用語解説


経験学習とは?経験学習モデルや経験学習のための具体的手法などについて解説

対象:人事・教育担当者向け テーマ:研修 :2021-08-16

経験学習は、人が業務を通じてさらなる成長をとげ、次の業務に経験を活かすために必要なものです。経験を糧に成長し、次の業務につなげるためには、正しい経験学習がなされる必要があります。ここでは、企業の人材育成に関わる人に向けて、経験学習の基本から実践について詳しく解説します。経験学習をビジネスの場に活かしたい人は、参考にしてください。

経験学習の意味とは

経験学習とは、経験を通じて学んだ内容を、次の経験に活かすプロセスを指します。研修における座学も重要ですが、ビジネスで役立つ能力を得るには、現場での経験を積むよりほかないでしょう。貴重な経験を無駄にせず確実に成長の糧とするため、ビジネスの場において経験学習は重視されます。

経験学習を取り入れるメリット

経験学習のメリットは「気づき」の習得です。忙しく業務に打ち込んでいると、手を止めて考えている余裕はないかもしれません。しかし、あえて経験学習を取り入れると、成長に必要な気づきを得られます。

経験学習は、新入社員からリーダー・管理職まで、幅広い年齢の人に有益です。また、どのようなタイミングからでも学習を始めてよいでしょう。

経験は最も豊かな学びの資源

経験学習モデルとは

経験学習モデルについて、成り立ちと、具体的な学習のステップについて解説します。

デービッド・コルブが提唱している

経験学習は、経験主義者による研究をもとに、デービッド・コルブにより提案されました。コルブは、「具体的経験」「内省的反省」「概念化・抽象化」「能動的実験」の4つのステップからなるサイクルを繰り返し、経験学習が行われると提唱しています。
国内では、神戸大学大学院経営学研究科教授・松尾 睦氏の『「経験学習」入門』が有名です。
以降で、4つのステップの詳細を解説します。

図1 経験学習サイクル 図2 経験から学ぶ力の3要素

具体的経験

「具体的経験」では、本人が初めて関わる分野や業務内容について、自ら考えて行動をします。
マニュアルや上司から言われたとおりのまま行動すると、経験学習の成果は得られません。初めての経験であるため、蓄えた知識や経験を活かせないケースもあるでしょう。しかし、自分自身の考えについて反省するよいきっかけとなります。

内省的反省

「内省的反省」では、結果について熟考します。あらゆる方向から熟考すると、多くの理由がみつかるはずです。
本人が振り返りたくない失敗をした場合でも、内省的反省は必要です。失敗を放置すると、同じようなミスを今後も繰り返しかねません。また、成功した場合は手放しに喜ばず、次もよい結果を得られるように成功要因を考えます。

概念化・抽象化

「概念化・抽象化」では、1つの経験で得られた気づきを、ほかの場面にも展開できるよう考え、教訓を引き出します。
本人以外にも展開できるレベルまで概念化・抽象化できると、組織全体の力が向上します。こうすることにより、1つの経験を多数の事例に活かすことができるようになります。

能動的実験

「概念化・抽象化」された気づきは、まだ仮説の状態です。ほかの業務に応用し、効果を試してみると、改善点が浮き彫りになります。
過去の経験や慣習にとらわれていると、新しい手法の採用がためらわれるかもしれません。しかし、ビジネスの場ではスピードが求められます。躊躇せず素早く行動に移してみることも大切です。

経験学習を社内に取り入れるポイント

経験学習を社内に取り入れるポイントを紹介します。

積極的に経験させる

行動せずとも結果が簡単にわかるような、建前的な経験学習は意味がありません。自分で考えた末の行動にこそ、意味があります。

経験学習を取り入れるためには、自分で考え、行動することが必要となります。マニュアルにより、すべて業務が成立するような仕事は経験学習には向きません。ある程度、社員が自由に動ける業務のほうが、経験学習を活かせるでしょう。

