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  • 対象: 人事・教育担当者
  • テーマ: 働き方
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ワークエンゲージメントとは?高めるための取り組みから、測定方法まで詳しく解説

ワークエンゲージメントとは?高めるための取り組みから、測定方法まで詳しく解説

ワークエンゲージメントとは、「従業員が仕事に対してポジティブな感情を持ち、充実している状態」を指します。企業がワークエンゲージメントの向上に取り組むことで、離職率の低下や生産性の向上などの効果が期待できます。

この記事ではワークエンゲージメントを高めるための方法、ワークエンゲージメントの現状を捉える測定方法などを解説していきます。企業の経営者、人事・人材育成部門、マネジャーの方は、ワークエンゲージメントについての理解を深め、施策検討の参考にしてみてください。

ワークエンゲージメントとは?

ワークエンゲージメントとは「従業員が仕事に対してポジティブな感情を持ち、充実している状態」のことです。オランダ・ユトレヒト大学のシャウフェリ教授らによって以下のように定義されています。

”ワークエンゲージメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。エンゲージメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である”

出典)ワーク・エンゲイジメントに注目した個人と組織の活性化
(http://www.jsomt.jp/journal/pdf/063040205.pdf)

また、ワークエンゲージメントは、労働者の仕事のパフォーマンスの向上に大きくかかわってくるため、近年大きな注目を集めています。
ワークエンゲージメントは、労働者の一時的な感情ではなく持続的で全般的な感情であるといわれています。

ワークエンゲージメントの3つの特徴

ワークエンゲージメントを構成する特徴として以下の3つが挙げられます。それぞれの特徴を解説します。

  • 活力(Vigor)
    活力は、仕事に対してのエネルギーが高く、心理的な回復力、そして仕事への努力、困難な課題にも積極的に解決に取り組める状態に寄与します。仕事から活力を得て生き生きしており、ストレスを感じることなく仕事を楽しめている状態です。
  • 熱意(Dedication)
    熱意とは、仕事にやりがいを感じており、積極的に取り組もうとすることで、新しい商品の開発やサービスなどを生み出したりすることができる状態です。常に仕事に対しての努力を継続することができ、新たな知識をインプットできるようになります。
  • 没頭(Absorption)
    没頭は、仕事に取り組んでいる際に幸福感や、時間が早く進むような感覚を得る状態のことを言います。没頭している状態では仕事の効率が上昇し、業務の品質や速度の向上、そして人為的なミスの削減にもつながります。

ワークエンゲージメントと関連する4つの概念

従業員のメンタル面の健康を示す指標は他にもあります。以下の4つの概念が従業員のワークエンゲージメントに密接に関わっているので、それぞれの特徴を解説します。

  • ワーカホリズム(ワーカホリック)
    ワーカホリズム(ワーカホリック)とは仕事の活動水準は高い状態を保っているものの、仕事に対して否定的な状態のことです。このワーカホリズムの状態にある人の多くは、「仕事を失うことに対する不安を回避するために仕事をしなければならない」という心理に陥っています。活動水準はプラスですが、仕事に対する(内発的な)動機付けでワークエンゲージメンとの相違点があります。
  • リラックス(職務満足感)
    リラックスとは仕事に対してポジティブな感覚が生まれている状態を指します。自分の行った仕事の評価結果から生じるポジティブな心理状態であるため、仕事に対しての内発的な感情は高い状態です。ただ、ワークエンゲージメントが仕事に取り組んでいる時の感情や認知を指すのに対し、リラックス(職務満足感)は仕事そのものに対する感情や認知を示す点が異なっています。
    そのためリラックス状態では仕事の満足感は高いものの、活動水準が低い場合も含む点においてワークエンゲージメントとは異なります。

  • バーンアウト
    バーンアウト(燃え尽き症候群)はワークエンゲージメントとは対極に位置している概念です。仕事や会社に対して不満や疲労感から、ネガティブな感情に陥り社会的活動を停止し、意欲を喪失してしまう状態を指します。バーンアウトに陥る要因としては、仕事に献身的に没頭したにもかかわらず、本人が期待した結果が得られなかった場合などが挙げられます。
  • ES(従業員満足度)
    ES(従業員満足度)とは、従業員が仕事内容や環境、働きがいや人間関係などの様々な点において満足しているかどうかを表している指標のことを言います。ESは従業員にアンケート調査を行うものであるため、ES向上の結果として組織力が上昇したとしても、事業の成果を創出する施策につながるとは限りません。

その点が、企業の業績向上にもつながるワークエンゲージメントとESの異なる点です。

ワークエンゲージメントが注目される背景

ワークエンゲージメントは、2019年9月に厚生労働省が発表した「令和元年版労働経済の分析」(「労働経済白書」)で特集されたことにより、大きな注目を集めました。なぜ特集されるほど、ワークエンゲージメントへの関心が高まっているのでしょうか。
ワークエンゲージメントが重視される背景には、「労働人口の減少と人材の流動化」が大きな要因として挙げられます。副業の解禁や転職市場の活性化、テレワークの導入等による働き方の多様化等から、企業が労働者との継続的な関係を維持しにくくなってきています。

