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テレワークとは?導入のメリット・デメリット、課題や解決策を解説

テレワークとは?導入のメリット・デメリット、課題や解決策を解説

テレワーク(在宅勤務)の課題を解決するためには、ICTツールを活用したり、社員の意識改革を促す社員教育などを実施する必要があります。この記事では、テレワークを導入する際の課題や問題点とともに、その解決策について解説します。テレワークの実施のために必要なツールや社内の動きについても解説するので、自社にテレワークを導入する際の参考としてお役立てください。

テレワークとは?

テレワークとは、ICT(情報通信技術:Information and Communication Technology)を活用し、場所や時間にとらわれずに柔軟に働くことです。この定義については、日本テレワーク協会のWebサイトを参考にしています。 テレワークは、政府が推進する働き方改革の取り組みのひとつとして導入されています。2020年には、新型コロナウイルス感染防止策の一環としてテレワークを導入する企業が増えました。

テレワークは「離れた場所」を意味する「tele」と、「働く」を意味する「work」を組み合わせて作られた造語です。働く場所によって、呼び方にはさらにさまざまな種類があります。詳しくは以下で解説します。

テレワークの種類

テレワークは、働く場所によって「自宅利用型テレワーク(在宅勤務)」「モバイルワーク」「サテライトオフィスワーク」の3つに分類されます。
テレワークの言い換えとしては、在宅勤務以外にも「リモートワーク」が有名です。また、「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)を組み合わせた「ワーケーション」をはじめ、新たな形態も登場しています。

●自宅利用型テレワーク(在宅勤務)

自宅にインターネット環境を用意し、ICTを活用して業務に取り組む働き方です。インターネット以外に、電話やFAXを利用して連絡を取る場合もあります。

●モバイルワーク

移動中や顧客先などオフィス以外の場所に外出しているときに、パソコンやスマートフォンなどを利用する働き方です。

●サテライトオフィスワーク

勤務先以外の場所に設けたサテライトオフィスに行き、ICTを活用して仕事をする働き方です。

【番外編】ワーケーション

ワーケーションとは、休暇で訪れた場所でICTを活用して仕事をする働き方です。そのほかにも、非日常に身をおき、出会いや体験から得た学びを仕事に生かす、地域貢献するといった取り組みも生まれています。「働く」を意味する「work」と、「休暇」を意味する「vacation」を組み合わせてできた造語です。ワーケーションは2000年頃にアメリカで生まれ、その後世界中に広まりました。日本では新型コロナウイルスの流行に伴い政府が推進し始めたため、注目されています。

【参考】テレワークとリモートワークに違いはあるか?

テレワークの言い換えとして、在宅勤務のほかに「リモートワーク」という表現があると上記で解説しました。リモートワークは、「遠隔地」を意味する「remote」と、「働く」を意味する「work」を組み合わせた言葉であり、テレワークとほとんど同じ意味で使用されています。テレワーク、リモートワーク、在宅勤務の表現は、個人事業主と正社員で使い分けるとする説もあります。しかし実際には、いずれも同じ意味で使われる場合が多いです。以下からは、テレワーク(在宅勤務)と表記していきます。

テレワーク導入のメリット

テレワーク(在宅勤務)について、さらに詳しく解説していきます。テレワーク(在宅勤務)には企業側と社員側の双方にとって、どのようなメリットがあるのでしょうか。

緊急時にも事業を継続させることができる

感染症の流行や自然災害発生時にも、社員がテレワーク(在宅勤務)を行っていれば、事業をそのまま継続させられます。通勤しなくて済むため、社員の安全も確保することが可能です。

優秀な人材を確保し、流出を防止する

テレワーク(在宅勤務)は、企業の人手不足の解消にも貢献します。なぜなら、従来よりも社員にとって柔軟な働き方を実現することで、人材の流出を防ぐことができるからです。結婚や出産、介護などにより社員のライフスタイルが変化しても、テレワーク(在宅勤務)を利用することで、働く時間や場所の選択肢が増え、長く働ける環境を確保しやすくなります。一度採用した社員に長く活躍してもらえれば、人手不足の解消や採用コストの削減につながります。

従業員の生産性や幸福度の向上につながる

テレワーク(在宅勤務)では通勤時間が必要ないため、その分、業務に集中する時間が増え、生産性の向上につながります。また、社員が家族と一緒に過ごす時間を増やすことも可能になるため、ワーク・ライフ・バランスも改善しやすくなると言えます。
テレワーク(在宅勤務)では従業員同士の交流が減り孤立感が高まることで幸福度を得にくいといった考えもありますが、工夫次第でより高い幸福度を感じてもらうことも可能でしょう。たとえば、コミュニケーションを取る機会を意識的に設けるなど、つながりを大切にすると効果的です。また、幸福度は誰と過ごすかによって大きく変化するため、家族と過ごす時間が増えれば高まりやすくなります。

