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- テーマ: 働き方
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ジョブ・クラフティングで社員のやる気を高める|実施のポイントを紹介
従業員が仕事にやりがいをもって働くことは組織にとって望ましい状況です。ジョブ・クラフティングとは、仕事への向き合い方や行動を主体的にすることで、仕事をやりがいあるものととらえることです。従業員に主体性を持たせるため、人材育成のひとつとして取り組む企業も増えています。
この記事では企業の人材育成に関わる方、経営者やマネジメント層、人事担当者に向けて、ジョブ・クラフティングの概要、期待できる成果、実施の手順、注意点などを解説します。人材育成の施策を検討する参考にしてください。
ジョブ・クラフティングとは何か?
まずは、ジョブ・クラフティングの定義について詳しく解説します。
ジョブ・クラフティングの定義
ジョブ・クラフティングは、従業員が仕事を主体的にとらえ直すことでやりがいを持てるように導くための手法です。与えられた作業を機械的にこなす受け身の労働では、仕事のモチベーションが下がり、成果につながらず、その結果会社の業績も落ちてしまう可能性があります。上司の指示や会社のルールで「やらされている」という感覚を取り除き、「自らやっている」という意識に変えることがポイントです。
経営学者ドラッカーの本で学ぶジョブ・クラフティングの本質
ジョブ・クラフティングの本質を説明する際は、ピーター・ドラッカーによる「3人の石工」の話が用いられることがあります。「3人の石工」の話の内容は次のとおりです。
ヨーロッパを旅行中に出会った3人の石工に対して「何をしているのですか」と尋ねました。1人目の石工は「親方の指示でレンガを積んでいる」、2人目の石工は「レンガで塀を作っている」、3人目の石工は「お祈りするための大聖堂を造っている」と答えたという話です。
1人目の石工は親方の命令に従っているだけに過ぎません。2人目の石工は技術者・職人の仕事ととらえています。3人目は仕事に対して、内的なやりがいを持ち、主体的に仕事に取り組んでいることが分かります。ジョブ・クラフティングの本質は、3人目の石工の意識を持つことを目指すことです。
ジョブ・クラフティングとジョブ・デザインは何が違うのか
ジョブ・クラフティングと似た言葉に、ジョブ・デザインがあります。ジョブ・デザインは経営者が従業員に対して、働きがいがある仕事を設計し、割り振ることです。ジョブ・デザインもジョブ・クラフティングもモチベーションに関する理論ですが、主体がどちらにあるのかという点で大きな違いがあります。
ジョブ・デザインは経営者が主体的に行動し、従業員を受け身の存在ととらえています。これに対して、ジョブ・クラフティングは従業員が主体的に行動することを促す理論です。そのため、似ているようで実際のところは相反する考え方だといえるでしょう。
人材育成としてジョブ・クラフティングが取り入れられる背景
ジョブ・クラフティングの考え方が取り入れられてきた背景には、主に次のような要因があります。
まず、トップダウン方式が薄れつつあることです。これまでの日本企業では上司から指示されたことをこなすことが成果へとつながっていました。しかし、働き方の多様化やユーザーの求める価値の変化などにより、単純に作業をこなせばよいという時代ではなくなりました。
次に、従業員の価値観が多様化したことです。単純な利益や作業効率を追求し歯車のように働く考えに否定的な人が増え、「やりがい」を求める人が増えています。主体的なモチベーションがなければ、生産性の向上にはつながらなくなったのです。
また、イノベーションやアイデアの創発には、「個人の情熱や目的意識に火をつける必要性がある」という意見が米国を中心に意識されるようになっていることも関係しています。
ジョブ・クラフティングの目的は3次元で仕事を見つめなおすこと
ジョブ・クラフティングはエイミー・レズネスキーとジェーン・E・ダットンが提唱した理論です。この2人によると、ジョブ・クラフティングの目的は、3次元での仕事の見直しや修正とされています。
業務に対する取り組み方を変える
ジョブ・クラフティングでは、業務に対する取り組み方を大きく変える必要があります。日常業務を主体的に創意工夫するようにすることが大切です。
たとえば、自主的に資格取得を目指す、上司や先輩にアドバイスを求める、人事担当者であれば、業務改善のための新制度導入を検討する、など具体的な方法を考える必要があります。
人間関係への意識とアプローチを変える
人と関わらずに仕事をすすめることはできません。社会的な交流や人間関係のあり方の変化も、仕事のやりがいにつながります。
受け身の姿勢では、他者を「効率的に仕事をこなすための道具」として見てしまう可能性があります。考え方を主体的に変え、顧客や同僚と新しい人間関係を築いたりコミュニケーションを増やしたりすることによって、たとえば自分が、「ユーザーにご満足いただきたい」というような気持ちをもっていたなど、仕事への姿勢に気がつくことがあります。また、豊かな人間関係は、新しい刺激も与えてくれるでしょう。
それに伴いチームワークを重視するようにもなり、大きな成果につなげることも期待できます。
仕事の意義を再定義する
ジョブ・クラフティングの考えをもつことで、自分が「仕事をするうえでの喜びは何か」など自分自身を見つめ直し、仕事の意義を再定義できます。具体的には、「人の役に立ちたい」「新しい商品を開発して世の中に出したい」など、利益のためだけでなく真のモチベーションに気づくことができるでしょう。
たとえば、料理人なら美味しい料理を提供するという目的だけでなく、お客さまにとって心地の良い空間も提供したいなど、新たなアイデアを生み出すことなどがあてはまります。
ジョブ・クラフティングに個人が取り組む際のステップ
