- 対象: 全社向け
- テーマ: ビジネススキル
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アンガーマネジメントとは?実践方法や研修のカリキュラム例を詳しく解説

職場において、衝動的な発言や行動をする従業員を放置してはいないでしょうか。負の感情は周囲に悪い影響を与え、組織全体の健全な運営を阻害してしまいます。従業員が、自身の湧き上がる感情を適切にコントロールできるようになるためには「アンガーマネジメント」のスキルを身に付けることが重要です。
今回は、アンガーマネジメントの考え方や人材育成に取り入れるメリットと注意点、具体的な実践方法などについて解説します。
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アンガーマネジメントとは?
アンガーマネジメントとは、「怒り」の感情をコントロールしてうまく付き合うための心理トレーニングのことです。
怒りや悲しみといったネガティブな感情は周囲にも影響を及ぼすため、感情を抑えられない従業員がいると組織全体の士気低下につながります。
また、怒りに任せて相手を怒鳴りつけたり、不機嫌な態度を取り続けたりすれば、ハラスメント問題に発展する可能性もあるでしょう。健全な組織運営のためにも、従業員が感情を適切にコントロールするスキルを習得することが求められます。
そこで役立つのがアンガーマネジメントです。まずは、アンガーマネジメントの考え方から解説します。
アンガーマネジメントの考え方1|人が怒る理由
アンガーマネジメントでは、人が怒る理由は2段階に分かれているとされています。
第1次感情 | 悲しみ・不安・恐怖・落胆などのネガティブな感情のこと。何らかの出来事に対して最初に生じる感情であり、怒りの裏にある感情ともいわれる。ネガティブな感情を覚え、強いストレスを感じている状態を指すこともある。 |
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第2次感情 | ストレスが許容範囲を超えて蓄積し、負の感情が爆発して怒りや涙といった形で表面化する状態を指す。この感情は必ず第1次感情(悲しみ、不安、恐怖、落胆など)が前段階として存在している。 |
アンガーマネジメントを取り入れるにあたり、「怒りの裏には第1次感情がある」という点を心に留めておきましょう。
人が理由なく怒ることはなく、「気持ちがわかってもらえず悲しい」「〇〇と思っていたのにがっかりした」などで第1次感情が湧いた結果、怒りが生まれます。
怒りを上手くコントロールするには、そうした怒りの裏に潜んでいる感情に着目し、「自分が本当に感じていること」「伝えたいこと」は何かを考えることが重要です。
アンガーマネジメントの考え方2|怒りの種類
ポジティブな感情に「楽しい」「うれしい」などの種類があるのと同じく、怒りもいくつか種類があるといわれています。それぞれどのような怒りなのか、それぞれ解説をしていきます。
① 持続性のある怒り
持続性のある怒りとは、過去に怒りを感じた出来事を何度も思い出してイライラしたり、ずっと心に引っかかったりしている状態のことです。長期間怒りの感情が続くため、恨みつらみや憎しみに変わるなど根が深くなりやすいという特徴があります。
② 強さのある怒り
強さのある怒りとは、急激に湧き出て爆発するような怒りです。一度感情が爆発すると周囲の人はもちろん、本人さえコントロールするのが難しくなります。一瞬で不機嫌になったり強い言葉で責め立てたりといった行動が出る場合もあります。
③ 攻撃性のある怒り
攻撃性のある怒りとは、物を投げたり暴力をふるったり暴言を吐いたりと、人や物にあたる行為をともなう怒りです。周囲の人の怒りや恐怖を誘発することから、パワーハラスメントの主因になりやすいといわれています。また、攻撃性が自分に向かい、自分を傷つける場合もあります。
④ 頻度の高い怒り
頻度の高い怒りとは、精神状態が不安定で、頻繁にイライラしたりカチンときたりする状態のことです。常に怒りを感じているので、より一層精神状態が悪化し、またイライラするという悪循環に陥る場合があります。
アンガーマネジメントのスキルを身に付けるメリット
アンガーマネジメントのスキルを従業員が習得することには、さまざまなメリットがあります。詳しくみていきましょう。
メリット1|円滑なコミュニケーションが生まれる
従業員がアンガーマネジメントのスキルを身に付けることで、社内のコミュニケーションが円滑になりやすくなります。
