- 対象: 全社向け
- テーマ: 組織風土・文化
- 更新日:
【カルチャーモデル】カルチャーを意図的につくり、 強い組織へと導く設計図
コロナ禍は「変化への対応力」を企業に問う結果となった。変化に強い組織の特徴は何か――。取材を重ねるなかで見えてきたのが「カルチャー」の存在である。
カルチャーとはどのように生まれ、どう影響するのか。
組織開発やカルチャー醸成の支援に取り組む唐澤俊輔氏に聞いた。(ダイジェスト版)
[取材・文]=村上 敬
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組織を貫く「カルチャー」の存在
リモートワークの広がりとともにコミュニケーションがとりにくくなり、組織としてどのようにベクトルを合わせていくのかが課題になるなかで注目を集めるのが、組織を貫く「カルチャー」の存在だ。複数の企業で組織文化づくりに携わってきた唐澤俊輔氏は次のように定義する。
「単に理念を指すのではなく、組織のあらゆる活動をとおして積み上がったものが“カルチャー”なのです」(唐澤氏、以下同)
唐澤俊輔(からさわしゅんすけ)氏プロフィール
Almoha LLC, Co-Founder COO
慶應義塾大学法学部卒業後、日本マクドナルドに入社、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。会社のV字回復に貢献する。
その後、メルカリで人事・組織の責任者、SHOWROOM にてCOOを務めたのちAlmoha LLCを起業。
組織開発やカルチャー醸成のコンサルティングおよび、組織開発のためのサービスやシステムの開発に取り組む。グロービス経営大学院客員准教授。
著書は『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
カルチャーは意図してつくるもの
「カルチャーは自然にできあがるものととらえて意図的につくる取り組みをしないと、思いもつかない悪い組織風土が根づく恐れがあります。上の人にものを言いにくいカルチャーができてしまえば、事故が起きてもすぐに報告しなかったり、業績の数字を改ざんして上にあげたりという事態を招きかねない」と唐澤氏は指摘する。
カルチャーの設計を放棄してダメージを受けるのは企業だけではない。組織で働く人も疲弊して離職につながる場合がある。
「フラットなカルチャーと聞いて入社したのに、実際はヒエラルキーの強い組織だったとしたら、その人にとってはストレスのある職場環境でしょう。企業自身はフラットと思っていても、現場は違っていたというケースが少なくありません」
ジョブ型雇用にも欠かせない
「1カ所に集まって仕事をしているときは、同じ空間にいることによって会社の空気感を把握することができました。
しかし、リモートワークではそれができません。その結果、それまで暗黙の了解で進んでいたことにも説明が求められるようになり、それに要する手間や時間が、組織全体の生産性を落としてしまうような事態が多発するでしょう。しかし、カルチャーが可視化され、浸透していれば、リモートワークで空気感をつかみづらくても、同じ目的に向かった議論ができるはず」と唐澤氏は語る。
ニューノーマルでジョブ型雇用導入の動きが出てきたが、カルチャーはその点でも欠かせない。
「今後、働き方はある程度の裁量を与えられた自律分散型が主流になっていくでしょう。ただ、自由に任せると、本来進むべきではない方向に物事が進んでしまう場合があります。それを防ぐには、カルチャーを可視化し、ガイドしてあげる必要があります。
また、自律分散型に適した雇用制度として注目されるジョブ型は、多様な背景・考え方をもつ人材が入社してくるため、カルチャーを共有し根底の価値観を揃えておく必要があります」
自社のカルチャーモデルを可視化するには?
そこで、自社のカルチャーを設計する際に参考にしてもらいたいのが、唐澤氏が提唱する「カルチャーモデル」である。
「事業においてビジネスモデルがあるように、組織についてもその会社に適した『カルチャーモデル』があります。カルチャーを重視するなら、自社のカルチャーモデルを意識すべきです」
自社のカルチャーモデルを明らかにし、それにふさわしい組織構造や人事制度にすることで、組織のカルチャーは強化されていく。唐澤氏がマッキンゼーが提唱する組織運営に関するフレームワーク『7S』にヒントを得てつくったのが、カルチャーモデルの「7S」(図1)だ。
「7つのSとは、スタンス(組織としての在り方)、シェアドバリュー(行動指針)、ストラクチャー(組織の構造・形態)、システム(制度)、スタッフ(人の採用や育成)、スキル(組織としてのスキル・強み)、スタイル(組織風土)のこと。まずはこれに当てはめて整理すれば自社のカルチャーモデルが可視化できます。またカルチャーを見直したり新たなカルチャーをつくったりする際には、設計図としても利用できます」
※カルチャーを新たにつくり直す場合を例に、全体の構造解説や、経営スタンスの分類も紹介している完全版記事はこちら↓
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社員をいかに巻き込むか
カルチャーモデルは、カルチャーの設計図だ。各要素を目に見える施策に落とし込みながら、カルチャーの浸透を図っていく必要がある。
「カルチャーは組織の一人ひとりがつくるもので、トップダウンで定着するものではありません。設計する段階からいかに社員を巻き込みながら組織変革を行うのかが大切です」
巻き込み方には順番がある。唐澤氏は日本マクドナルドの社長室長時代、トップダウン型からボトムアップ型への組織変革を目的とした新しいカルチャーづくりのプロジェクトを立ち上げた。そのときの経験を次のように明かす。
「最初は4人の若手で議論を重ねましたが『若手が何か勝手にやっている』という目で見られかねないので、まずCEOに承認をもらいました。トップのコミットがあると、周りの人は受け止めてくれます。次はプロジェクトメンバーを公募で募り、このときも『勝手にやっている』と思われないように組織横断的なメンバーにして、4人は裏方に回りました。また、社内への影響力の大きいキーパーソンには事前に相談に行き、個別に巻き込んでいきました」
プロジェクトの全社説明などの際、誰が最初の旗振り役となるか。その人選も重要だ。
「カルチャーづくりについて熱量のある社員にやってもらったほうがいい。茶目っ気があって現場で愛されていれば、さらに理想的です。
日本マクドナルドの全社員集会でバリューを発表したときは、言い出しっぺの若手社員が涙ながらに語ったことで、みんなで支えようという空気ができました」
まとめ
本記事の完全版では他にも、「成長企業と成熟企業別のカルチャーづくりで気をつけるべき点」など、2000字以上の内容が掲載されています。
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