コラム
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  • テーマ: 研修/教育
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イノベーションの意味と種類を解説!日本企業の課題・すべきことも紹介

イノベーションの意味と種類を解説!日本企業の課題・すべきことも紹介

昨今、ビジネス競争の激化によりイノベーション人材が求められています。しかし、日本のイノベーション創出力は世界に比べると高くありません。

日本企業においてイノベーション創出を促進するには、組織のあり方を見直すことがポイントになります。人事・採用担当者の方は、自社の制度設計や環境を今一度見直すことが大切です。

今回は、イノベーションが注目される背景や日本の現状、企業がすべきことについて詳しく解説します。

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イノベーションとは

イノベーションとは、日本語の「技術革新」を指します。この言葉を経済やビジネスの文脈で浸透させたのは、経済学者のジョセフ・シュンペーター氏の功績です。彼は1912年に『経済発展の理論』を刊行し、そこでイノベーションについて「経済活動の中で、生産手段や資源、労働力を新しい方法で結合すること」と説明しました。

このイノベーションは、物理的な「モノ」だけでなく、「しくみ」「サービス」「組織」や「ビジネスモデル」においても新しい価値を生むものです。それは社会に「革新」や「刷新」、さらには「変革」をもたらす力を持っています。

そして、イノベーションを推進し、企業や事業に変化をもたらす役割を果たすのが「イノベーション人材」です。

ただし、イノベーション人材とは技術者だけを指すものではありません。

さまざまな職種、部門の人材がイノベーションを起こす能力、すなわちイノベーション人材になる可能性を持っています。

イノベーションが注目される背景

企業にイノベーションが必要とされ、注目されている理由について具体的に解説します。

技術革新による新しい市場の開拓

技術の進歩が著しい現代において、既存の考え方や技術だけでは顧客ニーズを満たすことができません。ライバル企業との競争に勝ち抜くためには、常に新しい発想を取り入れて製品やサービスを革新させたり、市場を開拓したりすることが必要です。

特に、顧客から自社の商品を選んでもらうためには「付加価値」が重要です。既存の製品に革新的なプロセスやアイデアを加えて付加価値を生み出すためにも、イノベーションが求められます。

生産性向上

イノベーションへの取組が注目されている背景として、少子高齢化による労働力不足も挙げられます。

日本では、バブル崩壊を機に1990年代後半から人的資本を含めた無形資産の経済成長は大きく低下しました。2000年代になると、人的資本、組織の寄与はマイナスに転化しています。

主要国と比べても、ブランド・人材・組織への投資のGDP比率は、3%を下回っていて、米国(6%前後)や英国(5%前後)といった欧米諸国よりもかなり低い水準です。

また近年、働き方改革も進んでおり、企業は以下の2つの問題に同時に取り組む必要が出てきました。

  • 人手不足の解消
  • 従業員の生産性向上

今後は、AIやIoTなどによるイノベーションで解決を目指すことが求められています。

出典:「イノベーションが生産性向上に果たす役割」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2013/2013honbun_p/pdf/2013_01-02-03.pdf

ビジネス機会の創出

現代社会はテクノロジーが進化したことで、新たなビジネスを創出して成功できる時代です。

スタートアップ企業であってもイノベーションを起こして新たな製品やサービスを開発すれば、経済的優位性を確立できるようになりました。

大企業でなくともビジネスに参入して成果を出しやすくなったのです。

これまで市場で優位に立っていた企業でも、新しい技術の習得やビジネスモデルの導入、組織体制の再構築などを怠った場合、競合他社との競争に負ける可能性があります。

イノベーションによる新たな価値や市場の創造は、企業成長に欠かせません。

イノベーションの種類

イノベーションには、いくつかの種類があります。

それぞれの定義や枠組みについてくわしく解説します。

提唱者 名称
ヨーゼフ・シュンペーター プロダクト・イノベーション
プロセス・イノベーション
マーケット・イノベーション
サプライチェーン・イノベーション
オルガニゼーション・イノベーション
クレイトン・クリステンセン 破壊的イノベーション
持続的イノベーション
ヘンリー・チェスブロウ オープンイノベーション
クローズドイノベーション