コミュニケーションを活性化させる

1人で考えていても、視野の狭さに気がつかない可能性があります。
内省的反省や、概念・抽象化を実施する際は、多方面からの考察が求められます。客観的な分析を行うには、周囲の人との対話が必要です。積極的にコミュニケーションをとることにより、新たな気づきを得られる可能性があります。

内省を促す

内省の方法がわからない人に対しては、次にどうすべきか、何が原因でこのような結果になったのかなど、内省を進めやすくする問いかけをしましょう。

内省のサポートにはテクニックが必要です。まず、相手の考えを頭ごなしに否定せず、受け止めてください。本人の思考が及ばない点があれば、それとなく視野を広げる問いかけを行いましょう。

経験を活かせているのかどうかを確認していく

気づきを概念・抽象化できたあとは、導かれた気づきを次の業務に活かすよう促します。状況に応じて、フィードバックも実施しましょう。至らない点を指摘するだけではなく、認める・褒める内容のフィードバックも大切です。

適切なフィードバックを行うと、上司や先輩と部下の間に信頼関係が生まれ、経験学習の浸透に役立つ職場環境を構築できます。

経験学習モデルを行うときに気をつけること

経験学習を成功に導くには、周囲のサポートが欠かせません。サポート時に気をつけるべき内容を紹介します。

意見を押し付けない

話を聞く側が一方的に意見を押しつけると、自分で考えることをやめてしまい、本人自身による内省が不十分になってしまいます。
突飛な意見であってもすぐに否定せず、なぜそのような考えに至ったのか確認してみましょう。経験学習は、自分で考え行動できる人間になるために、自分自身で「気づく」ことが大切です。

振り返る時間を設ける

忙しい職場では次から次へと仕事が舞い込み、落ち着いて経験を振り返り、次に活かすことが難しいかもしれません。振り返る時間を設けるには、周囲の配慮が必要です。経験を増やすためにと、業務を次から次へとまかせるだけではなく、振り返るための時間も設けるようにしてください。

本人まかせにしない

意見を押しつける、答えを教えるという行為は、経験学習では避けたほうがよいでしょう。ただし、本人まかせにしておくことが経験学習ではありません。初めての経験から生み出された結果・思考プロセス・能動的実験の結果をチェックし、経験学習が正しく進行しているか見極めてください。

経験学習モデルを取り入れるための具体的施策

経験学習モデルは、業務や人事異動、研修・セミナーなどを通じて実施します。具体的施策を紹介します。

OJTの実施

OJT(On the Job Training)は、部下と先輩がセットで業務にあたる、実際の業務を通じた教育方法です。
OJTで経験学習を取り入れるには、指導する側の「サポート」と「忍耐」が問われます。業務をスムーズに進行したいがために答えを教えてしまうと、考える過程が失われてしまいます。時間がかかっても、部下自身が考えるよう辛抱強くサポートしましょう。

定期的な1on1ミーティング

「1on1ミーティング」とは、上司と部下2人のみで行うミーティングで、人材育成の手段として広く用いられる手法です。
部下の興味関心・やりたい仕事を聞きだしたうえで、経験学習の評価やフィードバックを行いましょう。集団ミーティングでは聞き取りにくい、キャリアプランについて話しあえる場にもなります。

人事ローテーション

企業によっては、新入社員を特定の部署に配属する前に、人事ローテーションにより様々な部署を経験させるところがあります。また、新入社員に限らず、社内公募などで他部署の業務を経験させる機会を設けている企業もありますが、これは経験学習において有効です。
多種多様の部署を経験できるため、経験学習のチャンスが増えるでしょう。あらゆる業務を経験することにより、共通の部分や、他部署での経験が活かせるものを発見でき、抽象化の力がつくと期待できます。

経験学習ワークショップの開催

現場経験と集合研修を組み合わせたような、集団で取り組むワークショップも、経験学習に効果的です。参加者は、多くのフィードバックをもとに多角的に考えられるようになるでしょう。経験学習に役立つ知識も習得可能です。

【参考】管理職の能力向上に有効な経験とは?

