掛川市役所
提案内容が一番具体的で充実していたので、 掛川市DX人材育成計画の策定と人材育成を JMAMのDXコンサルティングに委託しました。

静岡県掛川市は、日本列島のほぼ中央に位置する中東遠地域の中核的存在です。DXへの取り組みとして、単なるDX推進ではなく、抜本的にやり方を変えて、デジタルを活用して市民の生命と財産を守る行政のサービスの実現を目指しています。令和4年10月に「掛川市DX推進計画」を策定し、令和5年の掛川市DX人材育成計画の策定と令和6年度からの研修の企画・運営に当り、日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)にDXコンサルティングを委託しました。人材育成計画の策定、研修の導入などについて、掛川市 副市長 石川紀子様と企画政策部企画政策課の皆様にお話しを伺いました。 写真(左から):
- 副市長兼CDO
- 石川紀子様
- 企画政策部企画政策課
参事 - 尾村義隆様
- 企画政策部企画政策課
経営戦略室デジタル戦略係 主事 - 澤村北斗様
- 企画政策部企画政策課
経営戦略室デジタル戦略係 主任 - 寺田翔之介様
- 企画政策部企画政策課
課長 - 中村光宏様
- 企画政策部企画政策課
経営戦略室デジタル戦略係 係長 - 小笠原潤子様

- 会社名
- 掛川市役所
- URL
- https://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/
- プロフィール
自治体名 静岡県掛川市 市役所所在地 静岡県掛川市長谷一丁目1番地の1 市長 久保田 崇 人口 115,181人 世帯数 48,001世帯 面積 265.69㎢
DX活用で市民の生命と財産を守る行政のサービスを進化させる
──静岡県掛川市について教えてください。

掛川市 Webサイト
掛川市は日本列島のほぼ中央に位置し、中東遠地域(磐田市、袋井市、掛川市、菊川市、御前崎市、森町)の中核的存在です。東海道と秋葉道(塩の道)が交差する交通の要衝であるとともに、掛川三城(掛川城・横須賀城・高天神城)が築かれ、当圏域の中心として発展してきました。
現在では、東海道新幹線掛川駅、東名高速道路・掛川IC・新東名高速道路・森掛川IC、富士山静岡空港と、抜群のアクセスを誇っています。
そして掛川市は日本有数のお茶「掛川茶」の産地としても知られており、ブランディングにも注力しています。掛川市を始めとする静岡県で行われている茶草場農法は、高品質なお茶を生産するとともに豊かな生物多様性の保全にもつながることから、2013年に世界農業遺産に認定されています。
──掛川市のDXへの取り組みについて教えてください。
最初になぜ掛川市にDXが必要なのかをお話しすると、人口減少で、かつ公務員の数も減らされていく中、価値観の多様化、新たな課題の表出などに直面しています。そこで今までと同じやり方ではなく、市民のために新しいチャレンジをしていく、新しい技術や多様な価値観を持った仲間を受け入れていくことが必要になっています。
単なるDX推進ではなく、抜本的にやり方を変えて、デジタルを活用して市民の生命と財産を守る行政のサービスを進化し続けられるようにしていく。その一つの軸としてDXを活かして行政サービスを進化させるだけでなく、職員の働き方をも変えていきたいと考えています。
具体的には令和4年10月に「掛川市DX推進計画」を策定しました。計画期間は令和4年から令和7年です。本計画は「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を推進するため、デジタル活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な人の幸せ(Well-being)が実現できる社会を目指しています。
また、掛川市は市民や市議会、行政がお互いに尊重しあい、同じ目的のために対等な立場で連携や協力をする協働によるまちづくりを進めています。この「協働のまちづくり」とともに、DXを推進し「人、モノ、コト、情報」をつなぎ、「ともにチャレンジ(共創)」しやすい環境づくりを進めることで、「未来に向けて誰もがつながるまち」を目指しています。

