- 対象: 全社向け
- テーマ: 働き方
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自律型人材とは? 育成のための5つの方法とメリット・デメリットを詳しく解説
育成が急務だといわれる「自律型人材」。VUCAの時代とも呼ばれる現代において、企業が環境変化に迅速かつ柔軟に対応するためには、社員の自律性が不可欠です。自律型人材は、働き方改革や新型コロナウイルスの流行などで、テレワークが進んだことにより、さらに求められています。この記事では自律型人材の特徴や育成方法、メリット・デメリットなどを解説します。ぜひ参考にしてください。
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自律型人材とは
自律型人材とは、指示を待つのではなく、自らの意思で考え能動的に業務を遂行できる人材を指します。ただし、具体的に何を求めるのかは企業によって異なり、企業ごとに具体的な定義が必要になります。
なお、「じりつ」には「自立」と「自律」があり、それぞれ意味は異なります。「自立」は自分の足で立てる状態のことで、1人で仕事をこなせる、経済的に独り立ちしている状況などを指します。一方、「自律」とは、自分の意志を持ち、自らをコントロールしながら、目的や意義を考えて行動に移せる状態を指します。
自律型人材がなぜ必要なのか
現代社会は「VUCAの時代」といわれるほど、めまぐるしいスピードで変化しており、企業が求められる行動も常に変化しています。組織が存続していくためには、環境変化に臨機応変に対応しながら、企業の目標達成に向けて仕事を進めることが重要です。
自分の意志で考え行動ができる自律型人材を育成することで、上司からの指示を待たず迅速に行動できる人材が増え、企業活動のスピード感は増していきます。
さまざまな変化に素早く柔軟に対応できる組織づくりのために、自分の意志で行動できる自律型人材の必要性が高まっています。
自律型人材の特徴とは
自律型人材にはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは、3つの特徴を解説します。
自分から行動できる
自律型人材には、指示を待って行動するのではなく、自分から行動できるという特徴があります。企業活動に貢献するために何をすべきなのかを自分で考えて行動します。自分に課せられた役割や期待を理解しており、さらに高い目標設定や迅速な判断を自律的にできる人材です。
責任を持って行動できる
責任感を持って行動できることも、大きな特徴です。自分で考え判断して動くことにより、責任感が生まれるため、自らを律した行動(=自律)ができます。そのため、設定した目標に対して、自分自身が責任を持ち、粘り強く取り組みます。また、ミスがあってもその結果を受け止め、何をすべきなのか、どうすれば状況を改善できるかなどを考えられます。
自分らしさを仕事に反映できる
自律型人材は、周りに流されずに自分を持っていることも特徴の1つです。与えられた仕事に対して自分の意志や価値観を持っており、考えや信条が確立しているため、それらを大切にしながら物事の判断・決定が行えます。人の意見や場の空気に流されずに判断できるため、オリジナリティのある自分らしい仕事が可能です。
自律型人材を活かす組織とは
自律型人材を活かすためには、組織としての在り方も重要です。ここでは、自律型人材が活躍するためにどのような組織が求められるのかを解説します。
ホラクラシー型組織
ホラクラシー型組織とは、役職や階級のないフラットな組織のことです。対義語にはヒエラルキー型組織があり、役職や階級が設定された組織のことです。従来の日本企業の多くはヒエラルキー型組織といえるでしょう。
リーダーに多くの権限が集められるヒエラルキー組織とは異なり、ホラクラシー型組織では、意思決定の権限などが社員それぞれに与えられるため、主体的に動ける自律型人材を活かせます。
ティール組織
ティール組織は、「目的達成のために、組織のメンバー全員が個別に自己決定を行う自律型組織」と定義づけされています。ホラクラシー型組織が厳密なルールを設定して行われる経営手法であるのに対し、ティール組織は明確なビジネスモデルが存在しない組織概念であるといった違いがあります。
自律型人材育成のための5つの方法
自律型人材を育成する5つの方法について解説します。人材育成を計画する際の参考にしてください。
自律型人材を定義し目標を設定する
はじめに、自社にあった「自律型人材」とはどのような人材なのかを明確に定義しましょう。ポイントは、長期的な視点で考えることです。以下で、自律型人材を定義する2つの方法を解説します。
●自社の経営戦略に必要な人材を定義する
1つめは、自社の経営戦略と照らし合わせて定義する方法です。企業ごとに経営戦略や目標は異なります。経営戦略を実行する上でどのような人材が求められるのか、目標達成のためにはどのようなことをしてほしいのかを検討し、求められる人材増を定義します。このとき、期待する行動を具体的に定めることがポイントです。
●自社内にいる「自律型人材」を目標にする
2つめは、自社内で「自律型人材」だと思われる人物を選び、目標にする方法です。主体的に行動ができる、自分の意志や意見をしっかり持っているなど、自律型人材の特徴に当てはまる社員を探しましょう。その上で、その社員の具体的な行動や能力などを分析して、育成目標として項目を設定します。この方法の場合も、具体的な行動として設定することが重要です。
心理的安全性を確保する
自律型人材を育成する上では、心理的安全性の確保も重要です。心理的安全性とは、社員それぞれが他者からの反応などに恐怖・不安を感じることなく、自然体で発言や行動を起こせる状態のことを指します。
主体的な行動や発言をするためには、失敗しても大丈夫だと思えたり、発言しても否定や拒絶されなかったりという環境作りが重要です。心理的安全性を確保することで、社員が能動的な発言や行動をしやすくなり、自律性を高めることができます。
