事例詳細

通信教育

【JMAM通信教育優秀企業賞:2013】“常に挑戦する人”を育成する仕組みとして自己啓発支援制度を活用

テーマ 女性活躍の推進 / 強い管理者の育成 / 学習する風土づくり
対象 管理者 / リーダー・監督者 / 中堅社員 / 新人・若手社員

雪印メグミルク株式会社

2009年に雪印乳業と日本ミルクコミュニティが合併して誕生した雪印メグミルクは、「“常に挑戦する人”を尊重し、成長・活躍・自己実現の場を提供する」という人事理念を掲げ、その仕組みづくりに力を入れている。集合研修を補完し、主体的な能力開発をサポートする手段として通信教育を活用、「受講修了応援企画~抽選で受講料全額補助~」など、ユニークな取り組みで、受講を促進している。
芦沢 邦彦 氏 人事部 人材開発センター 課長
木下 知穂 氏 人事部 人材開発センター
矢吹 純子 氏 人事部 人材開発センター
取材・文・写真/赤堀 たか子
※掲載している内容は取材当時のものであり、一部変更が生じている場合がございます。

“常に挑戦する人”を育てる人材開発

雪印メグミルクは、3つの使命である「消費者重視経営の実践」「酪農生産への貢献」「乳(ミルク)にこだわる」を果たし、「ミルクの新しい価値を創造することにより、社会に貢献する企業であり続けること」を企業理念に掲げている。使命の1つに「酪農生産への貢献」を挙げているのは、同社の起源が酪農家の協同組合であることに由来しており、これが雪印メグミルクの特徴である。
最近は、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)問題に加え、飼料価格高騰による乳価値上げなど、酪農家や同社をめぐる環境は厳しい。そうした中で、企業としての存続と日本の酪農業への貢献を同時に実現していくために、新しい発想で道を切り拓ける人材が求められる。こうした人材を育成するために同社では、「“常に挑戦する人”を尊重し、成長・活躍・自己実現の場を提供する」という人事理念を制定し、挑戦した人が優先的に自己実現の機会を与えられる仕組みづくりに取り組んでいる(図1)。
その1つが、「キャリアチャレンジプロジェクト」だ。
これは、現在の仕事内容に関係なく、本人がチャレンジしたい部門や職種にエントリーする公募制度である。2012年度に初の試みとして実施したところ、85名が応募、国内の製造部門から海外事業に異動した社員や、営業職から開発部門に異動した社員など、27名が自らの希望する部門への異動を実現した。
人事部 人材開発センターの芦沢邦彦課長は、「手を挙げた人全てが希望通りの仕事に就けるわけではありませんが、挑戦する場を設けることで、前向きな雰囲気が生まれ、組織の活性化につながるはずです」と、その成果に期待を寄せている。今後も、人事として継続的により良い施策を考えていく予定だ。 図1 人材活性化体系図(一部抜粋) 人材活性化体系図 もっと見る

自己学習との組み合わせで効果的な学びを実現

主体的な取り組みを促す仕組みは昇級者向けの教育にも導入されている(図2)。
経営職(管理職)になる直前の一般職5級を対象とした昇級者研修では、マネジメントの基本知識を学ぶ通信教育の受講を集合研修参加の条件にしている。これは、主体的に学ぶことの重要性を受講者に認識させるのが狙いだ。さらに、事前に学習することで必要な知識のレベル合わせができるので、集合研修の場では、ディスカッションなど、気づきや相互啓発のために時間をかけられるため、効果的な学びが可能になる。
この他、主体的な学習を促す仕組みには、経営職の資格試験に合格した5級職を対象にした、マネジメント知識を学習するeラーニングもある。
学習意欲を高める自己学習に加え、フォローアップ教育にも注力している。経営職3~5年目の層を対象にした「マネジメント強化研修」だ。これは、自身のマネジメントスタイルの見直しを行い、スキルアップを目的としている。
新任経営職研修が、人事制度や労務管理、コミュニケーションのとり方など、マネジメントの基本を教えるのに対し、マネジメント強化研修は、職場運営や目標達成、人材育成など具体的なケースを題材にして、問題解決方法をみんなで考えるというもの。より実践的な内容にすることで、受講者自身のマネジメントスタイルを振り返り、課題への気づきを促している。さらにその気づきを補完するためにeラーニングを事後課題として活用している。
この他、主体性を伸ばすユニークな取り組みに「女性活躍推進研修」がある。一般職の女性を対象にした研修制度で、参加者は公募制としている。内容の1つに「女性がやりがいを持って働くために何が必要か」を上司と一緒に考えるという時間を設けている。
上司は、部下の仕事に対する意欲を知ることができる。また部下も、上司の日頃の配慮に気づくなど、互いに理解し合う場になっている。さらに、女性社員自身に前向きな考え方や行動(チャレンジ)が生まれるようになったと人材開発センターの木下知穂氏は語る。
「女性が職場で活躍するために必要なテーマとなると、“女性の意識”“支援制度”や“職場の理解”などが挙げられますが、この研修を機に、女性社員もその上司も会社も互いを理解し、一人ひとりが“自分ができることは何か”を考え、行動できるようになることを期待しています」
また、研修を通じ、結婚・出産を経て仕事を続けているロールモデルの存在を知ることができ、不安が軽減されたり、大きな刺激を受けたりするケースもあるという。 図2 人材育成体系図 人材育成体系図 もっと見る