「ヨーゼフ・シュンペーター」が述べる5つのイノベーション

オーストラリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションを5つに分類しています。

プロダクト・イノベーション

プロダクト・イノベーションとは世の中に存在していない製品やサービスを開発することです。

既存の技術やサービスを組み合わせて開発した製品やサービスもプロダクト・イノベーションに該当します。

プロダクト・イノベーションの具体例としては、テレビ・冷蔵庫・洗濯機などの家電、iPhoneなどがあります。

プロセス・イノベーション

プロセス・イノベーションとは革新的な生産工程や流通方法を導入することです。プロセス・イノベーションの創出により生産コストの削減や品質の向上につなげられます。

具体例としては、コンビニエンスストアで活用されているPOSによるデータ分析、米国の大手自動車メーカーフォードによるベルトコンベアの導入などがあります。

マーケット・イノベーション

マーケット・イノベーションとは新規市場への参入や新たな消費者を獲得することです。

同業者が注目していない市場にいち早く参入したり、従来とは異なる顧客層向けに商品を販売したりすることで、売上や利益の増加が期待できます。

マーケット・イノベーションの例を挙げると、従来型のテレビゲームの買い切り型のビジネスモデルからスマホゲームに見られるコンテンツ課金型のビジネスモデルです。

スマホゲーム市場は当初注目されていなかったものの、ソーシャルゲームの誕生によりスマホゲームに参入する企業が増加しました。

サプライチェーン・イノベーション

サプライチェーン・イノベーションとは、商品を製造する際に必要な原材料の仕入れ先や供給ルート、消費者への配送方法などを最適化することです。

サプライチェーンを最適化することで、物流コストの削減や配送スピードの向上が可能です。また経済産業省では、毎年「サプライチェーン イノベーション大賞」を発表しています。

サプライチェーン イノベーション大賞(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/shh_scitaisyou.html

オルガニゼーション・イノベーション

オルガニゼーション・イノベーションとは組織体制を見直して、企業だけでなく業界全体に影響を与えるイノベーションのことです。

例えば、ボトムアップ方式の導入があります。従来、多くの企業で経営者や役員が指示を出すトップダウン方式による経営が行われていました。しかし、近年では現場からアイデアを出す体制を整えている企業が増えています。
このような取組みにより従業員のモチベーションがアップして、人手不足の解消につなげた事例もあります。

「クレイトン・クリステンセン」が述べる2つのイノベーション

アメリカの実業家クレイトン・クリステンセンは、破壊的イノベーションと持続的イノベーションの2種類を提唱しています。

破壊的イノベーション

破壊的イノベーションとは革新的な技術やアイデアにより、既存のビジネスモデルや市場価値を破壊して業界の構造を大きく変化させることです。

新たに参入する企業だけでなく、既にビジネスを展開している企業が生き残りをかけて行うこともあります。
破壊的イノベーションが注目されているのは、以下の理由により、急激な業績な悪化を避けたい思惑があるからです。

・市場環境の急激な変化により、事業の長期的継続が難しくなっている
・既存の製品のイノベーションにより市場が過剰供給の状態になりつつある

破壊的イノベーションの例としては、音楽機器があります。音楽を聴く手段は、これまでレコード、ラジオ、ウォークマン、CD、MD、mp3プレイヤー、スマートフォンと破壊的イノベーションが続いてきました。

その過程では、機能面の向上はもちろん、機器を取り扱うメーカーも大きく変化しています。

持続的イノベーション

持続的イノベーションとは他社との競争で優位に立つために性能の向上や改良を行うイノベーションのことです。

例えば、日本でスマートフォンの普及が進んだ2000年代後半です。当時と現在販売されているスマートフォンでは、カメラの画質、容量、アプリの機能などが大きく異なります。

持続的イノベーションはあくまで既存の製品のアップデートを行うことを指します。

「ヘンリー・チェスブロウ」が述べる2つのイノベーション

経営学者のヘンリー・チェスブロウは、オープンイノベーションとクローズドイノベーションのイノベーションを提供しています。

オープンイノベーション

オープンイノベーションとは、組織内部だけでなく外部の企業や行政、大学などと積極的に連携してアイデアや技術を流出入させてイノベーションを起こすことです。

オープンイノベーションが提唱された背景として、企業が自前のアイデアや技術を発展させても、革新的な商品や手法は生まれにくい点があります。

現代のビジネスはめまぐるしいスピードで変化しているため、従来のイノベーションでは対応が難しくなりました。
オープンイノベーションでは、外部のリソースを活用できるため、より革新的なアイデアや技術が生まれやすくなります。自社のみでイノベーションを進めるよりもコストと時間を削減できる点でも大きなメリットがあります。

