コラム
  • 対象: 全社向け
  • テーマ: 研修/教育
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経済産業省も注目の「リスキリング」とは?支援制度から推進方法まで解説

経済産業省も注目の「リスキリング」とは?支援制度から推進方法まで解説

ビジネスを取り巻く環境の変化に伴い、求められる「スキル」も同様に進化していく時代です。 企業にとってこの激動の中で生き残るために必要な鍵は「リスキリング」にあると言えます。

日本政府や経済産業省もこの動きを重視し、リスキリングを推進するためのさまざまな制度や補助金が始まっています。

本記事では、まずはリスキリングの定義について解説し、その上で経済産業省が推進する最新の取り組みを深堀りしていきます。上手に活用しながら「リスキリング」推進にとりくみ、企業と従業員の成長に繋げましょう。

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リスキリングとは?

まずは「リスキリング」の基礎的な知識について詳しく解説します。

リスキリング の定義

「リスキリング」とは何でしょうか?それは、「技術革新やビジネスモデルの変革に対応するために、新たな知識やスキルを習得すること」を指します。経済産業省は、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。

出典)経済産業省「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会/資料2-2 石原委員プレゼンテーション資料」
(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/002_02_02.pdf)

これまでの人材育成は新人に企業独自のノウハウを伝えることが一般的でした。しかし、デジタル技術の発展に伴い、新たな課題が浮上しています。デジタル化によって生まれる新しい職業や職務の変化に対応するためのスキル習得が今日では重要視されつつあります。

そして、次世代のリーダーやイノベーションを生み出す人材育成のために、リスキリングに対する新たな取り組みが活発化しています。「体験型の学び」を通じたリスキリングがその一例です。

他社の新規事業への参画や、地域社会の課題解決に携わることで、自社業務では得られにくい新たな視点や解決策のスキルを身につけることが狙いです。これらの努力を通じて、より価値ある人材育成を目指し、ビジネスの進化に対応することが求められています。

リスキリングの目的

リスキリングの目的は新しい手段や領域を活用して、事業の成長や業務効率の向上を図ることです。それは単に新しい知識を吸収するリカレント教育とは一線を画し、現在の職場で働きながら必要なスキルを学ぶという特性を持っています。

また、個々の興味や関心とは別に、会社の結果に直結するアウトプットの視点が強調されています。リスキリングは結果に結びつく新たなスキルを習得することで、個々の成長と組織の発展を促進します。これがリスキリングの真髄です。

経済産業省がリスキリングに注目する背景

次に経済産業省がリスキリングに注目する背景について解説します。

労働環境や働き方の変化

デジタル化が進み、新たな業務が生まれ一部では人員が削減されるといった変革の波が押し寄せています。また、コロナ禍によりリモートワークの拡大やオンライン会議の増加といった働き方の変化も見られます。

これらの大きな変化に対応するため、企業は従業員の新たな能力を開発し続けることが必要です。その手段として注目されるのが「リスキリング」です。新たなスキルを習得して、企業の成長と共に個々のキャリア形成を支えるこの概念は、現代の働き方において欠かせません。

DXを担える人材の不足

現代のビジネス環境においてはDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が急速に高まっています。日本でもその動きは例外ではありません。しかし、DX推進のためには、専門的なITの知識やスキルを持つ人材が必要です。

問題は日本におけるIT人材の供給が需給バランスを大きく下回っていることです。この人材不足がDXの推進を阻害し、結果的に経済損失を招く可能性があります。事実、多くの企業がDXの導入や推進について、人材不足を最大の課題として挙げています。

優秀なIT人材の確保はDXをスムーズに進めるための鍵となります。しかし、新しい人材を採用するだけでは解決しきれない課題も多いのが現状です。そこで、現在の従業員のスキルを再開発する、すなわちリスキリングすることが注目されるようになってきました。

AIやロボットで代替可能な仕事の増加

AIの進化はビジネスの多くの領域で影響をもたらしています。特にハードスキルが主体の仕事は、AIによって効率的に代替されるケースが増加しています。例えば、データ解析やルーチンワークはAIが高速かつ正確に実行できるため、これらのタスクを人が行う必要性は減少しています。

この動きを受けて、多くのIT企業はAIやロボット技術を活用して業務を自動化し、人間の手を離れた部分を増やしています。しかし、完全にAIが仕事を代替するわけではありません。人間にしかできない創造的な思考や感情のコミュニケーションは、AIでは代替困難です。

そこで、従業員のリスキリングが注目されています。企業は従業員が新しいスキルを習得することで、新たな価値を生み出す可能性があると考えています。特に、デジタル技術を効果的に活用できるスキルは、現代のビジネス環境で非常に価値が高いとされています。その結果、これらのスキルを持つ従業員は、企業において重要な位置を占めるようになり、給与のアップや昇進のチャンスも増えることが期待されます。