主体的な学びを促す通信教育で夢の実現も

“挑戦する人”を育てるうえでは、通信教育による自己啓発支援制度も重要な役割を果たしている。木下氏は、集合研修を補完する機能として同制度を活用していると話す。
「集合研修で教育できる部分は限られるため、それ以外に必要な能力や知識を補えるよう、通信教育を導入しています。仕事と直接関係のない分野について学ぶことも奨励しており、そうした方針が、意欲的な学びや仕事にチャレンジしようとする意識の醸成につながると考えています」
たとえば、長年英語の講座を受講していたある社員は、「キャリアチャレンジプロジェクト」に応募し、海外事業部への異動を果たした。海外事業に従事したいという夢を描き、地道に自分の能力を磨き、夢を実現させたのだ。
また、社内の論文試験の準備のために文章力強化の通信教育を受講し、見事、試験に合格したケースもあると、人材開発センターの矢吹純子氏は語る。
人材開発センターでは、自己啓発制度の活性化に向け、受講者を増やすためにいくつかの工夫をしている。
たとえば、30代、40代の社員に向けては、中堅層向けの講座を増やし、募集冊子に「中堅マーク」を付してアピールした。また、中堅層の受講が多い講座のランキングや修了者の声を募集冊子に掲載した。その結果、中堅層の受講が増えたという。
受講の募集方法にも工夫が見られる。以前は、上期・下期に1回ずつ開講していたが、締め切り後に「今期に申し込みたかった」という声が多かったため、各期2回ずつ募集することにした。これにより、1回目の締め切りに間に合わなかった社員も2回目には申し込めるため、実際に受講者数も増えたそうだ。
ユニークな取り組みには、2013年度に実施した「受講修了応援企画」がある。制度の活性化を図るため、修了者のうち50名限定で、通常半額の受講料補助を100%補助にするというもの。
「自己啓発支援制度として学ぶ意欲を刺激し、頑張っている人を会社が応援していることをアピールするために実施しました」(矢吹氏)
狙い通り、インパクトは大きかったようで、修了者向けのアンケートでは、「毎回受講しているが、会社も応援してくれていることに、とてもモチベーションが上がった」という声が多数寄せられた他、経営職からも評価の声が寄せられたという。
今後は通信教育を中堅層強化の手段として活用していくことを検討している。「当社の中核を担う中堅層向けの研修の補完のために、通信教育で何ができるかを今後も考えていきたいですね」(矢吹氏)
加えて、階層別研修と自己啓発制度のさらなる連動も考えている。
「研修時に関連する通信教育を紹介し、研修で学んだ内容を通信教育でさらに強化、定着させることも検討しています。この他、募集冊子にも研修体系図を掲載し、各研修に関連した通信教育コースを紐づけした図の掲載も考えています」(矢吹氏)
一方、受講率に加え、今後は修了率を高めるさらなる工夫も検討していくという。

合併前に自己啓発制度を一本化し、全社融合の象徴に

同社では合併時に融合の象徴として自己啓発制度を活用した。両社の自己啓発制度を合併の前年度から一本化し、募集冊子も合併を意識したデザインに一新した。ミルクを象徴する白の地に合併する各企業のコーポレートカラーのラインを入れ、社名から、雪印の「ゆ」、メグミルクの「め」の頭文字と、製品のミルクの「みる」、そして社員一人ひとりを意味する「あなた」という思いを込めて、「ゆめみるあなたへ」(図3)というタイトルを掲げたのだ。
また、一本化を機に、制度のあり方も見直した。それまで雪印乳業では募集冊子を回覧しながら活用していたが、日本ミルクコミュニティが実施していた方法に合わせて全社員配付に切り替えた。プログラムの内容も、重複するテーマのコースを一本化するなど構成を見直し、一人1講座限定だった受講補助金を複数受講でも可とした。その結果、複数受講する社員が増え、中には4講座も受講する社員や、入社から18年目で初めて通信教育を受講したという社員も現れたという。
合併から3年、さまざまな取り組みで、主体的に学び合う風土づくりに力を入れている同社だが、芦沢課長によれば、まだまだ課題が残っているという。
「もともとの出身会社同士、階層間、あるいは女性と男性など、さまざまな面で遠慮があるように感じます。そうした壁を取り払うことで、学び合い、シナジー効果を発揮できるようになるはずです。この制度によって、主体的に学び合える風土を醸成していきたいと考えています」
“常に挑戦する人”の育成に向けた人材開発の“挑戦”が、現在も続いている。 図3 合併時の通信教育ガイドの表紙 合併時の通信教育ガイドの表紙 もっと見る 「ゆめみるあなたへ」が合併統合の象徴となっている。

プロフィール

会社名 雪印メグミルク株式会社
主要事業 2009年、雪印乳業と日本ミルクコミュニティが経営統合し、共同持株会社である雪印メグミルクを設立、2011年、同社が雪印乳業と日本ミルクコミュニティを吸収し、現在の雪印メグミルクとなる。北海道をはじめ、全国各地に工場・販売拠点を持ち、乳製品の他、果汁飲料やデザート類も製造販売する。
資本金:200億円、売上高:5,229億8,700万円(2013年3月期、連結)、従業員数:4,922名(2013年3月末現在、連結)。
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