クローズドイノベーション

クローズドイノベーションとは、自社のリソースのみを活用してイノベーションを起こす手法のことです。

クローズドイノベーションのメリットは、自社で生まれたアイデアや技術が他社に流出しないので、利益を独占できる点です。

しかし、ビジネス環境の変化が激しくなったことからオープンイノベーションが増加しつつあり、クローズドイノベーションを導入する企業は減少しています。

【補足】イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマとは、どんなに製品やサービスの改良を続けていて業界をリードする企業であっても、新しく生まれた技術を軽視するとこれまでの地位を失う危険があることを表す言葉です。

企業が生存する上では顧客のニーズを満たすような製品やサービスを提供しなければなりません。しかし、ときとして顧客のニーズを遙かに超えるスピードで技術が進歩した結果、流行に乗り遅れることがあります。

例えば、現在はデジタルカメラが一般的ですが、それ以前は写真フィルムが売れていました。もちろん、写真フィルム業界のリーダー的存在だったコダックも、他の会社よりもいち早くデジタルカメラを販売していました。

しかし、当時最先端の技術だったデジタルカメラを本格的に販売するのではなく、フィルム技術を改善するといった、顧客のニーズを満たす行動をしたがために流行に乗り遅れて倒産に追い込まれたのです。
イノベーションのジレンマは他の業界でも多く起きています。たとえ、顧客のニーズに応え続けていたとしても、ずっと業界のリーダーとして君臨し続けることができるとは限りません。

日本企業におけるイノベーション創出の現状

WIPOが発表しているイノベーションの総出力を評価する指標「Global Innovation Index 2023」によると、日本の順位は13位でした。

オープンイノベーション白書第三版によると、日本は2011年以降12年以上トップ10に入れていません。

2010年代前半には20位以下の時期もあった点を考えると、ゆっくりでありながら日本のイノベーション創出力は向上していると捉えることもできます。

実際、ソニー株式会社が社外向けに16産業、社内向けに17事業を創出したり、株式会社メルカリが中古品ECと呼ばれる新たな市場を創出したりしています。

日本政府も「第6期科学技術・イノベーション基本計画」で【科学技術・イノベーション政策において目指す主要な数値目標として、2021年度~2025年度までに政府研究開発に約30兆円を投資すると明記しました。

このことから、今後日本でも本格的にイノベーションが推進される可能性があります。人事・採用担当者においても、自社のイノベーションを促進する動きをしていくことが求められます。

出典:「Global Innovation Index 2023」
https://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo-pub-2000-2023-en-main-report-global-innovation-index-2023-16th-edition.pdf

出典:オープンイノベーション白書第三版
https://www.nedo.go.jp/content/100918465.pdf

出典:第6期科学技術・イノベーション基本計画
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/6honbun.pdf

イノベーション創出のために人事・採用部門がすべきこと

人事・採用部門の動きは、企業におけるイノベーション創出の重要な鍵となります。

日本企業でイノベーションが阻害される要因はいくつかありますが、その中でも「リスクを恐れずに挑戦できる環境でないこと」や「社員の関心・力量の不足」が多く挙げられました。

イノベーションを起こすための重要なポイントは、組織体制の見直しと従業員教育です。

人事・採用部門が具体的にすべき施策について紹介します。

出典:「新規事業創造に関する人事の実態調査」(リクルートマネジメントソリューションズ)
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000000265/?theme=innovation

組織体制の見直し

リクルートマネジメントソリューションズが行った「新規事業創造に関する人事の実態調査」によると、人事の関与度合いが最も高い施策は「蛸壺化を避けるための人材交流・計画的異動」でした。

続いて「新規事業創造を担える人材の積極的な採用」「新規事業企画・開発に関する研修」も多くの担当者が挙げています。

イノベーションが生まれやすい組織体制に変革するためには、下記の取組が必要です。

  • 社員の確保
  • 社員の適正な配置
  • 適任者の選定
  • 人材の発掘

自社の組織のあり方や環境を見直し、新しいアイデアの創出を推進しましょう。

出典:新規事業創造に関する人事の実態調査
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000000265/?theme=innovation

リベラルアーツの習得

イノベーションを生み出すための切り口として、近年はリベラルアーツ(教養)への注目が高まっています。

リベラルアーツとは「こうあるべき」という概念から解放され、自由に生きるための力を身に付けるための手法です。

リベラルアーツ以外にもビジネス思考を鍛えることはできますが、以下のような課題についてはリベラルアーツを用いなければ解決するのは難しいでしょう。

  • 社会の本質的な課題の発見
  • 大きな時代の変化を予測する
  • 多様な分野を超えての共創

リベラルアーツでは、歴史や文学などの専門的知識だけでなく専門外の知識を習得できるため、物事を広い視点や違った角度から見ることができるようになります。

大局的に物事を捉えて行動できる人材を育てることは、この先のビジネス環境で生き残っていくためにも重要です。

人材教育においても、リベラルアーツの習得を推進しましょう。即効性の高い施策ではありませんが、長期的な視野でみればイノベーション創出における効果的な施策といえます。