リスキリングで育成できる人材

より具体的に、「リスキリングで育成できる人材」について解説します。

プログラミングスキルをもつ人材

デジタル時代において、プログラミングスキルは企業の競争力を高める重要な要素です。これらのスキルは、システム開発や運用に不可欠で、ソースコードの理解・編集能力を伴います。また、DX推進にはITスキルが不可欠で、ここでもプログラミング能力が活用できます。

少子高齢化が進む日本では、プログラミングスキルを持つIT人材の不足が深刻な課題となっており、既存の従業員を育成するリスキリングがますます重要になってきています。

デザイン思考を持つ人材

デザイン思考を持つ人材は、ビジネスに新たな視点をもたらします。デザイン思考とは「未知の問題に対して最善の解決策を見つけ出す」ためのアプローチで、主にデザインやクリエイティブな業務で使われる思考プロセスです。

この思考法は、企業が直面する課題を解決する際にも活用されます。それは、従来の企業視点から大きくシフトし、ユーザーの視点を最優先に置くことで価値を発揮します。その結果、サービスやプロダクトの本質的な課題やニーズが明確になります。

統計知識やデータ分析のスキルをもつ人材

現代のビジネス環境において、データの活用は欠かせません。ここで注目されるのが「データサイエンティスト」という役割です。彼らは統計知識やデータ分析のスキルを持つ専門家であり、企業の成長に必要な人材です。

しかし、このような専門家はまだ数が少ないのが現状です。そのため、企業内で従業員のリスキリングを進めることが推奨されています。この取り組みにより、企業は統計やデータ分析のスキルを持つ人材を自ら育成できます。そして、これらの人材はデータを最大限に活用し、企業の経営課題を効果的に解決する役割を果たします。

経済産業省のリスキリング支援

ここからは経済産業省のリスキリング支援を紹介します。

キャリアアップ支援事業

経済産業省は、2023年度中に社会人が新たな学びを求め、その後の転職を円滑に進めるため支援を行うための新しい制度を開始すると発表しました。キャリアアップ支援事業として、大きな補正予算が確保されています。合計で753億円にのぼるこの予算は、各個人への助成として使われる予定です。

新制度の特徴として、民間のスペシャリストが登場します。個人がこのスペシャリストに直接相談し、リスキリングから転職までの過程をサポートしてもらえるという内容です。その際、1人あたり平均で24万円の助成が予定されており、これを利用して民間の講座を最大1年間受けられます。

この取り組みの大きな狙いは、3年間で33万人の転職をサポートすることです。時代の変化や業界のニーズに合わせて、労働者が自らのキャリアをデザインし、進めることが容易になることを期待しています。経済産業省のこの一大プロジェクトには、多くのビジネスパーソンの期待が集まっています。

第四次産業革命スキル習得講座認定制度

第四次産業革命の進展は、働き方も大きく変えつつあります。経済産業省は、この流れをうまくキャッチアップするための支援策を提供しています。それが「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」です。この制度は、データサイエンスやAIなど、これからの時代に必須となるスキルの学びを強く支える存在となっています。

この制度の中心は、経済産業大臣が認定した教育訓練講座です。厚生労働省が定義する要件を満たす講座を選び、受講すれば費用の一部が「専門実践教育訓練給付金」として還付されます。この給付金のおかげで、多くの人々が新たなスキルを身につける機会を得られています。

特に魅力的なのが、受講料の最大70%が国から還付されるという点です。大きな負担なく、これからのビジネスシーンで必要となる知識とスキルを得ることができるでしょう。

デジタル人材育成プラットフォーム(マナビDX)

デジタル化が進む現代、ビジネスの現場で求められるスキルも変わりつつあります。このニーズに応えるため、経済産業省が推進する「デジタル人材育成プラットフォーム(マナビDX)」は、多くの人々に新しい学びの場を提供しています。

マナビDXは、2022年3月に公開された学習ポータルサイトです。このサイトの大きな特長は、デジタル関連の実践的な講座が無料で受講できることです。企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるために必要な知識や技術、それらを活かすための具体的な手法など、幅広い内容が網羅されています。

さらに、マナビDXは初心者向けにも配慮がなされていることも特徴的です。デジタル領域に不慣れな人でも、わかりやすいコンテンツを手軽に視聴・閲覧できます。会員登録なしで利用できるため、気軽にデジタルの学びを始めることが可能です。

企業がリスキリングを推進する方法

最後に、企業が自社でリスキリングを推進する方法について解説します。

自社で教育する

企業が自ら手を打つべき最も基本的な方法は「自社での教育」です。企業が自社で教育を行うメリットは多岐にわたります。まず、経営や事業の戦略と直接リンクさせることができ、その結果、企業のビジョンに合ったスキルセットを効果的に身につけることが期待できます。具体的な手順として、以下のステップがおすすめです。