また、労働人口の減少も進んでいるため、優秀な人材を確保し定着化させるために、ワークエンゲージメントを高めることは必須です。その他にも「健康経営」「働き方改革」「組織力強化」といった視点から注目を浴びています。
一方、厳密にいえば「ワークエンゲージメント」と「組織へのエンゲージメント」は異なる概念です。ワークエンゲージメントは自分の仕事そのものへのポジティブな状態を指し、組織へのエンゲージメントは、組織への忠誠心や愛社精神に近い意味合いがあります。この二つの概念は無関係ではなく、「自分が仕事に夢中になれる(ワークエンゲージメントを高い状態)環境を与えてくれる組織に対して、エンゲージメントが向上する」「組織へのエンゲージメントが高く貢献意欲があるからこそ、自らの仕事に集中して取り組める(ワークエンゲージメントが高い状態)」といった相乗効果が考えられます。

ワークエンゲージメントの向上が企業に与える影響

ワークエンゲージメントが企業にどのような影響を与えるのか、業績にどのような影響があるのかについて具体的に解説します。

離職率の低下

ワークエンゲージメントを高めることで、従業員の離職の意思が低下します。厚生労働省が発行した『労働経済の分析(令和元年版)』において、新入社員の入社3年後の定着率や従業員の離職率は、ワークエンゲージメントスコアと相関関係があることが明らかになっています。そのためワークエンゲージメント向上に取り組むことで、結果として社員が辞めにくくなる分、採用に関してのコストを抑えることができ、中長期的な人材育成施策が実現しやすくなります。

生産性の向上

厚生労働省が発行した『労働経済の分析(令和元年版)』では、「生産性が向上した」と実感している従業員ほど、ワークエンゲージメントスコアが高いことが明らかになっています。
ワークエンゲージメントが高まることで、従業員の仕事に関する学習意欲が高まるため、「最新の技術を取得する」「業務に関連するセミナーに行く」など、目的意識をもった具体的な行動を行うようになります。

そうして学習した知識や経験はより質の高い業務につながり、役割行動やそれ以外の業務にも前向きに取り込むことが判明しています。

コミットメントの向上

ワークエンゲージメントが高まることで、業務だけでなく、同僚や会社組織全体に対してもポジティブな感情が生まれます。ポジティブな感情が生まれることで、従業員同士のコミュニケーションや会社組織への貢献度が向上し、職務への満足度も向上することがわかっています。

CS(顧客満足度)の向上

ワークエンゲージメントの高い姿は、顧客に信頼や安心感を与えます。たとえば営業の場合、自社の製品に対して自信を持ち、やりがいを感じながら働く従業員とネガティブな感情を持って働く従業員では顧客に与える印象も違います。

このようにワークエンゲージメントの高い従業員は、間接的に顧客満足度を高めます。また、商品の開発に関してもワークエンゲージメントが高い従業員のほうが良質な商品が生まれやすいといわれています。

メンタルヘルスの向上

ワークエンゲージメントが高い従業員は、業務に置ける苦痛が少なく私生活でもストレスを感じにくいことがわかっています。そのため、ワークエンゲージメントの向上は、睡眠の質や疲労感など従業員の健康状態の改善にもつながります。近年、従業員のメンタルヘルスチェックを行うことで、メンタルヘルスの問題の早期発見に取り組んでいる企業も増えていますが、ワークエンゲージメント向上施策も合わせて取り組むことで、相乗効果を得ることができるでしょう。

ワークエンゲージメント向上に必要な2つの要素

ワークエンゲージメントを高めるためには、どのような点に注力すればよいのでしょうか。「個人の資源」と「仕事の資源」、2つの充実について解説します。

個人の資源

個人の資源とは、心理的なストレスを軽減しモチベーションをアップするための、働く人個人がもつ内的要因を示します。具体的な例を示すと、「自己効力感」「自尊心」「ポジティブ思考」などが個人の資源に当たります。 個人の資源を充実させるためには、従業員が仕事を「やらされている」のではなく「自らやっている」と主体的に捉え直し、やりがいが持てるよう促すことが重要になります。

具体的には、従業員の「仕事の内容や方法」「人間関係」「仕事の捉え方」を変えていくために、マネジャーから部下への仕事の権限移譲を促す、社内公募制を導入し従業員の希望に合ったアサインを行う、やりたい仕事に就くために必要な知識やスキルを学ぶ場を用意する、「ジョブ・クラフティング」の概念について学ぶこと等が挙げられます。

特に重要な「自己効力感」とは?

