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企業におけるマインドフルネス瞑想の実践方法と効果について解説

マインドフルネス(mindfulness)とは、いまこの瞬間に意識を集中し、ありのままの状態を受け入れることです。Appleが提供するApple Watchにもマインドフルネスアプリがあるので、知っている方はいらっしゃるのではないでしょうか。
「瞑想」が主な手法となり、宗教的でスピリチュアルなものとして捉えられる場合もありますが、米Googleが採用するなど、ビジネスシーンにおいても多くの効果が見込まれています。
今回は、企業にマインドフルネスのメソッドが導入されている理由、ビジネスパーソンが行うメリットや効果について解説します。企業の経営者や、人事・人材育成に関わる方は、ぜひ参考にしてください。
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マインドフルネスとは
マインドフルネスとは、意図的に「いまこの瞬間」に起こっている経験に意識を集中し、ありのままを受け入れる心の状態のことです。マインドフルネス実践のための方法として「瞑想」があります。
スピリチュアルなイメージのあるマインドフルネスですが、集中力、内省力の向上やストレスの低減などさまざまな効果が見込まれるため、ビジネスシーンにおいても注目を集めています。Googleでも導入され、現在、海外のグローバル企業で、研修に瞑想などのマインドフルネスのメソッドを取り入れている企業は、全体の35%にも及ぶといわれています。
ちなみに瞑想はさまざまな宗教で行われているものの、大乗仏教における禅宗の座禅やインドのヨガが思い浮かびます。行為としては似ていますが求めるものが違います。
座禅は集中し心を無にすることです。ヨガは、心を静めるために身体に意識を集中させる瞑想で、マインドフルネスのような、思いつくままを受け入れ、内省力やセルフアウェアネスを向上させることとは違っています。
マインドフルネスが企業で注目される背景
マインドフルネスがなぜいま企業で注目されているのか、その理由について解説します。
マネジャーを中心としたビジネスパーソンの多忙化
日本で最初にマインドフルネスが話題になったのは十数年前ですが、当時と比較し、マネジャー層を中心としたビジネスパーソンは多忙化しています。そこで改めて注目されているのがマインドフルネスです。
働き方改革やコロナ禍によるテレワークの拡大、市場環境の変化や価値観の多様化など、ビジネスパーソンの働く環境は激変し、その課題対応を行うマネジャーの負荷は増えています。そのため、ストレスの低減をはじめとしたさまざまな効果があるマインドフルネスが求められているのです。
健康経営やウェルビーイングへの効果
近年、従業員の健康管理を取り入れた戦略的な経営手法である健康経営や、従業員の幸福度の向上に目を向けたウェルビーイングが注目されています。
これらは従業員のエンゲージメントを高め、企業価値の向上につながることが期待できます。
マインドフルネスは、従業員の健康や幸福度にも寄与する効果があるため、従業員が活き活きと働くための手法のひとつとして注目されています。
ビジネスにおけるマインドフルネスの効果
実際に、マインドフルネスを行うことによってどのような効果が得られるのでしょうか。以下で解説します。
集中力の向上
マインドフルネスは、瞑想という手法を取り入れることが一般的です。瞑想は、自分の感情や身体感覚には意識を向けず、呼吸だけに一点集中するところから始まります。
そのため、余計な考えを捨て目の前に集中する力を鍛えることができるのです。継続的に瞑想を実施することで、その効果は高まっていくといわれています。
ストレスの軽減
マインドフルネスによるストレス軽減は、一般的なストレス解消とは異なります。自分の気持ちを客観視することで、「外的刺激=ストレス」と捉えない心の変化が生まれるのです。
例えば、職場で上司から厳しい言葉で指摘を受けたとしましょう。「自分は無能だ」と否定的に捉えるか、「上司は今日とても忙しそうだった」「この指摘は自分の成長につながる」と捉えるかでは、ストレスの感じ方が大きく異なります。
この手法は、外部からの刺激に対する自身の向き合い方を変化させる効果があり、結果的にストレスを軽減します。メンタルヘルス問題の治療においても、マインドフルネスは有効な選択肢のひとつとして考えられているのです。
内省力やセルフアウェアネスの向上
セルフアウェアネスとは「自己認識能力」のことで、自分の強みや弱み、価値観や思考特性など自分の内面を見つめ、理解する力のことをいいます。
マインドフルネスを続けていくことで、いま自分はどんな状態で、それがどんな行動につながっているのか、内面を観察・理解する内省力やセルフアウェアネスがついてきます。
