- 対象: 全社向け
- テーマ: 働き方
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セルフマネジメントとは?5つの要素を身に付ける手法
「人生100年時代」においては、企業と従業員の双方でキャリアを考えていくことが大切だといえます。また、変化し続ける環境に柔軟に対応していくためにも1人ひとりの「セルフマネジメント力」も重要となります。どんな状況でも、動じることなく自分の力を発揮し成長していくために求められる要素とは何か。そのポイントをご紹介します。
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人生100年時代のキャリアデザイン ~自律的なキャリア形成のあり方とは~
いま、こんな課題はありませんか?
- 人生100年時代にむけて自律的に将来のキャリア形成について考えてもらいたい
- 自己練磨を通じて「エンプロイアビリティ(雇用能力)」や「自分自身の市場価値」を高めて欲しい
- 先の見えない状況下で発生するストレスに対処するためのセルフマネジメント力を高めてもらいたい
- 健康寿命を延ばすうえで必要な自己管理能力を伸ばしてもらいたい
- コロナ禍に伴うテレワークなど、環境変化に対して柔軟に対応してもらいたい
セルフマネジメントとは?
セルフマネジメント(自己管理能力)は、経営学者ピーター・ドラッカーが著書「経営者の条件」で重要性を説いた考え方で、「目標達成や自己実現のために自分自身を管理すること」を指します。管理の対象は、時間や感情、体調、タスク、モチベーションや集中力などです。
働き方の変化が止まらない時代の中で、追い打ちをかけるようにテールリスク(現在でいえば新型コロナ)が発生すれば、ビジネスパーソンにかかる負荷やストレスは相当なものとなります。ここで重要となるのがセルフマネジメントです。
セルフマネジメントの本質は、自分の肉体や思考・感情をより良い状態に置くことで自分の能力を最大限発揮し、パフォーマンスを向上させることにあります。セルフマネジメント能力を身に付けることで、負荷やストレスがかかる不安定な状況でも能力を発揮し続けることが可能となるでしょう。
さらにセルフマネジメントには、自律的に自身のキャリアを形成する「キャリアデザイン」としての側面もあります。これまで日本を支えてきた終身雇用制度が立ち行かなくなれば、社内で昇進を重ね、定年退職を迎え、セカンドライフを謳歌するといった古き良き“青写真”を描くことは、もはやかないません。
だからこそ、旧来型の雇用環境からの脱却を図り、会社に依存しない働き方も視野に入れたセルフマネジメントを行う必要があります。また、先行きの見えない状況を生き抜くためにも、リカレント教育などを活用した、継続的・持続的な知識のアップデートや、流動性の高い雇用市場でも需要のある人材となるための普遍的なスキルを獲得などが求められることとなります。
セルフマネジメントの重要性が高まっている背景
近年、セルフマネジメントの重要性が高まっている背景には、働き方や人事評価制度が変化してきたことが挙げられます。その変化にはどのような背景があるのか、まずはその具体的な理由を理解しましょう。
テレワークの普及
新型コロナウイルス感染症の流行にともない、テレワークの普及が一気に進みました。
テレワークは上司や同僚の目が届きにくいなかで、業務を遂行しなければなりません。対面での業務のように、フォローや指示を受ける機会は限られます。タイムマネジメントや集中力の維持、業務とプライベートの切り替えなど、より高い自己管理能力が求められるようになったといえるでしょう。
社員一人ひとりの主体性が企業の生き残りにも不可欠
ビジネスを取り巻く環境は、著しく変化し、複雑化しています。そのような時代で企業が生き残るには、迅速に意思決定し行動につなげることが大切です。
組織内においても、変革のスピードについていくために、個人が主体的に行動し確実に責務をこなしていくこと、自己成長ができることが求められます。そのためには、モチベーション維持や自己成長に密接に関わるセルフマネジメント能力が欠かせません。
効率性・生産性向上の必要性