イノベーション人材はどの企業でも育成できる

イノベーション人材と言えば、多くの方が「技術者」を思い浮かべるかもしれません。実際、昭和31年に発行された日本経済白書で「技術革新」としてイノベーションが取り上げられたことから、技術者とイノベーション人材が同義であるという印象が強まっています。

しかし、真のイノベーション人材は技術者だけに限らず、製造、営業、企画といったあらゆる職種から生まれる可能性があります。なぜなら、イノベーションを生むには技術だけでは不十分で、市場のニーズを深く理解する能力や、チームを統率するリーダーシップも不可欠だからです。

技術者が革新的なアイデアを生む一方で、営業や企画の人材は「世の中で何が求められているのか」や「ターゲットが真に必要としているものは何か」を見抜く役割があります。技術の進歩だけを追い求めても、それが市場の要求に応えていなければ、ビジネスとして成功が難しくなります。

また、イノベーションを生む過程は困難な場面も多くあります。そこで求められるのは、挑戦的な状況でも諦めずに前進できる強さを持った人材です。このような人材は、「世の中を良くしたい」という情熱やミッションを持っており、その想いが彼らを駆り立てるはずです。

結論として、イノベーションは多様な人材の集結によって初めて実現されるものです。あらゆる職種の人材がイノベーション人材になる可能性を秘めているのです。

イノベーション人材の3タイプ

「イノベーション人材」について、具体的な3タイプを解説します。

タイプ1:デザイナー

デザイナータイプは、企画を主導する役割を果たします。新しい組織やビジネスモデルの考案、または既存の組織・ビジネスの革新を行い、それを具体的な形へと導くのが特徴です。

彼らの存在はイノベーションを実現するためには欠かせないものとなっています。

デザイナーが持つべき能力として、いくつか重要なものがあります。まず、チーム内や関係者間のコミュニケーションを円滑に進めるファシリテーション能力が挙げられます。これにより、プロジェクト全体が一致団結して目標に向かいます。

次に、市場の動向や顧客の課題を深く理解し、それを元に革新的なアイデアを生み出す着想力が必要です。そして、そのアイデアを具体的な形にまとめ上げる企画力も求められます。

デザイナーはマーケットの最新情報や他社の動き、そして自社の顧客データなどをもとに、イノベーションを進めるためのアイデアや戦略を組み立てます。

そして、実際の企画立案段階では、ほかの業務担当者やビジネスパートナーからのフィードバックを受け入れ、より完成度の高い企画を作り上げることが求められます。

総じて、デザイナータイプのイノベーション人材は、企業の革新を牽引する中心的役割を担っており、彼らの存在なしには真のイノベーションは生まれないと言えるでしょう。

タイプ2:デベロッパー

デベロッパータイプは、主に技術の側面で活躍します。アイデアや企画が形になる段階で、その具体化を担当する役割を持っています。特に今日のビジネスではIT領域が重要となっており、その技術面を担当するデベロッパーの存在は欠かせません。

求められる具体的な能力は多岐にわたります。まず、最先端のITやデジタル技術を調査・分析し、それをビジネスに適用する能力が必要です。また、プロジェクトの全体像をしっかりと把握し、その中で必要な技術を見極め、選ぶ力も求められます。

さらに、実際の運用フェーズに入ったあとも、フィードバックをもとにした改善を継続的に行うPDCAのサイクルを実行できる能力も重要です。

デザイナーが思い描くアイデアや企画を、実際の形にするための技術を選定し、それを具体化するのがデベロッパーです。そのため、デザイナーとデベロッパーは、ビジネスにおけるイノベーションを実現するためのコンビともいえるでしょう。

総じて、デベロッパータイプのイノベーション人材は、アイデアを実際のものとして世に送り出すための重要な役割を担っていると言えます。

タイプ3:プロデューサー

プロデューサータイプは、プロジェクトの総指揮者としての役割を果たします。彼らはイノベーションを生み出し、ビジネスに新しい風を吹き込むためのプロジェクトを、マネジメントする人材として活躍します。

この役割は非常に重要であり、プロデューサーが不在の場合、プロジェクトは方向を見失い、目的を達成することが困難になる可能性が高まります。

彼らには特有の能力が求められます。まず、市場環境や技術の動向、さらには企業の課題をしっかりと捉え、それをイノベーションに変える力が不可欠です。次に、プロジェクトメンバーのスキルやアイデアを最大限に活かし、全体を効率よく運営するマネジメント能力が求められます。

