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オンボーディングとは?事例5選|実施のポイントやメリットも解説

オンボーディングとは?事例5選|実施のポイントやメリットも解説

オンボーディングとは、新入社員をはじめ、中途採用社員など新しく組織に加わった社員の早期離職を防ぎながら、企業にとって有用な人材に育成する施策のことです。仕事に対する価値観の多様化やテレワーク導入などの変化に対応するため、オンボーディングの見直しを進めている企業も多いのではないでしょうか。

この記事では人材育成に関わる企業担当者に向け、オンボーディングの施策や事例、メリット、実施のポイントなどを解説しています。自社施策の参考にしてください。

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オンボーディングとは

オンボーディングとは、新入社員を企業にとって有用な人材に育成する施策やプロセスのことです。入社後に起きやすい早期離職を防ぎ、社員を定着させる施策という意味も含まれます。オンボーディングの元の意味は乗り物に乗り込んでいる状態であり、新入社員が組織に含まれた様子を表しています。
※ここでいう「新入社員」には、中途採用者も含みます。

新人研修が入社直後の基本的な内容に留まることが多いのに対し、オンボーディングは配属後も含めた継続的な人材育成であることが特徴です。そのため新卒・中途採用の社員や特定の教育担当者だけでなく、広範囲の社員がオンボーディングに関わる場合があります。

オンボーディングを実施する目的

オンボーディングを実施する目的は、新入社員の戦力化と早期離職を防ぐことです。ここでは、これらについてより具体的に解説します。

新入社員の成長スピードを上げる

新入社員は組織のルールや職場のシステムなど、知るべきことが多くあります。また、人間関係や社風など、適応しなければならないことも少なくありません。オンボーディングは組織への順応をスムーズにするために新入社員をサポートする目的があります。

離職防止

早期離職の原因は、仕事内容や人間関係のミスマッチが多くの割合を占めています。しかし、実は業務の目的ややりがいを十分に知らなかったことや、職場の人間とのコミュニケーションが不足していただけというケースが少なくありません。

オンボーディングには、新入社員に目標を与えてモチベーションを高めたり、面談やミーティングなどの場を設けたりすることで、理想と現実のギャップを調整する目的もあります。

部署によって教育格差を生じさせないため

トレーナーや部署の違いによる人材育成のバラツキ、格差がなるべく生じないようにするのもオンボーディングの大切な目的です。

OJTや実習にはトレーナーの能力や資質が大きく関係するため、人事部が体系立ったオンボーディングを行うことも重要です。コンプライアンスや企業倫理などの全社員向けの教育は、外部研修機関に任せる方法もあります。

オンボーディングを実施するメリット

ここでは、企業側からの視点でオンボーディングを実施するメリットを3つ解説します。

コスト削減

企業が従業員1人にかけるコストは年々増加しています。「2018年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」によると、入社予定者1人あたりの採用費平均は53.4万円、内定後にかかる費用平均は61.0万円でした。

早期離職してしまえば、最低でもこれらの費用が無駄になります。逆にいえば、オンボーディングによって離職率を低下させることで、大きなコストダウンが可能になるのです。

生産性を高められる

効果的なオンボーディングが実施できれば、新入社員がパフォーマンスを発揮するまでの期間が短くなります。早い段階で戦力として企業の業績に貢献するうえ、指導役の社員も本来の仕事に集中できることから、総合的に生産性を高められます。

人材育成施策をアップデートできる

外来語として「オンボーディング」を使うときは、各種の面談やミーティング、メンター制度の適用、キャリア相談窓口など幅広い施策が含まれることが一般的です。新人研修という枠を取り払い、自社の人材育成施策をよりよく変えられる可能性があります。

従業員満足度の向上

従業員満足度はES(Employee Satisfaction)とも呼ばれ、仕事へのやりがい、人事評価、福利厚生など職場環境全体に対する従業員からみた満足度のことです。オンボーディングによる活発なコミュニケーション、組織内での役割の理解などは、従業員満足度の向上にも役立ちます。結果として人材が定着しやすく、業績面でも長期的な効果が期待できます。

オンボーディング実施の5つのポイント

ここでは、オンボーディング実施のポイントを、具体的な施策も挙げながら解説していきます。

①人事部が信頼関係の土台を作っておく

株式会社リクルートキャリアによると、早期に優秀な人材として活躍し始める人のうち約8割が、入社前に人事担当者と十分なコミュニケーションを取っていた経緯があるとのことです。

新入社員が疑問・不安に思っている企業情報をオープンにすることで信頼関係を得ていることが、その後の成長によい影響を与えています。入社前の人事担当者とのコミュニケーションは、将来に大きな影響を与えるオンボーディングの一部です。

②教育体制を充実させる

教育制度を充実させ、オンボーディングの体制を整えることが大切です。たとえば近年急速に普及しているテレワークでのオンボーディングを実施するなら、WEB会議システムやビジネスチャットツールなどの導入が必要です。入社研修の内容を自社向けにブラッシュアップする、オンラインによる外部研修を積極的に利用するといった方法も有効です。

