
新入社員に対してOJTを導入する企業が増加しています。ここでは、企業の人材育成に関わる人事や職場の上司、OJT担当に向けて「イマドキ新入社員」に適したOJTの進め方やコツ、心構えなどを解説します。イマドキ新入社員の特徴を踏まえたOJTのポイントも紹介するので、ぜひ、新人と企業の成長のために役立ててください。
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新入社員とOJTトレーナー双方の成長を促進する!
効果的なOJTのポイント解説
新人教育に欠かせないOJTとは?
OJT(On the Job Training)とは、配属先の職場の先輩が、新入社員に対して業務を通して行う教育方法です。新人教育の一環として座学などの研修を行うこともありますが、現場で通用する一人前の人材を育てるにはOJTが欠かせません。
理想のOJTとは?3つの観点から解説
「新入社員」「OJT担当」「上司や職場」という3つの観点から理想のOJTについて考えてみましょう。まず、新入社員からみると、実務に関する知識やスキルの習得が目標です。OJT担当にとっては、新入社員に教えることによる指導力や、業務理解などの成長が期待されます。上司や職場にとっては、コミュニケーションが活発になり、職場環境やチームワークの改善が期待できると考えられます。
新人教育には職場全体で取り組むことが重要
OJTで大切なのは、OJT担当に教育を一任しないことです。なぜなら、OJT終了後に到達してほしい新人のレベルを決めるのは、上司にあたる管理職だからです。担当のみで適切な目標を決め育成をするのは難しいため、管理職がOJT担当者や新人と面談をするなどして、OJTを職場全体でサポートしましょう。
OJTを取り巻く環境の変化
近年のOJT担当者は、若手が多い傾向があります。その背景は、ベテラン社員は就職氷河期のために採用が少なく、大部分は管理職に昇進しているためです。また、人材不足によりOJT担当専任がいる職場は多くありません。したがって、2020年現在のOJTは、新入社員とそれほど職歴が変わらない、入社2~3年目の若手社員が多く担当しています。
若手社員は指導する立場でありつつも、自身も勉強中の身です。指導経験がないばかりでなく、業務をこなしつつOJTを担当するのは負荷が甚大です。OJTが円滑に進むには、上司と職場のサポートが欠かせません。
OJTを担当する若手社員にも大きなメリットがある
成長途中の若手社員だからこそ、OJT担当は大きな自己成長の機会になります。まず、説明スキルの向上が見込めます。業界に飛び込んだばかりの新人にもわかるように説明するには、専門用語抜きのかみ砕いた表現が必要です。
また、職場のメンバーなどにOJTの支援を頼めないか相談する際に、交渉や調整・依頼などといったコミュニケーションスキルが磨かれるでしょう。さらに、OJTのスケジュールを組むことで、タイムマネジメントスキルも養われます。
若手社員から指導を受けることは、新人にとってもメリットがあります。年齢が近いだけに打ち解けやすく、コミュニケーションがとりやすいため、主体的な実務経験を積めると期待できます。
最近の新入社員の特徴とは?
新入社員の特徴をつかみ、より効果的なOJTを行いましょう。自分たちの世代と比較し、相違点を確認してください。
イマドキ若手・新入社員7つの特徴【若手意識調査2020】Vol.2 自分のことを認めてくれる環境で、無理なく、無駄なく成長したい
身近な人への貢献意欲が高い
イマドキの新入社員が貢献意欲を覚える対象は、ごく身近に限られがちです。社会貢献は立派なことという思いはあったとしても、あくまでもプライベートを大切に、自分に無理がない程度に働きたいという意思がみられます。
一緒に働く人との相性がいい場合は、優れたパフォーマンスが期待されます。自分を認めてくれて、尊敬できる同期や先輩、上司には精一杯応えようとするものです。一方、気が合わない人に対しては、貢献意欲がわきません。仕事を達成することよりも自分の居心地のよさを先に考えるので、無理をしてまで働く気はないと諦めてしまいます。
勝手にプレッシャーを感じる
些細なことで落ち込み、質問したら怒られるのではないかなどと過剰におそれる傾向がみられます。自分に好意的な人が集まっている場では、のびのびと力を発揮できるでしょう。わからないことを積極的に質問し、主体的に仕事を進めると期待できます。
一方、威圧的な上司や先輩がいるとすぐに委縮してしまうかもしれません。たとえ新人本人に落ち度がなくても、先走って悩むこともあるでしょう。OJTで指導する際は、物事の伝え方にも配慮が必要です。
言われた以上のことを実行しない
指示された範囲でしか行動しないという傾向もみられます。ただし、仕事をさぼるというわけではなく、言われたことを真面目にこなすことには長けています。新しいことをやって評価されるうれしさよりも、余計なことをせず無難に働きたいという気持ちが根底にあるのでしょう。
