講師に、研修で
アセスメントを
活用する際の
ポイントを聞きました。
アセスメントは、採用試験などの適性検査だけではなく、能力開発の場面でもさまざまに使われています。
「研修内製化に役立つ! アセスメント活用のコツ」では、研修効果を高めるアセスメント活用のコツを、講師のお話からご紹介します。内製で実施する研修の効果を高めるために、ぜひアセスメントを活用してみてください。
インタビューした2名の講師
管理者研修を数多く担当。自分に向き合い、自分のマネジメントのあり方を見直すような研修を多く実施している。
コミュニケーション研修やキャリア研修を担当。自己理解を深めながら、周囲との関わり方を考えていくような研修を多く実施している。
Q1研修でアセスメントを使うと、どのような効果がありますか?
自分に向き合い、自分で気づく
“本人が気づいていないところ”に自分で深く気づくことができ、行動を変えることにつながります。管理職研修では、自分のマネジメント力の良いところやウィークポイントに気づいてもらうために、360度診断(多面評価)やアセスメントセンター®を活用しています。
意識改革をしたい、刺激を与えたいなどのご要望があるときは、とくにおすすめしています。
人はどこかに、自分はそこそこできているという気持ちがあるんですよね。なので、アセスメント結果という目に見える形で自分の特徴を示されると、やはりインパクトがあるんです。思っていた以上に評価されていたことに気づくこともありますし、納得がいかなくて、なんでこんな結果なんだろう?とネガティブな思いを持つこともあります。
ただ、私はこの“ネガティブな思い”は、けっこう大事だと思っているんですよ。納得できない思いが心の中にずっと残っていて、確かにそのときはいい気分はしないでしょうけど、嫌な思いが残っているからこそ、“変われる可能性”がありますよね。
ですので、講師としては、その人の嫌な思いにできるかぎり向き合うようにしています。口だけで「前向きに受け止めましょう」と言っても、響かないですから。案外、嫌な思いの根っこには、別の事情や希望や不満があって、本人が意識できていないこともあるんです。
アセスメントは、本人も気づいていなかった行動を変えるきっかけ、変わっていける可能性に向き合わせてくれるところが良い点だと思います。
アセスメントは、客観データで結果を示せるので、講師があれこれ言わなくても、本人が自分で気づけるところが良いですね。
たとえば、コミュニケーションスタイルの特徴を把握するアセスメントを使って、批判が強い人に「人に厳しく指摘しがち」などと出ると、表面上は笑っていても実は心の中では響いているんですよね。なんとなく思い当たるところがあると、講師から「あなたこうでしょう」などと言わなくても、納得しているのだと思います。
とくに客観データで結果を示せるので、講師があれこれ言わなくても、面と向かって言いにくいようなことは、客観データで示したほうがスムーズに受け止めてもらえることもありますね。
それから、人と自分の違いに気づけるという点もメリットです。通常、同じ基準で自分と人を比べることはなかなかないですが、アセスメントを用いると、同じ基準で比較することで自分と人の違いがわかるんですね。コミュニケーションスタイルが違うことや、なぜ自分の話を受け止めてもらえないのか、相手に伝えるにはどう工夫したらいいのか・・・、などを考えるきっかけになります。単に良い悪いではなく、多様性という観点で、自分のふるまい方を考えたり他者理解をしたり、ということにつながります。
◎アセスメントを内製の研修に活用する効果
●客観データで結果を示せるので、講師から詳細に説明しなくても、本人が自分で気づける
●アセスメントによって自分に直面させることができ、本人が行動を変えていくためのきっかけになる
●人と自分の違いに気づき、多様性の理解につながる"
Q2アセスメントを用いるタイミングは?