働き方改革の推進により、長時間労働の是正が進められるようになりました。また、労働人口の減少による人手不足も深刻化しています。そこで注目されているのが、効率性や生産性の向上です。
限られた時間・人材のなかで効率性や生産性の向上を目指すため、人事評価でもパフォーマンスが重視されるようになりつつあります。高パフォーマンスを実現するために必要なセルフマネジメントの重要性が、以前にも増して高まっているのです。
セルフマネジメントを構成する5つの要素
変化が大きく、先行きが見えない不透明な時代に突入しています。職場の人や環境の多様化も進み、不安やストレスを抱える局面も増えてくることが予測できます。そんな状況でも、動じることなく自分の力を発揮し、成長していくために、求められるものは何か。以下ではこれからの時代に高めたいセルフマネジメントの要素について紹介します。
メンタルヘルスケア
①「セルフケア」②「ラインによるケア」③「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」④「事業場外資源によるケア」に分かれる。セルフマネジメントでは主に①が重要となる。
レジリエンス
回復力、復元力、などを語源とする精神的回復力。ストレスにしなやかに適応し、すばやく立ち直る能力。
アンガーマネジメント
1970年代にアメリカで誕生した、怒りに上手に向き合うための心理教育、心理トレーニングの1種。
マインドフルネス
心を“現在起こっていること”に注意を向け、瞑想などによりストレスを軽減させる。
キャリアデザイン
自分自身の“なりたい姿”や“ありたい自分”を実現するために、自己認識力を高めながら、自分自身で職業人生を主体的にデザイン・設計し、実現していくこと。
(例)
- ライフステージを意識したキャリア形成
- 仕事だけではなく、「人生そのもの」をどうデザインしていくべきか
- 100年あれば、失敗してもやり直すことも不可能ではない
- 常に自分の意見をもち、場数を踏み、変化を認める姿勢
社員のセルフマネジメント力を高める具体的な手法
自分の気のもちようを自身でマネジメントし、ネガティブな感情を自らの成長につながるような感情へとコントロールしていく技術はこれからの時代を生き抜くための必須スキルといえるでしょう。
例えばイラっとしても、感情的にならずに冷静に自分の要望を相手に伝えたり、心が折れてしまいそうな困難にもしなやかに対応したり、誘惑に負けず、自分の目標に向かって辛抱強く努力したりなど、このようなスキルをもち合わせていれば、意欲的に仕事にチャレンジし、自分を高めていくことができるといえます。
ここではその必須スキルを磨いていくためのポイント(※)について紹介します。
(1)「逆境」に対応する(レジリエンス)
逆境とは、トラブルや強いストレスのことです。人は不安や心配などの負の感情を抱くと、やる気や意欲が下がってしまいます。そのため、セルフマネジメントを高めるには、逆境に対応する力(レジリエンス)が重要になります。
逆境に対応する力(レジリエンス)を鍛えるには、以下の3つのステップを意識して実践することが有効です。
<STEP1>
レジリエンスを鍛える最初のステップは、落ち込みを一定のところで食い止める「底打ち」です。否定的な感情の連鎖を断ち切るために、まずその瞬間の自分の内面に目を向けましょう。身体が感じていること・抱いている感情・頭の中に浮かぶストーリーに分けて考えることが大切です。
ネガティブな感情も、自然のものとして受け入れましょう。
<STEP2>
2番目のステップは、意欲ややる気を取り戻す「立ち直り」です。
不安や怒り、悲しみや罪悪感といったネガティブな感情から回復するには、“思い込み”をしないことが重要になります。自分の「思い込みのクセ」を知り、そのうえで運動や音楽など、自分なりの気晴らしの方法を見つけましょう。
そして、回復に必要な心の余裕「心理的資源」を増やすために、特に何かあったときにサポートをしてくれる「社会的支援」を形成することが大切です。
会社内であれば上司や同僚よりも、部署も世代も違う斜めの関係のサポーターをつくることも有効です。このような関係の形成は、メンター制度や社内イベントの実施などにより、企業として手助けをすることもできます。
