリア形成を行えば必然的に自分を客観的に分析することになるため、自分の強みや企業側から期待されている役割について深く考えるようになります。自身の強みや役割を把握することで、より明確なキャリアイメージを描けるようになるでしょう。

モチベーション高く仕事に取り組める

自身のキャリアを明確にイメージできれば、目標に向かって今とるべき行動が定まり、目の前の仕事にもモチベーション高く取り組めるようになります。

積極的に仕事に取り組むことで生産性が上がり、自身のスキルアップや評価の向上につながる点もメリットだといえるでしょう。

企業にとってのメリット

企業にとっては、以下のようなメリットがあります。

従業員の満足度が向上する

働く人の多くが「主体的に自分のキャリアを形成したい」と考えている時代だからこそ、従業員はキャリア形成を支援してくれる企業に対して魅力を感じ、満足して働くことができます。

満足度が上がれば従業員のエンゲージメントも高まり、離職防止にもつながるでしょう。このように従業員からの評価が高いことが社外に伝われば、優秀な人材から選ばれる企業となり、人材獲得においても有利に働きます。

組織の活性化と成長につながる

企業が従業員のキャリア形成やスキルアップを支援することで、従業員のモチベーションや生産性が向上します。その結果、組織としての生産性が上がり、全体の成長にもつながります。

また、自身のキャリアについて考える際には、事業の未来やより活性化させるためにはどうすべきかを同時に考えられるため、新たなビジネスが生まれるなどの風土改革も起こり得ます。

キャリア形成の手順

キャリア形成は、以下の手順で進めていきます。

  • 1.自己を理解する
  • 2.目標を設定する
  • 3.行動計画を立てる
  • 4.実行する
  • 5.定期的に見直す

それぞれのステップについて詳しく解説します。

①自己を理解する

まずはキャリア形成のベースとなる「現在の自分」について、これまでの経験を棚卸ししながら考えていきます。

自己理解を進めるためには「Will・Can・Must」の概念を使ったフレームワークを行うと良いでしょう。

Will=やりたいこと
これまで何に対するモチベーションが高かったかを振り返り、自分がやってみたいこと、将来実現したいことを洗い出していきます。

Can=できること
やりたいことを実現するために、自分のスキルで何ができるかを考えます。自分の強みを把握できていると、何ができるかを見つけやすくなるでしょう。

Must=やるべきこと
やりたいことを実現するために、現段階で何をすべきか考えます。組織や周囲から求められている役割を認識したうえで自分のやるべきことを考えましょう。

②目標を設定する

自己理解で得られた内容を参考に、具体的な目標を設定します。目標設定の際は、以下のような視点で考えると良いでしょう。

ロールモデルを見つける
働き方や考え方のお手本となるロールモデルを見つけると、目標に向かって行動しやすくなります。「あの人みたいになりたい」「あんな働き方をしたい」と思える人の言動を参考にしながら自分に足りない部分を洗い出し、改善していきましょう。

やりたくないことをリストアップする
自分の中で「やりたくないこと」が明確になると、逆説的にやりたいことをイメージしやすくなります。「生活リズムが不規則な仕事はやりたくない」「ノルマを課せられる仕事はやりたくない」など、自分の価値観に従ってやりたくないことリストアップしてみましょう。

③行動計画を立てる

自分の現状と目標を明確にしたら、そのギャップを埋めて目標に到達するための計画を立てます。目標を実現するために必要な行動、習得すべきスキルや経験などを具体的に考えましょう。

行動計画を立てる際はゴールから逆算し、小さな目標を細かく設定することが大切です。大きな目標を設定すると挫折しやすくなってしまうため、小さな目標を一つずつ着実にクリアしていくような計画を立てましょう。

④実行する

行動計画を立てたら、計画に沿って実行していきます。

もしも行動していくなかで計画通りに進まなかったり、目標達成が難しいと予想されたりする場合は、一度立ち止まって軌道修正をする必要があるでしょう。

行き詰まってしまった時に相談できるよう、周囲のサポート体制を整えておくことも大切です。

⑤定期的に見直す

環境の変化に伴い、仕事への価値観や実現したいことが変わってくることも十分あり得ます。

最初に立てたキャリアプランを必ず遂行しなければいけないというわけではなく、何度変更しても問題ありません。定期的にキャリア形成の見直しを行い、現状と乖離がある場合は臨機応変に変更しましょう。

