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  • 対象: 人事・教育担当者
  • テーマ: キャリア
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人事のキャリアパスについて、具体的な事例を交えわかりやすく解説!

人事のキャリアパスについて、具体的な事例を交えわかりやすく解説!

本記事では、人事のキャリアパスについて解説します。働き方が多様化するなかで、今後どのようにキャリアアップを図り、自身の成長につなげていくかお悩みの方も多いでしょう。キャリアパスの具体的な事例もご紹介していますのでぜひ参考にしてみてください。

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人事のキャリアパスとは

はじめに、キャリアパスの定義を確認したうえで、人事のキャリアパスについて解説していきます。

キャリアパスとは

キャリアパス(Career Path)は、キャリア(経歴)のパス(進路、通り道)と訳すことができ、職種を問わず、従業員が将来めざす職位や業務に到達するために必要となる道筋です。

企業は人材の育成の観点から、特定のポジションに昇格するために必要となる経験年数や資格などを標準モデルとして設定し、従業員が選択可能なキャリアパスとして提示します。

一方、従業員は将来なりたい自分を実現するために、どのようなキャリアを経て成長していけばよいかをキャリアパスにより描けます。

人事のキャリアパスとは

職種によってキャリアパスは大きく異なりますが、人事においては採用業務や給与・社会保険料の計算業務などの補助からスタートし、実務経験を積んだ後、人事制度や採用計画の立案・実施など、より責任の大きな業務を担当していくのが一般的です。

なお、これまでのわが国では、終身雇用を前提にひとつの企業に勤務するなかでキャリアパスを描くのが一般的でしたが、近年では働き方が多様化しているため、転職を通して複数の企業でのキャリアパスを描くケースも増えています。

人事の役割

ここでは、企業において人事が持つ具体的な役割を4つご紹介します。

人事戦略、人事制度の立案、運営

経営戦略の実現を人事面から支えるために人事戦略を立案し、企業の持つ経営資源としての「人材」の有効活用をめざします。

具体的には、評価制度や目標管理制度などの人事制度を立案・実行し、公正な評価・処遇のもとで従業員の業務に対するモチベーションを維持し、より労働生産性が高まるような仕組みを構築します。

人材の採用、配置

社内の各部門にヒアリングを行い、採用計画にしたがって自社に必要な人材を採用します。採用計画の作成にあたっては、採用時期・採用方法を定めるとともに、求める人物像を可能な限り具体化するのが重要といえるでしょう。

新卒採用、中途採用を問わず、人材の採用・配置後は適材適所の配置が行えているかを常に検証し、必要な場合には配置換えの検討も必要です。

人材の育成(教育・研修)

自社が人材に対して求める能力と、現状の従業員の能力との間にギャップがある場合には、教育・研修などの人材育成を行い、従業員の成長をうながすことでギャップの解消をめざします。

人材の育成には、社内・社外研修への参加、通信教育やeラーニングの受講などさまざまな方法がありますが、いずれの方法を採用する場合でも単発で終わることなく継続して実施することが重要です。

労務管理、勤怠管理

従業員が心の健康を保ちつつ安全な職場環境で日々の業務を進められるように、労務管理・勤怠管理を行います。現場の声に常に耳を傾けるとともに、現場に足を運び労働災害につながる危険がないか実際に目で見て確かめることも重要です。

また、残業や休日出勤の状況を把握して、時間外労働が多く発生している場合には、対象の従業員が所属する部門の責任者と連携し、労働時間の短縮のための施策を実施する必要があります。

人事のキャリアパスの具体的な事例

人事の主な役割をご紹介しましたので、ここからは人事のキャリアパスの具体的な事例を4つご紹介します。

人事部門の責任者をめざす

代表的な事例として、人事部門のスペシャリストをめざすキャリアパスが挙げられます。配属された当初は、採用、給与・社会保険料の計算、従業員の教育研修などの補助業務からスタートしますが、人事領域に関する幅広い知識を身に付け、経験を積んでいくなかで各業務の中心的なポジションで活躍できれば、将来的に人事部門の責任者も視野に入るでしょう。