<STEP3>
3番目のステップは、逆境の意味を知りその後に活かす「教訓化」です。逆境から回復する過程を客観的に振り返り、意欲ややる気を取り戻したきっかけや、回復までのプロセスを認識しましょう。そうすることで、似た局面に陥った際にも柔軟に考え、適切な対処ができるようになります。
レジリエンスは、知識を身に付けるだけでは鍛えられません。日々の仕事や生活のなかで繰り返し実践することがポイントです。
(2)「怒り」と向き合う(アンガーマネジメント)
「アンガーマネジメント」とは、怒らないことではなく、怒りの感情と向き合うことをいいます。つまり、怒る必要があれば上手に怒り、必要がない場合は怒らずに済ませる技術です。
アンガーマネジメントを身に付けることで、問題が発生した場合にも適切な行動を取ることができ、より良い人間関係を構築できるようになります。良い職場環境づくりや生産性の向上をもたらすスキルといえるでしょう。
アンガーマネジメントを高めるステップは以下のとおりです。
<STEP1>
まずは、怒りが生まれるメカニズムを知ることが大切です。
怒りは、恐怖や不安、ストレスなどのネガティブな感情が許容範囲を超え、処理しきれなくなったときに現れる第二感情といわれます。
許容範囲を決定づけているのが、「こうあるべき」という価値観です。そのため、こだわりの強い人ほど、ネガティブな感情を含んだ怒りが表に出やすくなります。周囲への攻撃など、不適切な行動に至ることも少なくありません。
<STEP2>
次に、怒りをコントロールするための対処法を知りましょう。自分がイライラする感情のくせを知り、柔軟に考えるためのスキルを身に付けることが大切です。
怒りをコントロールするには「6秒待つ」「感情を記録する」などのコツがあります。
<STEP3>
怒りをコントロールできるようになったら、自分の怒りを上手に伝えることで、自分も相手も大切にするコミュニケーションの仕方を覚えましょう。これは、相手を尊重しながら適切に自己主張をする「アサーティブ・コミュニケーション」という手法です。
怒りを伝えるときには、自分がどう感じるのか、何が起きているのかを客観的に言語化します。怒りを無理に抑えるストレスもなくなり、問題の解決やより良い環境の構築にもつながるでしょう。
また、上手に”怒る”コツは、相手に対するリクエストは何かを明確に伝えることといわれています。「ちゃんと」「しっかり」という曖昧な言葉を避け、具体的な言葉で要求を伝えることがポイントです。結果と行為、振る舞いについては怒ってもOKですが、性格、人格、能力について怒るのはNGということも意識したい点です。
(3)「意志」を貫く
苦しい場面や葛藤する場面に遭遇した際、それを乗り越えるときに発揮される力が意志力です。具体的な意志力として、「セルフコントロール」と「GRIT」などが挙げられます。
<セルフコントロール>
セルフコントロールとは、目の前の誘惑や衝動的な欲望を自分で抑えることです。意志の強弱の問題ととらえられがちですが、そうではありません。環境や目標設定、動機付けなどを利用することで高められます。
つまり、セルフコントロールは生まれもった能力ではなく、スキルです。正しい知識を身に付け、繰り返し練習すれば誰でも習得できます。
<GRIT>
GRIT(グリット)とは、Guts(度胸)・Resilience(復元力)・Initiative(自発性)・Tenacity(執念)の4つの要素の頭文字を取ったもので、「粘り強く情熱をもって最後までやり抜く力」のことを指します。
GRITもスキルであり、伸ばすことが可能です。成功は長い時間努力を積み重ねた結果得られるもので、成功している人の多くはGRITを身に付けているといわれています。
セルフコントロールもGRITも、目標を設定し、研鑽し合う環境に身をおけば強化が望めるといわれています。具体的に意志力を鍛えるには、姿勢を正す、スマートフォンを見ないなど、「衝動を抑制する行動を日々繰り返す」ことなどが有効です。
(4)キャリアをデザインする
