コラム
  • 対象: 新人/若手
  • テーマ: 研修/教育
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OJT担当の役割とは?担当者育成のポイントや上司の心構えまで解説

OJT担当の役割とは?担当者育成のポイントや上司の心構えまで解説

OJTを有意義なものにするには、どのような点に気をつけるとよいのでしょうか。ここでは、企業の人材育成にかかわる人に向けて、OJT担当の役割やOJT研修の必要性、組織でOJTを推進する重要性について解説します。

多くの企業で実施されているOJTとは?

OJTは実践型の指導方式で、新入社員教育に用いられる方法です。指導する側は、OJT担当またはトレーナーと呼ばれ、新入社員の配属部門から選ばれることが一般的です。ただし、OJT担当は、業務遂行能力の高さだけを基準にして選んではなりません。指導への適性と業務遂行能力は別物であるためです。
また、有意義なOJTにするには、個々のOJT担当だけに指導を任せず、指導の仕組みを組織内で標準化したうえで、実施する必要があります。

OJTのメリット

OJTは、集合研修と併せて実施することで、相乗効果を得られることが大きなメリットです。集合研修で実務の目的や重要性を学んだうえで、集合研修では教えきれない実践的な内容を、OJT担当と1対1で向き合い、習得します。このように、研修とOJTを組み合わせた教育スタイルが主流です。
さらに、教える側であるOJT担当にとっても、指導スキルが上達する、業務を再確認できるというメリットがあります。

OJT担当に求められる役割

OJT担当の役割は、これから社会に出る新入社員に向けて、ビジネスにおける心構えやスキルを教えることです。役割を3つの観点から解説します。

責任感を芽生えさせる

新入社員には、約束を守ること、誠実に対応することの大切さを伝える必要があります。納期や仕様などの約束事が守れなければ、社会人としての信用を失い、企業の看板にも傷をつける可能性があります。約束を誠実に守り続けることで周囲から信用を得られて、重要な仕事を任せられるようになると伝えてください。

やる気を高める

仕事へのモチベーションアップも、OJT担当の役割です。入社後すぐに、自分の働く目的を具体的にイメージできる新入社員は、そう多くはないでしょう。仕事を通してどのように社会に貢献できるか、自身が成長できるかを理解させて、やる気を高めてください。

また、指導の際は感情的にならないようにしましょう。きつい言葉で叱ると、やる気を損なう可能性があります。言葉を選び、冷静に指導するよう努めてください。

仕事上必要なコミュニケーションを教える

適切なコミュニケーションを教えることも大切です。一人で仕事をするのではなく、社内外の多くの人とやり取りをしながら、課題を解決しなければなりません。もちろん、社内だけではなく、得意先とのコミュニケーションも求められます。

はじめに「報告」「連絡」「相談」の重要性と、3つの違いを明確にしましょう。そして、わからないことがあれば、自ら聞くように伝えます。また、ビジネスマナーや敬語を正しく使うための指導も必要です。

基本的なOJTの方法

基本的なOJTの方法を、4つの段階ごとに解説します。

①OJT担当が実務を見せる

集合研修で学習した内容と重複する可能性もありますが、あらためて新入社員に実務を見せます。

②OJT担当が実務の内容を説明する

説明の合間にメモや質問の時間を設けるなど、新入社員が理解しやすいように工夫しましょう。

③新入社員に実践させる

新入社員にとっては初めての経験であるため、失敗するかもしれません。側について適切に指導と助言をしながら、自身で実務をやりきる経験をさせましょう。ケガの恐れがある、取引先に迷惑をかけるといった場合は、事前に止めましょう。

④新入社員に実務の改善点をフィードバックする

フィードバックをするとともに、実践後の方がわかりやすい点については、追加して説明をします。

以上の4つの段階の繰り返しにより、OJTは進行します。スケジュールと評価基準に従って続けましょう。

OJT担当に必要なスキル

OJT担当のスキルは、OJTの成果に影響を及ぼします。OJTをスムーズに実施するためにも、必要なスキルを確認しましょう。

コミュニケーションスキル

実務を見せるところからフィードバックに至るまで、OJTには、コミュニケーションスキルが欠かせません。話術だけではなく、新入社員の表情などを観察し、理解度を推測するスキルも必要です。

教える際のコツは、「はい・いいえ」では答えられない質問を挟むことです。意図的に会話を促して、教える側からの一方的なOJTになるのを防ぎます。また、積極的に考えさせることで、新入社員の理解が進みます。さらに、会話を交わすこと自体が、教えることの土台となる信頼関係の構築に有効です。

叱るスキル

叱るスキルを身につけて、OJTを行いましょう。「叱る」と「怒る」は違います。感情的に怒ると、新入社員が嫌な気持ちになるだけではなく、OJTの達成基準を満たせない可能性があります。感情に流されずに、修正すべき点を冷静に指摘してください。また、褒めることも大切です。成果を認めると、新入社員のモチベーションも高まるでしょう。

フィードバックスキル

フィードバックは、新入社員が実践した直後に行うのが効果的です。一日の終わりに反省会を設けるのはおすすめできません。時間が経つにつれて記憶は薄れてしまうため、指摘すべき点はすぐに伝えましょう。
また、ネガティブな要素を立て続けに伝えると、新入社員は自信を失い、モチベーションが低下する可能性があります。褒めることと指摘を入り交ぜて伝え、フィードバックの効果を高めましょう。

OJT担当の「上司」の心構えは?