ジョブ・クラフティングでは「やりがい」を見つけることが大切です。しかし、そのためには適切なステップを踏むことが欠かせません。ここでは、個人がジョブ・クラフティングに取り組む際のステップについて解説します。
1.現状業務の把握と自己分析
業務内容をリストアップし分類します。自分の業務内容だけではなく、会社全体の業務の流れ、どのような人と関わっているかも洗い出し、「自分が仕事で何を実現したいのか」など主体的な動機を考えます。
2.多角的な視点で能力や強みを分析する
経営層や上司、部下、顧客など様々な視点から自分の強みや能力を分析します。具体的には、コミュニケーション能力やリーダーシップ、プログラミングスキルや語学力などが考えられます。また、分析した結果を書き出して再確認できるようにしておきます。
3.仕事に対する具体的なアプローチを検討する
主体的な動機と自分の能力で実現できる、業務改善を具体的に検討します。たとえば、人材育成制度の改訂や時間管理のためのツールの導入などです。どんな小さなことでも構いません。自分なりに創意工夫してみるということが重要です。
4.他者との関わりでさらなる成長を目指す
ジョブ・クラフティングを自己満足で終えないためには、他者との関わりを見直すことが大切です。同僚・上司・顧客などの反応や意見を聞いてみましょう。改善点があれば1からやり直し、サイクルを回していきます。さらに大きな目標を達成するためには、他者と協力することが不可欠です。ジョブ・クラフティングの目的のひとつ、「周りの人への意識とアプローチを変える」ことにも取り組みましょう。
ジョブ・クラフティングを企業が推進することによって期待できる効果
ここでは企業がジョブ・クラフティングを推進することによって期待できる効果について解説します。
従業員が能動的に仕事に取り組むようになる
ジョブ・クラフティングによって、受け身の姿勢だった従業員が能動的な姿勢に変わる効果が期待できます。また、当事者意識が生まれることで顧客に対する責任感や業務に対するプロフェッショナル意識を高めることも可能です。
創造的なアイデアが生まれやすくなる
ジョブ・クラフティングにより、これまでルーティンだった自分自身の業務をとらえ直し、創造的なアイデアが生まれやすくなるのもメリットのひとつです。また、発想の転換によって、業務効率化や新製品の開発など好ましい影響も期待できるでしょう。
自然発生的な「適材適所」「リーダー育成」を促す
自然発生的に適材適所が進むことや、望ましいリーダーが育成されることも期待できます。仕事に対して主体的な考えを持つことで、自分自身の強みや担うべき役割を自覚し、自分が達成するべき目的や役割は何かという理解を深めることができます。
従業員満足度が高まる
ジョブ・クラフティングによって従業員満足度が高まります。やりがいが生まれたことによる影響はもちろんのこと、経営目標の達成やプロジェクトの完了など、会社の業務への参画意識が高まるためです。自分の仕事の価値がわかることで、より大きな達成感が感じられるでしょう。
また、従業員満足度が高まることで、体外的な企業の魅力も高まり、採用活動がしやすくなる、離職率が低下するなど、2次的な効果も期待できます。
ジョブ・クラフティングを企業が実施する際の注意点
ジョブ・クラフティングを企業が実践して効果を出すために注意したい点について解説します。
主体性を発揮できる余地を残す
ジョブ・クラフティングを企業が実施する際には、従業員が主体性を発揮できる余地を残すことが重要です。たとえば、上司が「仕事のやりがいをみつけなさい」「業務を改善しなさい」という押しつけをすると主体性の発揮が難しくなります。また、従業員が思いついて提案したアイデアや工夫をすぐに否定するとモチベーションを下げてしまうため注意しましょう。
あくまでも自主性を尊重する姿勢が大切です。
仕事の属人化へつながってしまう
ジョブ・クラフティングで注意したいのは、仕事が属人化する可能性があることです。属人化とは、その仕事が「その人にしかできない状態」になることを表します。この状態になると、個人の成長にはなっても、組織としては望ましい状況とはいえません。
また、ジョブ・クラフティングの途中段階で自分の考えを押し通そうとし、周囲の人への気配りが損なわれることが考えられます。従業員が間違った方向に向かうことを防ぐためにも、フィードバックする機会を設ける、方向性を修正する上司がいるということも必要です。
チームワークが重要な業務従事者には適用しにくい面も
ジョブ・クラフティングでは個人が主体的に行動することを求められます。この主体性を保とうとする結果、個性や多様性が発揮されすぎて全体に影響が出ることがあります。したがって、チームワークが重要な業務従事者には、ジョブ・クラフティングを適用しにくい面もあるでしょう。ただし、チームメンバーそれぞれの内面に火をつけるという意味では有効です。
社員それぞれが業務を見つめ直す場を与える
ジョブ・クラフティングを企業が実施する際は、社員それぞれが業務を見つめ直す場を与えることが大切です。具体的には、人事部がジョブ・クラフティングを身につける研修やワークショップを実施することなどが挙げられます。それにより、同じ職位同士で考え方や悩み、工夫などを共有することで業務を見つめ直し、深く考えるための気づきを得やすくなるでしょう。
まとめ
ジョブ・クラフティングは社員の自主性を高め、生産性の向上に繋がります。しかし、導入するためには注意点もあり、マイナスの影響が出ないよう配慮しなければいけません。
株式会社日本能率協会マネジメントセンターの人材育成支援では新入社員から経営幹部まで、立場や役割、時々の経営環境に合わせた教育プログラムを展開しています。
ジョブ・クラフティング推進のための情報について、専門家や実務家の意見を取材しておりますので、情報収集にぜひご活用ください。
関連サイト 特集2│OPINION2 自発性や主体性を高める 「個人」だけでなく「組織」も成長するための ジョブ・クラフティングの在り方とは/Learning Design Members
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