さらに、彼らはプロジェクトの全過程を統括し、難しい局面での判断を下すリーダーシップも持っている必要があります。

プロデューサーは、イノベーションを実現するための実質的な責任者として活動します。顧客やビジネスパートナーとの良好な関係を維持しつつ、プロジェクトの各段階をしっかりと管理します。

総じてプロデューサータイプは、イノベーションを実現するための大きなキーとなる人材です。彼らの役割と能力を理解することで、成功への道筋をより明確に見据えることができるでしょう。

イノベーション人材に必要な能力

ここからは、イノベーション人材に必要とされる能力について解説します。

分析力

イノベーションを生み出すためには、「分析力」が欠かせません。物事の現状を深く知り、変化の背後にある原因を正確に見抜くことが大切です。変化とは、特定の原因に何らかの作用が加わった結果、生じるものです。この作用因を的確に捉える能力が、イノベーション人材として要求されます。

また、市場の動向や既存のサービスから、情報を整理することで、現状の構造や「何が求められているのか」「どこに課題があるのか」を明確にすることができます。このような分析能力の向上には、「システムシンキング」という思考法が非常に役立ちます。

システムシンキングは、相互に影響し合う多くの要素を、1つの「システム」として捉える手法です。各要素がどのように影響し合い、最終的な結果を生み出すかを把握することで、複雑な現代のビジネス環境でも、変化の本質や背後にある原因を理解することが可能となります。

忍耐力

イノベーションを目指すビジネスの場では、「忍耐力」が不可欠とされます。特に長期的なプロジェクトでは、社内から反対意見が寄せられることも少なくありません。そんな困難な状況下でも、冷静に取り組む姿勢や、相手の意見に耳を傾け、粘り強く説得する力が求められます。

この忍耐力はただ我慢するだけではありません。相手の意見を尊重し、冷静に対応していく力が必要とされます。また、忍耐力を維持・発揮するには、体調の管理も大切です。睡眠不足は判断力を鈍らせるため、適切な休息や健康管理が必須となります。

企業側もイノベーションを推進する人材の体調管理や精神的サポートを重視し、最適な環境を提供することで、その能力を最大限に引き出すべきでしょう。

協調性

イノベーションを目指す上では、専門知識や技術だけではなく、「協調性」も重要なスキルとして挙げられます。ビジネスの現場では、多くのプロジェクトがチームで進行されるため、その中で仲間とスムーズに連携し、効率的にタスクを進める能力が求められます。

長期にわたるプロジェクトの場合、チームメンバーとの関係性が密接になるため、互いに協力し合える関係を築くことが極めて大切です。こうした環境下で、協調性を持つことは、プロジェクトの進行をスムーズにし、チーム全体の生産性を向上させる要因となります。

企業側もこの協調性の大切さを認識し、人材を選定・配置する際には、その能力を高く評価するべきでしょう。チーム内での調和は、イノベーションを生む土壌となるのです。

問題解決能力

イノベーションの芽は、日常の中の細かな気づきからしばしば生まれます。例えば、台車で荷物を運ぶ人が、道中の段差でつまずくシーンを目の当たりにしたら、どれほどの人がアクションを起こそうと感じるでしょうか。

こうした状況に直面しても、実際に問題を捉え、それを解決しようと動く人は少ないのが現実です。しかし、問題解決能力が高い人材とは、このような日常の中の小さな「不都合」にも目を留め、積極的に解決策を考えることができる人のことを指します。

彼らは、他人の困難や周囲の問題に対して関心をもち、解決することでより良い状況を築き上げようというマインドを持っています。このような人材は、ただの問題解決者であるだけでなく、イノベーションの源泉ともなる存在です。彼らの独自の視点や考え方は、新しいアイデアやサービスを生み出し、業界全体を変革する原動力となるのです。

リーダーシップ力

新規事業やプロジェクトを推進する際、イノベーションを目指すための道程は簡単ではありません。トラブルや予期せぬ問題が生じることは、事業の進行において避けられません。そういった厳しい状況で、リーダーシップを発揮することは非常に重要です。

リーダーシップ力とは、単に命令するだけのスキルではありません。周囲のメンバーと協力しつつ、情熱と忍耐力で取り組む力が求められます。リーダーシップは、ただの指示ではなく、周囲を積極的に巻き込む力として現れます。イノベーション人材のリーダーは、社会や顧客が本当に必要とする価値を見つけ出し、それに向かって進む力が備わっています。

