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  • 対象: 人事・教育担当者
  • テーマ: 人事制度・評価
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ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型との違いや日本の事例4社

ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型との違いや日本の事例4社

テレワークの増加による業務の見直し、終身雇用や年功序列の廃止など、人事制度の改定が進められています。この記事では、ジョブ型雇用の解説や、現在の日本で主流となっているメンバーシップ型雇用との比較、導入のメリット、導入事例について解説しています。
注目され始めたジョブ型雇用について知識を深め、人材採用や人材育成に関する制度見直しの参考にしてください。

ジョブ型雇用とは何か

ジョブ型雇用とは、職務内容を職務記述書(ジョブディスクリプション)に明記し、その職務に必要なスキルを持つ人材を採用し、契約する雇用制度です。仕事に対して人を割り当てて、その仕事の成果で評価を行います。欧米では一般的な制度ですが、待遇や状況に関しては、国や地域で違いがあります。

職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成

ジョブ型雇用で作成される職務記述書(ジョブディスクリプション)には、職務内容、勤務地、労働時間、報酬のほか、必要なスキルや資格、経験などもくわしく記載されます。さらに、責任範囲、権限、評価基準等も明記したうえで契約を結びます。

スキルが重視される

ジョブ型雇用では、職務が発生したときに、その職務を遂行する能力を持った人材を採用するため、年齢や学歴よりも資格や経験などのスキルを重視します。ただし、職務がなくなると解雇となるのが一般的です。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い

現在、日本ではメンバーシップ型雇用が主流であり、「日本型雇用」とも呼ばれています。ここからは、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いについて解説します。

採用制度の違い

ジョブ型雇用は中途採用が多く、自分自身でスキルアップに取り組む必要があります。一方、メンバーシップ型雇用は、新卒一括採用が一般的です。終身雇用を前提として、研修によりスキルや経験を身につけて、人材を育成するスタイルです。

職務内容の違い

ジョブ型雇用は中途採用が多く、自分自身でスキルアップに取り組む必要があります。一方、メンバーシップ型雇用は、新卒一括採用が一般的です。終身雇用を前提として、研修によりスキルや経験を身につけて、人材を育成するスタイルです。

評価方法の違い

ジョブ型雇用は、スキルや成果によって評価が決まり、職務記述書(ジョブディスクリプション)に記載された報酬が支払われます。メンバーシップ型雇用は、勤続年数や勤務態度、役割などで評価や報酬が決まるのが一般的です。

ジョブ型雇用を導入するメリットとデメリット

企業がジョブ型雇用を導入することで、どのようなメリット・デメリットがあるのかを、あわせて解説します。

ジョブ型雇用のメリット

ジョブ型雇用を導入することで得られるメリットは以下の通りです。

●スキルの高い人材を採用できる

企業側は、発生した職務に適した人材を採用できるため、目標とする成果が出やすいというメリットがあります。報酬や条件が一致すれば、中小企業でも高い専門スキルを持つ人材を採用できます。求職者側としては、事前に職務内容を知ることができるため、ミスマッチを防げます。

●評価がしやすい

ジョブ型雇用では、職務が職務記述書(ジョブディスクリプション)に明記されているため、職務の遂行が評価基準となります。企業は客観的な判断ができて、成果を評価しやすくなります。

●求職者は働き方を選べる

ジョブ型雇用では、職務記述書(ジョブディスクリプション)で、働き方や職務内容を事前に知ることができるため、得意な分野で仕事ができます。異動や転勤をせずに、柔軟な働き方も可能です。

ジョブ型雇用のデメリット

ジョブ型雇用のデメリットは主に以下の通りです。

●ジョブローテーションができない

メンバーシップ型雇用は、ジョブローテーションがありますが、ジョブ型雇用は仕事内容や勤務地などが職務記述書(ジョブディスクリプション)で決められています。そのため、企業側の都合で異動や転勤をさせることが難しい場合があります。

●契約外の業務を頼めない

ジョブ型雇用では、職務記述書(ジョブディスクリプション)に明記された働き方、業務内容以外の職務をアサインすることは、基本的にありません。人手不足や新規の職務が発生したとしても、頼めないというデメリットがあります。

●新卒を雇用しにくい

ジョブ型雇用が求めるのは、職務に適した専門性の高いスキルです。新卒者はスキルや経験が不十分で、育成が必要であるため、雇用される可能性が低くなります。

●転職リスクがある

現在の条件よりも、環境や報酬に魅力を感じる職場が見つかると、流出するリスクがあります。ヘッドハンティングも予想されるため、長期的な雇用が難しくなるでしょう。

なぜ注目される? ジョブ型雇用

今、なぜジョブ型雇用が注目されているのでしょうか。ここでは、その理由と背景を解説します。

経団連会長が提言

経団連会長が、2020年春季交渉指針において、日本型雇用制度の見直しを提言しました。「短期集中の新卒一括採用では能力を十分に確認できない」として、ジョブ型雇用などを提言したという背景があります。

