コラム
  • 対象: 全社向け
  • テーマ: 働き方
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JMAMの人事インタビュー|社員のキャリア自律と副業

JMAMの人事インタビュー|社員のキャリア自律と副業

企業にとって社員の副業はメリットか、デメリットなのか?社員のキャリア自律やキャリアオーナーシップを推進する日本能率協会マネジメントセンター(以降JMAM)。その自社の人事部では、キャリア自律についてどのように考え、副業推進などはどのように取り組んでいるのか。JMAMの人事担当者へのインタビューを通してご紹介いたします。

インタビュイー
株式会社日本能率協会マネジメントセンター
サステナビリティ・人事戦略本部 人事部 成長支援室長
小路京子さん

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JMAMのキャリア自律の現状と施策展開の方向性

――まず、JMAMにおけるキャリア自律についての基本的な考え方をお聞かせいただけますか。
小路:弊社の前身である日本能率協会時代から「集団天才」という言葉があります。一人一人がプロフェッショナルであり、そのプロが集まり、より集団的な能力を発揮するという考えで、社員は高いプロフェッショナル意識を持ち、自己の成長に関しても日々努力をするという社風があります。ですから「キャリア自律」も、脈々と受け継がれてきたものを改めて言語化したものだと捉えています。また、弊社は研修やアセスメント、そして通信教育、eラーニング等企業向けの教育コンテンツを幅広く提供していますが、社員自身も学びの意識が高いことが特徴です。
 キャリア自律は個人に帰することではありますが、会社の成長にも直結します。会社の理念に共感して集まった個人が、会社の業績を上げるために力を発揮してもらうためにも必要だと考えています。キャリア自律した個人が集団天才を形成して、会社の成長に資するようになっていくことを願っています。

※JMAMでは、行動する上での価値観・行動規範として、以下6つの「VALUES /バリュー」を掲げています。
1. イコールパートナー
2. 集団天才
3. 信義と誠実
4. 対話主義
5. 顧客起点
6. 挑戦と変化

自律支援においての課題は?

――そうしたなかでの課題感などはありますか。
小路:社員が自律しているがゆえに、社員任せになってしまっている部分もあると感じています。人事部としては、単に制度面での整備を行うだけでなく、それにプラスした仕組み化が必要だと考えています。たとえば、まだアイデアベースですが、キャリアについて気楽に話せる相談の場があるといい。上司と部下との1on1でキャリアの話しをするかもしれませんが、そういう場だけではなく、もう少しカジュアルに話せる場です。また、社内の他部署の仕事を体験できるような仕組みも実施しています。いわば「社内複業※」ですが、社内でのキャリア構築のための1つのステップとして、また、いろいろな仕事を知って視野を広げることが目的です。
 教育体系も見直していますが、自律的な社員のマインドを活かしつつ、会社としても支援していくという、両軸で進めていく必要があると考えています。

※社内複業
他の部門の業務を複業としてチャレンジすることができます。
自部門以外の人材と交流、ワークができる場づくりから他者の知見に触れることができる機会を増やし、新たなビジネスの種を生み出すことを目的として、社員からの立候補を募集しています。

個々人のキャリア自律を促す副業支援

――社員のキャリア自律と、会社の支援という両軸が大切というお話ですが、入社時の人事研修で、会社として副業を推奨していると聞きました。
具体的にはどういった取り組みがありますか。

小路:いま個々人へのアプローチとして最も力を入れているのは副業の推奨です。これはトップの後押しもあり、スムーズに導入できました。現在では社員数の1割以上にあたる50名以上が副業にチャレンジしています。
実は、私も副業の経験があるのですが、社外の人たちと仕事をしてみて、自分の視野が狭かったと感じる場面が多々ありました。たとえば、初めて請求書を書いた時に、あらためて労働の対価としてお金もらうことの重みを感じました。会社にいると毎月給料が振り込まれますが、その都度「私はこの給料に見合う仕事をしてきただろうか」などと考えたことはなかったのですが、そういう経験をしてみて、働くことの大切さや、職場で気心の知れたメンバーと仕事ができるありがたさを感じました。これは副業の経験をしたことで初めて得られた感覚なので、そういう経験をもっといろんな人にしてもらい、仕事にフィードバックしてもらえればいいと思いました。

――外からの視点が得られるというのは本業にもいい影響になりそうですね。
小路:時代の変化に対応していくためにも、多様な視点を持つことは大事です。弊社は中途社員が多い会社なので、すでに多様性があるとはいえ、長く勤めていると、やはり会社の色に染まってしまいます。副業が、多様な視点から物事をみることができるようになるきっかけの1つになると思います。

社員の副業の企業におけるデメリットは?