「どうやって世の中に貢献するか」「人々の幸せは何か」を真剣に考える姿勢は、多くの人々を引き寄せる魅力となります。このようなリーダーの強いビジョンや想いは、チーム全体のモチベーションを向上させる要因となるはずです。結果として、共通の目標に向かって結束し、イノベーションを起こすための力となります。

高いモチベーション

長期的なプロジェクトは途中での挫折や困難がつきものです。特に新しい挑戦を行う際、常に前向きな気持ちを持ち続けるのは難しいでしょう。しかし、イノベーションを生み出すためには、常に高いモチベーションが不可欠です。

イノベーション人材とは、そのような厳しい状況下でも「会社を変えていく」という強い意志を持ち続けることができる人たちです。その原動力は、自らのモチベーションの高さから来ています。このモチベーションは、新しいアイデアを生み出したり、困難を乗り越えたりする力となります。

しかし、人は時に疲れや迷いを感じるものです。そのため、高いモチベーションを持ち続けるためには、定期的なサポートが不可欠です。例えば、メンタルケアや面談を通して、個人の気持ちや悩みを共有することは大切です。このようなサポート活動は、チームの中だけでなく、人事部門からのサポートも必要となります。

イノベーションを目指す企業やチームは、そのメンバーのモチベーションを高め、維持するためのサポート体制を整えることが重要です。

コミュニケーション能力

イノベーションを牽引する人材は、多岐にわたるスキルが求められます。中でも「コミュニケーション能力」は、特に重要な能力と言えます。

考えたアイデアや新しい商品、技術を成功させるためには、その価値を他人にしっかりと伝えることが大切です。だからこそ、イノベーション人材には、その魅力を最大限に伝えるコミュニケーションのセンスが求められます。

さらに、イノベーションは単独で進められるものではありません。他部署やパートナー企業との協力が必要となる場面も多々あります。円滑なコミュニケーションを通じて、信頼関係を築くことが大切です。

コミュニケーション能力が高いと、アイデアを実現するステップがスムーズに進むだけでなく、チーム内の雰囲気やモチベーションも向上します。この能力はイノベーションを生み出すための核心となるものであり、日々のビジネスシーンでもその力を発揮します。

企業におけるイノベーション人材の育成ポイント

実際にどうすればイノベーション人材を育成することが出来るのか。企業内での育成方法のポイントについて解説します。

育成計画を明確にする

まず、育成計画を明確に立てることが不可欠です。この育成計画では、なぜイノベーション人材を育成するのか、その「必要性」や「目的」をしっかり定義することが大切です。そして、段階ごとの「目標レベル」も詳細に明文化することが求められます。

中長期の視点で目標設定を進めることは、短期集中型の教育とは異なり、持続的な成長を可能にします。実際、短期間で内容を濃く詰め込んだ結果、成長が一時的に止まるケースがあります。これは「ピアジェ効果」と呼ばれます。

ピアジェ効果を避けるため、段階的な目標設定と中長期の視点をもって育成を進めることが必要です。さらに、成功している企業の共通点として、育成対象者の能力や成長の可能性を深く信じる姿勢が見られます。この信念が育成の質や結果を大きく左右します。

また、イノベーション人材の育成は、特定の部署だけの取り組みではなく、全社を巻き込むべき活動となります。他部署からのレクチャーや、業務プロセスの共有が、育成の質を高める要素として挙げられます。このような全社的な連携を図ることで、イノベーションの成功確率は大いに上がるはずです。

組織の心理安全性を高める

イノベーション人材の育成には、組織の「心理的安全性」を高めることが欠かせません。心理的安全性とは、組織やチーム内で自らの意見や感じることを恐れず、安心して共有できる状態を示します。エイミー・エドモンドソン氏によれば、この安全性はチームが一緒に学び、成果を達成するための重要な条件となります。

イノベーションを生み出すためには、古い価値観に囚われることなく、新しいアイデアを自由に提案することが必要です。そのためには、失敗を恐れず、人事評価や人間関係の悪化を気にすることなく、自由に意見を交換できるチーム環境が不可欠です。

特に、イノベーション人材の育成というプロセスにおいて、彼らのスキルや知識を確固たるものにするためには、心理的安全性が保たれた組織が必要です。言い換えれば、この心理的安全性が高い組織文化を形成することは、イノベーション人材の成長や継続的なイノベーションの実現の土壌となります。

結論として、企業が真のイノベーションを目指す際、心理的安全性の確立は避けて通れないテーマと言えるでしょう。これは単なる人材育成の一部ではなく、組織全体の風土として根付かせるべき価値となります。