意識を高めて研修に臨んでもらうために、研修の前半で結果をフィードバックすることが多いです。
OJTリーダー対象に後輩指導の研修をしたときにTAS診断を活用した例ですが(右図)、最初に現状の振り返りや原理原則の確認をして問題意識を醸成したところで、結果をフィードバックしました。
研修の前半で「自分はこういうクセがあるのだ」とか「こういうことに気をつけなければ」など、気をつけるポイントの意識づけができると、自分について自覚した状態で研修にのぞめるので、ぼんやりと参加するよりも意識がはたらくようになります。
◆OJTリーダー研修でのTAS診断活用例
A M |
オリエンテーション
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P M |
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アセスメントセンター®は、研修の最後に、腕試しのチャレンジテストとして活用することもありますね。研修でマネジメントや戦略などについて学習してからアセスメントを受けるやり方です。基本的な知識をおさえて、頭の整理ができているので、力を発揮しやすい状態で現状の自分の力を確認することができます。結果報告書は、後日個人に返却されます。
Q3日頃の仕事をからめ、自分事としてかんがえてもらうには?
アセスメント結果の解説をするときは、日頃の仕事とからめて説明すると、イメージをつかんでもらいやすいです。自分事として振り返るコツがつかめてきますし、アセスメントで測っているものが何かの理解も深まります。
<サービス感度向上研修で El Gate®を用いた例>
“お客様がきょろきょろしている”ということに対して、ただその動きを見るだけの人もいれば、「何かなくして困っているのでは?」と相手の心情をくみ取れる人もいる、といった身近な例から、心の働かせ方について気づかせていきます。自分の結果が手元にある状態で考えてもらうので、単に心配りが大事と説明するより、自分にひきつけて考えることができます。
“日頃の自分はどう行動しているか、どう考えているか”に結びつけて具体的に振り返りをすることが大事ですね。アセスメントは、あなたはこうだと決めつけるものではなく、結果を次の行動に活かすことに良さがあります。研修では、結果をもとに自分に向き合い、何に気づき、どう活かすかを考えてもらっています。
Q4実際の活用例を教えてください。
<一般職のキャリア研修でTAS診断を活用した例>
対象者は、定型業務で自分から主張する機会がなく、やらされ感が強いという方たちでした。
TAS診断から、従順で協調性はあるけれど自分を抑えて我慢しがち、自分を否定して他者に依存しがち、という傾向がわかったので、自分の気持ちや態度に向き合って、周囲との接し方をどうするかを考えてもらうことにしました。
知識や技術が足りなければ勉強やトレーニングが必要ですが、自分自身に向き合うことが必要なときは、自分の状態を客観的に知るアセスメントは効果的です。
<シニア向けにEI Gate®を活用した例>
EI Gate®は若い人~中堅社員に使うことが多いんですが、役職を離れてプレイヤーになった方を対象に、人とのかかわり方を振り返る研修をしたときに使いました。
自責が強くて人への配慮が弱くなりがちな方たちで、今のままだとうまく周囲とかかわれないという結果にショックを受けていたようです。でも、若い人に煙たがられると自分もつらいので、立場も何もないなかで自分も周囲も受け入れていくにはどうしたらいいかを考えてもらうことができました。
最後に。アセスメントは結果からいろいろなことが読み取れるので、さまざまな解釈をしたくなりますが、ひとつのアセスメントでなんでもわかるわけではないことは気をつける点ですね。アセスメント結果を過信せずに、結果をひとつのきっかけとして本人が自分に向き合うことをサポートするというスタンスが、講師として大事なのだと思います。
◎研修効果を高めるポイント
●アセスメントを用いるタイミングを工夫する
・研修の前半で結果フィードバック:受講者の意識を高めて研修を進めることができる
・研修の最後にアセスメント受検:研修で準備ができた状態で、チャレンジテストができる(アセスメントセンター®など)
●日頃の仕事をからめて説明し、自分事として振り返るコツをつかみやすくする
●アセスメント結果をもとに自分に向き合い、“日頃の自分の行動や気持ち”を具体的に振り返ってもらう
本コラムに出てくるアセスメントツール
対象者の日頃の行動について、本人と上司や同僚など職場関係者が、実践度と期待度の観点からアンケートに回答します。
- ■管理者向け
- ■中堅社員向け
- ■新人・若手社員向け
管理者・リーダーとしてのマネジメントスキルを把握します。
TAS診断TA(交流分析)の考え方をもとに、人とかかわる際の行動特性や態度などの特徴を把握します。
EI Gate®エモーショナル・インテリジェンスの考え方をもとに、組織の一員として周囲と効果的にかかわるためのメンバーシップの特徴を把握します。
アセスメントツールはトライアル可能です。ご希望の方は お問い合わせください。