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サービス感度向上プログラム「S-MAX」で顧客満足度を高める ~NECフィールディング

テーマ その他

NECフィールディング

IT機器・システムの保守サービスを展開するNECフィールディングは、10年以上にわたって「CS(顧客満足度)を基軸とした経営」に取り組み、 2003年度日本経営品質賞を受賞するなど高い評価を得ている。同社がCS向上施策の一環として導入しているのが、サービス感度向上プログラム「S- MAX」である。S-MAXは同社のCS向上にどのように貢献したのだろうか。

優れた顧客対応シーンから学ぶS-MAX

「はい、NECフィールディングです」  「プリンターがすぐ紙詰まりを起こしてしまうんですが、ちょっと見ていただけますか?」  「申し訳ございません。紙詰まりはいつも同じところで起こりますか?……」  顧客からの障害コールを受け付けるカスタマサポートセンター(CSC)のオペレーターが、実際に顧客からの電話に対応している映像が映し出される。対応を一通り見終わると、2~4人の参加者は顧客の特徴や、オペレーターの対応の良し悪しなどについて、社内ファシリテーター(社内トレーナー)の進行に沿ってディスカッションを行い、自らの接客を振り返っていく。

 これは、NECフィールディングで行われている、サービス感度向上プログラム「S-MAX」の実施風景である。

  S-MAXは、自社のハイパフォーマーの「サービス現場の映像」を参加者に見せることで、顧客とのコミュニケーションの本質に気づかせ、顧客の気持ちを察知し、気配りや心配りのある行動ができる「サービス感度」を向上させるという、教育プログラムである。  NECフィールディングがCS向上施策として、S-MAXを導入したのは2001年。「前年の合併がきっかけになった」とCS経営推進部CSMグループマネージャーの西山義久氏は語る。NECフィールディングは前身の日本電気フィールドサービスが2000年にパーソナル領域の保守サービスを行っていた NECカスタマーサービスを吸収合併したことにより誕生した。個人顧客は保守サービスに対する要求が法人顧客とは異なり、多種多様にわたる対応の難しさに驚いた同社では、人的補充や技術スキルの向上などさまざまな施策に取り組んだ。そして「やはり接客の現場で個別のお客様との意思疎通をスムーズにすることが重要だ」と考えた西山氏は、社員同士が顧客と社員の役を交互に演じながらロールプレイを行うCSマインド研修を導入したが、それでも「決め手が足りない」と感じ、さまざまな研修プログラムを探すなかで出合ったのがS-MAXだった。

  「サービスの現場では、お客様の気持ちを感じ取ることが重要になります。そこにフォーカスした教育がS-MAXでした。S-MAXでは、実際のお客様とのやり取りの現場で、お客様に喜ばれるようなコミュニケーションを行うハイパフォーマーの姿を映像にします。そして参加者はその映像で実際の接客シーンを見ることによって、その対応の良さに気づきます。その良さに気づくことが、自分をそのレベルに引き上げる最良の手段だと感じたのです」(西山氏)

 S-MAXは、まずパーソナル保守サービスの窓口で導入され、その後、受講対象は直接顧客と接する社員全員に拡大していった。

「苦情対策」から「ファンづくり」への転換

 NECフィールディングがCSに取り組み始めたのは1993年にさかのぼる。当初は障害率の低減や駆けつけ時間の短縮など、機器やシステムにフォーカスしたサービス品質の向上に力を入れていた。その結果顧客満足度は少しずつ向上していったが、4年目に低下してしまう。  「サービスというコアな部分の品質は向上しているのに、評価がよくならない。そこで着目したのが、これまで手を付けていなかった、社員のサービスを提供するマインドや、対人折衝のスキルでした。98年からCSマインド研修をスタートしたところ、お客様の満足度も良くなってきました。そのときに、お客様が私たちに望んでいること、期待していることを常に心に留めて活動することが、CSを向上させるうえで重要だということに気づいたのです」

 さらにCSを向上させるために、従来の「苦情対策」から「ファンづくり」へと取り組みの考え方を変えていく。  「以前のCS向上施策は、ネガティブ要因を消していくことばかりを重視していました。しかし、同時に自分たちの持っている良い部分を示してお客様に認めていただくことも、CSを向上させるうえで非常に重要なことです。CSを向上させるということは、苦手を克服することと同時に長所を伸ばすこと。そのためには、自分たちの長所を知り、その長所をさらに伸ばすことが必要です。それを可能にする研修として、S-MAXがぴたりと当てはまったわけです」

 最初のパーソナル保守サービス向けS-MAXで接客モデルを務めた日本橋支店の鈴木久美子氏は、S-MAXの研修効果について次のように語る。

  「映像を見た後のグループ討議では、皆から良い点も悪い点も率直に指摘されてとても勉強になりましたし、周囲からも、『お客様のために、もっと良い対応ができるように考えるようになった』という声を聞きました。S-MAXでは『気づき』の大切さを何度も聞かされるので、皆小さなことでも気づくようになりましたし、その姿勢はお客様への対応にも表れているのではないかと思います」