キャリア形成に必要な力

キャリア形成を適切に行うためには、個人の能力も必要となります。キャリア形成に必要な力を5つ紹介します。

課題を発見し解決していく力

キャリア形成の過程は、「課題の発見」と「解決」の連続です。自分の望むキャリアに向かって進むためには、自身の課題を明確にし、それを解決する能力が求められます。問題解決の能力を持つことで、自分が目指すキャリアに一歩ずつ近づいていけるでしょう。

日頃から「目標達成のために何が必要か」「なぜうまくいかなかったのか」と自分の行動に疑問を持ち、課題や改善点を見つけることが大切です。

計画を立て実行していく力

具体的なゴール設定から計画の立案、そして計画の実行までがキャリア形成における一連の流れです。目標を明確に設定し、それに向かって計画を立て、その計画を着実に実行に移す能力が重要な要素となります。

キャリアの目標やプランがあっても、それを実現するための行動が伴わなければ理想のキャリアを築くことは難しいでしょう。計画を具体的な行動に落とし込み、強い意志を持って一つひとつクリアしていく姿勢が求められるのです。

自己研鑽していく力

キャリア形成は自身の成長と向き合い、自発的に必要な努力をするプロセスです。

従来は企業が示してくれていたキャリアの道筋を自分自身で見出し、それを実現していくために自身のスキルや知識を磨き上げる必要があります。自分に足りないものや改善すべき点に気づき、それらを克服してスキルを高めるよう努力できる力が欠かせません。

目指すキャリアに沿って新しい資格を取得したり外部研修を受講したりと、さまざまな努力を惜しまずに進んでいくことが大切です。

人間関係を構築していく力

相手の感情やニーズを理解し、ビジネスの場において適切なコミュニケーションが取れることは、円滑に仕事を進めてキャリアを形成していくうえで非常に重要です。

インターネットやSNSが発達し人と直接会話する機会が減っているため、人間関係を築くことに苦手意識を持つ人も増えています。テレワークが普及したとはいえ、人とのつながりは依然として欠かせない要素だといえるでしょう。

客観視する力

キャリア形成の過程では、自分の状況を客観視できないと途中で行き詰まってしまう恐れがあります。

たとえば自身の課題を見つけて目標設定をするにしても、第三者目線で俯瞰的に自分を把握できなければ適切なゴールを設定できません。計画を実行する段階においても、目標に向かって正しく進んでいるかを客観的に判断し、適切に軌道修正をしていく必要があるでしょう。

客観視する力をもつことでより正しい判断と行動が可能となり、確実なキャリア形成につながるのです。

キャリア形成のポイント

キャリア形成をしていくうえで意識したいポイントを紹介します。

周囲と比較しない

キャリア形成の過程では、他人と自身を比較しないことがポイントです。他人の話を聞くことで視野が広がり参考になる点も多いものですが、他人の進捗や成功を自分の基準にしてしまうと、途中でモチベーションが下がったり挫折してしまったりする場合があります。

他人のキャリアや経験は参考にするに留め、自分らしいキャリアプランを策定しましょう。あくまでも「自分のキャリア」を大切にし、自分のペースで進んでいくことが大切です。

ポジティブに考える

キャリア形成の過程では、目の前に立ちはだかる壁や遠く感じるゴールに、ネガティブな思考がよぎることもあるでしょう。だからこそ、できるだけポジティブな思考を心がけることが大切です。

未経験の分野や新たな課題に直面した時は成長のチャンスと捉え、意識的にポジティブな思考に切り替えるようにしましょう。楽しみながら前向きに取り組むことが、長期的なキャリア形成を成功させるポイントです。

具体的に計画する

理想のキャリアを築くためには、明確な目標に基づいた具体的な行動が求められます。曖昧な計画では適切な行動ができなくなってしまうため、具体的かつ実行可能なステップに分解し、それに沿った行動を心がけることが重要です。

目標を設定したら、「いつまでに、どこで、〇〇のスキルを身につける」「〇〇ができるようになったら△△の経験を積む」などと具体的な行動計画を立てましょう。段階を踏んで着実にレベルアップしていくことが大切です。

企業が行うべきキャリア支援

企業が従業員のキャリア形成を支援するためには、以下のような人事施策や取り組みが有効です。

キャリアプログラムの提供

従業員のキャリア形成を支援するうえでは、中長期的な成長を支えるキャリアプログラムを提供することが重要です。キャリアプログラムは従来のように企業が主導するのではなく、従業員の意思と選択の自由を尊重するものが望ましいでしょう。