副市長兼CDO 石川紀子様
──どのような取り組みから始められたのですか。
令和5年に具体的なアクションプランを策定し、10のワーキンググループを発足させました。その中で「生成AI活用」「公共施設のオンライン予約」「オンライン申請の推進」などを全庁体制で進めています。
例えばオンライン申請では掛川市の全手続き1,790種類のうち、申請件数の7割を占める142種類のオンライン化を令和6年度中に実現予定です。そして窓口でオンライン申請をご案内するとともに、職員によるサポートも行っています。
こうした取り組みの土台となるDX人材の育成のため、令和5年度に日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)にDXコンサルティングを委託し、掛川市DX人材育成計画を策定。令和6年度から7年度に人材育成研修を実施しています。
――今までは、どのような内容のDX人材育成を行っていたのですか。
以前行っていたのは、セキュリティ関連などのeラーニングを中心に、IT関連資格取得の補助を行っていました。また、直接的な研修ではありませんが、導入しているグループウエア、Microsoft365に関して、便利機能などを市役所内のポータルサイトで毎週紹介して、利活用推進を図ってきました。

企画政策部企画政策課 参事 尾村義隆様
提案内容の充実、一番具体的な内容だったことを高く評価
──掛川市DX人材育成計画の策定と人材育成に関して、外部委託を選択されました。公募型プロポーザルを実施された理由について教えてください。
掛川市DX推進計画に則り、例えば申請手数料のキャッシュレス化に取り組んだり、市役所業務でのChatGPTの活用などについては、いち早く進めてきたと考えています。ただ、職員のITスキルがどのレベルにあって、どのレベルを目指していけばいいのか、社会一般でのレベル感との比較ができていませんでした。その“ものさし”となるリテラシー水準についての、専門的な知見を必要としていたからです。
──プロポーザルの評価基準で企画提案内容の配点が高く設定されていた理由を教えてください。
今回のプロポーザルは、今後の掛川市を担っていく人材育成に関するものです。それだけに単なる入札(金額)ではなく、各社の保有しているノウハウを掛川市の課題解決にどう発揮していただけるかを評価し、その内容でパートナーを選びたいと考えました。
プロポーザルの説明会、つまり書類審査の前には8社ご参加いただき、具体的なご提案をいただいたのは5社です。

企画政策部企画政策課 課長 中村光宏様
──最終的にJMAMに委託されましたが、その決め手を教えてください。
ご提案いただいた企業は、どちらもコンサルティングや教育研修で豊富な経験がある企業ばかりです。JMAMに関しては、正直なところDXというイメージは持っていませんでしたが、提案内容が充実していたこと、一番具体的な内容だったことを高く評価しました。
特に、タイトなスケジュールな中での策定工程を具体的かつ多角的な視点から示してもらえたことで、私たちも計画策定のイメージができ、パートナーとして安心してお任せできると判断しました。
──JMAMへの委託内容を教えてください。

JMAMへの委託内容は、掛川市DX人材育成計画の策定、そして令和6年度から7年度に実施する具体的な教育施策の企画・立案と実施になります。
掛川市DX人材育成計画の策定にあたっては、DX推進の要になるキーマンへのインタビューと全職員アンケートを行い、市がDXで目指すべき姿を実現するための現状の課題感を明確化しました。それを踏まえ職員に求められるスキルマップを作成し、そのスキルを習得するまでの育成計画をまとめ、具体的な教育施策の企画・立案、そして実施を行ってもらいます。

企画政策部企画政策課 経営戦略室デジタル戦略係 係長 小笠原潤子様
日本の社会標準の指標でスキルマップを作成
──掛川市DX人材育成計画の策定に関してお聞かせください。
掛川市DX人材育成計画では、全職員のリテラシー向上だけでなく、専門的な教育を受講、外部専門人材やDX推進課等と連携し、中核となって実務を取りまとめることができるDXリーダー100名を選抜・育成することで、組織全体でDXを推進する体制の構築を目指しています。

そのために、まず全職員アンケート、キーマンインタビューを実施し、スキルマップの作成を行いました。このスキルマップは掛川市独自のものではなく、JMAMの知見により日本の社会標準の指標で作成した、より客観性があるものになりました。
そしてスキルマップと人事制度との連携を図るため、スキルマップの記載内容から抜粋した項目を、人事評価項目に追加しました。これができたのは、スキルマップ作成時に、JMAMが当市の人事評価票の項目などを一部反映するかたちで作成してくれたからです。これにより人事部門と連携し、DXリテラシーの習得が部門にかかわらず重要であることを全職員に向けて発信することができました。
100名予定のDXリーダーに120名が応募
──令和6年度から掛川市DX人材育成計画に則り、具体的な教育施策が始まりました。その内容を教えてください。
全職員向けにはeラーニングでの学習を開始しました。DXリーダーに関しては、令和5年度にDXリーダーアセスメントを実施しており、令和6年度にはDXアイデア創造研修、令和7年度にはDXによる業務改革研修を実施します。
現在は全職員の殆どがeラーニングでの学習を開始し、DXアイデア創造研修では研修事前学習を終え、DXアイデア創造研修を実施しました。