③スモールステップ法を取り入れる

スモールステップ法とは、目標を細かく設定しながら最終的な目標達成を目指す教育手法です。学生の教育現場や子育てに使われる手法ですが、オンボーディングでも有効です。

入社まもない新入社員にとって、成果が出るまでに長い時間を要するものはストレスがかかりやすく、目標を見失ってしまう傾向があります。オンボーディングにおいてはスモールステップ法を取り入れることも検討しましょう。

④メンター制度導入を検討する

メンター制度とは、年齢や階級が離れていない新入社員に近い立場の社員がサポート役になる制度です。似た制度であるOJT制度との違いは、人間関係についての悩みなど、業務以外の領域まで含めてフォローを行うことです。

多くの企業では、職場環境や業務に慣れやすくすることで早期離職を予防し、成長スピードを速めるために、オンボーディングの補助制度として導入しています。

⑤トレーナーを育成する

メンター役の先輩社員やOJT担当者の育成スキルは、オンボーディングの成果を大きく左右します。トレーナー育成には外部機関を活用してプロに教わることが有効です。

特にテレワークによるオンボーディングなどで自社の経験が乏しいケースでは、外部機関のノウハウを取り入れることが欠かせません。テレワーク導入に必要なきめ細やかなフォロー、1on1ミーティングの重要性や具体的な方法などを短期間で効率的に習得できます。

オンボーディングの施策・事例

ここでは、5社が実際に行ったオンボーディングの成功事例や失敗事例を紹介します。

オンボーディングの施策・事例1|GMOペパボ株式会社

部署別にオンボーディングを実施する企業は少なくありません。GMOペパボ株式会社も同様でしたが、企業に対する帰属意識が育ちにくいという課題がありました。そこで、オンボーディングを全社共通の施策へ切り替えました。

たとえば、主体的に企業経営に関わっていくために、どのようなリーダーシップを発揮したいのか表明する「やっていきシート」の導入や、新入社員や教育メンバー全員が自由に会話できるチャットルームの開設などを行いました。部署の垣根を取り払うことにより、企業全体で新入社員を育てる本来の社風が発揮されるようになったのです。

オンボーディングの施策・事例2|日本オラクル株式会社

日本オラクル株式会社では、自主的に企業に貢献したいと考える「社員エンゲージメント」の育成こそが中途採用者の定着に重要であると考え、オンボーディングの中心に据えています。

初めに中途採用で軽視されがちな経営理念や組織形態、ルールなどの基礎研修を十分に行っています。また、OJTの段階では上司の負担を軽減しながら充実したフォローを行うために「ナビゲーター」「サクセスマネージャー」という専任のスタッフを配置していることも特徴です。結果として、社員エンゲージメント率85%という非常に高い成果を上げられました。

オンボーディングの施策・事例3|LAPRAS株式会社

LAPRAS株式会社はコロナ禍によって全面的なテレワーク体制に移行しました。オンボーディングにおいても急ピッチでオンライン化を進めたことで試行錯誤も多かったといいます。

もっとも課題となったのは、新入社員との信頼関係を構築できないことでした。雑談や相談の場が極端に減ったことから、先輩や上司との距離を縮められなかったということです。このことから業務にもつまずきやすくなり、それがまた職場になじめない悪循環を作ってしまいました。

そのため、いまでは「リモートランチ」「リモート歓迎会」などのイベントを増やし、コミュニケーションの促進に重点を置いた施策を進めています。

オンボーディングの施策・事例4|LINE株式会社

LINE株式会社は多方面でサービスを提供しており、中途で新しく加わった社員が順応しなければならないことが多いという点が、スムーズな成長のボトルネックとなっているという課題感を持っていました。

そこで、オンボーディングにおいてホテルのコンシェルジュ的存在として、パソコン操作や福利厚生、社内カルチャー、人間関係の悩みなど、あらゆる相談が可能なLINE上の窓口を設けました。

新入社員を新規顧客のように丁寧にサポートすることも、オンボーディングでは大切な要素です。

オンボーディングの施策・事例5|キユーピー株式会社

キユーピー株式会社では、工場で働いている社員にスキルを高める機会を平等に与える目的で、3年間のオンボーディング期間を設けています。業務と平行しながら行えるように、外部機関のeラーニングを活用していることが特徴です。

eラーニングによって、従来不足していた基礎教育(電気や圧縮機、ポンプなどの基礎コース)を充実させることができたといいます。自分のペースでスキルを高められるeラーニングは、集団研修を実施しにくい企業に最適です。また、受講者の成長や努力を人材育成担当者が定量的にチェックしやすい点もメリットです。

まとめ

オンボーディングとは、新入社員を企業にとって有用な人材に育成するための施策です。早期離職防止や成長スピード向上のために、ITツールの活用や外部機関によるオンライン研修を導入する企業が増えています。

株式会社日本能率協会マネジメントセンターでは、1979年より立場や役割、時代背景に応じた幅広い教育プログラムを行ってきました。そのノウハウを活用し、イマドキの新人・若手社員に見られる特徴や、その成長支援の仕組みづくりを行うための情報や研修を提供しています。自社の教育施策の参考として、ぜひご活用ください。

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