企業はまず、従業員がそれぞれのキャリア形成について考え、自由にキャリアを築ける環境を整える必要があります。キャリアプランの策定支援においては、越境学習のような新しい学習機会の提供や多様な情報提供も行うことも効果的です。

年代・属性に合わせたキャリア開発

従業員の年代や属性に合わせて適切な支援をすれば、さらなる効果が期待できます。 年代の具体的な区切りとして、以下のような例があります。

  • 入社時
  • 一定年数経過時(3年、5年、10年など)
  • 一定年齢到達時(30歳、40歳、50歳など)

年齢や経過年数の区切りに応じたキャリア研修を実施し、各年代が持つ課題に合わせて情報提供を行いましょう。たとえば入社時なら、「どのような人材になりたいか」というキャリアの展望を描いてもらいます。経験豊富なベテランやシニア世代なら、これからの働き方や貢献フィールドを考えてもらうとともに、スキルや経験を生かせる環境作りを行いましょう。

また、属性別では、育児・介護をしている従業員や昇格に悩んでいる従業員などのキャリア形成を支援していく必要があります。支援の後にはフォローの場を設けることも大切です。

昨今のキャリア潮流への対応

従業員のキャリア形成を支援するためには、個人が責任を持って形成していくための「ニューキャリア理論」に対応する必要があります。

ニューキャリア理論においては、ひとつの企業や職務といった境界を超えて、組織を移動しながらキャリアを形成するという考え方が一般的でしたが、現在では必ずしも組織を移動するのではなく、個人の仕事における心理的成功を目指すことがキャリア研究の主流となっています。これは「プロティアンキャリア(変幻自在なキャリア)」とよばれており、現代のキャリア形成に欠かせない考え方であるといえるでしょう。

こうした新しいキャリアの考え方に対応し、従業員が自らの価値観や目標に基づいて多様なキャリアパスを選べるよう支援することが重要なのです。

豊富な人事制度による機会提供

従業員のスキルアップを図るには、新しい職務に挑戦する機会を与えることも大切です。

さまざまな機会が与えられると、従業員は自身のスキルアップを図りながら、モチベーション高くキャリア形成に取り組むことができます。

たとえば職務経験と教育訓練を組み合わせながら開発する「CDP(Career Development Program)」という制度では、以下のような取り組みがあります。

  • ジョブローテーション:人事計画に基づいた戦略的人事異動
  • 自己申告制:目標や問題点などの自己評価から特技や希望職種を進行させる制度
  • 社内公募制度:社内による人材募集のポジションを公表する制度
  • 社内FA制度:キャリアやスキルを希望部署にアピールし、希望職種・職務を登録する制度

こうした制度を適切に運用すれば、従業員は自らのキャリアを有意義に発展させることができ、ひいては組織全体の成長にもつながるでしょう。

相談窓口の提供

キャリア形成の支援として、従業員がキャリアについて相談できる窓口を設けることも有効です。相談窓口は、従業員がキャリアに関する悩みや疑問を解決する場として機能するとともに、企業側から有益な情報を提供する場でもあります。

たとえば、キャリア研修と連動させてプロのキャリアコンサルトとの面談の場を設けるのも効果的でしょう。研修での気づきを深めることができ、より研修の効果が高まります。特に人事考課面談と同時にキャリア相談を行う場合は、業務のフィードバックとキャリアのフィードバックを明確に線引きし、業務の評価にとらわれずにキャリア形成へのアドバイスを行うことが大切です。

また、相談窓口は従業員の年齢や属性に応じて設定し、それぞれのニーズに合ったサポートができるよう工夫しましょう。

マネジメント層への浸透

キャリア支援は企業全体の課題であり、特にマネジメント層の理解と協力が不可欠です。 企業としてはキャリア形成を支援していても、直属の上司の理解が不足していれば、部下は自身のキャリア形成に必要な行動をうまく取れなくなってしまうでしょう。

たとえば、上司がキャリア形成における長期的な視点を持っていない場合、目の前の業務遂行に関することしか推奨されないといったことが起こります。業務の成果も重要ではあるものの、それだけではスキルアップやキャリア形成は望めません。

マネジメント層にキャリア支援の重要性を理解してもらうため、研修や教育の機会を設けることも有効でしょう。企業全体でキャリア形成に対する認識を共有し、部下に対して適切なサポートができる環境を整えることが大切です。