企画政策部企画政策課 経営戦略室デジタル戦略係 主任 寺田翔之介様
──DXリーダーは100名の予定ですが、応募状況はいかがでしたか。
DXリーダーは100名を予定しており、市役所内で手上げ式で公募したところ120名の応募がありました。中には消防や保健師など専門職からの応募も多く、年齢も性別も役職も多岐に渡ります。50代の職員の応募もあり、予定数を超えたことは非常にうれしく感じています。
正直なところ、応募してくるのは30名程度という予測がありました。そこからは大勢の職員にこちらから参加を働き掛ける必要があると考えていましたので、職員の意識の高さに頭が下る思いです。
──全職員向けにはeラーニングの実施状況はいかがですか。
まずDXリテラシーアンケートを受けてもらい、自身の現状を確認し、全職員向け体系図から必要になる項目と動画教材を確認して、受講します。全職員には3コースの受講を義務としましたが、多い職員は50コース以上受講しています。どうしても個人差がありますので、どう展開してモチベーションアップにつなげていくかが課題と捉えています。

企画政策部企画政策課 経営戦略室デジタル戦略係 主事 澤村北斗様
──DXリーダー向けのDXアイデア創造研修についてはいかがですか。
DXアイデア創造研修では研修事前学習として、2コースをeラーニングで受講した上で、1日×2回の研修に臨むようにしています。ほとんどの職員が事前学習を済ませた上で、研修に臨んでいます。eラーニングにはTeamsなどを基礎から学べるコースもあり、たいへん好評です。
DXアイデア創造研修は、DXリーダーに志願したメンバーということもあり、活気ある雰囲気で研修を実施できました。いろいろな部署のメンバーが一堂に会してDXアイデアを企画することで、庁内全体に共通する課題が明らかになったり、まったく違う視点から意見をもらえて気づきにつながったりしています。
特に受講者がそれぞれに思っている「こうできたら」、という課題感を集められたのが大きいと思います。研修内でプロトタイプまでまとめられたものもあれば、テーマとしては漏れたものの取り組む価値のあるものがたくさんあることがわかりました。今後できるものから実現していきたいですね。
アクションプランを継続し、人財育成を続けていく
──掛川市DX人材育成計画策定における、JMAMの評価を教えてください。
当市のデジタル戦略係と一緒に策定を行いましたが、大変スピード感を持って計画案の作成をリードしてくれたことを評価しています。打合せ時に伝えた当市の要望に対し、数日中にかたちにして提案してくれるなど、「こちらの意図を組み取る」「それを迅速にかたちにする」という点で遂行力が非常に高く、私たちも刺激をもらいながら策定を進めることができました。
―― DXアイデア創造研修についての評価はいかがですか。
研修を担当された講師の方はSIer出身で幅広い知識を持たれており、講義もさることながら、受講者へのコメントが的確で素晴らしいと思います。
また、研修内で受講者にChatGPTを駆使するよう勧めていただいたことで、導入したもののまだ使っていない職員も多かったChatGPTの活用が一気に広まりました。実際に使ってみて有用性を実感したとの声が多く、研修そのものではありませんが、研修の派生効果も実感しています。
――掛川市DX人材育成計画以後の推進予定について教えてください。
全職員のDXリテラシーについては、毎年セルフチェックアンケートで評価する予定です。具体的にはその結果を見ての検討になりますが、DX推進計画アクションプランの内容は令和8年以降も続いていきます。常に知識やスキルをアップデートしながら、アクションプランを継続し、人財育成を続けていきます。
――JMAMに対するリクエスト、期待があればお聞かせください。
令和6年度の研修内容を踏まえ、次年度のDXリーダー向け研修でより実践的なスキル習得ができるよう、講義内容を相談させてください。そして研修後のアンケート結果を共有して、次年度への検討に活かしたいと考えています。引き続きご提案とサポートに期待しています。
副市長、掛川市役所職員の皆様、
本日はお忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。
※ 取材 2024年8月
本事例でご紹介しているDXコンサルティングを始めDXサービスについて
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/dx/