有意義なOJTになるかどうかは、OJT担当の上司の振る舞いにも左右されます。OJTをよりよいものにするための上司の心構えについて解説します。

OJTに対する上司の理解が得られないとどうなる?

OJTに対して上司の理解がない場合、OJT担当は苦戦を強いられることになります。
上司をはじめとする周囲のサポートが無いなか、日ごろの業務をこなしながら指導も行うため、負担が増えるでしょう。OJTのために業務時間を削らざるを得ない事態に陥ると、パフォーマンスが低下し、精神的なストレスも溜まります。上司は担当がOJTを進めやすいように、職場環境を整えてください。

OJTの効果を高めるためには、上司の参画が重要

OJT担当者の上司は、OJTの内容を理解し、OJT担当に負担が集中しないように、業務を割り振りましょう。また、OJTの計画段階から携わると、上司の立場からみたOJTができます。数年後に到達してほしいレベルを具体的に盛り込めるため、OJT担当だけで計画した場合よりも、戦力に富んだ人材を育成できる可能性が高まります。
上司が自らOJTを行うのもよいでしょう。上司が積極的にかかわることで、職場全体にも新入社員を育てる気持ちが芽生えます。

OJTをより効果的に行うコツ

基本的なOJTの流れや上司の心構えについて、理解できたでしょうか。ここでは、OJTのコツを解説します。

1.教える内容を明確にする

OJT担当の全員が、同じ基準をもったうえで、育成にあたりましょう。内容が標準化されていないと、OJT終了後の新入社員のレベルにも差が生じます。内容によっては、OJTよりも座学が適している場合もあるため、実践を通じて学ばせたい内容を絞り込みましょう。絞り込んだ内容に関して、教える目的や詳細、教え方を掘り下げて整理します。

2.OJT担当を決め教育・研修を実施する

担当にOJTに対する共通認識をもたせて、一定の指導スキルを備えるために、OJT担当を対象とした教育と研修(OJTトレーナー研修)を実施します。OJT担当の認識やスキルが統一されていないと、教える内容や教え方を標準化したとしても、新入社員のレベルに差が生じます。

仕事の知識やスキルは万全でも、十分な指導技術が備わっているとは限りません。OJTに対する会社の期待を担当が理解するためにも、OJT研修は必要です。

3.OJTのスケジュールを決める

最終目標から逆算し、OJTのスケジュールを決めましょう。無計画にOJTを行うと、目標のレベルに到達するまでに時間がかかります。
新入社員の指導に、数年をかける企業もあれば、1年にまとめる企業もあります。一定レベルのスキルを備えた人材を早く育てたい場合は短期間でもよいかもしれませんが、高い業務スキルを求める場合は、教育期間を長く設定しましょう。

4.新入社員には、基礎知識をOJTの前に学習してもらう

事前に基礎知識をインプットさせることで、OJTの効率が上がります。インプットの後にアウトプットを行うため、効率的に知識の定着が進みます。事前学習は、一斉に座学を行なったり、事前学習資料を渡して予習させるといった方法があります。

また、新入社員に渡す学習資料は、専門が異なる他部署の人によるチェックを実施すると、専門用語など、わかりにくい部分を指摘してもらえる可能性があります。新入社員が無理なく理解できるレベルの資料作成を心がけてください。

5.評価基準にしたがってOJTを行う

複数のOJT担当がいる場合、それぞれの評価基準が異なると、教育レベルに差が生じます。OJT担当個人に判断を委ねるのではなく、あらかじめ評価基準を決めましょう。スケジュールにあわせた、段階的な評価基準が必要です。
評価基準を作る過程で、あらためて業務のあり方を確認できます。基本に立ち返って業務を振り返るため、OJT担当にとってもよい経験になるでしょう。

まとめ

多くの企業がOJTを取り入れていますが、OJTを有意義なものにするには、組織内で統一されたOJT計画が必要です。また、OJT担当には、業務スキル以外に指導力も求められます。OJT担当のレベルが一定でないと、OJT研修後の新入社員の知識やスキルに差が生じます。ぜひ、OJT担当を対象とした研修をご検討ください。

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