中小企業担当者むけ

大企業のように業務分掌が難しく、一人の従業員が複数の業務をこなすことが多い中小企業では、人事部門も例外でなく労務管理、採用、教育といった業務を一人の担当者が掛け持ちしているケースが多く見られます。そうした状況のなかで仕事を進めている人事担当者の方が、従業員に対して適切な教育を提供するために必要なポイントをご紹介します。

いま、こんな課題はありませんか?

  • 対象となる受講人数が少ない中でも継続的な社員教育ができる仕組みづくりがしたい
  • 現場のOJTに依存せず、新入社員、新任管理職など節目での教育機会は充実させたい
  • 従業員一人ひとりの業務の状況に合せた教育環境を整えたい
  • 管理職の負担を減らすため、最低限必要なマネジメントスキルの教育機会は提供したい
  • 事業を継続していくために次世代の幹部候補となりうる人材を育成したい

取り巻く環境・変化 必要性が高まる中小企業の教育企画

OJT中心の現場教育が中心で、体系的に学ぶ機会がなかったり、指導担当者によって教え方にバラツキがあったりという状況が続くなかでは、じっくり腰を据えて人材育成をすることが難しいといえます。従業員一人ひとりに対して、OJT以外にも定期的に自己課題を克服するための知識・スキルを高められる学習機会があることは、目標とする業績を上げることや企業の成長へと近づくことにつながります。つまり、中小企業であっても従業員のための教育企画を適切におこない、実施していくことが求められているといえます。
しかしながら、人事・総務部門の現場は、一人の従業員が複数の業務を同時に進めることが多く、教育企画に多くの時間を割けない現状があります。さらに、コロナ禍においては、オンライン対応を含んだ、働く環境の整備、各種手続きの相談対応もおこなわなければならず、最低限の教育は実施するものの、長期的な視点での教育計画や改善まで進められておらず、担当者の悩みの種となっています。

ポイント解説 教育企画・推進に必要な視点

教育担当者として着手しやすいのは、新入社員の入社、入社〇年目、管理者への昇進といった節目を重要な教育機会として捉え、対象者が発生した時点で研修の実施や公開セミナーなどへ派遣できるような体制を整えることです。また、従業員に対して平等な教育機会を提供できる自己啓発支援制度や定額制の教育コンテンツ(eラーニングなど)を導入するなどして、最低限必要な知識やスキルを学習できる環境を準備することも重要です。こうした体制を一度つくっておけば、担当者が変わっても、あるいは教育の内容をその時々に必要なものに変更したとしても、基本的な仕組みは引き継げるようになります。
こうした節目に実施する階層別教育や自己啓発支援制度などで最低限の教育体系を構築した後は、従業員一人ひとりに対して「現在」どのような知識やスキル、あるいは資格を身につけてもらいたいのかを考えながら、必要に応じて教育プログラムを拡充していくことで自社なりの教育体系・育成計画が完成していきます。また、その過程では適切に情報収集をおこない、公的機関の助成金を活用したりするなどして、効果・効率的に計画を進めていくことが大切です。
上記のような施策を推進するために、教育担当者は、自社の教育課題を分析・把握したうえで経営トップとよく話し合うことが大切です。トップが教育課題を認識し、現場に向けて繰り返しメッセージを発信し続けることで、人材育成や成長支援への本気度が伝わり、従業員の意識や行動も変わっていきます。

まとめ

●人事・教育担当者として社員の成長機会を
中小企業においては、さまざまな制約があるなかで人材育成を実施しなければなりません。しかし、人材の成長なくして企業の成長はないと捉えて、前向きに取り組みを進めていく必要があります。実際、中小企業のなかには、経営トップや教育担当者が旗振り役となって、さまざまな教育施策を繰り出すことにより、学ぶ風土や文化を創り上げ、人の成長や、生産性の向上、業績達成に成功している事例もあります。昇格時や部署異動などのタイミングは対象者が新たな目標設定や能力開発課題に気づきやすいタイミングと言われています。その意味でも、まずは「階層別教育」や「自己啓発支援制度」を土台に、必要最低限の教育機会を整えることが重要となります。