導入事例

社員の能力開発や学ぶ風土づくりに
積極的に取り組む企業を取材しました

コーセル株式会社

アセスメントを活用したキャリア研修 〜新入社員から50代社員まで〜

直流安定化電源の専業メーカー、コーセル。同社は、2014 年度よりキャリア開発支援の新たな取り組みを開始した。新入社員から50 代の社員までの研修を体系的に整備し、各階層でアセスメントを活用している。今回、同社総務部人財開発課の日下善雄氏、大坪晴樹氏にアセスメントの活用方法についてお話を伺った。

総務部 人材開発課 課長
日下 善雄 氏
総務部 人材開発課
大坪 晴樹 氏
コーセル株式会社
会社名
コーセル株式会社
URL
https://www.cosel.co.jp/
プロフィール
設立 1969年7月26日
本社所在地 富山県富山市上赤江町一丁目6番43号
代表者 谷川 正人
資本金 20億5,500万円
主要事業 ●電子機器、電気機械器具の製造および販売
●主要製品:直流安定化電源装置(スイッチング電源など)

アセスメント・研修・フォロー面談でキャリア開発支援

電子機器で使われる直流安定化電源装置に特化し、国内標準電源のシェアが30% を超えるコーセル。世界市場を視野に入れたグローバルな事業展開も加速する中、人財開発課は社員の成長実感の希薄さに強い危機意識を持っていた。“人こそが財産”と言い切る同社では、さらに「個」のよさを伸ばし、それを組織の力としたいという思いから教育体系の見直しに着手。「キャリア教育」「階層別教育」「部門別教育」という3つの柱を整備し、「キャリア教育」では、キャリアの節目に「アセスメント・集合研修・フォロー面談」を実施して社員のキャリア開発を支援する体制を整えた。

目的に合わせてアセスメント・ツールを使い分ける

キャリア研修を実施するタイミングは5 回(図1)。2014 年度は新入社員、4年目社員、30 歳社員、50 代社員の研修を実施し、2015 年度からは40 代社員の研修も実施予定だ。このうち新入社員、4 年目社員、50 代社員の研修で、日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)のアセスメント・ツールを活用している。同社総務部人財開発課の日下善雄氏は、次のように述べる。
「入社時はキャリアに対する考え方を理解し、将来に対する自分自身の夢や思いを大事にする時期。4年目は自分の技術・技能における現状を分析し、これから先のキャリアを描く時期。50 代は自らの棚卸を通じて今後のキャリアを描く時期と考えています。それぞれの“節目”に意味があり、そこでどんな気づきを得て欲しいのかという“目的”によって、アセスメント・ツールを使い分けています」 同社が各節目で活用しているアセスメントについて詳しく見てみよう。

新入社員➡『TAS 診断』
入社時に導入しているアセスメント・ツールが『TAS 診断』だ。TA(交流分析)理論を応用して開発されたアセスメントで、対象者の行動・対人関係面でのコミュニケーションの特徴を明らかにする。新入社員~若手は技術を吸収する時期で、先輩・同僚との対話の中で学ぶことも多いため、対人関係面、コミュニケーション面での自分の特徴に気づいてもらいたいというねらいがある。
4年目➡『EI Gate®️』と『NAVI360』
4年目社員に対しては、自身の技能・技術という現実的な面に着眼してもらいつつも、“1人ではなくみんなでやっていく”ということを意識してもらうために、2 つのアセスメント・ツール『EI Gate®️『NAVI360』を活用している。
EI Gate®️ は、チームの一員として周囲と関わる際の特徴を、エモーショナル・インテリジェンスの考え方をもとに診断するツール。メンバーシップや周囲との効果的な関わりについて意識を高めさせたいときによく活用されるツールだ。
NAVI360 は、中堅社員向けの360 度フィードバック。日頃の職場での行動について、本人と上司、同僚、後輩などの職場関係者が、実践度と期待度の観点からアンケートに回答するものだ。他者からの評価を知ることで、自分の行動が周囲からどのように受け止められているかを客観的に把握できる。 50 代➡『TAS 診断』
コーセルでは、50 代社員のキャリア研修にもTAS 診断を導入している。50 代のキャリア研修といえば、通常は定年後の人生を視野に入れたものが多く、コーセルでもマネー研修を併せて行っているが、受講者から好評だったのはTAS 診断を含むキャリア研修だった。
「50 代になると、人から行動特性などについて指摘を受けるようなことはほとんどありません。キャリア研修とTAS 診断を受けて、改めて自分の棚卸しができて良かったと好評でした」(同社総務部人財開発課 大坪氏)

アセスメントを受けた受講者からは、「自分を客観的に見ることができ、自己分析することができた」「自分でも知らなかった自分の特性に気づくことができた」といった声があがったという。

フォロー面談の重要性とV-CAT の活用法

コーセルでは、研修後に実施するフォロー面談をとくに大切にしている。フォロー面談は、上司との面談、人財開発課との面談と、2回行われる。
「人財開発課の面談は、社員と人事が直接対話できる貴重な機会として非常に重視しています。面談中にはアセスメント結果を改めて見てもらい、もう一度その場で考えてもらうようにしています。1回見て終わりではなく、何度も見ることが大切なのです。面談の場だけではなく、1年に1回は見るように伝えています。そうすることで、必ず新たな気づきがあるはずだと考えています」(日下氏)
また、一部のキャリア面談ではさらにJMAM の『V-CAT』というアセスメント・ツールも取り入れている。V-CAT とは、人それぞれに備わった固有の「持ち味」と、持ち味の行動への現れ方を左右し環境への適応・不適応を決める「メンタルヘルス」の両面を見る適性検査。業績や行動といった“目に見える”要素だけではなく、「特性」や「基礎能力」のような“目に見えない”要素にも、V-CAT を用いて光を当てていきたいという。
自身もV-CAT のトライアルを受けたという大坪氏は、次のように述べる。
「私だけではなく、受けた人は皆、心の状態や自分の持ち味が非常によく当たっていると言います。ある意味こたえるところもあるのですが、それをどう受け止めて、どう活かすかが重要です。そのためには自分の特性を周囲と理解し合うことが大切だと思います」

昨年度からスタートしたキャリア研修をきっかけに、アセスメント活用方法をさまざまに検討している同社。今後は、アセスメントを継続的に活用してデータを蓄積し、他の情報とも照らし合わせて、人を見る軸を増やしていきたいという。アセスメントを人財育成やキャリア開発支援に積極的に活用していくという同社の取り組みに、引き続き注目していきたい。(2015年8月作成)
※掲載内容やご登場いただいた方の役職は取材当時のものです

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