また、それによって『自分の本来の意図と行動のギャップ』にも気づくことができるようになれば、本来の目的・目標に合わない無駄な行動を排除でき、その実現により近づけるようになります。
仕事のスピードアップ
マインドフルネスを行うことで、集中力を鍛えることができます。さまざまな業務を同時並行しており気が散りやすい状態というビジネスパーソンも多いですが、目の前のことに集中する力があれば、仕事のスピードも速まるでしょう。
他者との関係性の改善、向上
先述の通り、マインドフルネスによって内省力やセルフアウェアネスが高まれば、自分の考えや状態を把握することができます。それにより、一時的な感情に振り回されることなく、他者の意見を受け入れたり話し合う余裕ができ、関係性の改善にもつながるでしょう。
部下を持つマネジャーがマインドフルネスを取り入れれば、部下の意見に傾聴し、良い関係性を築くことができるため、マネジメントの改善にも効果的です。
クリエイティビティの向上
マインドフルネスは、創造性を高めることにも寄与します。瞑想を続けることで、先入観やバイアスといった前提なしに、目の前の事象をありのまま見ていくことができるようになるため、創造性に不可欠な洞察力がアップするためです。
マインドフルネスはビジネスにおける緊張と緩和を適度につくり、結果として従業員の生産性を向上させることが期待できる非常に有効な手段です。
またマインドフルネス瞑想はビジネスだけではなく私生活、例えば寝る前に実施することでも効果があります。
マインドフルネスの実践方法
マインドフルネスを実践する方法はいくつかありますが、一般的なのはマインドフルネス瞑想です。この瞑想にはさまざまな手法がありますが、本章では主要な3つの方法を紹介します。
呼吸の瞑想
呼吸の瞑想は、マインドフルネスの基本的な実践方法です。
椅子に座り、背筋を伸ばしてリラックスした姿勢をとります。目を軽く閉じ、呼吸に意識を向けましょう。鼻から息を吸い、口からゆっくりと吐き出す過程に集中します。思考が浮かんだ場合はその思考を認識し、再び呼吸に意識を戻します。
この練習は5分から始め、徐々に時間を延ばしていくことがポイントです。
歩く瞑想
歩く瞑想は日常のなかで簡単に実践できるマインドフルネスの方法で、通勤時や散歩中に行うことが可能です。
まず、体の緊張をほぐし、リラックスした状態で立ちます。足の裏が地面に触れる感覚に意識を向けましょう。
ゆっくりと歩き始め、足を上げる動作、地面に触れる瞬間、体重移動の過程に注目します。周囲の音や匂いにも意識を向けてみてください。
この練習を通じて普段気づかない身体の動きや感覚を認識し、現在の瞬間に集中する力を養うことができます。
ボディスキャン瞑想
ボディスキャン瞑想は、体全体に意識を向ける実践方法です。仰向けに寝るか、椅子に座った状態で始めます。
目を閉じ、深くゆっくりと呼吸します。つま先から順に、体の各部位に意識を向けていきます。足、腰、背中、胸、腕、首、頭と、順番に注意を移動させます。各部位の感覚、温度、緊張や弛緩の状態にも意識を向けましょう。
この瞑想は10~15分程度行います。体の状態への気づきを深めることで、ストレスの早期発見や感情コントロールに役立ちます。
マインドフルネスを企業に導入する方法
マインドフルネスの効果的な導入には、組織的なアプローチが重要です。次に、企業がマインドフルネスを取り入れるための主要な2つの方法を紹介します。
マインドフルネスの時間を設定する
マインドフルネスの効果を理解しても、忙しい就業時間内での実践は難しいものです。多くの従業員がタスクに追われているうえに、周囲の目も気になるでしょう。
この課題を解決するには、会社が公式に「場」を設けることが効果的です。「自席にて5分でできるマインドフルネス」のように簡単に実践できる方法を教え、実施時間を指定するルールをつくりましょう。例えば、10時や15時に全員で取り組む雰囲気をつくることで、社内での浸透を図れます。
忙しいときこそ、短時間のマインドフルネスが威力を発揮します。定期的な実践により、ストレス軽減や生産性向上が期待できるのです。
マインドフルネス研修を実施する
マインドフルネスを企業に導入する効果的な方法のひとつは、専門的な研修の実施です。この研修では、高い集中力や洞察力が発揮できる状態を意識的につくる方法を学べると良いでしょう。
研修プログラムの構成としては、まずマインドフルネスの概要や効果の説明から始めることで研修の理解を促し、基礎となる瞑想の実践へと進みます。さらに、セルフコントロールのためのワークを取り入れ、参加者自身の感情や価値観を探る機会を設けましょう。
また、自分と将来のキャリアを結びつけるワークも重要です。個人の価値観と仕事との関連を考え、今後の行動指針を明確にすることで、内発的動機付けを高めます。これらの個人ワークのあとはチームでの共有を行い、相互理解を深めることでチームワークの向上も図れます。
マインドフルネスを導入する際の注意点
マインドフルネスを行う上で、気を付けるべき注意点について解説します。
