企業が成長していくためには、ダイバーシティの推進が欠かせません。しかし、「ダイバーシティを進める方法が分からない」「そもそもダイバーシティについて理解していない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ダイバーシティの基礎知識を徹底解説していきます。ダイバーシティを推進するためのポイントや具体的なメリットなどにも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
ダイバーシティとは?
ダイバーシティ(Diversity)とは、「多様性」を意味する言葉です。ビジネスにおいては、「多種多様な人材を積極的に活用する戦略」のことを指します。
性別・国籍・年齢・宗教などの区別なく、様々な価値観を持った人材を活用することで、イノベーションの創出や企業価値の向上が期待できるでしょう。さらには、組織としての持続的成長や競争力の強化につながります。
表層的な5つの属性と深層的な7つの属性
ダイバーシティ(多様性)は、表層的属性と深層的属性の2種類に大別できます。表層的属性とは、見た目で判別しやすいような属性のこと。自分の意思とはあまり関係がなく、基本的に自分の力で変えることができない、という特徴があります。
【表層的な5つの属性】
- 性別
- 年齢
- 国籍
- 人種や民族
- 障害
一方で、深層的属性とは、見た目では判別しにくいような属性のこと。人間の内面に関わるものなので、表面上は分かりにくいです。
【深層的な7つの属性】
- 考え方
- 趣味
- 習慣
- スキルや知識
- 職歴
- コミュニケーション能力
- 性的志向
同時に必要とされるインクルージョンとは?
ダイバーシティと同時に必要とされる「インクルージョン」についても理解しておきましょう。インクルージョン(inclusion)とは、「包括・包含」を意味する言葉です。ビジネスにおいては、以下の条件がすべて満たされているような状態のことを指します。
- 組織内のすべての従業員が、平等に仕事に関われている
- 多種多様な従業員がいて、それぞれの考え方や価値観が認められている
- 従業員一人ひとりの経験やスキルが十分に活用されている
インクルージョンが必要とされる背景とは?
ダイバーシティの推進を行っている企業は多いです。しかし、人材の多様性を認めることで、デメリットが発生してしまうケースも少なくありません。価値観の衝突や意見の食い違いなどにより、パフォーマンスに悪影響が出ることもあれば、離職率が向上してしまうこともあるでしょう。
その解決策として、インクルージョンが必要です。多様性を認めるのはもちろんですが、その上で個々の従業員の経験やスキルをさらに尊重し、相互に機能しているような状態を目指します。
ダイバーシティが必要とされる背景とは?
ダイバーシティが必要とされる社会的背景について解説していきます。
労働人口の減少
まず、「労働人口の減少」が挙げられます。日本では少子高齢化の影響により、労働人口の減少が続いていくと予想されています。また、必然的に親の介護を行う人が増えるため、フルタイムで働ける人材や転勤可能な人材は減っていくでしょう。
そのため、企業は人材の確保がますます難しくなります。生産性を落とさずに成長を続けていくためには、性別・国籍・人種などの区別なく、多種多様な人材や働き方を受け入れていくことが必要不可欠だと言えるでしょう。
女性の社会進出
次に、「女性の社会進出」です。これまでの日本社会は、男性中心でビジネスを行う傾向があり、女性が活躍する機会は比較的少ない状況でした。結婚・出産・介護などでキャリアを中断しなければならない女性も多いでしょう。
これは、企業にとって大きな損失だと言えます。社会情勢が目まぐるしく変化し労働人口も減少していくなか、男性を重視した単一な組織では価値観が偏り、企業間競争に勝てなくなっていくでしょう。イノベーションを創出し企業価値を向上させるためには、性別や年齢の区別なく、様々な考え方を持った人材を活用することが大切です。
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働き方の変化
働き方改革が進み、「働きやすい社会」が形成されつつあるなか、「ワークライフバランス」が重要視されるようになりました。近年ではさらに一歩進んで、「ワークライフマネジメント」や「ワークライフインテグレーション」という考え方にシフトしています。
●ワークライフマネジメント
自らの意思で仕事と生活を積極的にマネジメントし、両方を充実させようとする考え方
●ワークライフインテグレーション
仕事も生活も人生の一部であると認識し、両者を統合させることで、相乗効果を期待するような考え方
いずれの場合も、「ワーク」と「ライフ」双方を適切にコントロールしなければなりません。企業としては、ダイバーシティを推進しながら人事制度を組み直し、柔軟な働き方を受け入れていくことが大切です。
求められる多様性
インターネットの発展やSNSの普及により、顧客の購買行動や価値観は、非常に多様化・複雑化しています。新しい価値をスピーディーに創出することができなければ、企業は生き残ることができません。ゆえに、「イノベーションが生まれやすい環境」を整えることが非常に大切です。
同じような人間ばかりが集まった単一的組織では、一つの視点や角度からしか物事を捉えられないでしょう。多種多様な人材が交流し、異なる価値観や思考スタイルがぶつかり合うことで、イノベーションは生まれやすくなります。
人的資本経営に求められる「知・経験のダイバーシティ」
人的資本経営実現のためのガイドライン『人材版伊藤レポート2.0』のなかでは、ダイバーシティについて以下のように記載されています。
中長期的な企業価値向上のためには、非連続的なイノベーションを生み出すことが重要であり、その原動力となるのは、多様な個人の掛け合わせである。このため専門性や経験、感性、価値観といった知と経験のダイバーシティを積極的に取り込むことが必要となる。
この「知・経験のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」は、多様な個人や組織、チームが活性化されることで、生産性の向上やイノベーションにつながっていくという考え方です。人的資本経営を成果につなげていくためにも、ダイバーシティの推進は必要だといえるでしょう。