――副業はデメリットも多いと考え、なかなか導入に踏み切れない企業もあると思いますが、デメリットに感じることはないのでしょうか。
小路:いまのところ、デメリットよりもメリットの方が上回っていると考えています。
 もともと自律的な社員が多いと申し上げましたが、基本的に副業は週末に行ったり、自分で業務量をコントロールできていたりするので、本業に支障が出たという話は、人事まで届いてはいません。離職への懸念についてもよく言われますが、他社の人事の方と話していても、むしろエンゲージメントが高まったという意見の方が多いと思います。

社員からの副業申請で確認しているポイント

――副業は事前に内容申請する必要があると聞きました。申請時にはどのようなことを確認されますか。
小路:人事部として確認するのは、副業先が弊社と競合しないか、そして業務量的に無理がないかという点です。この2つがクリアになっていれば、申請を却下することはほぼありません。一度だけ相談ベースで、正社員として雇用契約してもいいかといった話がありましたが、そのときは業務委託にしてほしいとお願いしました。このように事前に相談してくれるケースが多いので、うまくコミュニケーションがとれていると思います。人事部としては、気楽に相談してほしいと思っています。
 なお、これまでのところ、職場の周囲や上司からの不満や心配の声もありません。人事部としてはもちろん、社員の体調管理や安全管理という視点からのチェックはしています。

――キャリア自律を促すうえでは、社員一人ひとりが、自身のこれまでのキャリアを見直すことも大切だと思います。
小路:異動希望の参考として、年に一度、自身のキャリアを考えて希望を出してもらう機会として「自己申告書」を提出してもらっていました。人事制度変更に合わせてキャリアオーナーシップやキャリア自律を促す施策の一環として、「キャリアシート」という名前に変え、年に一度は自分のキャリアを棚卸ししてもらうという目的をより明確にしました。転職者は職務経歴書を書きますが、社内でも自分がこれまで経験してきた仕事やスキルについて棚卸しをしてほしいという発想です。提出は年に一度(1月)ですが、いつでも書き換えられるようになっているので、時々見直してもらい、自分のキャリアについて考えるきっかけにしてほしいと考えています。

具体的な自律支援施策

――副業のほかに、会社の自律支援としては、どのような施策がありますか。
小路:まず、自社コンテンツの通信教育とeラーニングを受講できるようにしています。今期からはグレードに合わせて推奨するコースを社内のポータルサイトに上げるようにしました。それ見て自分のグレードを把握し、上位のグレードを目指すために必要なスキルを理解したうえで受講することが可能になっています。
 もう1つ、3年前から2月に「学びの文化祭」を開催しています。ある中途社員から組織活性化のために文化祭をやってみたらどうかという提案があり採用したのですが、「挑戦と変化」をテーマに掲げ、副業の体験を紹介する機会も設けました。
 課題としては、これらの施策が単発で終わってしまい、それぞれが関連づけられていないことです。たとえば、学びの文化祭で副業体験の話を聞いても、「そういう人もいるんだ」といった感想ベースで終わってしまい、本来の目的である副業支援にうまくつながっていない。本来は学びの文化祭と副業支援をうまく連動させて、体系的に情報発信をして、「自分もやってみよう」という行動変容にまで導く仕掛けが必要だと思います。

――副業に話を戻しますが、どんな情報やきっかけがあると一歩を踏み出しやすくなるでしょうか。
小路:副業をしやすい人もいれば、子育てなどプライベートも忙しいという人もいて、人によって副業をやりたいと思うタイミングは異なると思います。
私の場合、資格を活かした副業ができないかを考えていたところ、ある勉強会に参加したときに「一緒にやらない?」と声をかけてくださった方がいました。どんなきっかけで始めたのかという事例も参考になると思います。迷っている人に対して、1歩を踏み出す後押しができるような施策を考えていく必要があるでしょうね。

――最後に、小路さん現在のポジションでの役割や今後の展望についてお聞かせいただけますか。
小路:私の所属する成長支援室は、現場の意見を反映しながら動く役割もあります。私は元々営業部門にいて、そのあと人事部に異動してきたので、現場を理解したうえでの制度設計をしていきたいと思っています。現場から離れて少し時間が経過してしまいましたが、今後も現場の視点も踏まえながら、施策を展開できればいいと思います。

――ありがとうございました。
次回のコラムでは、実際にJMAMの社員がどのように本業と副業を両立しキャリア自律を実現しているのか。副業をしている社員のインタビューでご紹介します。

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文責:JMAM HRM事業 編集部
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