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レジリエンスとはビジネスで重要な心理学用語|意味や使い方、高めるための手法などを解説

レジリエンスとはビジネスで重要な心理学用語|意味や使い方、高めるための手法などを解説

レジリエンスとは「ストレスに対応し、回復する」という意味をもつ、心理学の用語です。近年、仕事に関するストレスから社員を守り、企業としての力を高めようと、レジリエンスの向上を試みる企業が増えました。

ここでは、企業の人材育成に関わる人に向け、レジリエンスについて詳しく解説します。レジリエンスを向上させるために企業がすべきことも紹介するので、参考にしてください。

レジリエンスの意味とは

レジリエンスについて、心理学的・ビジネス的意味について解説します。

レジリエンスは心理学の用語

レジリエンスは、ストレスを受けたときの「精神的回復力」を指す言葉です。同じようなストレスを受けた際に、PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)になる人とならない人がいます。このようなストレスの受け止め方の差は、レジリエンスの違いにより発生します。

レジリエンスはビジネスでも重要

精神的回復力とは、逆境やトラブル、あるいは強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理的プロセスを指します。つまり、レジリエンスは「速やかに立ち直る力」ともいえます。

企業が突然の状況やリスクに対抗するには、組織レジリエンスの強化が大切です。また、企業が活動と成長を続けるために、社員一人ひとりのレジリエンスを高めていくことも必要です。

レジリエンスの3因子

組織および個人のレジリエンスを構成する、3因子について解説します。

1.新奇性追求

新奇性とは、さまざまな分野やできごとに対する関心を指します。また、慣れ親しんだ活動や習慣にとらわれず新しい内容に挑む気持ちも、新奇性追求に該当します。

2.感情調整

ストレスが発生すると、人の感情は大きく揺れ動きます。感情調整は「悲しい」「苦手」「逃げたい」「諦めたい」などの、マイナス感情に対する心理的プロセスを自らコントロールし調整することを指します。

3.肯定的な未来志向

未来に対する期待を指しますが、漠然と楽観的に生きることではありません。肯定的な未来志向は、明確な目標や夢をベースに将来的なプランを思い描くことで、精神的回復を促進します。

レジリエンスの6のコンピテンシーの特徴

レジリエンスは、6つのコンピテンシー(行動特性)にもとづき高めることができます。

1.自己認識

自分の思考や気持ち、生理的反応、行動に注意を払う能力が自己認識です。客観的に自分の強みや弱みを、的確に認識する力でもあります。

2.自己コントロール

ストレスに打ちのめされ思考停止するのではなく、望ましい結果に向けて感情を制御する能力や、自分の欲求を抑え、適切な行動を取ることを意味します。

3.現実的楽観力

ストレスをポジティブに捉える能力です。自分ではどうにもならないこと、自分しだいでコントロールできることを区別し、目的に向かい行動できる能力でもあります。

4.精神的機敏性

状況を多角的・俯瞰的に把握し、感情任せの場当たり的な行動を避ける能力です。精神的機敏性に長けた人は、先入観や慣習にとらわれず、臨機応変にふるまえます。

5.キャラクターの強み

人それぞれの性格や特技、考え方などは異なります。キャラクターの強みとは、自分の強みを最大限に生かし、ストレスに対抗する能力です。

6.関係性

周囲の人と信頼関係を築き、よい関係を維持する力を指します。周囲の協力や助けが得られると、ストレスに対抗する選択肢が増えます。

レジリエンスおける危険因子と保護因子とは

ストレス源となる「危険因子」と、立ち直りを促す「保護因子」について解説します。

危険因子

危険因子とは、ストレスや過酷な環境の元凶です。危険因子の代表的な例としては、不健全な家庭環境・人間関係のトラブル・災害・病気・戦争などが挙げられるでしょう。レジリエンスを高めると、危険因子に対して適切に向き合えるようになります。

保護因子

保護因子は、ネガティブな気持ちや過酷な環境から脱却するための要素です。個人の精神的特性・相談相手・友人・職場の人間関係などが保護因子に該当します。質のよい保護因子の数を増やすほど、レジリエンスが高まるとされています。

レジリエンスと頑強性の違いとは

頑強性とは、ストレスに対抗する力、跳ね返す力を指します。ただし、精神を強い鎧で守っている頑強性が高い人でも、いざ気持ちが崩れてしまうと立て直しが難しいもの。一方、レジリエンスが高いとはストレスに柔軟に対応することができます。ストレスを強さで跳ね返すばかりでなく、しなやかに受け止めることにより、よりストレスに強い対応が可能となるのです。

レジリエンスが高い人はこんな人

企業にとって魅力的な、レジリエンスが高い人の特徴を紹介します。

柔軟性が高い

1つの考えに囚われることなく、柔軟な考え方ができる人です。ネガティブな状況に置かれても、ポジティブに考えを転換できるなど、発想を転換する力に優れています。逆境を覆す糸口を見出す力にも長けている人が多いでしょう。

感情のコントロールができる

感情の浮き沈みが激しいと、仕事の効率や成果に影響しかねません。レジリエンスの高い人は、目の前の状況に一喜一憂せず、仕事の本質と向きあいます。また、多角的に課題を考えられるため、ストレスへの対処法を豊富にもちあわせています。

楽観的

将来のビジョンが見えており、目的を達成するように前向きに行動できます。ネガティブな状況をポジティブな言葉で表現できるよう気を配る、人間関係においても長所を見つけることがうまいなどの特徴が見られます。