テレワークが増加

新型コロナウイルスの流行などによりテレワークが増加し、対面による評価が難しくなりました。上司が勤務態度や勤務実態などを把握しづらいという理由です。一方、ジョブ型雇用であれば、業務内容などが事前に決められているため、テレワークにおいても成果による評価がしやすくなります。

同一労働同一賃金の施行

2020年4月に「同一労働同一賃金」制度が施行されました。終身雇用や年功序列はすでに崩れてきており、見直しが必要といわれています。さらに、優秀な若手人材の採用を推進したいという企業の観点からも、ジョブ型雇用が注目されています。

専門職の人材不足

ITエンジニアやマーケティングなどを担う人材の不足が課題になり、多くの業界で専門職のニーズが高まっています。ジョブ型雇用を導入することで、企業側はスキルの高い人材を採用できます。一方、求職者側は、スキルを磨いて専門性を高めるチャンスになります。

ジョブ型雇用導入に必要なこと

ジョブ型雇用導入において必要なポイントや注意点を解説します。

導入範囲や職務を選ぶ

ジョブ型雇用を導入するにあたって、はじめにすべきことは部門や職務の選定です。ジョブ型雇用では、職務を明確にしなければならないため、職務の範囲などを定義する作業が必要です。企業全体を対象に導入するのか、あるいは、ひとつの部門に導入し、段階的に広げていくのかなどを検討しましょう。

評価制度の見直し

職務に対する成果を数値で評価するなど、制度の見直しが必要になります。メンバーシップ型雇用のように、評価の基準があいまいな場合は納得が得られず、成長の妨げや転職の原因になりかねません。

採用制度の見直し

ジョブ型雇用を導入すると、通年採用や中途採用が主流になっていきます。企業として新卒採用を行うかの検討や、採用する人数の見直しが必要となります。

職務記述書(ジョブディスクリプション)の作成

ジョブ型雇用では、ひとつの職務ごとに、職務記述書(ジョブディスクリプション)が必要です。職務内容・責任範囲・権限範囲・必要なスキル・経験などを具体的に記載し、求職者に提示することが重要です。

限定社員との違いを明確にする

ジョブ型雇用と似た雇用形態に「限定社員」があります。限定社員とは、雇用契約に期間の設定がなく、勤務地や勤務内容、勤務時間などが限定されている正社員を指します。賃金を抑えながらも雇用が安定するというメリットがあり、正規と非正規の中間の働き方とされています。

ジョブ型雇用は、競争力の高い人材が目的で、限定社員との違いを明確にしておく必要があります。

解雇の条件を明記する

職務記述書(ジョブディスクリプション)に記載した職務が終了すると、解雇されるのが一般的です。ドイツでは社内の異動が検討されるなど、国や地域によって異なる部分でもあります。あらかじめ解雇条件を明記することも必要でしょう。

ジョブ型雇用の日本における導入事例

実際にジョブ型雇用を導入している、または導入予定を発表した、4つの日本企業を紹介します。

事例1.日立製作所

日立製作所では、2021年3月までに全職種の職務履歴書(ジョブディスクリプション)を作成し、2024年度中には完全なジョブ型雇用への移行を目指すと発表しています。新卒採用の割合が下がり、中途の経験者採用が多くを占めていること、グローバルでの競争力向上が大きな理由です。
2024年までに、従業員がスキルを向上する機会を設け、さらにデジタル人材採用・経験者採用や通年採用の強化も行うとしています。

事例2.富士通

富士通では、2020年4月より国内グループ企業に勤める管理職約1万5,000人を対象として、ジョブ型雇用を導入しています。
グローバルに統一された基準で職責を7段階に分けて、報酬に反映する「FUJITSU Level」という人事制度も行われています。また、一般社員にも段階的にジョブ型雇用を広げる予定です。

事例3.資生堂

資生堂は、2015年から本社の管理職1,200人を対象に「役割等級制度」を導入。2020年1月にはその改訂版として、一部の管理職約1,700人を対象に「ジョブグレード制度」を導入しています。さらに2021年1月からは、一般職3,800人まで拡大することを発表。「究極の適材適所」として人材の多様性を高め、会社経営に活かすことを目指しています。

事例4.カゴメ

カゴメは、職務の大きさと市場価値に配慮してグレードを設定する、「グローバル・ジョブ・グレード」を役員の人事制度として、2014年に導入しています。年功序列型から職務等級制度(ジョブ型)への移行を推進し、評価についても年齢ではなく成果に応じた昇給となりました。

まとめ

グローバルな視点から見ると、年功序列といった日本の雇用制度は、時代にそぐわないものになってきています。さらに、コロナ禍によるテレワークの推進などが追い風となり、ジョブ型雇用は注目を浴びています。しかし、導入には制度を大きく変える必要があり、課題が残ります。

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