  西山氏が補足する。
 「映像で自分と同じ仕事をしている人がいい対応をしてお客様に喜ばれているのを見て、『自分も頑張らなきゃ』という気持ちになってくれた人が大勢いました。シナリオのない実際の映像で、本当に喜んでくれるお客様の姿を見ることはかなり刺激的で、この点がS-MAXの最も優れたところではないかと思います」
 また、S-MAXは講師ではなくファシリテーターによる進行も特徴といえる。
 「受講者に正解を教える教育ではなく、正解をそれぞれの受講者が探し出す教育なので、伸び伸びとした雰囲気のなかで笑顔が多く見られる稀有な研修でもあります」(西山氏)


 ただし、S-MAXの手法にも限界がある。パーソナル保守サービスのように来店した顧客とのやり取りを収録することはできるが、ビジネス保守サービスのように顧客企業での対応状況を収録することは不可能に近い。つまり、顧客との接触場面を映像化できる職場は限られるわけだが、それを補うのがCSマインド研修だと西山氏は語る。

  「人と人とが接した時に生まれる感情や気づきは普遍化する必要があります。それはCSマインド研修でロールプレイを行うことで実体験することができます。また、S-MAXはたとえ違う職場の映像であっても、お客様が何をしてほしいのか、何を期待しているのかということを常に心に留めて接客することがサービス品質を高めていくんだということを知るきっかけになることは確かです」

S-MAXでコールセンターのCSを向上

 冒頭に登場したCSCもS-MAXが導入された部門の一つである。CSCは2001年に東京と大阪の2カ所に設置された。顧客からの障害コールはもともと全国160カ所の拠点単位で対応していたが、受付窓口の評価が低かったことから、サービス品質と効率を高めるためにCSCが設立されることとなった。

  「一般にCSへの投資は業績とは相反するものと考えられがちですが、当社はCS向上のための投資によって効率化も図り、業績を高めようという“CSと業績のダイレクトリンク”をめざしてCSCを立ち上げました」 

 そう語るのは、東日本カスタマサポート本部カスタマサポートセンター長の米澤春彦氏だ。 CSCの最も大きな特徴は、顧客からの電話に応対するオペレーターに5~20年の経験を持つベテランCE(カスタマエンジニア)を配置しているところである。一般にコールセンターのオペレーターといえば、顧客の要望を受け付けて専門部署に引き継ぐイメージがあるが、CSCのオペレーターは受け付けた障害内容から適切な対処方法を判断し、CEの派遣指示や保守部品の選定発送などを指示するところまで担っているのである。ファーストコンタクトの段階でプロの技術者が的確に判断することによって、顧客にとっては迅速な解決が図られ、会社にとっても対応の効率化が図れるわけである。この的確な判断を維持するためには、オペレーターの技術スキルはもちろんのこと、顧客の気持ちを感じ取れるコミュニケーションスキルも求められる。  そこで、CSCが開設する前に、各地のコールセンターのハイパフォーマーの対応を収録し、CSCでオペレーターを務める社員にその映像を用いたS- MAXを実施した。さらに2004年4月には東西のCSCのハイパフォーマーの対応を収録し、オペレーターは基本的に年2回、S-MAXを受講している。また、異動配属された場合はそのタイミングでS-MAXを受講する。実施時間は2時間。大勢の人数が席を外すことができないため、2~4人で実施することが多いという。  ファシリテーターを務める米澤氏は、S-MAXの効果をこう語る。

  「研修では自分が気づかなかったことを他の人間が指摘するというケースが多く、お互いに勉強になります。オペレーターはS-MAXの実施によって、『あいさつをすればOK』というレベルから『どのようにあいさつしているか』といった、より高いレベルを意識するようになり、S-MAXで議論された内容が実際の対応に反映されることが多くあります」

 CSCの場合、顧客とは電話でのやり取りになるので顧客の姿は当然映像には表れないが、問題はないのだろうか。

  「コミュニケーションを取っている2人の心がシンクロすると、行動もシンクロすることがあります。これを同調行動といいます。電話でも同じで、ゆっくりと話すお客様と話をしているときは落ち着いて話していたオペレーターが、高いトーンで緊迫感のある話し方をするお客様になると、やはり同じように話し方も変わってくる。すると、オペレーターの表情も変化して、お客様とシンクロして上手に対応している映像が撮れたのです。お客様の表情が見えなくても、こうしたオペレーターの姿が見られるだけでも、S-MAXを行う意義は大きいと考えています」(西山氏)

 J.Dパワーアジア・パシフィックが2004年、2005年に実施した「日本ソリューションプロバイダー顧客満足度調査」によれば、「問合せ窓口担当者の応対・態度」「問合せ内容に対する回答内容の適切さ」において、NECフィールディングに対する「満足」の割合は業界平均に比べて10ポイント以上も高い結果が出ている。

出典:J.Dパワー アジア・パシフィック2004、2005日本ソリューションプロバイダー顧客満足度調査

「CSを向上させるためには、人との接し方の品質を高めることが重要だと考えています。かつては技術者の顔が見えなくても機械が直ればいいという時代がありました。しかし、サービスの良し悪しを最終的に判断するのは機械ではなくて人です。そういう意味では、人に対する接し方を自ら変えていかなければ成長できません。その気づきを得るうえで、ハイパフォーマーの映像から学ぶS-MAXは非常にいいきっかけになります」(西山氏)

 NECフィールディングのCS向上を支えるプログラムとして、S-MAXは大いに役立っているようだ。

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掲載日 2008/04/28
掲載内容やご登場いただく方の役職は取材当時のものです。