メンター制度の導入

メンター制度の導入は、特に新人や若手従業員のキャリア形成を支援する効果的な方法です。メンター制度は、若手従業員が精神的な悩みや将来のキャリアプランについて相談できる、経験豊かな先輩従業員(メンター)を配属するものです。

キャリア形成の過程では、実務経験が重要な要素となります。新人や若手の従業員は、実務を行うなかで自身の適性や将来の方向性を探求していくのです。メンター制度を通じて、自分に何が最適なのか、どのようなキャリアパスを歩むべきかについての洞察を得ることができるでしょう。

外部との交流

ボランティアや副業など、外部から刺激を受けられる機会を増やすこともキャリア形成の支援につながります。

副業ではただ収入を得るだけではなく、新たな知識やスキルをつけ、人脈を広げることができるでしょう。ボランティアなどでは、外部の組織やコミュニティでの活動を通して異なる視点や価値観に触れ、自身の考え方に多様性をもたらすこともできます。

社内で従業員の教育体制を整えると同時に、外部での学びの機会を積極的に提供することも検討すると良いでしょう。

学習機会の提供

従業員のキャリア支援を考えるうえで、学習機会の提供は欠かせない要素です。

従業員の学びたい内容、磨きたいスキルや知識をヒアリングし、それに基づいて企業側から学習環境や機会を提供すると効果的です。学習内容は自社の事業や業務に直結するものだけでなく、範囲を限定せずに幅広く学習機会を提供することが望ましいでしょう。個人の学びたいという意欲を支援することで、自律的なキャリア形成の支援につながるのです。

事業を成長させるために自発的なキャリア形成に対する思考が必須となるなか、リスキリングの重要性も高まっています。従業員には、ただ指示された業務を正確に遂行するだけでなく、現状の環境下で何をすべきかを主体的に考え、実行する能力が必要不可欠だといえるでしょう。そこで、自らのスキルセットを見直し、不足している能力を補完するリスキリングが必要なのです。

リスキリングにより新しいスキルの習得や既存スキルの更新を行うことで、従業員は絶えず成長し続け、企業全体も進化し続けることができます。

企業のキャリア支援事例

厚生労働省では、従業員の自律的なキャリア形成支援について模範的な取り組みを行っている企業を「グッドキャリアアワード」として表彰しています。「グッドキャリアアワード2022」より、企業のキャリア支援事例を紹介します。

株式会社イデックスビジネスサービス

イデックスビジネスサービスは2018年4月に4社が合併し、多様な人材が一堂に会する新しい環境へと生まれ変わりました。企業理念の浸透に難しさはあったものの、多様な働き方を尊重しながらさまざまなキャリア支援を展開しました。

【具体的な取り組み】

  • 社内ワークショップ活動による自主性のある従業員の育成
  • 外部メンター制度導入等によるキャリア形成の環境整備
  • 多様な人材が活躍できる意識改革の取り組み

【取り組みの成果】

  • ワークショップの実施によ、エンゲージメントが向上した
  • 心理的安全性の確保により、自律的に対応できる人材が増えた
  • 従業員総活躍を意識したキャリア形成支援を創出できた

参考:厚生労働省「グッドキャリア企業アワード 2022 好事例集(全体版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001065024.pdf

トラスコ中山株式会社

トラスコ中山では、ジョブローテーションにより個人の能力開発による部署の活性化を目指していたものの、「キャリア形成がしにくい・チャレンジの機会が少ない」という課題がありました。それらを解決すべく、より働きがいと働きやすさのある企業を目指して人事制度改革を行いました。

【具体的な取り組み】

  • HRサポート課の新設および従業員や事業所責任者との面談
  • 1on1 面談を活用した主体的なキャリア形成の支援
  • エンゲージメントサーベイの実施、結果の人材育成への活用

【取り組みの成果】

  • 従業員の声を反映した人事施策の立案
  • モチベーションの向上・やるべきことの明確化
  • データを軸にした組織改善、研修実施、仕事改革

参考:厚生労働省「グッドキャリア企業アワード 2022 好事例集(全体版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001065024.pdf

まとめ

本記事ではキャリア形成の概要やメリット、形成していくポイントなどを紹介しました。

これからの時代、従業員一人ひとりが自身のキャリア形成を主体的に考えることが重要です。企業側も従業員のキャリア形成をサポートすると同時に、従業員が、前向きに楽しみながら働き続けられるよう自社の魅力を高めていく必要があるでしょう。

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