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人的資本投資とは?重要性や企業にもたらす効果を解説

人的資本投資とは?重要性や企業にもたらす効果を解説

人的資本投資とは、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すための投資を行うことです。

株式会社日本能率協会マネジメントセンターが行った実態調査によると、上場企業の62.5%、非上場企業の37.2%が人的資本経営を「重視」しています。
また、「人的資本経営」という言葉が登場する3年以上前から、上場企業の4割強・非上場企業の2割弱が人材への投資に取り組んでいます。
出典:(上場/非上場企業別)「人的資本経営」実態調査)

本記事では、人的資本投資とはどのようなものなのか、その重要性や企業にもたらす効果を解説いたします。

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企業における人的資本投資の重要性は高まっている

人的資本投資とは、社員の知識や能力などのスキルを「資本」として捉え、企業が投資する経済学の用語です。

本来、持続的な企業成長や高い企業価値をもたらすのは人材であり、ヒトがあってこそカネ・モノが生まれます。

人材の価値を再評価して、社員の成長にお金をかけることはコストではなく、投資であると経営者は再認識する必要があるでしょう。

人的資本投資は多くの企業が関心を寄せており、以下のように政府の動きも活発化しています。

<人材に関して政府が取りまとめた文書>

2020年9月 経済産業省「人材版伊藤レポート」
2022年5月 経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」
2022年8月 内閣官房「人的資本可視化指針」
2023年3月期 金融庁「企業内容の開示に関する内閣府令」等の改正

特に大きな動きは、金融庁による内閣府令の改正。2023年3月期の決算から、人的資本開示の義務化が決定されました。

人的資本の情報開示に求められる項目については、以下の記事で詳しく解説しています。

人的資本投資は企業の売上アップだけでなく、社員の幸福度・組織の競争力向上など、金額だけでは測れない利益をもたらすため、企業価値や競争力の指標として把握・開示する動きが始まっています。

人的資本投資が企業にもたらす5つの効果

政府が動くほど注目を集めている人的資本投資ですが、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。5つの効果をご紹介します。

生産性の向上

社員のスキルアップと成長が促され、業務の生産性が向上すると考えられます。

社員の一人ひとりが今まで以上のパフォーマンスを発揮できるようになれば、企業全体の利益拡大につながるでしょう。

内閣府のデータによると、社員一人当たりの人的資本投資額を1%増加させると、0.6%労働生産性向上の可能性があると示唆されています。

出典:「第2章 人生100年時代の人材と働き方」(内閣府)
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/pdf/p02022.pdf

また生産性の向上で高まった利益をさらに人的資本へ投入するといった、社員と企業がともに成長し合える好循環につなげることも可能です。

優秀な人材の獲得・確保

積極的な人的資本投資は、優秀な人材の確保につながるのもメリットです。

人的資本投資には、エンゲージメントの向上や働きやすい環境整備といった、多様な人材が活躍するための「制度の構築」が含まれます。

自己学習やキャリア開発の機会が得られる職場環境や、ワークライフバランスの整った働きやすい職場環境は、社員や求職者にとって魅力的に映るため、新たに優秀な人材を獲得しやすくなります。

企業ブランディングへの好影響

人材育成に力を入れている企業は社会的信頼を得やすく、企業イメージの向上につながります。

企業価値は建物や設備などの有形資産と、ブランドや人的資本などの無形資産のふたつに分けられます。

人的資本は無形資産のなかでも「経済的競争力」に分類され、企業の競争性を大きく左右する要素です。人的資本投資に注力する企業ほど、競争性の高い企業だと評価されやすくなるため、投資家などのステークホルダーからも注目されます。

企業の人的資本情報に注目する投資家は増加傾向にあり、人的資本投資額も企業価値の重要な指標になりつつあります。

社員エンゲージメントの向上

人的資本投資への注力は、社員エンゲージメントの向上につながります。

企業価値は建物や設備などの有形資産と、ブランドや人的資本などの無形資産のふたつに分けられます。

社員エンゲージメントとは、社員が会社に貢献したいと思う度合いのことです。働きやすい環境をつくることは、帰属意識の高まりや社員のモチベーションを向上させる効果があり、離職率の低下につながります。

