DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に取り組む企業が増えています。成功の鍵を握るのは何よりも人材です。DXの推進に必要とされるスキル、適性を備えた人材をDX人材と呼びます。DX人材について正しく理解した上で、DX人材の確保(育成や採用)、DXの推進に取り組むことが重要です。
この記事ではDX人材に必要とされるスキル、マインドセットからDX人材が担う職種まで解説します。企業の人材育成に関わる方、経営者、マネジメント層の方はぜひご一読ください。
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DX人材とは?
「DX人材」には明確な定義はまだありません。広く知られた定義として、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」では次のように解説しています。
- DX 推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材
- 各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DXの取り組みをリードする人材、その実行を担っていく人材
よく誤解されがちですが、DXの推進にはデジタル技術に精通した人材だけでは不十分です。実際にDXのプロジェクトを進めていくには、事業部側のDXへの正しい理解や、プロジェクトを統括して進めることができる人材が必要とされます。両者が連携することで初めて、DX化は進みます。
※出典 経済産業省DX推進ガイドラインVer. 1.0
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf
DX人材が担う7つの職種とは?
それでは具体的に、DX人材が担う職種を見ていきましょう。
ビジネスプロデューサー
ビジネスプロデューサーは、DX化やデジタルビジネスの実現を先導するリーダー的な役割を担います。
大局的な視点から企業全体のDX化を統括する立場です。
そのためにはデジタル技術のトレンドだけでなく、自社を取り巻く経営環境から、自社が取るべき戦略・戦術まで理解している必要があります。場合によっては、ビジネスモデル、ビジネスプロセスの変革まで行うことがあります。非常に責任が重く重要な役割ですので、CDO(最高デジタル責任者)などの経営層がその立場を担う場合もあります。
ビジネスデザイナー
ビジネスデザイナーは、ビジネスプロデューサーが描いた戦略に沿って、より具体的な企画の立案、推進の役割を担い、実際のビジネスモデルやビジネスプロセスを描きます。ステークホルダーとの利害関係の調整や、プロジェクトを円滑に進めるためのファシリテーション能力、折衝能力が必要とされます。
データサイエンティスト/AIエンジニア
データサイエンティスト/AIエンジニアは、DXに関するデジタル技術(AI、IoTなど)やデータ分析に精通した人材です。ビジネスモデルへのAIの活用や、ビッグデータを扱う役割を担います。統計解析や機械学習を扱う技術的なスキル、知識はもちろん必要とされますが、事業部側と共同して進めていくにはビジネスへの理解度も求められます。
UXデザイナー
UXデザイナーは、DXやデジタルビジネスで実際に使われるシステムやサービスのユーザー向けインターフェース(操作画面など)をデザインする役割を担います。この場合の「デザイン」とは単純な見た目の美しさだけではなく、使い心地といった「ユーザー体験」を指します。優れたユーザー体験は顧客満足度に大きく影響して、利用率や継続率の向上に繋がります。
アーキテクト
アーキテクトは、ビジネスに具体的にどのようにデジタル技術を導入することでDXを実現させるのかといった、システムを設計する役割を担います(実装、構築は行いません)。課題の分析から要件定義に始まり、設計・開発サポートまで行います。デジタル技術に精通していることはもちろんのこと、経営的視点も求められます。
エンジニア/プログラマ
エンジニア/プログラマはアーキテクトの設計を元に、実際にシステムの実装やインフラの構築を行う役割を担います。機械学習用にPython、統計解析に特化したRといったプログラミング言語を使用するケースが多いようです。一般的なエンジニア/プログラマとの違いとしては、店舗や製造、物流などの現場のデジタルシステムが存在するケースが多くなっているため、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアも含めた幅広い知識が求められる点です。
先端技術エンジニア
先端技術エンジニアは、AI(人工知能)、機械学習、ディープラーニング、ブロックチェーンなどの最先端のデジタル技術を扱う役割を担います。
DX人材に求められるスキル・知識とは?
DX人材が役割を全うして活躍するには、どのようなスキル・知識が求められるのでしょうか?