  • 1. 経営戦略との照らし合わせを行い、今後の成長に必要なスキルや人材像を洗い出します。
  • 2. 必要な教育内容を計画し、実施の方針を決定します。
  • 3. 教育の目的や重要性を従業員に伝え、リスキリングの意義を理解してもらいます。
  • 4. 研修後は、その知識を実務に生かす機会を提供し、実践的な経験を積ませます。
  • 5. 教育の成果を定期的にチェックし、その結果を評価制度に取り入れることで、モチベーションを保ちます。

特に、従業員にリスキリングの大切さを理解してもらう段階が、この取り組みの成功の鍵を握っています。また、リスキリング後の成果を評価に取り入れることで、従業員のモチベーションの維持や向上が期待できます。

結論として、企業が自社で教育を進める際は、計画的かつ戦略的なアプローチが求められます。リスキリングは単なるスキル習得以上のもの。組織全体の成長と、それぞれの従業員のキャリア発展を支える大切な取り組みとして、適切な方法で実施することが重要です。

他社留学や副業(複業)を推奨する

IT企業がリスキリングを推進するための方法の一つとして、他社留学や副業(複業)の推奨が挙げられます。

DX(デジタル変革)が進んでいる企業へ従業員を出向させることで、新規事業への参画などを通じ、現場で即戦力となる技術や知識を得ることが可能です。この経験は、自社だけでは得られない視野や新たな視点をもたらすでしょう。

副業や複業も同様に、新しいスキル習得の場を広げます。ほかの企業での実務経験が、自社業務に新鮮な視点を加えるとともに、スキルセットの拡充に貢献します。

また、出向や副業から得た経験と知識は、帰社後も有効活用されます。出向した従業員が情報のハブとなり、異なる組織間での学びや情報交換を促進します。これは企業関係の深化をもたらし、リスキリングの効果をより広範囲に拡大させます。

越境学習を取り入れる

リスキリングの取り組みは、新しいスキルや知識を身につけることが目的です。しかし、常日頃から勤務している環境だけでこの取り組みを行うと、一定の限界に直面することもあります。ここで注目したいのが「越境学習」というアプローチです。

「越境学習」とは、文字通り普段の境界を越えて学ぶことです。自社の業務や文化、環境から一時的に距離を置き、異なる環境や文化の中で新しい経験を得ることができます。これは、従業員が新しい視点や考え方を獲得するための効果的な方法となります。

具体的な例として、他社の新規事業への参加や、地域社会での社会課題への取り組みなどが考えられます。これにより、従業員は自社では得ることのできない多角的な視点や、課題を解決するためのスキルを身につけることが可能になります。

リスキリング専門のサービスを利用する

最後に、リスキリング専門のサービスの利用方法を紹介します。専門の人材育成・研修サービスを利用することも効果的です。これにより、専門性の高い知識や技術を、わかりやすく、効率的に学ぶことが可能です。

また、講師は即座に質問に応じ、課題を解決するサポートをしてくれるため、学習者のモチベーションを保ちながら短期間でのスキルアップが見込めます。

しかし、一概にすべての専門サービスが同じ質であるとは限らないので注意が必要です。最適なサービスを選ぶためには、事前に複数のサービス提供者を比較し、ニーズに合ったものを選定することが肝心です。

まとめ

経済産業省も注目している「リスキリング」とは、現在の職業能力や知識を再編成・再教育し、新たな職種や業務に適応するためのスキルを獲得することを指します。これは、急速なテクノロジーの進化や業界の変動に対応するために、必須のアプローチとなっています。

実際にリスキリングを実現する手段は多岐にわたりますが、効果的な手段である「越境学習」の手法の一つとして「ラーニングワーケーション」を紹介します。これは、日常の業務や生活環境を離れて、新しい場所や異なる環境で学びを深める取り組みです。

特に、1979年から企業向け研修を実施している「株式会社日本能率協会マネジメントセンター」は、この越境学習を取り入れた独自のプログラムを提供しています。リアルな環境での学びを通じて、創造的な問題解決能力を養います。具体的には、地域を実際に訪問し、五感をフルに活用しながらの学びや深い対話を通じて、イノベーションのセンスを磨くことができます。

ビジネスの現場での課題解決やイノベーションの発想力は、今後ますます求められるスキルとなるでしょう。そのため、リスキリングの一環として「ラーニングワーケーション」を選択する企業も増えてくることでしょう。

少しでも興味を持たれた方は、ぜひサービス詳細をご覧ください。

JMAM HRM事業 編集部

文責:JMAM HRM事業 編集部
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