また、社員が自身の仕事に誇りを持って取り組むようになれば、商品・サービスの品質向上につながるでしょう。自社の売上向上や顧客満足度のアップにも貢献します。

投資収益性の向上

人材は、ほかの資産への投資よりも収益性が高く、追加投資するメリットが大きくなっています。

財務省のデータによると有形資産への投資収益率が20%であるのに対し、人的資本への投資は約50~60%を誇ります。

特にサービス業において人的資本投資は効果的で、大きな生産性向上が期待できると考えられています。

加えてほかの投資とのシナジーも大きく、人的投資に積極的な企業は、機械・ソフトウェアといった設備投資や研究開発などへの投資にも高い結果が出やすくなっています。

出典:「人手不足時代に求められる人的資本とは」(財務省)
https://lfb.mof.go.jp/kyusyu/chiiki/r5dbj.pdf

企業が取り組むべき人的資本投資の具体例

企業が人的資本投資に対してどのような取り組みをするべきなのか、人的資本投資の具体例をご紹介します。

研修・教育体制を整える

研修・教育体制を整えることは、人的資本投資の基本ともいえる大きな要素です。

たとえば職務に必要なスキルを磨く機会を与えたり、階層別の教育体制でスキルアップ・キャリアアップのモチベーション向上につなげたりなどが考えられます。

研修の提供や受講の援助に加え、インセンティブ設定のようなモチベーション維持の仕組み化も重要です。

また、近年は事業環境の変化や価値観の多様化などに対応するために、一般的な研修・教育に加え、企業の状況に合ったリスキリング(学び直し)の支援も重要視されています。

ワークライフバランスを整える

ワークライフバランスを整えて、社員が働きやすい環境を作りましょう。

プライベートでしっかりと休息・リフレッシュができる環境を提供することで、仕事へのモチベーションが維持されやすく、結果的に生産性への向上につながります。

ワークライフバランスへの意識は、働き方改革の推進によってさらに高まっています。テレワークの導入や介護・育児と両立して働ける柔軟な勤務体制など、多様な働き方への対応を取り入れましょう。

働く場所・時間に捉われない働き方が可能になれば、これまでの勤務条件では就業が難しかった社員も働き続けられるようになります。

社員のエンゲージメント上昇はもちろん、採用の幅が広がり優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。

給与や福利厚生を充実させる

給与や福利厚生などの待遇面を充実させるのも、人的資本投資における大切な取り組みのひとつです。

頑張りが給与として還元されるという意識があると、社員はモチベーションや働きがいを感じます。

生産性の向上→利益還元→社員のモチベーション向上→さらなる生産性の向上という好循環が生まれるでしょう。

HRテクノロジーを導入する

人的資本投資で成果を出すためには、HRテクノロジーを活用すると効果的です。

HRテクノロジーとは、人事分野をサポートするテクノロジーの総称です。採用・育成・労務など多様なサービスがリリースされています。

数値をもとにした定量的な人事分析が可能になるため、単に「評価して終わり」ではなく、評価を活かした研修・キャリア開発ができるようになります。

そのほか、人的資本開示に向け、企業としてどこから取り組むべきか詳しく知りたい方へ向けて、資料(電子ブック)をまとめています。気になる方は、以下のリンクからダウンロードしてみてください。

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日本企業に残された人的資本投資の課題

日本企業における人的資本投資の課題として、いかに「人的資本の重要性を理解し取り組むか」が挙げられます。

日本企業の人的資本は、長引く不況や非正規雇用の増加などから海外企業と比べて低迷状態です。

現在、政府は「新しい資本主義」を掲げており、その根幹となるのが人的資本投資です。すでにリスキリング(学び直し)支援に5年間で1兆円を投じ、人的資本投資の支援に積極姿勢を見せています。

今後も出向支援や人材開発支援助成金など、人的資本投資を促進する施策が考えられています。政府の介入や支援もふまえて、どのように取り組むか検討しましょう。

まとめ

人材を企業の資本として捉えて、最大限に価値を引き出す人的資本投資は、政府も推進していることも相まって今後さらに拡大していくと考えられます。

企業価値やエンゲージメントの向上、生産性アップなど多くの恩恵があるため、積極的に取り組みましょう。

人的資本投資を具体的にどのように行うかを解説した資料「経営戦略としての人的資本開示とは?」を無料で公開中。御社での施策検討のご参考に、ぜひご活用ください。

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JMAM HRM事業 編集部

文責:JMAM HRM事業 編集部
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