プロジェクトマネジメントスキル
DXは、新しいITツールを導入すれば終わるような散発的、部分的な取り組みには留まりません。ビジネスモデル、社内体制、社内文化、ビジネスプロセスが変わるような全体的な変革が起きます。自然と巻き込む関係者も増えて大きなプロジェクトとなります。さらに、DXは1サイクルで開発を進めるウォーターフォール開発とは異なり、アジャイル開発でPDCAを繰り返しながら、細かいサイクルの開発を進めるケースが多いです。
そのため高いプロジェクトマネジメントスキルが問われます。必ずしもDX関連のプロジェクト経験である必要はありません。従来のプロジェクトマネジメント経験で培った、戦略策定、問題分析・解決、予算管理、スケジュール管理、コミュニケーションスキルなどが役に立ちます。
新規事業の企画力・構築力
企画力とは、DX全体の戦略に沿って、具体的な企画を立案するスキルです。実現したいこと、目的、課題を明確にした上で、やるべきこと/やらなくてもよいことを切り分けて進めていく必要があります。構築力とは、企画を元に実際のビジネスモデル、ビジネススキームを構築するスキルです。ビジネスプロデューサーだけでなく、現場とも密に連携を取りながら現実的なビジネスを構築していきます。
IT関連の基礎知識
当然ながらIT関連の基礎知識は必要不可欠です。ビジネスプロデューサーやデザイナーは直接的にIT技術を利用することはありませんが、基礎知識は技術職との共通言語となります。技術的な知識だけでなく、業界全体の最新知識も重要です。たとえば、国内外においてIT技術はどのように活用されていて、どのような課題があるのか、今後のトレンド予想はどうなっているのかなどの情報を定期的にキャッチアップしましょう。
データサイエンスの知識
DXではデータ分析の結果を元に、課題への意思決定・判断を行うことが非常に重要です。ビッグデータや機械学習を活用したデータ分析の精度は年々進歩しており、ビジネスに与える重要度は増しています。上手に活用できている企業、活用できない企業では競争力に大きな差が生まれています。関連して、収集したデータの活用方法を決定するデータマネジメントのスキルも求められています。
AI、ブロックチェーンなどの最先進技術の知識
デジタル技術は常に進歩しており、新しい技術も出現します。DXで優位性を保つためには、プロジェクトが一度完了したら終わりではなく、常に最先端技術に合わせてビジネスを変革し続ける必要があります。AI(人工知能)、ディープラーニング、ブロックチェーンなどの最先端技術を積極的に取り入れて、新しいビジネスモデル、サービス、製品に反映していきましょう。
UI/UXへの知識
どれだけ最先端技術を取り入れたサービス、システムであっても、利用するユーザーにとって使いづらいものでは意味がありません。利用率は落ちてしまい、普及することはないでしょう。ユーザー目線に立ち、ユーザーのニーズを正しく理解することで、優れたユーザーとの接点(UI)、ユーザーが得られる体験(UX)を提供する必要があります。
このUI/UXへの知識は決してデザイナーだけでなく、エンジニアやアーキテクトなど他の職種の方にも基礎知識として備えておいてほしい知識です。
DX人材に必要なマインドセットとは?
DX人材にはスキル、知識だけでなくマインドセットも重要な要素です。3つのマインドを紹介します。
周囲を巻き込む力
DX化を成功させるには一部の社員や経営層だけで取り組むのではなく、全社で取り組むことが重要です。周囲を巻き込むことで、部門間・社員間の熱量の差をなくす、認識乖離を防ぐことが求められます。現場の意見もしっかりと取り入れ、現場にも真剣に取り組んでもらうことで、DX化はより価値を発揮します。
課題設定力
設定した課題に誤りがあれば、いくら最先端のデジタル技術を駆使したところで価値は生まれません。課題を正しく設定して明確にした上で、仮説検証を行い、DX化の道筋を立てる必要があります。
好奇心・主体性
デジタル技術はとても進歩が速く、強い好奇心がなければキャッチアップしようと思えないでしょう。さらに、デジタル技術を活用して、新しいビジネスを生み出したい、課題を解決したいと思える主体性も大切です。
その他
日本のIT国家戦略を支えるために設立された独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」は次に挙げるマインドが重要と説いています。DXは既存ビジネスの延長線にあるものではなく、新しく、異なるビジネスという前提があります。不確実な道へ進んでいくために必要とされるマインドといえるでしょう。
・不確実な未来への想像力
・臨機応変/柔軟な対応力
・社外や異種の巻き込み力
・失敗したときの姿勢/思考
・モチベーション/意味づけする力
・いざというときの自身の突破力
DX人材の課題とは?
DXの一番の目的は事業変革です。成功させるためには、これまで解説してきたようにデジタル技術に詳しいだけでは不十分です。周囲を巻き込む力やプロジェクトマネジメントスキル、コミュニケーションスキルなど、様々なスキル、知識、マインドが求められます。DX人材と一口にいっても多様な職種、役割があります。まずは、自社が求めているDX人材を明確に定義することが重要です。
デジタル技術を直接使いこなせることは必須条件ではありません。エンジニア/プログラマなどの技術職でなくても可能です。営業やマーケティング、事業開発などの職種の方でも、DX人材の素質を持っている方であれば、デジタル技術の活用方法を学習することで、DX人材になることは可能です。国内ではDX人材の不足が今後も続くと予想されていますので、採用だけに頼っていては十分な人材の確保は難しいという課題があります。まずは社内の人材に目を向けて育成を行いDX人材を増やしていく、ということも必要となるでしょう。
まとめ
DX人材にはデジタル技術の知識だけでなく、人を巻き込み動かすためのコミュニケーション能力や、不確実な未来へ進むためのマインドなど、様々なスキル・知識・マインドが求められます。そのため、DX人材の育成に取り組まれている企業からは、総合的な育成が必要とされるため、自社の育成システムだけは難しいという声をよく耳にします。
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