キャリアデザインとは、自分のなりたい姿ややりたい仕事から、自律的にキャリアを設計し実現していくことです。キャリアデザインに取り組むことも、セルフマネジメントの一要素といえます。
<STEP1>
「人生100年時代」において、自律的にキャリアをデザインするためには、まず「なりたい姿」や「ありたい自分」を見つけることが最初の第一歩となります。そのためには、①自分自身を客観視し、②内省を深め、③学びへとつなげなければなりません。
自分自身を客観視するには、自身のスキルや強みを理解する必要があります。そして、どのように仕事に活かせるのか、足りないスキルが何であるかを見つけることが大切です。
自身のスキルや強み・弱みは、自己分析だけでなく、自分を良く知る人に他己分析を依頼するのも有効です。自分では気づいていない点が明らかになるかもしれません。
また、企業の枠を超えた「越境学習」への参加などによって、自身の専門性、強みや弱みを見出す機会を創出していく必要があるでしょう。
<STEP2>
キャリアをデザインするには、自分のキャリアの機会や可能性を見つけることがポイントになります。「アイ・カンパニー」という考え方をもちいてデザインしてみましょう。
「アイ・カンパニー」とは、自分をひとつの会社の経営者としてキャリアを計画する手法です。まず、自分が「やりたいこと」「やれること」「やるべきこと」を明らかにします。そのうえで、経営者の視点で発展のための目標と施策を考え、計画を発表するという流れで実施します。
<STEP3>
キャリアをデザインできたら、その実現に向けて今後どのような能力を身に付けていかなければならないかを具体的に選択し、スキルを習得します。
また、100年生きるということは、これまで受けてきた教育や知識も、いずれは陳腐化していくということです。そのためにも、リカレント教育などによる学び直しを行い、知識のアップデートを図るとともに、情報リテラシー能力を高めていくことも必要でしょう。いずれにせよ、自身のライフステージにおけるキャリアデザインは、今後ますます求められることは必至であると考えられます。
※月刊 人材教育(JMAM) 2016年12月号「日本企業に今、必要な“我慢する技術”」をもとに解説
JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)では、自律的なキャリアデザインの考え方について資料をまとめています。社員教育にお悩みの方は、ぜひ以下のリンクから資料をダウンロードしてみてください。
まとめ
「人生100年時代」においては、企業と従業員の双方でキャリアを考えていくことが大切だといえます。そこで人事部門としてできることは、節目となる35歳、45歳、役職定年時などでキャリアを考える機会を提供することが挙げられます。なお、キャリアへの意識づけは、中堅やベテランになってから始めるのではなく、若年層から始めていくことが望ましいです。また、従業員が必要とするときにセルフマネジメントを行うための知識・スキルを習得できる環境を整備することも重要です。
しかし残念ながら、こうした問題に「正解」はありません。最終的には企業がいかに社員に寄り添ったキャリア形成の施策や教育を実施・提供できるかにかかってきます。そのためにも、人事担当者自身が学び直しや知識のアップデートを行いながら、自身の経験を通した、社員にとって最適と思われる施策を生み出すことが求められているとも言えるでしょう。
また、怒りや逆境に立ち向かうような感情を抱いたときに重要なポイントのひとつは、“客観視”です。感情の渦に流される前に、自分の感情に冷静に向き合うことができます。セルフマネジメント力は、すべて高めることができるものです。ほんの少し意識したり、書き出したりといった小さな習慣を積み重ねていくことで、ネガティブな感情を自分でマネジメントできているという実感が得られ、大きな自信になります。そのような経験を重ねることで、あえて苦手だと感じるような人と付き合ったり、困難だと思える仕事にチャレンジしたりすることができるようになり、結果、自身の成長につながるでしょう。
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