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パラレルキャリアとは?副業との違いや、企業・従業員にとってのメリットを解説

パラレルキャリアとは?副業との違いや、企業・従業員にとってのメリットを解説

パラレルキャリアとは、報酬のあるなしを問わず、人生を豊かにするもうひとつの活動に本業と平行して取り組むことです。終身雇用が少なくなり多様な働き方が広がるなか、注目を集めている考え方のひとつです。この記事では、パラレルキャリアとは何か、企業側・従業員側それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるかを解説しています。今後の社員の働き方を理解する際の参考にしてください。

パラレルキャリアとは

パラレルキャリアとは、報酬のあるなしを問わず、人生を豊かにするもうひとつの活動に本業と平行して取り組むことです。副業が本業の傍ら副収入を目的にするのに対し、パラレルキャリアは本人にとって本業と同程度の価値の持つことが特徴です。以下で、パラレルキャリアについてさらに詳しく解説します。

「パラレルキャリア」という言葉が使われるようになった背景

パラレルキャリアは、著名な経営学者P・F・ドラッカーが「明日を支配するもの」という本のなかで提唱して広く知られるようになりました。パラレルキャリアは「本業を持ちつつ第2の活動をすること」と定義されています。例えば、会社勤めをしながらアウトドア教室を開催する、ボランティアとしてNPO団体に所属するなどです。

ワークスタイルの多様化や、大企業でも倒産するなど雇用が保証されにくい背景があり、パラレルキャリアを選ぶ人々が増えてきました。パラレルキャリアには、夢や自分のしたいことに取り組むことで人生をよりよく過ごせるだけでなく、リスクヘッジとしても有効な面があるからです。

副業との違いは何か

副業の場合は金銭的な目的があります。一方、パラレルキャリアはスキルアップや自己実現、社会貢献など人生を豊かにする目的がその中心にあります。結果として報酬を得る場合もありますが、ボランティアのように無償の活動も含むことが特徴です。

こうしたことから、社員と企業の間に見解の相違が起きることもあります。たとえば休日を使ってスイーツ店を巡り記事を寄稿し報酬を得ているビジネスパーソンは、本人にとってはパラレルキャリアのつもりでも企業側にとっては副業かもしれません。こうしたケースでは、従業員が活動を申告しなければ、就業規則上、問題になることもあります。

パラレルキャリアを実践する社員の例

パラレルキャリアと副業は、活動によっては境界があいまいです。そこで、パラレルキャリアの代表的な事例を挙げます。以下の例はすべて本業と平行しての取り組みを前提としています。

・ライフワークとして地球保護の活動をしているNPO団体に所属する。長年活動することで代表となり、どちらが本業とはいえなくなるほどになる場合もある。

・ピアノ・料理・サッカー・裁縫など、自分が得意とし、かつ生きがいでもある活動を他者と共有することで、結果として職業(先生・コーチなど)として成立している。あるいは無償で教えている。

・YouTuber、小説家、ミュージシャンなど趣味や自己実現の延長として取り組んだ結果、セミプロレベルに達している。または公式にデビューして活動している。

・本格的な起業や兼業への準備のために、経営者や個人事業者として、仕事がない週末限定で活動する。

パラレルキャリアのメリット

ここでは、パラレルキャリアのメリットを、企業側、従業員側それぞれの観点から解説します。

企業側のメリット

●人材育成の経費削減につながる

パラレルキャリアを認めることで、企業は人材育成のための費用を使わずに社員に成長してもらえます。業務に関連した知識や技能を社員自ら学んでくれることもあれば、社外で人間としての魅力を獲得してリーダーシップを発揮する場合もあります。

●離職を防ぐ効果がある

パラレルキャリアは社員にとって本業と同じくらいの価値を持つため、パラレルキャリアを認めることで長期間定着してもらえるようになり、コスト面でメリットが大きい場合もあるでしょう。ただし、潜在的に離職のリスクをはらんでいることに変わりはありません。最終的に離職につながることも想定しておくことが必要です。

●社員にとってのメリットが自社にもプラスに働く部分がある

社員のスキルアップや人脈の広がりなどが、企業の業績にプラスに働く場合があります。また、他の活動に刺激を受けて仕事に対するモチベーションが高まり、多様な物の見方から創造的なアイデアが生まれることも期待できます。

従業員側のメリット

●転職せずにキャリア形成や収入アップが可能

本業を続けながらパラレルキャリアで知識や経験を身に付けられます。いきなり転職や起業することで生じる経済的なリスクを減らすことも可能です。また、収入アップを目指せる点もメリットです。

●本業へのモチベーションアップや維持につながる

パラレルキャリアがあることで、本業のストレス解消につながることがあります。また、本業では得られない知識や体験を積むことで見聞が広がり、本業にプラスに働くこともあります。