なお、社会環境が急速に変化するなか、昨今、経営戦略と連動した人事=「戦略人事」の重要性が増しており、その実践者である新たな人事機能としてHRBP(Human Resource Business Partner)が注目されています。

HRBPは、人事や人材開発における事業部門の経営者や責任者のパートナーを意味します。従業員と組織のパフォーマンスを最大化して業績向上の実現を役割とするため、経営視点に立って企業を人事面から支える重要なポジションといえるでしょう。

管理部門の責任者をめざす

中小企業や立ち上げ間もないベンチャー企業では、少ない人員で管理部門の運営を行う必要があり、ひとりの担当者が人事業務のほかに総務、経理財務、法務など幅広い業務を兼務しているのも一般的です。バックオフィス業務に関する豊富な知識・経験を身に付ければ、ゼネラリストとして、管理部門の責任者をめざすのも可能です。

社会保険労務士として独立する

社会保険労務士は、労働社会保険、労務管理、助成金、年金などの専門知識を活かして企業内の重要なポジションで活躍できるとともに、人材に関する専門家として将来的に独立も可能です。国家資格として難易度は高いですが、資格取得に向けた学習が日々の人事・労務業務に直接役立ち、合格後は人事として選択可能なキャリアパスも大きく広がるでしょう。

コンサルタントとして独立する

人材採用、人材育成、人事制度の構築・運用、株式公開準備など、人事に関する特定の分野での専門知識・経験を身に付けることで、コンサルティング会社への転職やコンサルタントとして独立も可能です。

わが国では、少子高齢化による労働力不足が今後も続いていくと考えられており、人材の有効活用、労働生産性の向上が企業の課題となっています。このため、人材に関して豊富な知識・経験をもつコンサルタントの需要はますます高まっていくでしょう。

人事のキャリアアップの方法

人事としてキャリアアップしていくためには、業務を通して多くの人と接しながら地道に実務経験を積んでいくのが一般的ですが、よりスピード感をもってキャリアアップをめざせる方法がありますのでご紹介します。

資格取得

人事としてキャリアアップを考える場合には、業務に関連する資格取得をめざすのが有効です。

例えば、衛生管理者の資格があれば、労働者にとって安全な職場環境の構築をスムーズに進められるとともに、法律によって企業に設置が義務付けられている資格のため、転職するときにも有利に働くでしょう。

また、社会保険労務士やキャリアコンサルタントであれば、資格取得の過程で身に付けた専門知識を活かして企業内でより高いパフォーマンスを発揮でき、早い段階での昇進昇格、重要なポジションでの活躍が期待できます。

社外研修の受講

業務に必要な知識、キャリアアップをしたい分野の知識をピンポイントで学べる社外研修の受講もキャリアアップに役立ちます。近年では、人材を企業経営にとって重要な資本と考え、人的資本投資を積極的に行う企業が増えています。費用面・時間面で企業の支援を受けながら、自己のキャリアアップをめざせる環境が整ってきたといえるでしょう。

通信教育・eラーニングの受講

社外研修を受講する場合には、業務との兼ね合いで時間的な制約がありますが、通信教育・eラーニングは自分のスケジュールに合わせて受講できるメリットがあります。特に、eラーニングでは自分の理解度によって何度でも講義を繰り返して受講できるため、知識の定着が期待できます。

人事のキャリアパスに有利な資格

ここでは、資格取得のための学習が人事としての日常業務をスムーズに遂行するのに直接役立ち、また転職時にも有利となる資格を6つご紹介していきます。

社会保険労務士

社会保険労務士は、労働社会保険・労務管理など企業が保有する「人材」に関する専門家で、社会保険労務士法に基づく国家資格です。

労働社会保険は関係法令の改正も多く、常に最新の法令にしたがって適切に加入・申請手続きを行い、就業規則・従業員名簿・賃金台帳など企業が備えるべき書類の継続的な確認と見直しが必要です。また、職場のトラブルを未然に防止するために、労働環境や時間外労働の状況などを常に把握し、改善していくことも重要です。社会保険労務士の専門知識を活用すれば、法令を遵守しながら社員が働きやすく労働生産性の高い職場環境の構築に役立つため、人事のプロとして能力を発揮できるでしょう。