瞑想に頼り過ぎてしまう
瞑想でリラックスすれば良いからと、普段から疲れやストレスを溜めてしまうような働き方をしてしまえば本末転倒です。自分の状態や目的に合わせて、適切に取り入れていくことが重要です。
悪化の可能性がある
一般的に、マインドフルネスは、ほとんどリスクがないと考えられています。しかし、これらを検証した研究はほとんどないため、確実なことはいえません。
厚生労働省のHPによると、2020年の段階で、83件の研究(参加者合計6,703例)を検証し、そのうちの55件の研究で不安や抑うつといったネガティブな体験が報告されていることがわかりました。
参照:海外の情報|瞑想(厚生労働省)
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c02/07.html
マインドフルネスを導入した企業事例
マインドフルネスは、医療行為として1979年にジョン・カバット・ジンが臨床的な技法として体系化したことから注目され始めました。その後、米国の企業からマインドフルネスの導入が広がっています。
本章では、企業の導入事例を3つ紹介します。
Googleでのマインドフルネス導入は、カバット・ジン博士の講演がきっかけです。Googleのエンジニアのチャディー・メン・タン氏が中心となり、日々の実践が容易な形でマインドフルネス瞑想を社内に定着させました。
具体的な取り組みとして、「己の内側を探れ」という意味の「S・I・Y(Search Inside Yourself)」というカリキュラムが開発されました。本社には「瞑想ルーム」が設置され、就業時間中に瞑想を行える環境が整えられています。
「S・I・Y」の導入により、Googleでは社員の集中力が向上し、会社全体の生産性が高まりました。また、自律神経の調整によりストレスが軽減され、社内コミュニケーションが円滑になり、結束力が強化されています。
思考がクリアになることで創造性が豊かになり、よりイノベーティブなアイデアが生まれやすくなったのです。
SAP
SAPではSIY Globalのメソッドを参考に、「意識的な呼吸」「マインドフルな散歩」「マインドフルな食事」などの簡単な手法を日常業務に取り入れ、チームの文化向上と生産性増加を図っています。
特筆すべきは、70人以上の認定トレーナーと95人以上のマインドフルネスアンバサダーを配置し、活発なエキスパートコミュニティを形成していることです。トレーニングは科学的証拠に基づいて行われています。
健康的な日常ルーチンの一部として従業員に浸透させ、企業文化の変革を推進しているのです。
ヤフー(現:LINEヤフー)
ヤフー(現:LINEヤフー)では、2016年夏からマインドフルネス研修を開始しました。Googleの「S・I・Y(Search Inside Yourself)」を参考に、独自のプログラムを開発しています。このプログラムは、マインドフルネス、自己認識、自己管理、モチベーション、共感、リーダーシップの6要素で構成されたものです。
当初は社員のリーダーシップ向上を目的としていました。しかし、2018年の効果測定で、実践者の業務パフォーマンスが研修未経験者より20%高く、週3回以上の実践者では約40%高いことが判明しました。この結果を受け、同社は現在、社員の健康増進も視野に入れた研修を実施しています。
自身のコンディションを客観的に把握し、メリハリのあるパフォーマンスにつなげることを目指しています。
まとめ
マインドフルネスには、ビジネスパーソンのパフォーマンス向上に関する多くのメリットがあります。また、健康経営(ウェルビーング経営)という言葉があるように、従業員の心身の健康を企業が支援していくことは、これからの時代にますます求められることでしょう。
身体の異常はすぐにわかりますが、精神の異常はなかなか表に出ません。予防という意味でもマインドフルネスは会社としても個人としても継続的に行うことをお勧めします。
会社としては、マインドフルネスで予防を促しつつ、ストレスを抱え精神的に疲労している従業員の発見、ケアという面ではまずは専門家の知見を取り入れる形で、メンタルヘルスケアのセルフチェックから始めてみてはいかがでしょうか。
1979年より企業向け研修を実施している歴史ある会社「株式会社日本能率協会マネジメントセンター」が提供している「自分のためのメンタルヘルスケア基本コース」では、メンタルヘルスケアの「セルフチェック」から、「ストレスに関する知識」を習得することにより、自分で自分のストレスの状態に気づくことができるようになるプログラムです。「気づき」から始まり、「自己対応」そして「相談」を行うことで、ストレスのコントロール方法を取得できます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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