- 対象: 管理職
- テーマ: マネジメント
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部下が言うことを聞かない!その原因や人事ができる対処法を紹介

企業にとって、上司と部下との効果的なコミュニケーションは、組織の生産性や離職を防ぐためにも重要です。
一方で、「部下が指示に従わない」という課題に直面する管理職は多くいます。管理職が効果的にコミュニケーションを取れなかったり、部下との対話が不足していたりすると、部下が指示に従わなくなることがあります。
今回は、部下が指示に従わない原因を多角的に分析し、人事担当者が実施できる具体的な対策について解説します。
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部下が上司の言うことを聞かない主な原因
部下が上司の言うことを聞かない場合は、下記の原因が考えられます。
部下との信頼関係が構築できていない
上司と部下との信頼関係が構築されていないと、どれだけ適切な指示をしても聞き入れてもらえません。
信頼関係が構築できない要因の例は下記の通りです。
①コミュニケーション不足
上司が忙しくて部下との定期的なミーティングを設けない場合、部下は上司が自分に関心をもっていないと感じ、不信感を抱きます。
②指示が不明瞭
「頑張って良い結果を出してね」という曖昧な指示だと、何をすれば良いのかがわからずモチベーションが低下します。
③世代間ギャップによる価値観の違い
上司が「残業は当たり前」という考えをもっていると、ワークライフバランスを重視する若い世代の部下と衝突する可能性があります。
④役割や責任が不明瞭
自身の役割を理解できなければ、他のメンバーとどのように協力すれば良いのかがわかりません。また、明確な責任範囲がわからないと、心構えや目標などをもちにくくなります。
⑤仕事に対するモチベーションが低い
部下のモチベーションが低い場合、仕事に対する意欲が低下し、信頼関係が築きにくくなります。
⑥企業に対するエンゲージメントが低い
所属企業に対する愛着や信頼感がない場合、その企業で働く上司に対しても信頼感を抱きにくくなります。
このようなケースが当てはまる場合は、コミュニケーションの方法や頻度、伝える内容を工夫するよう管理職へ働きかける必要があります。
部下から存在を軽視されている
直属の上司に対しては、部下が言うことを聞かないケースはほとんどみられません。これは、評価が部下のキャリアや報酬に直結することで、部下が上司の指示を重視せざるを得ないためです。
一方、普段から強く言えなかったり、部下に遠慮してしまったりする上司は、部下に「この人の言うことは聞かなくても大丈夫」と思われている可能性があります。
また、上司が部下の行動や成果に対して適切なフィードバックを行わない場合、部下は上司の指示を軽視し、自分の判断で行動するようになります。
言うことを聞かない部下を放置するリスク
言うことを聞かないからといって部下を放置すると、次のようなリスクが生じます。
チームの指揮が全体的に低下する
部下の問題行動を放置すると、組織全体の緊張感が損なわれる場合があります。真面目に仕事をする必要がない、納期に間に合わなくても許してくれるなどと感じて、仕事に対するモチベーションが下がり、上司の指示に従わない部下が増える事態になりかねません。
チームワークに支障をきたすと、プロジェクトの生産性が低下するだけでなく、目標が達成できなくなるリスクも高まります。
他の部下からの信頼も低下する
言うことを聞かない部下を放置すると、他の部下からの信頼まで低下するおそれがあります。
例えば、部下の中に1人だけ上司の指示を無視するメンバーがいたとします。上司が適切に対応しなければ、他の部下たちは「上司は問題を見過ごしている」と感じるでしょう。その結果、上司に対する信頼感が損なわれ、指示やアドバイスを真剣に受け取らなくなる可能性が高まります。
退職者の増加につながる
言うことを聞かない部下を放置すると、退職者が増加するおそれがあります。問題行動を放置すると、他の部下が不満に感じます。例えば、チーム内で1人だけが常に指示を無視して自己中心的な行動を取っている場合、他のメンバーは不公平に感じるでしょう。
このような状況が続けば、耐えきれなくなった部下たちが公正に評価されて働きやすい環境を求め、退職するリスクが高まります。
部下と上司の理想的な関係とは?