●新しい人脈を築くことができる

新しい人脈はパラレルキャリアや本業に役立つことがあるのみならず、人生を豊かにもしてくれます。「たくさんの人と出会って見聞が広がり、物の見方が変わる」「話題が豊富になる」など、自然にEQ(心の知能指数)、地頭が鍛えられることもめずらしくありません。

●スキルの向上、見直し、新たな得意分野の確立などができる

パラレルキャリアを通じて、またはパラレルキャリアを目指すなかで学んだことが、本業でプラスに働く可能性もあります。たとえば、環境問題のNGOに参加したことで、地球環境に配慮した観点から商品を企画できるようになるかもしれません。また、時間的な制約が多くなるなかでタイムマネジメント能力を獲得する人もいます。新たな知識を得ることで得意分野ができ、自身の強みを持てる可能性があります。

●夢の実現につながる

夢の実現としてパラレルキャリアをしている人もいます。たとえば野球選手を育てたいという希望を持って週末に少年野球のコーチをする人などです。パラレルキャリアなら「好きだから」「周囲から勧められた」「まずやってみようと思った」などの理由で、収入面を気にせず取り組めます。

●起業や副業の準備期間と考えることもできる

定年まで勤められない可能性を考えて、起業・副業の準備期間としてパラレルキャリアを活用することもできます。いきなり独立や転職するよりも、パラレルキャリアで知識や技能を身に付けていたほうがよい場合は少なくありません。仕事のマッチングミスも防げます。

パラレルキャリアのデメリット(注意点)

パラレルキャリアを取り入れることはメリットばかりではありません。ここではパラレルキャリアを誤った方法で活用すると生ずるリスク、デメリットを企業側と従業員側のそれぞれの視点から解説します。

企業側のデメリット

●就業規則の改正が必要になる

報酬が発生するパラレルキャリアは副業扱いになります。副業を禁じている企業においては、就業規則の改正が必要です。働き方改革によって副業解禁が進んでいるため、すでにある程度の対応が済んでいる企業も多いかもしれません。しかし、副業とパラレルキャリアには違う面もあるため、規則の改訂が必要になることもあります。

●情報漏えいなどのリスクに備える必要がある

社員が複数の企業で働く場合、社内情報を持ち出さないように注意する必要があります。守秘義務契約を交わすなど対策を講じましょう。従業員が他社の知見を得て自社業務に役立ててくれる可能性がありますが、逆のリスクも生じます。

従業員側のデメリット

●会社の規則に違反していないか注意が必要

パラレルキャリアで報酬がある場合は基本的に副業として扱われます。しかし、無報酬であるといっても副業にされてしまうリスクはあります。たとえば、Webサイトを運営している、週末に料理教室を開いているなど、副業ではないかと勘違いされることもあるでしょう。一部のパラレルキャリアは企業と社員で意見が食い違いやすいため、就業規則に違反していないか確認することが大切です。

●本業に支障が出ないようにしなければならない

スケジュール管理やタイムマネジメントができなければ、パラレルキャリアによって本業に支障が出てしまいます。また、過重労働への配慮や、社員の健康管理にも気を配る必要があり、ボランティア活動や遠隔地に移動しての活動では、支出が増えることもあるでしょう。さまざまな面で自己管理をすることが必要です。

企業がパラレルキャリアを推進するにあたり必要なこと

パラレルキャリアの導入では、従業員側、企業側それぞれのデメリットに配慮しましょう。従業員側のデメリットが顕在化しないためには、社員教育も必要です。たとえば、スケジュール管理や健康管理に支障があるパラレルキャリアは再検討する、内容が規則に違反していないかチェックすることも必要です。また、確定申告について研修の機会を設けるなども対策のひとつです。

副業解禁としてパラレルキャリアを推進する場合には、自社にあった就業規則を整える必要があります。競業避止義務や守秘義務についても周知徹底させ、情報漏えいリスクを未然に防ぎましょう。

注意点に気を付ければ、パラレルキャリアは企業側、従業員側の双方がメリットを受けられます。たとえばボランティア活動を認めることで、社会活動を推進する企業としてイメージアップになるとともに、従業員の人生を豊かにするサポートができることもあります。

【参考】プロボノとは

プロボノとは、本業で得た知識や技術などをボランティア活動に生かし、社会貢献することです。ラテン語の「pro bono publico(公共の善のために)」という言葉に由来しています。弁護士による無料相談会の実施や、伝統文化を伝える職人の活動などはプロボノの一例です。日本企業のなかには、リーダーシップを伸ばすことや多様な価値観に触れさせることなどを目的に、人材育成の一環としてプロボノを積極的に推進しているところもあります。

まとめ

パラレルキャリアには、企業の業績によい影響を与え、従業員の人生を豊かにするなど、多くのメリットがあります。一方、情報漏えいのリスクや本業に支障が出るなどの注意点もあり、事前にしっかり対策を講じておく必要があります。

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