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SDGsの目標5「ジェンダー平等」とは?| 日本・世界の現状や企業の取り組み事例を紹介

SDGsの目標5「ジェンダー平等」とは?| 日本・世界の現状や企業の取り組み事例を紹介

2015年の国連サミットで採択された「SDGs」には、世界的に注目が集まっています。掲げられている目標のうち、「(5)ジェンダーの平等を実現しよう」に力を入れたいと考えている企業の担当者も多いのではないでしょうか。

今回は、SDGsの目標5の概要および男女不平等の問題、ジェンダー平等のために企業ができる取り組みなどを紹介します。

そもそもSDGsとは?

SDGsは「Sustainable Development Goals」を略した持続可能な開発目標を指す言葉で、日本語では「エス・ディー・ジーズ」と発音します。SDGsには大きく17の目標があり、それぞれの目標を達成するためのターゲットがさらに細かく169設定されています。

「地球上の誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓い、採択された翌年の2016年から2030年までの15年間で達成を目指しています。先進国、開発途上国にかかわらず取り組む必要があり、日本企業も積極的に取り組んでいます。

SDGsについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

SDGsの目標5「ジェンダーの平等を実現しよう」とは?

SDGsが掲げる17の目標のうち、目標5はジェンダーに関するもので、「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性および女児のエンパワーメントを行う」という目標が設定されています。大枠の目標の下には、より具体的なターゲットが設けられています。

例えば、あらゆる場所・あらゆる形態の差別撤廃、女性への暴力の排除、女性のリーダーシップ確保などです。

人身売買や未成年者の結婚などの社会的な問題とともに、家事や育児・介護など日常生活に潜む無償労働の問題もターゲットに含まれています。性別による差別がなく、誰もが平等にチャンスを得られる世界の実現に向けた目標です。

ジェンダーに関する問題

次にジェンダーによる男女不平等や女性差別の問題について、具体的にどのような実態があるのか、3つの観点からみていきます。

暴力・虐待

女性に対する暴力や虐待は、世界中で問題になっています。特にもともと男性優位のジェンダー規範をもつ地域の状況は根が深く、妻やパートナーに暴力を振るうのは当然の権利だという考えがなくなっていません。

紛争下では性的暴力が武器として使われるなど、さらに暴力が増加する傾向です。独立行政法人国際協力機構(JICA)の調査では、実際に紛争地域で25万人もの女性が性的暴力を受けたとされています。紛争地域以外でも男性に比べ力で劣勢な女性は、暴力や虐待のターゲットとなることが少なくありません。女児に対する暴力や体罰も問題視されています。

教育格差

現代の日本では性別の違いによる教育格差は改善されてきているものの、世界ではまだ文化的な慣習や法整備が整っていないことが理由で教育現場の差別が存在しています。

例えばイエメンの初等教育(小学校1~6年生)の純就学率は男子が85%であるのに対し、女子は65%です。

識字率に至っては男性が76%ですが、女性は39%に過ぎず、男女間でかなりの差があります。

参考:【技術協力】イエメン・タイズ州地域女子教育向上計画プロジェクト|JICA(外部サイト)
https://www.jica.go.jp/activities/issues/gender/case/06.html

雇用機会・賃金格差

男女不平等の問題で依然として多く残っているのが、女性が平等に雇用の機会を与えられないことです。賃金格差も問題視されており、OECD加盟国の統計では男女の平均格差が13.6%あります。

この問題は日本も例外ではありません。日本の男女格差は24.5%とOECD加盟国のなかでも2番目に高く、改善が必要な課題です。以下の段落からは、日本における女性の社会進出の現状や企業ができる取り組みなどを詳しく解説していきます。

参考:男女平等に向けた歩みは遅すぎるー国際女性デー|OECD(外部サイト)
https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/international-women-s-day-progress-on-gender-equality-is-too-slow-says-oecd-japanese-version.html

日本におけるジェンダー平等の現状

日本におけるジェンダー平等の現状について、ジェンダー・ギャップ指数と国の取り組みの側面から解説します。

日本のジェンダー・ギャップ指数

世界経済フォーラム(WEF)は毎年「ジェンダー・ギャップ指数」を発表しています。

2021年3月発表のデータで、日本は146か国中125位と過去最低で、G7のなかでも最低の順位です。同じアジアの中国や韓国に比べても低く、男女格差については先進国の中でも後れを取っています。

女性の社会進出がまったく進んでいないわけではありませんが、ほかの国よりも変化のスピードが遅いのは明らかです。特に政治分野や経済分野での男女格差は依然として大きいままです。