職場では、多様な価値観や仕事の進め方の違いから、ストレスや衝突が発生することがあります。
しかし、アンガーマネジメントを学ぶことで、怒りの感情を適切にコントロールするスキルや、相手の意見や感情を尊重する姿勢が身に付きます。感情的な反応を抑えることで、相手の話に耳を傾け、共感を示すことができるようになるため、信頼関係が築きやすくなるでしょう。
メリット2|適切な指導を行える
管理職がアンガーマネジメントを習得すると、自分の意見や考えなどを適切な言葉で伝えられるようになります。そのため、マネジメント力の強化につながります。
どれだけ正しいことを言っても、感情をむき出しにして怒っていては部下からの信頼が失われてしまいます。場合によってはパワーハラスメントとみなされ、自身の評価が下がったり刑法上の罪に問われたりするかもしれません。
アンガーマネジメントを習得し部下に怒りをぶつけることがなくなれば、人間関係が良くなり、より適切な指導ができるようになるでしょう。
メリット3|働きやすくなる
アンガーマネジメントによって感情がコントロールできるようになると、考え方や価値観の違いに寛容になり、他者を受け入れる余裕が生まれます。
また、自分がなぜ怒りを感じているのかを冷静に把握し、適切に対処できるようになるのでストレスが軽減されて働きやすくなります。ストレス由来で体調不良になる従業員や、欠勤者を減らすといった効果も期待できるでしょう。
メリット4|生産性が向上する
アンガーマネジメントによってコミュニケーションが円滑になり、他者の価値観を受け入れられる従業員が増えれば、自分の意見を伝えやすい職場環境を構築できます。
業務やプロジェクトをスムーズに進めやすくなるので、企業全体の生産性向上に役立ちます。
また、従業員自身がネガティブな感情に振り回されることが減れば、エンゲージメントの向上も期待できるでしょう。
アンガーマネジメントが特に求められる職種・部門
アンガーマネジメントは誰にとっても役立つものですが、特に下記の職種・部門では身に付けておきたいスキルです。
- 管理職などのリーダー層
- 人事・総務部門
- 顧客対応の多い職種
例えば、管理職が思うままに感情をあらわにしていては、部下との関係が悪くなり業務に支障が出る可能性があります。客観的な視点で指導し組織をまとめ上げるには、怒りをコントロールするスキルが大切です。
また、人事・総務部門もさまざまな従業員と接する機会が多いため、アンガーマネジメントの効果を得やすいでしょう。そもそもパワーハラスメント防止が業務に含まれる部署なので、他の従業員を教育できるように自らもアンガーマネジメントについて学び、理解を深めておくことが重要です。
営業職・カスタマーサポート・販売員などの顧客対応が多い職種も、常日頃、自分の感情をコントロールして冷静に対処することが求められるため、アンガーマネジメントが役立ちます。
アンガーマネジメントの実践方法
「アンガーマネジメントを人材育成に取り入れたいが、何をしたら良いのかわからない」という人事担当者の方もいるでしょう。そこで、アンガーマネジメントの実践例をいくつか紹介します。
方法1|6秒ルール
6秒ルールとは、怒りが湧いてもすぐに反応せずに衝動をコントロールする方法です。
湧いた怒りを脳がコントロールできるようになるまでには、約6秒かかるといわれています。この仕組みを活用した手法で、6秒待つ間に怒りがしずまり、理性的な判断が可能になります。それにより、衝動的な行動や発言を抑えることが可能です。
【6秒ルールの実践方法】
1.怒りを感じたら頭のなかで1~6まで数える
2.気持ちが落ち着く言葉を繰り返す、深呼吸するなどで怒りから意識を反らせる
方法2|怒りの数値を記録する
6秒ルールと合わせて怒りの数値を記録するのもおすすめです。平常時を0、最も怒りを感じたときを10として、今感じている怒りは何点かを考えます。こうして採点している間に気持ちが落ち着き、現状を客観視できるようになります。
また、「あのときの怒りよりは数値が低いな」と比較できるようになると、より怒りの感情をコントロールしやすくなります。
方法3|その場をいったん離れる
6秒待ったり怒りのレベルを認識したりしても感情が抑えられないときは、いったんその場を離れることも有効といわれています。怒りの対象が視界に入ると、なかなか気分が落ち着かないものです。
距離を取って視界に入れないようにしたり、移動しながら違うことを考えてみたりすることで、感情をコントロールしやすくなります。