「心理的安全性」については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
心理的安全性の高い職場の作り方|生産性を上げるGoogle流マネジメント手法も解説
環境づくりをおこなう
自律型人材を育成するためには、ソフト面、ハード面双方の環境を整えることが重要です。以下では、それぞれどのような環境づくりを行えばよいのかについて解説します。
●ソフト面での環境作り
上記の心理的安全性の確保同様、社内で「自律型人材育成」の重要性について共有し、理解が進むことで、主体的な行動を受容する空気が醸成されます。
また、社員が能動的に行動した際には、振り返りとフィードバックも大切です。目的や目標と照らし合わせて、求められる行動ができているか、できていない場合はその理由などを振り返ります。他者からのフィードバックを受け、内省することは、自らの行動を自律的に考える機会となります。自発的な行動のすべてを良しとするのではなく、目的や目標を握る、自らに課せられた役割の理解を深めることをサポートしあう環境が、自律型人材の育成に役立ちます。
●ハード面での環境作り
自律型人材を適切に評価できるように、評価基準を見直すことも重要です。仕事を与えてその成果だけで評価してしまうと、言われたことだけやればよいと思ってしまい、自律型人材は育ちにくくなってしまいます。そのため、成果だけを評価するのではなく、チャレンジしたことに対する評価も行いましょう。
ソフト面で挙げた振り返りやフィードバックを、ハードとして仕組み化することも有効です。1on1の導入など、社員が自らの行動を考え、振り返る機会を設けることが自律型人材の育成につながります。
会社の方針を深く理解させる
自分で考えて行動できるだけではなく、会社の方針や経営理念・戦略などを深く理解させることも大切です。いくら能動的な行動ができる自律型人材であったとしても、自社の目標や方針などを理解していなければ、自社にとって何が最良なのか、求められている行動は何なのかが判断できません。自律とは、単に能動的に動くだけではなく、企業にとって最良な行動を考えて行動できることです。
研修と実践を関連づける
自律型人材を育てるためには、ただ実践させるのではなく、定義や求められる行動が腑に落ちるような研修を行うとよいでしょう。いきなり行動や発言を変えることは難しく、特に「指示を出す・受ける」といった仕事の方法が定着している職場では、上長・メンバー共に、自律的な動き方がわからず、互いの自律性を損ねてしまう場合もあります。研修やセミナーなどを通して育成で、自律型人材に必要なスキルの土台を作りましょう。
土台が作れたら、実践できる場を用意していきます。メンバーへの研修で、自律的な行動の実践機会を用意する。管理職研修で部下の自律性を評価する、仕事を任せる方法を学ぶといった機会を設けます。
研修と関連付けて行動する場面を用意することで、知識やスキルがより深く身につき、自信にもつながります。
自律型人材を育成するメリット
自律型人材を育成するメリットは、大きく分けて4つあります。以下でメリットを解説します。
管理職の負担が減る
自律型人材を育成することで、管理職の負担軽減が可能です。何らかの問題が発生した場合でも、自律型人材であれば自分が何をすべきなのか、どうすれば解決できるかを自分で考えて行動できます。すべてを指示する必要がないため余計な負担が減り、社員の成長をサポートする時間が取れるなど、企業全体の成長にもつながります。
オリジナリティのあるアイディアが生まれる
人の指示だけで業務を行っていても、指示内のものしか生まれません。一方で、自律型人材が自らの頭で考え能動的に仕事に取り組むことで、多様なアイデアや考えが生まれやすくなります。自律型人材は、自分の意見・価値観をうまく仕事に反映できるという特徴があります。前例や既存のやり方にとらわれることなく柔軟な発想が可能なため、イノベーションの一端となる場合もあるでしょう。
業務の効率化ができる
自律型人材は、管理職からの指示や判断を待つことなく、自分自身で判断して行動・対応が可能です。指示待ちしていると、管理職が忙しい場合には、なかなか指示が出なくて業務が進まないというケースもあるでしょう。しかし、主体的な行動ができる自律型人材は、自ら業務をコントロールし方法の改善を考えることが可能です。業務の効率化や生産性向上につながります。
テレワークに対応しやすい
テレワークは、自宅などオフィス以外の場所で働くため、管理職によるチームマネジメントがしづらい環境です。しかし、自分のやるべきことや目標などを考え、能動的に行動できる自律型人材であれば、管理職の目が届かなくても自ら判断して業務を行えます。自律とは、自らをコントロールすることです。他者の目がない場所でも、自ら決めた計画や目標を遂行できる自律型人材は、テレワークに向いています。
テレワークが今後さらに拡大していく可能性を考えれば、自社で自律型人材を育成するメリットは大きいといえるでしょう。
テレワークについては、こちらの記事もおすすめです。
自律型人材を育成するうえでのデメリット
さまざまなメリットがある自律型人材育成ですが、デメリットもあります。
育成のための手間と時間がかかる
自律型人材育成には、どうしても手間と時間がかかってしまいます。自律型人材となるためには、さまざまなスキルや要素を身につけさせなければいけません。また、効率的に育成するには研修プログラムが有効ですが、研修準備にもリソースやノウハウが必要になり、手間や費用がかかります。
まとめ
日々変化する現代社会では、変化に対応できる自律型人材育成の必要性が高まっています。業務の効率化や管理職の負担軽減、テレワーク対応などメリットが多くあります。現代の企業活動には必須といえる自律型人材の育成に、ぜひ取り組みましょう。
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