■管理職の経験学習調査(日本能率協会マネジメントセンター実施)

日本の大企業の管理職514名を対象に行った調査により、管理職の能力向上に有効な経験があきらかになっています。一部抜粋してご紹介します。

管理職の基本的な能力を向上させるには、「最終意思決定を下す経験」が重要であるとわかりました。責任あるポジションに就かせるだけでは、本人の能力向上のために有益とは言えません。また、より学びを深めるには、「フィードバックを傾聴し、内容を吟味して活用する姿勢」が求められます。

方針決定にかかわる能力を向上させるには、「権限のない立場でのリード経験」や、頻繁に状況が変わる過酷な環境での経験が必要です。また「仕事関係の相手からのアドバイス」は、よりよい選択をもたらします。

その他の能力向上に寄与する経験や周囲のサポートについても解説していますので、ご興味のある方は図下の参考記事をご覧ください。

図2 「管理職の能力」に「仕事経験」が及ぼす影響:重回帰分析の結果

経験学習力の向上プログラムについて

日本能率協会マネジメントセンターでは、経験学習力を向上させ、成長の土台を養うための経験学習研修をご提供しています。
ビジネスリーダー、若手社員それぞれに求められる経験学習について、日本能率協会マネジメントセンターの研修にふれつつ解説します。

ビジネスリーダーに求められる経験学習

現代は、ビジネスの状況が企業内外を問わず目まぐるしく変化しています。そのため、リーダーは多くの情報を取捨選択し、判断を下さねばなりません。過酷な環境で成長を続けるには、経験学習が土台になります。

経験学習を通じ「成長に役立つ仕事経験」「学びの質を高めるための姿勢」「周囲との関係の築き方」を研修で学ぶことができます。

●リーダーの経験学習力コース(研修)
リーダーとして成長していくらめに必要な「経験学習力」を向上させる方法を複 数の切り口から学びます。
コースの対象者は職場のリーダー層、管理職全般で、リーダー自身が経験学習を通じて成長することができます。
また、日本企業の同職位の リーダーたちと比べて、自分がどのくらい蓄積できているかを「良質経験の蓄積度診断」で把握し、今後積極的に獲得していくべき経験を把握 することができます。

日本能率協会マネジメントセンターのリーダーの経験学習力コース

株式会社日本能率協会マネジメントセンターは、「リーダーの経験学習力コース」を提供しています。コースの対象者は職場のリーダー層、管理職全般で、リーダー自身が経験学習を通じて成長することができます。

若手社員に求められる経験学習

経験学習調査では、異動経験をしている人材は育成能力が高まる結果がでています。
リーダーや管理職としての能力を育むには、若年時から異動経験を積ませ、環境変化への耐性を作ること、フィードバックを活用する姿勢を養うことが大切です。

自身の経験から学ぶ力を養ううえで欠かせない「挑戦志向」「素直さ」「学習志向性」を高めるためのポイントを研修で学ぶことができます。

●成長スピードを加速する 経験学習コース(研修)
コースの対象者は入社2~5年目の社員で、豊富な演習を通して、研修翌日からすぐに職場で実践できるポイントを習得できます。また「個人成長力」を診断し、個人成長力の各特性を見ていくことで、自己理解を深めます。

まとめ

経験学習を効果的に行うには、経験者自身の思考と内省が重要です。サポートする上司や先輩は、よい気づきを得られるようにサポートしましょう。意見の押し付けを避け、経験を振り返る時間を設けてください。

株式会社日本能率協会マネジメントセンターでは、新入社員から経営幹部まで、立場や役割に応じた教育プログラムを展開しています。
また、その時々の経営環境に即し、SDGsや働き方改革など幅広いテーマにも対応しています。

管理職の経験学習調査については、まず無料の資料請求をお試しください。

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