方法4|価値観の許容範囲を広げる
「○○すべき」「こうするのが当然」のような固定観念があると、思い通りにいかないことが増えて怒りを感じやすくなります。
固定観念はあくまでも個人の考えであって、誰にとっても100%正しいものとは限らないため、価値観の許容範囲を広げることが重要です。
【許容範囲の広げ方】
1.自分のなかの固定観念を洗い出す
2.許容できるものとできないものとで整理する
3.「こうなれば許せる」と条件を付け、少しずつ範囲を拡大する
許容範囲が広がればストレスを感じにくくなるため、怒りが湧く機会も減ります。この感覚を定着させられるように、普段の生活でも意識することが大切です。
方法5|自分でなんとかできる事柄に注力する
自分で解決できることだけに注力する考え方を身に付けるのも効果的です。例えば公共交通機関が遅延することは、自力で対処できるものではありません。自分一人では解決できない事柄に意識を向けても、前向きにとらえるのは難しいでしょう。
「どうにもならないことだから仕方ない」と思えるようになると、怒る機会が減ります。
方法6|怒ることの周囲への影響を考える
怒った姿を見せることで、周囲にどんな影響を与えるかを考えることもひとつの方法です。負の感情をそのまま見せてしまうと、信頼関係が損なわれることもあります。今怒ることが正しいのか、ほかに問題を解決できる手段はないかと冷静に状況を分析することが重要です。
その結果、怒っても問題が解決しないと判断できれば、他の解決方法に意識を向けやすくなるでしょう。
方法7|相手の立場に立って考える
周囲の人のことをよく知って、相手の立場に立って考えることも大切です。人となりや考え方などが把握できれば、怒りを感じる機会も減りやすくなります。
従業員同士が落ち着いて対話できる場をつくったり、従業員研修のなかで相互理解に役立つ内容を取り入れたりするのがおすすめです。
アンガーマネジメント研修のカリキュラム例
アンガーマネジメントは、いつでも自然に使えるようになるのが理想です。研修カリキュラムを作成するときは、怒りへの対処法とともに出来事を自分事として捉えられるよう内容を工夫し、実生活で活かせるよう意識しましょう。
JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)のアンガーマネジメント研修では、アンガーマネジメントの概要や怒りが発生するメカニズムといった基礎的な内容から、怒りのコントロールや上手な伝え方まで学ぶことができます。
アンガーマネジメントを身に付けたい方、人材育成に取り入れたい方におすすめのコースです。詳しい内容については、下記をご覧ください。
アンガーマネジメントを研修に取り入れる際の注意点
アンガーマネジメントは怒りのコントロールに役立ちますが、誤ったトレーニングをすると悪影響が出る可能性があります。研修に取り入れる際は、下記の点を事前に周知しましょう。
- 怒りを無理に抑えこまないこと
アンガーマネジメントはあくまでも怒りをコントロールするための方法であり、怒りを無理にでも抑え込むことを強制するものではありません。無理に怒りを抑えると、その感情は心の中で蓄積し、後により強い形で爆発することがあります。 - 怒りの感情から逃げないこと
怒りの感情を無視しても、問題の根本的な原因を解決することはできません。そのため、長期的にストレスを増大させ、心身に悪影響を及ぼすおそれがあります。
アンガーマネジメントの実践では、怒りの感情を抑圧したり無視したりせず、自分が「何に怒りを感じているのか」をしっかりと認識することが重要です。感情を整理して、冷静に問題に対処できるようになることを目指しましょう。また、うまく感情をコントロールにするために、人に頼ることもひとつの手です。
まとめ
アンガーマネジメントを習得すると、怒りの感情を自分でコントロールできるようになるため、職場環境の改善や従業員のメンタルケアに役立ちます。
ただし、誤った知識で対処法をすると、かえって精神状態が悪化するリスクがあります。研修に取り入れる際は、今回紹介したアンガーマネジメントの正しい知識や実践方法を参考にしてみてください。
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「アンガーマネジメントとは何か」という基礎から、実際のコントロール方法まで学べますので、ぜひご活用ください。
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