政治の男女格差については、主に下記の点があげられます。

  • 国会議員や閣僚の女性の割合が少ない
  • 行政府の長の在任年数の男女比(最近50年)は女性が著しく低い

経済の男女格差については、主に下記の点があげられます。

  • 女性の管理職登用が少ない
  • 同一労働での男女賃金格差がある

一方、「教育」と「健康」は高いスコアですが、各国が僅差で並んでおり、順位としては、教育47位、健康59位でした。

教育は識字率、初等・中等教育でそれぞれ1位ですが、大学・大学院進学率において男女差がある(男性がやや高い)ことが影響し、全体の順位を下げています。

参考:Global Gender Gap Report 2023|World Economic Forum(外部サイト)
https://www.weforum.org/publications/global-gender-gap-report-2023/

日本政府の取り組み

日本政府は働き方改革に先駆け、2016年4月に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」を施行しました。

女性活躍推進法では従業員301名以上の企業に対し、女性活躍に関する情報公開を義務付けています(2022年4月から従業員101人以上)。情報を公開するにあたっては状況を把握・分析し、課題解決のための数値目標化や行動計画の策定なども行わなければなりません。

また、SDGsの推進に向けて8つの分野からなる「SDGs実施指針」を定めており、そのなかの1つが「あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現」です。2016年5月にも「女性の活躍推進のための開発戦略」を発表するなど、国もさまざまな面から女性の社会進出のための対策を打ち出しています。

ジェンダー平等に関する世界の取り組み

日本の課題である女性活躍推進、ジェンダー平等について、世界ではどのような取り組みがされているのか詳しくみていきましょう。

アイスランド

アイスランドは2018年に「平等賃金証明法」を施行しました。平等賃金証明法とは、同じ労働を行う男女に対して同一の賃金を支払うことを義務化する法律です。

当初は大企業のみを対象としていましたが、徐々に中小企業にも適用が拡大され、企業規模に関わらずジェンダー平等が推進されています。

アイスランドでは育児休暇制度が充実しており、両親が均等に育児に参加できる環境が整えられているのも特徴です。父母それぞれに6か月の育児休暇が認められており、さらに父母共有の育休が6週間あります。

また職場や地域社会でも子育てを支援する意識が高く、実際の子育てに対するサポート体制が整っています。例えば、企業内の託児所の設置や、地域コミュニティによる子育て支援活動が活発です。

そのほか、上場企業の役員の男女比率を6対4にする法律も制定されています。

ノルウェー

ノルウェーでは、父親が育児休暇を取得することが法律で定められています。父親には10週間の育児休暇取得が義務付けられているため、父親も育児に積極的に関与できます。

また、政党と企業において男女の平等を実現するため、クオータ制を導入しています。女性の一定割合以上の登用が浸透しており、企業の意思決定層におけるジェンダーバランスが改善され、多様な視点からの経営や政治が実現しています。

さらに、ノルウェーは母子の健康を守るための取り組みも積極的に行っています。妊婦健診や出産前後の医療サービス、育児支援サービスが充実しており、育児に関する相談やサポートを受けやすい環境が整っています。

フィンランド

フィンランドでは、2021年より有給育児休暇の男女差をなくす取り組みが実施されています。この改革により、父親も母親と同じ期間の有給育児休暇を取得できるようになりました。男女ともに育児に関わる機会が増え、家庭内の育児負担の平等化が進んでいます。

例えば、父親が積極的に育児に参加することで、母親がスムーズに職場復帰できるようになり、両親ともに仕事と育児を両立しやすくなります。

また、重要な意思決定の場においてもジェンダー平等が進んでいます。政治の場では、女性の活躍が顕著であり、多くの女性が国会議員や閣僚として活躍しています。

ニュージーランド

ニュージーランドでは、多くの企業で柔軟な働き方ができる環境が整えられています。

例えば、フレックスタイム制度の導入です。従業員は自分の生活リズムに合わせて働く時間を調整でき、仕事と家庭生活のバランスを取ることが可能です。多くの働く親が育児や介護の責任を果たしながらキャリアを継続できるようになっています。

育児休暇制度も充実しており、出産予定日または養子(6歳未満)の育児開始までの6か月間で週平均10時間以上勤務していると、最大26週間の休暇を取得できます。また、12か月勤務した場合は最大52週間の育児休暇の取得が可能です。最低でも20週間の育児休暇が保障されており、長期にわたり育児に集中できます。

また、配偶者やパートナーも6か月間勤務で1週間、12か月で2週間の育児休暇を取得できます。女性から育児休暇を取得する権限を譲り受けることで、休暇を延長することも可能です。

実際に、ニュージーランドの首相が6週間の産休を取得した例もあり、女性が高い地位に就いても出産や育児と両立しやすい環境が整えられています。

職場での授乳も認められており、母親が職場で安心して授乳できるスペースを整備している企業も増加しています。

ドイツ

ドイツでは、女性クオータ法が制定されています。女性クオータ法とは、大手企業108社に対して女性の役員比率を一定以上にすることを義務付ける法律です。

また、大手企業約3,500社には、自主的に女性の役員比率の目標を設定する義務があります。これにより、企業の意思決定層におけるジェンダーバランスが改善され、多様な視点からの経営が実現されています。