座学と実践を組み合わせる

イノベーションを実現するためのスキルは、一筋縄ではいきません。現場ごとの状況を読み取り、適切に対応する実践力が不可欠です。このような高度な能力を身につけるためには、座学だけでなく、実践も欠かせません。

座学のセミナーや研修で基礎知識を学んだあとは、現場のイノベーションプロジェクトやそれに近しい場での実践経験が必要です。実際に取り組む中で足りない知識やスキルを感じたら、再び学習を深めることで、質の高いスキルアップが可能となります。このような座学と実践の繰り返しは、PDCAサイクルを効果的に回す手法となります。

多くの企業では、実践教育を取り入れたワークショップ形式のセミナーを採用しています。さらに、新しい視点や学びを求める場合には、「越境学習」もおすすめです。これは、普段の勤務環境を離れて(越境して)、全く新しい環境で働く経験を指します。このアプローチにより、新たな視点や知識を得ることができます。

総じて、イノベーション人材の育成には、座学と実践を効果的に組み合わせることが大切です。企業は、これらの要素を取り入れた育成方法を積極的に考慮するべきでしょう。

イノベーションを起こし易い組織風土を醸成する

企業がイノベーション人材を採用や育成しても、組織風土がイノベーションを起こしにくい環境であれば、その力は十分に発揮されません。イノベーションを生み出すためには、風土醸成の手段として「評価制度の整備」と「副業を推進する」が有効です。

評価制度の整備は、イノベーションに挑戦する人々の心理的安全性を守るために不可欠です。経営陣がイノベーションの重要性を認識し伝えても、それが評価に繋がらなければ従業員の取り組みは薄れます。再挑戦を歓迎し、助け合う文化を持つ職場は、従業員がイノベーションに前向きに取り組むポジティブな評価観を生むことがわかっています。

また、副業の推進もイノベーション活性化の鍵となります。異なる組織や業界での経験は、新しい視点やアイデアの源泉となる可能性が高まります。従業員が外部の異なる風土や知識に触れることで、自社内では思いもよらない発想が生まれることもあるでしょう。

要するにイノベーションを活発にするためには、従業員が新しいアイデアを気軽に提案できる環境を整えるだけでなく、それを後押しする制度の設計が求められます。これにより、企業は持続的なイノベーションを促進する強固な組織風土を築くことができるでしょう。

イノベーションに必要なマインドセットを浸透させる

単なる技術や手法だけでなく、マインドセットの変革が求められます。マインドセットとは、人々の持つ思考パターンや固定観念、心理状態を意味する心理学用語であり、企業活動において大きな影響を持ちます。

長年、同じ組織で働く中で、成功体験や習慣から生まれる価値観や固定概念は、従業員に深く刻まれています。これらの考えは、新しい取り組みや発想を阻む障壁となってしまう場合もあります。イノベーションを実現するためには、これらの“縛り”を取り払い、新しい視点で物事を捉える柔軟性が必要です。

重要なのは、ビジネスの目的を「お金儲け」だけに絞らないことです。社会への貢献や新しい価値の提供、何を達成したいのかという「想い」を中心に据えることで、真のイノベーションが生まれる土壌が整います。

最後に、イノベーションを起こすためのマインドセットは、経営層だけでなく、組織のメンバー全員に求められるものです。全員が共通の価値観や目的を持ち、それを基盤に活動することで、企業全体としてのイノベーション力が高まります。イノベーション人材を育成するためには、共通のマインドセットを浸透させることが鍵となります。

イノベーション人材の育成にあたり企業に必要とされる環境

最後に、企業でイノベーション人材の育成を行う際に必要とされる環境について解説します。

多彩な人材を受け入れる

イノベーションは新しいアイデアから生まれます。この新しいアイデアを生み出すためには、多様な人材が欠かせません。なぜなら、年齢や性別、キャリアの違い、さまざまな価値観を持った人たちが、一つのテーマに対して異なる視点を持っているからです。

多彩な人材を受け入れることで、企業内に多様な視点や意見の交差点が生まれます。そして、これがイノベーションの種火となります。また、異なる背景を持つ人々との対話を通じて、一つの意見やアイデアをさらに深化させることも可能となります。

このような多様な価値観や考え方を持つ人材を企業に受け入れ、活かす取り組みは「ダイバーシティ推進」として知られています。ダイバーシティの真の力を活用することで、企業はより革新的なアイデアを生み出し、持続的な成長を達成できるでしょう。