ウェルビーイング(幸福度)の向上

ウェルビーイング(幸福度)とは、幸せの度合いを測る指標のことです。プライベート時間の充実、一緒に過ごす相手やコミュニケーションの取り方により、幸福度を向上させられる可能性があります。

様々な費用の削減につながる

テレワーク(在宅勤務)の導入は、大幅な費用の削減にもつながります。たとえば、社員が通勤しないため、交通費を支給する必要がなくなります。また、オフィスを縮小すれば、固定費や光熱費を減らすことも可能です。企業がテレワーク(在宅勤務)を導入する大きな理由として、費用の削減が挙げられるケースも多いです。

テレワーク導入の課題・問題点

テレワーク(在宅勤務)にはさまざまなメリットがありますが、一方で課題や問題点もあります。ここでは、企業側と社員側の双方にとってのテレワーク(在宅勤務)の課題や問題点について解説します。

人事評価をどのように行うか

テレワーク(在宅勤務)では1人ひとりの働く姿が見えなくなるため、従来の日本企業の評価制度にそぐわない部分もあります。そのため、テレワーク(在宅勤務)を始めてから、主に管理職が部下の働き方をどう評価すべきかわからず迷う場合も珍しくありません。部下も自分の働きぶりが正当に評価されていないのではないかと感じ、不安をもつ人も出てきます。テレワーク(在宅勤務)を導入する際は、すぐには難しい面がありますが、長期的な視野で人事評価を見直す、新たに制度を構築するといった対策を取る必要があります。

勤怠管理をどうするか

テレワーク(在宅勤務)では社員の働いている姿を企業側が直接確認できません。そのため、社員がどのように働いており、実際にどの程度の時間を仕事に費やしているか把握しにくい面があります。また、社員側も、テレワーク(在宅勤務)で常に業務に集中し続けるには困難が伴い、周囲のタイムリーなフォローも入りにくいため、アウトプットが順調に出るとは限りません。仕事が順調に進まなければ、企業側が把握していないところでサービス残業が生じる可能性もあります。

仕事のタスク管理をどうするか

特に、チームで一連の流れのなかで仕事をするには、社員同士が進捗状況を把握しあう必要があります。しかし、テレワーク(在宅勤務)ではお互いの様子がつかみにくいため、タスク管理を工夫しなければなりません。誰がどこまで仕事を進めているか把握しやすい環境を整えることが大切です。

コミュニケーションをどうとるか

テレワーク(在宅勤務)では、社員同士のコミュニケーションが不足しやすく、特にチーム仕事では、業務上でもすれ違いが生じる恐れがあるため、注意が必要です。

オフィスで働いていれば、仕事で問題が生じても周囲にアドバイスを求めることができます。 しかし、テレワーク(在宅勤務)では近くに同僚がいないため、1人で悩みを抱えてしまう人も珍しくありません。コミュニケーションが不足すると、チームとしての生産性が低下する可能性もあるのです。

情報セキュリティ管理や社内ネットワークへの接続をどうするか

テレワーク(在宅勤務)では重要な情報を社外で扱う機会が増えるため、セキュリティ対策にも力を入れる必要があります。まず、会社側は情報管理のガイドラインを作り、ウイルス対策ソフトを提供するなどの対応が必要です。自社が保有するデータへ社員の自宅から安全にアクセスする環境も整えなくてはなりません。また、社員側も情報の管理方法についての意識を高め、パソコンの紛失や情報漏洩に注意しなければなりません。

テレワークが出来ない仕事についてどうするか

重要機密を扱う仕事やエッセンシャルワークなど、職種や仕事内容によっては、テレワーク(在宅勤務)ができない場合もあります。自宅で働く社員とオフィスで働く社員の間で不公平感が生じないようにするには、自社の状況を踏まえた対策が必要です。また、電話応対やFAXの確認に加え、契約書や稟議書への押印についてもテレワーク(在宅勤務)では対応が難しいため、運用方法を検討しておく必要があります。

テレワークの課題・問題点解決のために必要なことは?