良好な信頼関係を築ける

普段からコミュニケーションが活発であり、同僚や上司から信頼されています。周囲のありがたみを理解し、お互いに協力しあう関係を築けています。ピンチに陥ったときに、周囲の助けを得て挽回できた体験をもつ人も少なくありません。

自責思考

自分を責め立て悪者に追い込むという意味ではなく、自分に改善すべき点はないか熟考する思考力をもつ人です。こういった人は、高すぎる目標を設定したときも、自身の目標に応じて修正うることができます。

事実を受け止め挑戦を続ける

仕事では、次から次へと課題が発生します。レジリエンスが高い人は、失敗や困難に直面しても、事実を受け止め、次に活かすことができます。課題を乗り越えるごとに感じる「成長したという意識」が、行動の原動力となるでしょう。

レジリエンス向上の企業活動への効果

レジリエンス向上は、企業にどんな効果をもたらすのかについて解説します。

社員のストレス軽減

ストレスに柔軟に対応できる社員は、ストレスを受けにくく心身ともに健康に過ごせます。多くの業務を抱える部署や人と関わる管理職などは、ストレスをためやすい環境にあります。レジリエンスを高めて対応力を強化すれば、ストレス軽減につながるでしょう。

社員が状況の変化に強くなる

レジリエンスを高めると、おのずと柔軟性に優れた人になります。組織編制や人事異動、市場の変化など、ビジネスの世界には突発的な変動がつきものです。企業内外を問わず、状況変化に適応するには、レジリエンスの向上が求められます。

目的達成のための力がつく

レジリエンスを高めると、目的を達成するために感情や行動をコントロールする力を養えます。集中力や業務遂行能力が向上し、目的を達成しやすくなります。

ビジネスにおけるレジリエンスを高めるメリット

ビジネスの場で、レジリエンスを高めるメリットを紹介します。

変化が大きい部署の社員の負担を軽減できる

営業や企画などの業務は、予定通りに業務が進むとは限らず、状況が変わりやすい傾向にあります。変化の激しい部門では社員の精神的負担が大きくなりがちですが、レジリエンスを高めると、状況変化のストレスに対応しやすくなるでしょう。

困難に強い企業に成長できる

災害や急激な感染症の蔓延など、突然の困難に直面すると企業活動の存続が危ぶまれます。社員個人のレジリエンスが高い企業では、非常時の対応力が強いため、安定した業務運営が可能です。

部署内の人間関係が良好になる

職場での人間関係が原因で、ストレスを感じる社員は少なくありません。しかし、レジリエンスが高い人は、ストレスに過度に反応せず、受け流せる力があります。社員一人ひとりのレジリエンスが高ければ、余計なトラブルが発生せず、部署内の人間関係が良化するでしょう。

レジリエンスを高めるためのポイント

レジリエンスを高めるために必要な要素を紹介します。

ABCDE理論を理解する

ABCDE理論は感情コントロールに有効な考え方で、できごとAに対し、BからEのプロセスにより感情や行動をコントロールします。BからEのプロセスについては、以下のとおりです。

  • B:Aを認識する
  • C:感情や行動が引き起こされる
  • これらのバイアスを避け、全体をバランスよく捉えることが重要です。
  • E:合理的な感情や行動を選択する

ABCDE理論を活用すると、ものごとを多面的に捉えられ、前向きな行動を選択できるようになります。

自己効力感を高める

自己効力感が高まると、困難に立ち向かう自信が芽生え、課題を解決するごとに成長を感じられます。なお、自己効力感を高めるには、多くの成功体験が必要です。
多くの経験を積ませるために、プロジェクトにアサインする、新たな業務を割り振るなど、企業が社員に対して挑戦する機会を与えることが重要です。

自尊感情を高める

自尊感情が高まると、ありのままの自分を受け入れ「自分には価値がある」と自信をもてます。自分の強み・弱みを的確に把握し、困難を乗り越えるために発揮できます。
互いに承認しあい、認めあう社内風土が必要です。互いが安心して発言をしあえる、心理的安全性の高い職場づくりが重要となるでしょう。

組織のレジリエンスを高める方法

困難に強い企業を作るべく、組織レジリエンスを高める方法を紹介します。

職場環境を整える

職場環境を整え、社員が働きやすい環境をサポートしましょう。上司は部下に対し抑圧的な対応を取らないように注意し、課題を乗り越えるためにサポートを行います。社員それぞれの価値を認め、自尊感情を高めることも重要です。

失敗を活かし、振り返りや事後検証を行う

失敗をした社員を責めるだけでは、企業の成長につながりません。客観的な振り返りや事後検証により、次は成功するように心がけましょう。なお、失敗を報告しやすい企業風土づくりも重要です。

レジリエンスに関するセミナーや教育プログラムを開催する

株式会社日本能率協会マネジメントセンターでは、レジリエンスを高める研修を実施しています。

レジリエンスの専門家、久世 浩司氏監修のもと開発いたしました。

TA(交流分析)理論をもとにした診断ツールを用いて、社員の自己理解を促します。講義と演習形式により「ネガティブな感情のコントロール」「社会的支援や自身による立て直し」「ストレスを通じた学び」の3つのステップを経て、レジリエンスを向上させます。

社員に対するレジリエンス教育は、自己流ではなかなか成功できません。効果的に組織のレジリエンスを高めるためには、セミナーや教育プログラムを開催することをおすすめします。

まとめ

レジリエンスはストレスに柔軟に対応できる能力であり、社員のレジリエンスを高めると、組織レジリエンスの向上も期待できます。レジリエンスを高めるには、職場環境や風土の見直しにくわえ、セミナーや教育プログラムを積極的に取り入れてみてください。

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