資格取得のための学習において、労働社会保険や労務管理に加え、助成金や年金に関する知識も幅広く学ぶため、将来的には社会保険労務士として独立も可能な点も魅力といえます。

キャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントは、労働者の職業選択や生活設計、職業能力の開発に関する相談を受けて、助言・指導を行う「キャリアコンサルティング」の専門家で、特定非営利活動法人日本キャリア開発協会が実施する国家資格です。

企業の人事・教育関連の部門に所属し、自社従業員のキャリア形成を支援するとともに、採用活動や人事制度の構築などにも専門知識を活かせるでしょう。また近年では、大学のキャリアセンター、人材紹介・人材派遣会社、公的就業支援機関などでも、キャリアコンサルタントの需要が高まっています。

資格取得後は、企業にとどまらず独立して人材の採用に特化した採用コンサルタント、育成に特化した人材育成コンサルタント、人事制度や組織改革に特化した人事組織コンサルタントなどの道も開けます。

メンタルヘルス・マネジメント検定

メンタルヘルス・マネジメント検定は、従業員の心の健康を管理するメンタルヘルスケアに関する知識・能力を認定する試験で、大阪商工会議所により主催されています。

メンタルヘルス・マネジメントは、心の健康を維持することで、従業員に最大限のパフォーマンスを発揮してもらうことをめざす考え方ですが、コロナ禍を経て社会環境が大きく変化するなかで、従業員のストレスを軽減し、いかにして高いモチベーションを持って活躍してもらうかがこれまで以上に重要になってきました。

資格保有者は専門知識を活かして、従業員の働きやすい職場を構築することで、離職率の低下、労働生産性の向上に貢献してくれると考えられるため、企業からの需要は今後ますます高まっていく資格といえるでしょう。

個人情報保護士

個人情報保護士認定試験は、個人情報を適切に取り扱うために必要となる専門知識を有しているかを認定する試験で、一般財団法人 全日本情報学習振興協会により実施されています。

IT技術が発達し情報のデジタル化が急速に進むなかで、2005年に「個人情報保護法」が施行されましたが、近年でも、自社の社員による個人情報の持ち出しやサイバー攻撃による情報流出などのニュースが後を絶ちません。個人情報の適切な取り扱いや情報漏えいに対するセキュリティ対策は、企業の信用・ブランドイメージに直結するものであり、リスクマネジメントの観点からも安定した企業経営を行ううえで不可欠です。資格保有者は個人情報保護法、マイナンバー法、セキュリティに関する幅広い知識を業務に活用できるとともに、企業から求められる人材として活躍の場が広がるでしょう。

なお、試験は3か月ごとに開催されており、試験会場での受験のほかに、全国に設けられた提携校での受験、オンラインでの受験が可能なため、比較的受験しやすい資格といえます。

衛生管理者

衛生管理者は、労働安全衛生法に基づいて職場における労働者の危険・健康障害を防止し、安全な職場環境を構築・運用するのに必要な能力を認定する国家資格です。試験は、公益財団法人 安全衛生技術試験協会により実施されています。

労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業所では、事業場専属の衛生管理者を1人以上選任することが義務化されており、労働者数が多くなるほど、選任が必要な衛生管理者数も増加します。このため、資格保有者は転職活動を進める際に企業に歓迎されるでしょう。

なお、衛生管理者の試験は、業種により「第一種衛生管理者」と「第二種衛生管理者」に区分されるため、自社の属する業種で受験する試験が異なります。

マイナンバー実務検定

マイナンバー実務検定は、マイナンバー制度に関する専門的な知識、個人情報を適切に取り扱う能力を有していることを認定する資格で、個人情報保護士と同様、一般財団法人 全日本情報学習振興協会により実施されています。マイナンバー制度は、2016年1月から本格的にスタートしましたが、運用が開始されてからまだ日も浅いため、資格保有者は多いとはいえません。