上司は、個々の部下の性格や素質に応じて適切に関わり、互いに心理的安全性を築くことが大切です。その結果、尊重し合える関係を築くことができます。
尊重し合えるようになるためには、下記の3つの要素が重要です。
- 信頼関係の構築
- 組織目標の共有
- 一人ひとりに合った指導
部下のタイプに応じた指導法を取り入れることで、部下の成長をサポートしつつ理想的な関係を構築できます。
例えば、JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)では新入社員のタイプ別に適切な関わり方を下記のように整理しています。
部下のタイプ | 指導のスタンス | 働きかけ方 |
---|---|---|
価値観を大切にして育てたいタイプ | ・相手の考えをじっくり聞く ・相手が納得するまで話し合う ・相手が理解するまで待つ ・無理やりやらせない |
考え方を聞く 例:「あなたはどう考えますか?」 |
体験から学ばせたいタイプ | ・具体的な目標を決める ・手順を決める ・実際にやってもらう ・振り返る機会をしっかりもつ |
背中を押す 例:「一緒にやってみましょう!」 |
認めて育てたいタイプ | ・相手の存在を認める ・自分の期待を相手に伝える ・相手を否定しない ・人前で恥をかかせない |
相手を認める 例:「君ならできるよ、期待しているよ!」 |
部下が上司の言うことを聞かないときの対処法
部下が上司の言うことを聞かないときの対処法として、「対話型マネジメント」を意識した働きかけや人材育成が有効です。対話型マネジメントとは、組織の目的・目標を達成するために、その組織が利用できるヒト・モノ・カネ・時間・情報などのリソースを、管理者、メンバー、上司、他部門など双方向の対話を通じて創造的に活用し、成果を最大化する手法です。
ここでは、対話型マネジメントの具体的な方法を紹介します。
なお、対話型マネージャーについて詳しく知りたい方はこちらの書籍をご覧ください。
「対話型マネジャー 部下のポテンシャルを引き出す最強育成術」(世古 詞一 著)
上司と部下との対話により心理的安全性を確保する
上司と部下の対話を通して、心理的安全性を醸成することが必要です。下記のような視点をもって対話するよう、管理職へ働きかけると良いでしょう。
●互いを承認・尊重する
例:部下が新しいアイデアを提案した際に、「その視点は考えていなかった。素晴らしい発想だね」などと認めることで、部下は自分の意見が尊重されていると感じます。
●相手に感謝し、受け入れる姿勢を示す
例:「いつもチームのために尽力してくれてありがとう」と感謝の言葉を伝えることで、部下は自分の努力が認められていると感じ、より積極的に意見を出しやすくなります。
●話しやすい雰囲気をつくる
例:「どんなことでも気軽に言ってほしい」「何を言われてもあなたの評価には影響しない」などと伝えることで、部下は安心して話せるようになります。
●腹を割って対話できる機会をつくる
例:定期的に1対1のミーティングを設定し、「最近のプロジェクトについてどう感じているか?」といったオープンな質問を投げかけることで、率直な意見を言いやすくなります。
●発言する機会を均等にする
例:ミーティングで、「今日は全員が少なくとも一度は発言する機会をつくるようにしましょう」と明示し、全員が発言できるように促します。
●ポジティブで建設的な言葉を意識する
例:「このアイデアは面白いね。さらに良くするためにはどうすれば良いだろう?」といった前向きで建設的な言葉を使うことで、部下がより良い結果を求めて行動しやすくなります。
●上司から弱みを見せる
例:上司が「実は、私もこの分野ではまだ勉強中で、皆さんの意見がとても参考になります」と自身の弱みを見せることで、部下も安心して意見を出しやすくなります。
心理的安全性を確保するためのさまざまな方法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
心理的安全性の高い組織のメリットを解説!ぬるま湯組織にしないためには?
組織適応性を高める
組織適応性を高めるには、普段から視座を高め、視野を広げて取り巻く環境を理解したうえで、上位方針を部下に分かりやすく方針翻訳することが重要です。方針翻訳とは、トップ・上司の方針を、自分の組織に浸透させるために、具体的に表現し直すことです。
具体的には、仕事の狙いやゴールについてよくすり合わせ、メンバーの個々の目標に展開しましょう。また、できるだけ早い段階からメンバーを巻き込み、方針や戦略や目標について共に考える機会をつくるのも有効です。
また、メンバーの成長にも対話は不可欠です。リスクをとってメンバーに仕事を任せ、適切なタイミングで指導やフィードバックを行い、メンバーのリフレクションの支援を行いましょう。
ただし、メンバーとの対話を重要視したとしても、最終的な意思決定が管理者であることは忘れてはいけません。
対話型マネージャーを育成する
対話型マネージャーを育成するためには、教育体制を整えることが重要です。対話型マネージャーには下記のスキルが求められます。
①上位方針の翻訳、組織の目標設定スキル
組織の上位方針を具体的な目標に変換し、チームメンバーに明確に伝える能力です。全員が同じ方向を目指して効率的に働けるようになります。
②タスク・ワーキングスキル
各メンバーのタスクを効果的に管理し、スムーズに進行させるスキルです。適切なタスク管理により、目標達成に向けて効率的に働けるようになります。
③チームワーキングスキル
メンバー間のコミュニケーションを円滑にすることで、チーム全体の協力を促すスキルです。チームのパフォーマンスが向上し、チームワーク力が高まります。
④対話スキル
メンバーと建設的な対話を行い、問題解決や意見交換を円滑に進める能力です。対話によって信頼関係を築き、メンバーのモチベーションを高めることができます。
⑤部下の成長支援スキル
部下のキャリア開発やスキル向上をサポートするスキルです。フィードバックやコーチングによって部下の成長を促します。
研修で上司のスキルアップをサポートし、対話型マネージャーを育成することで、組織の人間関係の改善につながります。
JMAMでは、必要なスキル別に研修を提供しています。組織内のコミュニケーションや信頼関係の構築についてお悩みの企業様は、ぜひ一度お問い合わせください。
まとめ
上司と部下の間に信頼関係が築けないと、部下が従わなくなることがあります。言うことを聞かない部下を放置すると、チーム全体の士気が低下し、他の部下からの信頼も失いかねません。さらに、退職者の増加という組織全体に大きな影響がおよぶ事態になる可能性もあります。
このような状況を避けるために、人事部門が講じられる効果的な対策は、信頼関係を築ける管理職を育成することです。特に対話型マネージャーの育成が有効です。対話型マネジメントを取り入れることで、上司と部下の間で信頼関係が築かれやすくなり、組織全体のパフォーマンス向上が期待できます。
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