さらに、ドイツでは時短ワーク、テレワーク、ジョブシェアリングなどを積極的に推進しています。育児と管理職の両立が可能となり、働く親がキャリアを中断することなく育児に専念できる環境が整えられています。

企業でジェンダー平等を実現するメリット

前項で紹介した通り、ジェンダー平等を実現するための法律を制定したり、制度の導入を推進したりと、政府が主導で取り組んでいる国も多くあります。

企業でジェンダー平等を実現すると、事業運営において下記のようなメリットが得られます。

  • 多様な視点が得られる
  • 優秀な人材を確保できる
  • 投資家に対するアピールポイントになる

女性が加わることによって、男性だけの場合に比べて多様な視点が得られます。商品開発や販売戦略を行う上で、さまざまなニーズに対応できる可能性が高まるでしょう。労働力不足が懸念される状況においては、優秀な人材を確保できるチャンスです。

女性が活躍する企業であることは、投資家へのアピールポイントにもなります。持続可能な開発という視点が投資家の意思決定にも影響を及ぼしており、日本でもESG投資に関心が集まっています。日本では女性の活躍に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として選定しています。

SDGsの「ジェンダーの平等」のために企業ができる取り組みとは

ジェンダーの平等を実現するため、企業にはダイバーシティ&インクルージョンが求められています。性別や文化・価値観など異なる背景を持つ人材の多様性(ダイバーシティ)を、お互い認めあいながら組織を一体化し、推進していこう(インクルージョン)という考え方です。

仕事と生活のどちらかを選ぶのではなく、両者が調和したバランスのよい生き方ができるようワーク・ライフ・バランスを推進することも求められています。具体的には、男女ともに気兼ねなく育児休暇を取得する、リモートワークやフレックス勤務など自由度の高い勤務形態を取り入れるなど、誰もが働きやすい制度の構築や、女性リーダーの育成などの取り組みがあります。社員研修や交流会を行い社員の意識改革から行う必要があります。

SDGsにおけるジェンダー平等のための企業の取り組み事例

SDGsの実現に向け、ジェンダー平等の取り組みを行っている楽天株式会社とアクセンチュア株式会社の事例を紹介します。

楽天株式会社

社員のグローバル化が進んでいる楽天は、もともと女性社員の働きたい、活躍したいという意欲が高い企業でした。産休や育児休暇を取得した女性社員が早期で復帰しやすいよう社内に搾乳室を設け、2015年には本社内に託児所も開設されています。

キャリアセッションや産休前・復帰前セミナーの実施、休職中のニュースレター配信など、ライフイベントでキャリアが妨げられないよう手厚いサポートを行っています。子育てをしながら働く社員にとっては働きやすく、会社へのエンゲージメントも高まることでしょう。

アクセンチュア株式会社

アクセンチュアは、どんなバックグラウンドでも活躍できるという前提のもと、当初は女性管理職が少なかった日本法人においてジェンダーの平等に向けた取り組みを行ってきました。具体的には育児制度の改定や国際女性デーイベントの開催などがあげられ、女性社員の満足度や意欲の向上につながっています。

教育研修や啓蒙活動にも力を入れつつ、各自の成長に合わせた昇進の機会を与えることで、取締役会では36%、グローバル経営委員会では27.5%を女性が占めるまでに至りました。2025年には男女比が50%ずつになることを目標とし、ワーキング・ペアレンツの支援や在宅勤務、時短勤務の制度充実にも力を入れています。

企業が女性活躍推進の取り組みを行うときのポイント

実際に女性が活躍できる企業にするためにはどうすればいいのか、取り組みを行う際のポイントを2点解説します。

社員の意見を取り入れる

企業側として見えている課題に対し、制度だけを整えたとしても、対象となる社員の実情に合っていなければうまく機能しません。
ライフステージによっても抱える悩みは異なります。真に女性が活躍する企業になるためには、ズレが生じないよう社員の生の意見も取り入れることが大事です。

長期的な視点で改善を行う

施策をスムーズに実行し、継続して運用していくためには、積極的に社内で浸透させていくことも大切です。ただし、新しい施策が定着するまでは時間がかかります。女性が働きやすく、活躍できることが当たり前というように、社員の意識や企業の風土自体が変わっていかなければなりません。
そのためには男性社員や管理職も含めた制度設計や、体制を組み、長期的な視点で計画を立て、社員の納得感を得られるように変化に柔軟に対応していくことが求められます。

まとめ

SDGsの目標5に掲げられているように、ジェンダーの平等は日本も含めて世界が抱える問題の1つです。男女の不平等が是正され女性の活躍が促進されれば、優秀な人材を確保しながら多様な視点も得られます。

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