しかし、社員の入退社、扶養家族の変動、個人事業主への業務委託など、人事に関する業務を行うにあたってはさまざまな場面でマイナンバーに関する理解が必要なため、検定に向けて学んだ知識を活用して業務をスムーズに進められるでしょう。

なお、試験はマイナンバーに関する専門的で幅広い知識を問う1級・2級、基本的な知識を問う3級の3段階が用意されています。

今後の人事キャリアパスで求められる能力

社会環境の変化が速く、労働者の働き方が多様化しているなかで、今後の人事キャリアパスにおいてどのような能力が求められているかご紹介していきます。

経営戦略を理解する能力

IT環境の発展、デジタル化の進展、市場のグローバル化などにより、企業を取り巻く環境が激しく変化するなかで、近年、経営戦略と連動した人事=「戦略人事」が重視されています。

「戦略人事」では、企業の持つ経営資源である「人材」の価値の最大化をめざして、経営者に近いポジションで人事戦略を立案・実行していくことになるため、経営戦略を理解する能力が求められます。

課題の発見・解決能力

急速に変化する社会環境に迅速に対応することで、他社よりも有利に企業経営を進められると考えられるため、自社の抱える課題を早い段階で適切に把握し、効果的な施策を立案・実行する必要があります。

課題の発見・解決能力は、人事に関わるすべての人材に求められるスキルといえるでしょう。

人事労務に関する専門知識

労働者とのトラブルを未然に防止し、労働者が安全に業務を行える職場環境を構築するために、企業には労働基準法や労働安全衛生法など関係法令の遵守が求められます。担当部門としての人事の役割は大きく、法令改正も頻繁に行われることから、人事労務に関する専門知識を身に付けるとともに、常に情報のアップデートが重要です。

他部門も含めた自社事業に関する幅広い知識

「戦略人事」に基づいて、必要な人材を調達(採用もしくは人材開発)し、適切なポジションに配置することで従業員に最大のパフォーマンスを発揮してもらうためには、他部門も含めた自社事業に関する幅広い知識が必要です。

また、自社事業の理解が深まれば、他部門の人材採用を行う場合にも業務をスムーズに行えるでしょう。

コミュニケーション能力

人事は、給与計算や社会保険の手続きなど従業員の身の回りの環境を整える業務が多いため、自社に勤務するすべての従業員と日常的に接する機会があります。従業員の抱える悩みを聞き出し、職場環境の改善につなげるためにはコミュニケーション能力も重要です。人事制度の改定など、新制度の導入にあたっては他部門の協力が不可欠なため、日頃から積極的にコミュニケーションを取り、人間関係を構築しておくと業務がスムーズに進められるでしょう。

プレゼンテーション能力

新たな人事制度の設計・導入の場合には、経営者に導入メリットを論理的に説明し、説得する能力が必要です。また、人材採用における企業説明会では、求める人材の採用につなげるために求職者に対して自社の魅力を適切に伝える能力が求められます。

このように、プレゼンテーション能力を身に付けると、人事のさまざまな場面で活躍が期待できるため、インストラクター講習を受講するのも有効といえます。

まとめ

本記事では、人事のキャリアパスの概要、具体的な事例、キャリアアップの方法、今後の人事キャリアパスで求められる能力などについて解説しました。

人事は業務範囲が多岐にわたり、スペシャリスト・ゼネラリスト・独立などキャリアパスの選択肢も豊富なお仕事ですが、企業を取り巻く環境が急速に変化するなかで、求められる役割も時代とともに変化しています。

現在、人事業務に従事されている方は、本記事を参考に、将来の自分をイメージしたキャリアアップへお役立ていただくとともに、人事部社員の教育にお困りの企業様は、社内研修の内製化や外部講師の活用などを検討してみてください。

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