ダイバーシティを推進するために必要なこと
この章では、「ダイバーシティを推進するためのポイント」について解説していきます。ダイバーシティを推進する際は、経済産業省による「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」を参考にすることをおすすめします。企業がダイバーシティを進める上での行動指針そのものであり、「実践のための7つのアクション」や「3つの視点」などが示されています。
ダイバーシティを推進する上でもっとも大切なのは、経営層のコミットメントとリーダーシップです。上層部が「ダイバーシティを進めやすい制度やルール」を整えることで、従業員も主体的に動きやすくなるでしょう。
また、企業内部だけでなく、外部のステークホルダーにもアプローチしましょう。「具体的にどのような取り組みを行っているのか」を発信していけば、信頼関係の構築やブランディングにもつながります。
推進するための7つのアクション
ダイバーシティを進めるためには、どのような行動を取ればよいのでしょうか。経済産業省の「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」では、「実践のためのアクション」として、以下の7つが挙げられています。
1. 経営戦略への組み込み
経営トップが、ダイバーシティが経営戦略に不可欠であること(ダイバーシティ・ポリシー)を明確にし、KPI・ロードマップを策定するとともに、自らの責任で取組をリードする。
2. 推進体制の構築
ダイバーシティの取組を全社的・継続的に進めるために、推進体制を構築し、経営トップが実行に責任を持つ。
3. ガバナンスの改革
構成員のジェンダーや国際性の面を含む多様性の確保により取締役会の監督機能を高め、取締役会がダイバーシティ経営の取組を適切に監督する。
4. 全社的な環境・ルールの整備
属性に関わらず活躍できる人事制度の見直し、働き方改革を実行する。
5. 管理職の行動・意識改革
従業員の多様性を活かせるマネージャーを育成する。
6. 従業員の行動・意識改革
多様なキャリアパスを構築し、従業員一人ひとりが自律的に行動できるよう、キャリアオーナーシップを育成する。
7. 労働市場・資本市場への情報開示と対話
一貫した人材戦略を策定・実行し、その内容・成果を効果的に労働市場に発信する。投資家に対して企業価値向上に繋がるダイバーシティの方針・取組を適切な媒体を通じ積極的に発信し、対話を行う。
推進するための3つの視点
また、「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」では、以下の「3つの視点」の重要性について解説されています。
- 1. 経営陣の取り組み
- 2. 現場の取り組み
- 3. 外部コミュニケーション
中高年が活躍できる環境をつくる
中高年の活躍を推進することも重要です。少子高齢化が進めば、これからさらに中高年社員の割合は増えていきます。しかし、「管理職に就けなかった従業員が力を発揮する場がない」「定年後採用の制度が整っていない」といった問題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。
中高年社員の処遇改善に取り組み、「年齢に関わらず活躍できるような組織」を目指すことが大切です。
女性が活躍できる環境をつくる
近年は、「女性活躍推進法」が制定されるなど、国全体として女性の活躍を後押しする流れが出来つつあります。それに伴い、女性活躍推進に取り組む企業も増えているでしょう。
これを一過性のブームで終わらせてしまっては意味がありません。着実に仕組み化・制度化を進め、「男性も女性も平等に活躍できる環境」を整えてください。
非正規社員が活躍できる環境をつくる
働き方改革に伴い、同一労働同一賃金や無期雇用への転換といった考え方が浸透してきました。これからの時代は、正社員と非正規社員を区別するようなマネジメント手法は通用しなくなっていくでしょう。
雇用形態や働き方の多様性を認めながら、誰しもが自分のスキルを最大限発揮できるような組織を目指してください。
ダイバーシティを推進することのメリット
最後に、「ダイバーシティを推進するメリット」を2つ紹介します。
優秀な人材を確保できる
1つめのメリットは、「優秀な人材を確保しやすくなる」ことです。採用の対象層を拡大すれば、優秀な人材に出会える可能性は高くなります。また、ダイバーシティに真剣に取り組んでいる企業は非常に魅力的なので、自然と優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。
さらに、育児休暇や介護休暇などの制度が整っていれば、優秀な社員を手放すことなく、自社に復帰させることも可能です。
企業の社会的信用度が向上する
2つめのメリットは、「企業の社会的信用度がアップする」ことです。ダイバーシティを推進している企業は、外部のステークホルダーから高い評価を受けることになります。「柔軟性や平等性の高い企業」「女性登用に積極的な企業」というイメージは、自社のブランド価値を高めてくれます。
また、社会的信用度の高い企業に勤務していることで、従業員一人ひとりのモチベーションは上がり、パフォーマンスも向上しやすくなるでしょう。
まとめ
ダイバーシティの基礎知識や推進するためのポイントなどを解説しました。性別・国籍・年齢・宗教などの区別なく、様々な価値観を持った人材を活用することで、イノベーションの創出や企業価値の向上が期待できるでしょう。さらには、組織としての持続的成長や競争力の強化につながります。
ぜひこの記事を参考にしながら、ダイバーシティについて理解を深め、実践してみてください。
なお、ダイバーシティの推進方法についてさらに詳しく知りたい方は、以下のホワイトペーパーが参考になります。1979年より企業向け研修を実施している「株式会社日本能率協会マネジメントセンター」が提供しているホワイトペーパーです。ぜひダウンロードしてみてください。
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