内部・外部人材の登用を併用する

イノベーションの実現には多様な知識や技術が必要です。企業内の人材だけでは対応しきれない課題や技術要求も出てきます。このような場合、外部のスペシャリストを登用することは大きな助けとなります。外部人材の活用は、高い専門性を持つ人材をピンポイントで取り入れることが可能です。

また、ビジネスのニーズに応じて、特定の期間だけ外部の専門家を活用することもできます。これにより、効率よく、かつタイムリーにプロジェクトを進めることができます。

しかし、社内の人材との協力も不可欠です。社内外の人材が連携し、それぞれの得意分野を活かすことで、より高い水準のイノベーションを生み出すことができます。この組み合わせによって、企業は持続的な革新を実現していくステップを確実に踏み出せるでしょう。

リスクに対して適切な判断ができる

イノベーションを追求する企業にとって、挑戦の先には常にリスクが待ち受けています。それは、前例のない市場やアイデアに経営資源を注ぎ込むため、その結果としてどのような展開が待っているかは予測しにくいものです。

しかし、この変化の速い時代では、既存の事業に固執し続けるだけの企業は生き残りを難しくしています。実際、何も新しい取り組みをしないこと、挑戦を避けることこそ、最も大きなリスクを伴います。これは、進化を止め、競合に後れを取るリスクを増加させるからです。

こうした背景から、イノベーションに挑戦する企業は、「やる・やらない」の経営判断が重要です。そのため、未知のリスクに対して正確に把握し、適切で迅速な経営判断ができる環境を整えることが求められます。そうすることで、企業は新市場やビジネスモデルの開拓に成功し、持続的な成長を実現する可能性を高めることができます。

市場環境の変化や、時代の流れを敏感に察知する

イノベーションを生み出すための企業環境は、単に現状に満足することなく、外部の変化や市場の動向を敏感に察知することが求められます。ただし、世の中のニーズに応える革新的なアイデアを持つためには、単なる「ひらめき」だけでは不十分です。

現代ビジネスでは、「ひらめき」を超えた「プロセス」に基づくアイデア発想が重要となります。そのための実践的な手法として、「JOBSメソッド」が存在します。このメソッドは、経営学者クレイトン・クリステンセン教授が提唱する「ジョブ理論」を基にしたものです。

「JOBSメソッド」を活用すると、消費者が何を求めているのか、どのような「ジョブ」を達成したいのかを明確に理解することができます。その結果、潜在的なニーズを捉え、それに応える革新的なアイデアを系統的に考えることが可能となります。

企業がイノベーションを追求する上で、常に外部の情報を吸収し、市場の変化や社会の要求を敏感に感じ取る姿勢は必要不可欠です。しかし、それと同時に情報をどのように処理し、アイデアを具体化していくかのプロセスが重要です。「JOBSメソッド」のようなフレームワークを取り入れることで、企業は持続的なイノベーションを生み出す環境を整えることができるのです。

コミュニケーションを取りやすい環境を用意する

イノベーションの源泉となる人材を育成し、その能力を最大限に引き出すためには、企業内の環境整備が不可欠です。特にコミュニケーションの取りやすさは、イノベーション人材の能力を発揮させる鍵となる要素の一つです。

イノベーションは新しい市場ニーズの発見や新技術の融合時に生まれるものです。これらの要素は、異なる部門や職種の人々との積極的なコミュニケーションから生まれる傾向が多く見られます。したがって、風通しの良い組織を作ることが、新しいアイデアや技術を生み出す上で極めて重要となります。

さらに、イノベーション人材が持つ知識や視点を多角的に共有し、活用するためには社外だけでなく、社内のさまざまな事業部との連携が不可欠です。例えば、事業部交流会制度のような取り組みを通じて、異なる部門間でのアイデア共有や情報交換を促進することで、新たなビジネスの萌芽を生む土壌を整えることができるのです。

まとめ

人事や採用部門の動きはイノベーション創出の鍵となります。革新的なアイデアが生まれる組織にするために、具体的な施策を考えていきましょう。

またイノベーション人材の育成方法として注目されているのが「ラーニングワーケーション」です。1979年から企業向けに研修を実施している会社「株式会社日本能率協会マネジメントセンター」が提供する「ラーニングワーケーション」では、越境学習という手法を取り入れて、イノベーション人材の育成に取り組んでいます。

参加者は地方を訪れ、五感を使って深く学び、対話を重ねる体験をすることで、真のイノベーションセンスを培います。企業が未来を見据えてイノベーションを推進するためには、このような新しい学びの場を提供し、人材の持つ潜在能力を引き出す取り組みが不可欠です。

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