丁寧に仕事をこなすので、懇切に指示してくれる上司や先輩に恵まれれば優れた成績を残すでしょう。一方、放任されると何もできない恐れがあります。聞かれるまでわからないことを質問しない、不具合を放置し続けるという事態も予想されます。
正解を検索する
デジタルネイティブな新入社員は、検索能力に長けています。目の前の問題や自分の気持ちに注目するよりも、検索した方がスピーディーに答えにたどり着けると信じる傾向がみられます。
多くの情報を目にすることにも慣れているため、まとめることが得意です。情報を整理し、わかりやすくまとめてくれるでしょう。一方、検索してもわからない内容を扱うのは苦手です。
業務の多くは、マニュアルがありません。社内や得意先の状況を照らし合わせて判断する局面が多いので、OJTでは自力で考える練習が必要になるでしょう。
余計な情報を外に出さない
イマドキ新入社員は、周囲と過剰なかかわりを避け、一定の距離を置く傾向がみられます。その一因として考えられるのが、SNSを通じたコミュニケーションの増加です。SNS内での交流は、面と向かって意思を伝える機会は多くありません。自分の関わりたい相手と好きなように接しているため、結果的に自己主張が苦手になった人もいるでしょう。
突飛な意見を控えようとする協調性の高さに関しては評価でき、周囲を不快にさせまいとする優しさもうかがえます。一方、親しくない人にとっては、感情や考えていることがわかりにくいという一面があります。OJTでは新人がどこまで理解できているか、意識して確認するようにしてください。
OJT担当の心構えとは?
OJT担当は、新入社員を成長させるべく努力しなければなりません。目標設定や計画の立て方、伝え方に関する心構えを解説します。
実施前:目標設定をする
最初に考えるべきは「いつまでに何ができるようになって欲しいのか」という目標です。目標がぶれていると、せっかく時間をかけてOJTをおこなっても、企業が求める人材へと成長しない可能性があります。特に若手社員がOJT担当となる場合は、経験豊富な先輩や上司とともに考え、目標を共有しましょう。
実施前:逆算して計画を立てる
OJTの終了時期からさかのぼり、「何をいつ身につけさせるのか」スモールステップで段階を踏んで育成計画を立てましょう。段階に応じて評価基準を明確に決めておくと、新入社員の成長度を量りやすいです。
実施中:伝わりやすさに注意する
OJT期間に限りませんが、何かを伝えるときは「相手に伝わりやすいように」丁寧に伝えましょう。フィードバックをする際は決して感情的に叱らずに、冷静に正すべきポイントを説明してください。きつくあたると、新入社員の意欲が低下するおそれがあります。
また、表面的な指導にならないように工夫する必要があります。新入社員に考えさせるような問いかけを取り入れるなどして、OJTを有意義なものにしましょう。
主体性がある新人社員を育てるための6つのステップ
企業の利益に貢献する人材とは、自分から考えて行動できる人です。主体的な新入社員を育てるための6つのステップを紹介します。
1.目標の明確化
職場全体で、一人前になったときの状態を具体的にイメージし、目標を決めましょう。OJT担当の独断で目標を決めるのではなく、上司とOJT担当は、新入社員育成について共通認識を持つよう、職場に働きかけてください。
2.計画する
新人にとっては初めての業務なので、失敗する可能性があります。想定される失敗も含めて計画を立てることをおすすめします。また、業務を通じて職場とコミュニケーションを取れるように計らい、自主性を促しましょう。
3.業務を伝え実行させる
新人に業務の目的と手順を伝え、実行してもらいます。危険なトラブルは未然に防いだ方がよいですが、基本的にはあれこれ口を挟まずに、新入社員自身に考えさせましょう。
4.業務結果をフィードバックさせる
報告、連絡、相談のタイミングがよいか、内容が適切であるかをチェックします。事実と感想、意見を混ぜて伝えてしまう場合もあるので、明確に分けて表現するよう指導しましょう。
5.フィードバックを評価する
業務を振り返り、よかった点と悪かった点を評価します。また、一人前として働くには職場の仲間とのやり取りが大切です。業務に協力してくれたことに感謝の気持ちがあるか、新入社員の態度にも着目しましょう。
6.次の課題を問いかける
フィードバックを踏まえ、成長するためにはどのような課題があるか新入社員に考えさせましょう。OJT担当があえて答えを出さないことで、主体性を育てます。
まとめ
OJTを有意義なものにするには、イマドキ新入社員の特徴に見合ったOJTが望まれます。理想的なOJTは、新入社員のみならず、OJT担当や上司、職場にも好影響をもたらします。職場一丸となり、主体性がある人材育成に取り組みましょう。
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解説資料|効果的なOJTのポイント
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