テレワーク(在宅勤務)の課題や問題点の多くは、ICTツールの活用や社内ルールの整備により解決できます。ICTツールを活用して在宅勤務をスムーズに行うには、企業側が社員に対して積極的な利用を促すことが大切です。具体的には、テレワーク(在宅勤務)のための新しいルールを策定し、社員に周知する必要があります。また、社員研修を実施し、ツールの使い方やテレワーク(在宅勤務)の注意点などを指導することも効果的です。

導入を検討すべきツールや社内で準備したいことについては、以下で詳しく解説します。

勤怠管理ツールの導入や、テレワークに沿った新たな人事評価制度や社内ルールを定める

クラウド型の勤怠管理システムを導入すれば、テレワーク(在宅勤務)の勤務時間の管理もスムーズに行えます。また、テレワーク(在宅勤務)にあわせて新しい評価制度や社内ルールを定めれば、人事評価の問題も徐々に十分クリアしていくことができるでしょう。ただし、そのためには同時に社員への周知を徹底し、理解を深め、意識改革を進めることが重要です。自宅では対応できない業務もあるため、オフィスで働き続ける社員に対する配慮やルール策定も忘れてはいけません。

会社全体の意識改革、カルチャー改革が必要になる

テレワーク(在宅勤務)を社内に定着させるには、周知や発信に力を入れ、テレワークマネジメント教育を行う必要があります。たとえば、最初に経営幹部の会議をオンラインへ切り替え、経営陣が率先して新しい社内ルールを実践すると効果的です。
社員を評価するためにツールを導入する場合は、社員も納得のいくかたちを取ることも大切です。たとえば、操作ログをチェックしたり成果物のみを判断材料としたりするのではなく、事前に上司・部下がよく話しあい、目標や評価項目を明確にしておくなど、なるべく客観的に評価できる体制が必要です。部下が目標に向け能動的に取り組めるよう、権限委譲についても検討すべきでしょう。

コミュニケーションやタスク管理に役立つツールを導入しWeb会議なども積極的に行う

テレワーク(在宅勤務)におけるコミュニケーション不足は、ツールの利用によっても解決できます。たとえば、チャットツールやWeb会議ツールを使えば、離れた場所にいる社員同士が積極的にコミュニケーションを取れるようになります。仕事の進捗状況はタスク管理ができるツールで確認できるようにしましょう。資料の同時編集ができるツールなら、離れている社員同士が同じチームとして一緒に働きやすくなります。

ツール利用に加えて、会議ルールや体制の変更など、様々な工夫も必要

テレワーク(在宅勤務)をスムーズに進めるには、さまざまなツールの活用が必要不可欠です。ただし、それだけでなく、自社の状況にあわせた工夫も取り入れることが大切です。たとえば、これまで実際に人が集まって行っていた会議を見直し、オンラインに適した体制へ変更する必要があります。
参加者全員が、オンライン会議をファシリテートできるようにするというのもひとつの方法です。また、社内での情報交換や連携については、上記で述べたとおりタスク管理ツール等、従来のメールや掲示板よりも適したものがあるので、そうしたWebツールへ少しずつ移行していくことも検討すべきでしょう。

情報セキュリティ管理、各種環境の整備とルール遵守の徹底を

情報セキュリティを強化するために特に重要なことは、ルールの遵守です。企業側がセキュリティを強化するだけでなく、それぞれの社員の意識を高める必要があります。研修やeラーニングによる教育や、勉強会を開催するなど、しっかりと指導しましょう。
また、テレワーク(在宅勤務)の導入にあたっては、社員の自宅のパソコンから社内のシステムへ安全にアクセスするための仕組み作りも必要です。VPNなどを活用し、あらかじめ環境の整備を進めておきましょう。

その他

電話転送アプリやインターネットFAXなども活用すれば、どこにいても顧客対応ができます。また、押印が必要ないワークフローツールを導入したり、ペーパーレス化を推進したりすれば、ほとんど出社しなくても業務を進められる体制を整えられます。ただし、ルールや仕組みを作るだけでなく、社員の意識改革にも力を入れることが大切です。
なお、コミュニケーションを促進するための長期施策として、対話、コーチング、1on1に関する支援・育成施策(オンライン研修など)にも取り組むと効果的です。

まとめ

テレワーク(在宅勤務)にはさまざまなメリットがありますが、導入にあたっては課題や問題点もあります。スムーズに業務を進めるためには、適切な対策を取り入れることが大切です。

株式会社日本能率協会マネジメントセンターでは、新入社員から経営幹部までを対象とし、立場や役割に応じた教育プログラムを展開しています。テレワーク時代のチームで業務効率をあげる仕事術では、テレワークにおけるコミュニケーションを通してチームの仕事を見直し、働き方改革を推進するための具体的なアプローチ方法を学びます。テレワークでの業務効率向上にむけてぜひご活用ください。

JMAM HRM事業 編集部

文責:JMAM HRM事業 編集部
人事・人材教育に関する情報はもちろん、すべてのビジネスパーソンに向けたお役立ちコラムを発信しています。

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