個人の資源のなかでも特に重要なのが「自己効力感」です。自己効力感とは乗り越えなければならない問題が起こったときに自分なら乗り越えられる、と認識できることです。自己効力感が高い状態だと、「自分ならこの仕事を成し遂げることができる」と思えるため、前向きに取り組むことができます。また、自己効力感は個人の資源のなかでもワークエンゲージメントの高さと相関関係にあり、ワークエンゲージメントが高い人ほど自己効力感も高い状態にあることが分かっています。

仕事における自己効力感を高めていくには、小さくてもいいので成功体験を積むことや、タイムマネジメント能力、コミュニケーションスキルを磨くことが重要だといわれています。

仕事の資源

仕事の資源とは、仕事の効率化を測る、仕事を通じた成長実感を得られるようにするといったことを通じて、仕事へのモチベーションを高めることを指します。具体的には、上司のサポートや、仕事に対する裁量権の付与、適切なフィードバック、ミッションの多様性などが挙げられます。仕事の資源を高めるためには、個人ではなく組織・チームとして能力や経験を最大限に発揮して取り組む「チームビルディング」が重要になってきます。

仕事の資源はワークエンゲージメントと相関関係にあり、仕事の資源を高めていくことで、企業に対しての信頼や仕事への意欲が向上します。

「個人の資源」と「仕事の資源」のどちらも重要

ワークエンゲージメントを高めていくためには、「個人の資源」と「仕事の資源」のどちらも充実していることが重要です。

仕事の資源が充実することで個人の資源が充実する、といった好循環を生み出せるような環境作りに取り組みましょう。「個人の資源」と「仕事の資源」は密接に関係しています。

ワークエンゲージメントの尺度と測定方法とは?

ワークエンゲージメントを高める前提として、現状を正しく把握しておく必要があります。従業員のワークエンゲージメントを把握する方法は3つあり、それぞれ解説していきます。

UWES(Utrecht Work Engagement Scales)

UWESはワークエンゲージメントを測定する方法として利用されます。「活力」「没頭」「熱意」の3つの尺度を17個の質問形式で測定していきます。この方法はワークエンゲージメントの測定方法のなかでも、特に高い安定性から、もっとも利用される機会が多い方法です。

日本版UWES、短縮版UWES

UWESには日本版UWES、短縮版UWESがあり、本来は17個の質問をするところを日本人労働者に合わせた9個の質問をする簡易版となっています。UWESは、5段階で質問に答えていく方式となっており、手軽に取り組みやすいのも特徴です。

MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)

MBI-GSもワークエンゲージメントを測定するための方法ですが、ワークエンゲージメントと対概念のであるバーンアウトを測定し、バーンアウトに該当する数値が低ければ低いほどワークエンゲージメントが高い、という判断がなされます。MBI-GSは、以下に関する質問事項に対しての結果を元にバーンアウトかどうかを測定していく方法です。

・消耗感(疲労感) 5項目
・冷笑的態度(シニシズム) 5項目
・職務効力感 6項目

OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)

OLBIもMBI-GSと同様、直接ワークエンゲージメントを測定するのではなく、バーンアウトを測定する方法になります。OLBIの質問内容は「疲弊」と「離脱」というネガティブな項目に関して行われ、OLBIの測定結果が低いほどワークエンゲージメントが高いという評価になります。

国民性により異なるワークエンゲージメントの得点

ワークエンゲージメントは世界中で測定されていますが、実は国民性や文化によってかなり異なる特徴があります。そのなかでも日本人のワークエンゲージメントは、海外よりも低く出ることがわかっています。要因としては、日本人の「自己批判バイアス」は強い傾向があり、自分に対して海外よりも厳しく捉えがちだからです。

さらに、周囲との関係のなかで自己を定義する「相互協調的自己」を持つため、周囲に忖度して、自分を「ポジティブに働いている」と見せないようにする力も働いていると考えられています。企業がワークエンゲージメントを高めるための施策を検討するときには、以上のような国民性を考慮する必要があります。

まとめ

今回は企業業績にも密接に関わっているワークエンゲージメントについて解説していきました。ワークエンゲージメントを高めるためには、ポジティブ思考のような「個人の資源」と、組織の協力体制などの「仕事の資源」の2つが充実している必要があります。どちらの資源も密接に関係しているため、仕事の資源を充実させれば個人の資源も充実していくような好循環を期待できます。

以上のことから企業がワークエンゲージメントを高めるために、まずは、組織力を高めること、チームで協力耐性を整えていくことが重要です。

「チームワーキング研修」は人材開発の専門家 立教大学 中原淳教授・田中聡 助教と共同開発された「チームを効果的に動かす力」を習得する研修です。ワークエンゲージメントを高めチームで成果をあげるためにはおすすめです。

ワークエンゲージメントを高めたいと考えている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

JMAM HRM事業 編集部

文責:JMAM HRM事業 編集部
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